大改革 - サンセリテ - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2004年5月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


大改革 - サンセリテ

サンセリテの外観
あるコンサルティング会社が主催した講習会に参加した。売上は少しずつ下がっていた。近くの工場や学校などへの外販に力を入れていた。地域の人口は減っているし、高齢化しているし、同じ商圏内のどの店を見てもジリ貧だった。「売上が下がっているのはしようがない。店で待っていても駄目だ。積極的に外へ売りに行こう」。埼玉県狭山市のベーカリー、サンセリテの高田知明さんはそう考えていた。講習会で刺激を受けた。講師を務めたコンサルタントに店を見てもらった。開口一番「何を売りたいのかまったくわからない。駄目ですね」。ちょうど25周年が間近だった。

埼玉県狭山市狭山台3-11-2
電話042-957-8934
営業時間 午前10時〜午後7時
定休日 第2、第4日曜日



とにかく店の顔となる看板商品をひとつ作ること

天熟食パンは焼き上がり後、レジ横の棚に並べられる。


天熟食パンは注文があると、その場で好みの厚さにスライスして販売する。


オーナーの高田知明さん。
2003年7月上旬。まず、1つの商品に絞って顧客にアピールしようということになった。天然酵母を使った「天熟食パン」(1斤180円)という商品に白羽の矢がたった。「毎日食べる日常のパンが売れる店は強い」という高田さんの思いもあった。それまで1回だった焼き上げ回数を朝と正午、午後2時、午後4時の1日4回に増やした。「とにかく店の顔となる看板商品をひとつ作ることです」と店を見てもらったコンサルタントからも言われていた。商品には自信があった。
第2、第4の日曜日にパートも含めたスタッフ全員で会議をすることにした。
「天熟食パン」をどう売り込んでいくかが話し合われた。結論はチラシのポスティングだった。「多くの顧客が住んでいる団地をメインに、夏の炎天下、スタッフ全員で手分けしてチラシを入れてまわりました。多い人で2000枚、少ない人でも500枚は配りました。団地の場合、一階にある集合郵便受けでは効果がないということで、全て玄関のドアにポスティングしたので、階段の昇り降りがかなりきつかったですね。スタッフ一人一人に枚数を割り振って、確か1週間以内に配り切るということでやりました」と高田さんはいう。



フェアを積極的に行い、商品をどんどん入れ替えた。

売れる商品として定着した感のある「メープルラウンド」(190円)もあった。その左は抹茶のメロンパンをアレンジした「トトロパン」(126円)。


「お芋のパン」(189円)や「黒米小豆パン」(106円)など、健康志向を意識した素朴なパンが入店してすぐ左の平台に並ぶ。
8月の中旬に、店舗を改装した。
レイアウトを一変し、中央の平台を広く取った。顧客が動きやすいように考えてレイアウトを考えた。
床と壁と天井はすべて貼り変えた。テーブル2つ用意し、簡単な飲食ができるスペースも作った。
コーヒーサーバーを置き、コーヒーの無料サービスも始めた。
広く取った駐車場の一角にテーブルと椅子、日よけなどを配して、顧客がくつろげるスペースも作った。
改装に合わせて、新装オープンフェアを開催した。さらに「秋の味覚フェア」を開催。フェアを開くたびに新商品を投入して、商品をどんどん入れ替えていった。
それまで高田さんは、同業他店はほとんど見なかったが、積極的に見てまわるようになり、売れているものについては高田さんなりに消化して、積極的に商品化していった。
こうした過程で、蒸かしたサツマイモを練り込んだ「お芋のパン」(189円)や、菓子パン生地にチーズを流し込んで焼成する「りんごのチーズタルト」(160円)、白樺をイメージした「高原の白樺」(240円)などの人気商品が生まれた。
「商品は結果的に約半分は入れ替わりましたね」と高田さん。
さらに「今になって考えてみると、パンへのこだわりが自分だけの中で終わってしまっていたような気がします。やはりお客様が望むものを積極的に商品化していかないと駄目だったんですね」。



