卸・外販の功罪について - ブランスリー電子版

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特集/2004年4月号

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卸・外販の功罪について

リテールベーカリーで、パンの卸販売や出張販売を手掛けるケースは少なくない。自店での製造小売に比べて、どんなメリットがあり、デメリットがあるのか?ベーカリー2軒を取材した。



およそ8割が卸販売。売上の変動は比較的大きい[デニッシュハウス]

ロスがない。現金がすぐに入らない
デニッシュハウス(神奈川県)は、総売上のおよそ8割を卸販売が占める。主な卸先は、自然食品店などで、合計でおよそ50社の取引先がある。また卸販売ではないが、デパートの催事への出店も多い。さらに、幼稚園や保育園などからの注文も多いという。
オーナーの野村忠雄さんは「卸販売の最もいい点はロスが出ないことです。注文をもらって作るわけですから」と話す。一方で「卸の場合は掛売りになりますから、現金がすぐに入らないという難点があります。また、ロスは出ませんが、例えば取引先が倒産したり、取引先から注文を減らされたりすることもあるので、店売りに比べると売上が大きく変動することが多いですね。減ることも増えることもあるわけですが、大きく増えたからといって生産設備の関係で対応できるとは限りません」という。
また「不況の時代においては、初めて取引をする場合は、その取引先の信用度もチェックしなくてはなりません。取引量が多いと、銀行に頼んで信用調査をしてもらうこともあります。それと、あとでトラブルが起きないように、できれば取引の条件について契約書を交わすことが大事だと思っています」。
卸価格については、取引量によっても異なるが、平均すると希望小売価格の7割程度だそうだ。
「仕入れる立場で考えたら、小売価格の3割程度はもらわないと大変だと思います」(野村さん)。

独自の商品を作る努力
同ベーカリーはおよそ20年前に創業した。最初は製造小売専門だったが、当初から天然酵母を使うなど「安全・安心」を重視したパン作りをしていたことから、自然食品店などからパンの注文が入るようになり、徐々に卸販売にシフトしていった。
バブル崩壊以前の景気がよかった頃は、天然酵母パンの需要に対して、供給がまだ少なかったことも手伝って、売り手市場の状態が続いたという。
「ウチは他がやっていないようなパンしか作りませんから」と野村さんはいう。
自然食品店に対しては、食パンやハード系のパンがよく出るという。食パンはおよそ25品目あって、品揃えが豊富だ。デパートの催事では、菓子パンがよく売れるそうだ。また、幼稚園や保育園からは、野菜が入ったロールパンなどの要望が高いという。
こうした商品の多くは、「他では売っていない独自のパン」(野村さん)だ。特に「昔まんじゅう」と名づけた蒸しパンは、同ベーカリーの看板商品になっている。
パンに使用するバターも、様々な材料と混ぜ合わせたりして、同ベーカリー独自の仕様にして使っている。
練り込みや巻き込み用の材料なども、野村さんが独自に考案したものが多い。

天然酵母パンの希少価値は減った
「現在は、天然酵母パンは多くのベーカリーが作っているし、昔ほど希少価値はなくなりました」と野村さんはいう。「自然食品の業界は大きく成長しました。取引き先も、大きくなってくるとリスク分散のためか、仕入先をいくつかに分けようとします。ウチとしたら、その分納入量が減るわけです」
現在は、自然食品を扱うスーパーなども低価格志向が強くなってきて、野村さんのところにも、値下げ要求が来るようになった。「競争は激しくなっています。値崩れを起こさないようにして生き残っていくためには、ほかと同じことをやっていては駄目です」(野村さん)



一定の売上が見込める反面、飽きさせない努力が求められる[サンセリテ]

天然酵母パン工房サンセリテ(埼玉県)では、全売上の2〜3割が卸販売または、外販によるものだという。近くの工場に出張して販売したり、ある会社の課ごとに残業用のパンの注文を受けて届けたりしている。また、幼稚園や保育園からの注文も入る。

近くの工場で短時間の勝負
近くの工場での販売は正午から午後1時までの短時間勝負だ。専用の小さな売り場があって、そこにパンを持ち込んで販売する。販売スタッフは2人。
別のある会社については、各課から午後3時くらいまでに、残業用のパンの注文が入り、5時ごろまでに届ける。「注文を受けてからパンを届けるまでの時間が短いので、持っていくパンの種類についてはこちらに任せてもらっています。課ごとにパンを仕分けして車に積み、その会社に出向きます。そして注文があった課にパンを届けてまわるんです」と、サンセリテの高田知明オーナーは話す。

新商品を頻繁に投入しないと・・・
こうした販売方法のメリットは、販売量がかなりの精度で読めることから、ロスも少なく、安定した売上が確保できることだという。
一方で、毎日ほとんど同じ人たちに販売するので、頻繁に新商品を投入しないと、すぐに飽きられてしまうという難しさもあるという。

ユーザーの要望を聞いてパンを作る
幼稚園と保育園からは、「こういうパンを届けてほしい」と、パンの材料などを指定してくることもある。高田さんは「例えば、店で販売している製品のサイズを小さくしたり、形を変えたりしています。そういう意味で、店で販売するのとは違う製品になります。オーダーメイドのパンといえるかも知れません」。
また、同じパンでも「2人分だけ卵を使わないでほしい」などという注文も入る。しかも「見た目は卵を使ったものと同じにしてほしい」という注文が加わるという。
◇
サンセリテは1978年創業で
高田知明オーナーは2代目。約9ヶ月ほど前にリニューアルし、商品も約半数を入れ替えた。リニューアルを期に始めたチラシのポスティングが功を奏し、店での販売額は前同月比で2倍に迫る勢いだという。
 一方で高田さんは、外販や卸販売を、安定的な売上が見込める手堅い販売チャンネルとして重要視している。



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