効果はすぐに現れた。商品の入れ替えが進んでいった。

売り場中央の平台には、テーブルを2つ使用。ひとつは2段にしている。立体感を持たせることで、商品をわかりやすく展示している。


ホームセンターから調達した椅子やテーブル、仕切りなどを使って高田さんが駐車場の一角に作ったオープンカフェ風の広場
一連の改革の成果がすぐに現れてきた。天熟食パンの売上は、目に見えて伸びた。ポスティングしたチラシには、30円引きの特典がついていて、簡単なアンケート項目も設けてあった。
「意外と天熟食パンを食べたことがない人が多いことがわかりました。また、ウチの店自体を知らない人が多いこともわかりました」と高田さん。
「食パンの場合、生産効率があまりよくないので、店全体の売上ということになるとすぐには効果が実感できなかったのですが、食パンに人気が出たことで、それが徐々に他の商品にも波及していきました。店全体の売上もじわじわと上がっていきました」
食パンを広くPRして、来店客数が増えたところで、新装開店フェア、秋の味覚フェアと立て続けに企画を2本ぶつけたことは、顧客の目を他の商品に向けさせる効果があった。
「商品を再検討し、レベルアップさせたところに、多くの新しいお客様が来てくれたことで、固定客が増えたのだと思っています」(高田さん)
天熟食パンのポスティングを実施した7月は、前年同月比22%増、新装オープンした8月は、同50%増、「秋の味覚フェア」を行った9月は、同30%増の売上を達成した。



25周年記念を盛大に開催。改革の成果は華々しかった。

混雑するサンセリテの店内


売り場中央の平台には、テーブルを2つ使用。ひとつは2段にしている。立体感を持たせることで、商品をわかりやすく展示している。


ホームセンターから調達した椅子やテーブル、仕切りなどを使って高田さんが駐車場の一角に作ったオープンカフェ風の広場
改革はさらに続いた。25周年の記念フェアを大々的にやろうと思った。日程は2日間で、そのいずれかをスタッフ全員が経験できるようにと考えた結果、10月末の土日に決定した。
メインの企画として、スタッフが「これはおいしい」とすすめる商品を10品目選び、それらをすべて半額で販売することにした。お祭りムードを盛り上げるために、店の外でパニーニの焼成実演販売もすることになった。
そのほか、わた菓子体験コーナーや、クラフト風船のプレゼントコーナーなど様々な企画をぶつけることになった。
スタッフ全員が法被(はっぴ)を着て雰囲気を盛り上げることも決まった。告知については、新聞の折り込み広告を利用することにした。
記念フェアの当日、半額製品は開店2時間後に棚からなくなってしまった。焼いても焼いてもすぐに棚から消えてしまった。半額商品を目当てに来た顧客に申し訳が立たないと、急きょすべての商品を半額に切り下げた。
25周年記念フェアの後も、ハロウィーンやクリスマスのフェアなど、積極的にフェアを開催した。
結果は華々しかった。まず、スタッフが店を自慢するようになった。働く姿が以前にも増して生き生きとしてきた。
高田さんの顔に前にも増して優しさと余裕が出てきた。顧客が楽しそうにパンを選び、店内に活気が出た。顧客数が多くなった。
10、11、12月の売上は、前年同月比30%増、2004年1月は50%増、2月は70%増、3月は95%増。
顧客の高齢化や不況は、実は関係なかったのだ。

高田さん曰く

売上が少しずつ下がってきてジリ貧の状態になると、知らず知らずのうちにひねくれてしまっていて、どこかであきらめてしまっている自分がありました。そのときはそうは思っていなかったのですが、今考えると確かにそうでした。
やはりきっかけが必要だったのだと思います。私の場合は、あるコンサルタント会社が主催した講習会がきっかけでした。講師の方に相談したら、店を見に来てくれて、結構きついことをいわれました。
きっかけの次は、とっかかりです。ウチの場合だったら、とにかく天熟食パンをものにしようと、いろいろと頑張りました。仕掛けているから、反響にはとても敏感になります。どんな小さなレスポンスも見逃さなくなります。反響は大きくなり、売上は上昇していきました。
そうするといつの間にか素直になっているんです。
お客様にサービスしようという気がメラメラと沸いてくるんです。
それと、最もよかったと思うのは、スタッフが一緒に売上を伸ばそうと本気になってくれたことです。
あることを共に成し遂げる達成感が私には確かにあったし、多分スタッフにもあったのだと思っています。

原価計算女王
原価計算女王
蒸かしたサツマイモをペーストにして生地に練り込む

お芋のパン
お芋のパン
蒸かしたサツマイモを潰してペースト状にし、生地に練り込む。見た目もさることながら、サツマイモペーストが90%入っているので、食感が独特になる。比較的簡単にできて、差別化効果は最大級。ただ、生地の捏ね上がりの見極めが難しい。189円。
【配合%】
国産小麦粉………………………………90
北海道産小麦の全粒粉…………………10
三温糖…………………………………15
天日塩……………………………………2
ふかし芋…………………………………90
卵黄……………………………………50
コンデンスミルク…………………………15
加塩バター………………………………2
ホシノ丹沢酵母(生種)……………………5
水………………………………………30
【工程】ミキシングL3分M2分(加塩バター投入)M8〜10分、捏ね上げ温度22度C、1次発酵20度C14時間、分割200グラム、ベンチタイム1時間、成形→ナマコ形(全粒粉をまぶす)、ホイロ36度C75%1時間30分、焼成上火230度C下火180度C20分(スチーム注入)
※ホイロ後、さいばしで表面に穴を開け、サツマイモらしさを表現する。
※水の量は、使用するサツマイモによって、調整する。

菓子パン生地で作るチーズタルト

りんごのチーズタルト
りんごのチーズタルト
菓子パン生地を型に敷き詰めて、クリームチーズを流し込んで焼き上げた人気商品。160円。
【作り方】(1)1次発酵(フロアタイム)が済んだ菓子パン生地を40グラムに分割し、ベンチタイム10分後、冷蔵する(2)[1]を麺棒でのばし、パイの要領で直径約10センチの円形の型に敷き詰める(3)[2]にアップルプレザーブを入れ、▼クリームチーズ液を流し込む(4)[3]を145度Cのコンベクションオーブンで約22分間焼成する(5)焼き上がったら、あんずジャムを塗って仕上げる。
▼クリームチーズ液
【配合グラム】
キリクリームチーズ…………………500
QBBクリームチーズ………………500
砂糖…………400
卵……………………………………400
生クリーム…………………………1000
レモン汁………………………………30
【作り方】(1)キリクリームチーズとQBBクリームチーズ、砂糖を混ぜ合わせて、立てる(2)[1]に卵を何回かに分けて加え、混ぜ合わせる(3)[2]に生クリームとレモン汁を加えて、混ぜ合わせる

ありきたりの商品だからこそ、いい材料を使う

シナモンロール
シナモンロール
「どこにでもある商品だから、そしてブームが去ったからこそ、いい材料を使い、上質な味に仕上げました」と高田さんはいう。1つ115円。
【中種配合グラム(4キロ仕込み)】
強力粉………………………………2800
上白糖…………………………………200
全卵…………………………………1200
イースト…………………………………160
牛乳……………………………………500
【中種工程】ミキシングL5分、フロアタイム2時間
【本捏ね配合グラム】
薄力粉………………………………1200
グラニュー糖…………………………1200
塩………………………………………31
加塩バター……………………………1400
牛乳……………………………………400
【本捏ね工程】ミキシングL2分(中種投入)M8分(加塩バター投入)L2分M8分〜、捏ね上げ温度28度C、フロアタイム20分後冷蔵、成形→(1)ローラーで3ミリ厚にのばし(シート4枚)、上面にアーモンドクリームを塗り広げ、さらにシナモンシュガーをふる(2)[1]をロールし、1個が約80グラムになるように輪切りにする(3)[2]を天板に並べてホイロへ。ホイロ36度C75%1時間30分、焼成上火230度C下火200度C12分
※仕上げにフォンダンをかける

毎週土曜日は、「パニーニの日」。


コーヒーサーバーを2つ用意し、コーヒーを無料で提供。店内に設置された休憩スペースで飲む人も多い。


毎週土曜日は、「パニーニの日」で、通常価格の189円を126円で販売する。生ハムやトマトなどをサンドした「ローマ」、ツナやオニオンなどをサンドした「ニース」、ミートソース、じゃがいもなどをサンドした「ポロネーゼ」の3品目。


2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら