手作りのパンと店 - PAIN D'ARTISAN NICOLAS - ブランスリー電子版

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お店拝見/2004年4月号

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手作りのパンと店 - PAIN D'ARTISAN NICOLAS

PAIN D’ARTISAN NICOLASの外観
パン作りも店作りもできることは全部自分でやる――そんなベーカリーが茨城県水海道市にある。昨年6月にオープンしたPAIN D‘ARTISAN NICOLAS(パン ダーチザン ニコラ)だ。オーナーの杉山洋春さん(25)は「毎日、一生続けていくことだから、無理をせずに納得のいくパンだけを、手間を惜しまずに作っていきたい」と話す。

茨城県水海道市渕頭町2988‐103
電話0297-23-0025
営業時間 午前10時〜午後6時
定休日 月曜日、火曜日



できることはすべて自分でやった。天板の時計が印象的

杉山さんが自分で作った天板の時計


パンと様々なインテリア雑貨に彩られた売り場。接客するのは、潤子夫人
パンを並べるショーケースは、古道具屋で見つけたものを改造して作った。パンの陳列棚は、けやきの廃材を調達して作った。床は、ビニール製の床材が貼ってあったものをすべて剥がして、コンクリートの上に床用の水性塗装剤を自分で塗った。
杉山洋春さんは「例えば水まわりとか、電気の配線とか、自分ではどうしてもできないこと以外はすべて自分でやりました」と話す。
正面の壁にかけられている時計も手作り。杉山さんが時計のキッドを買ってきて、それをパンを焼く天板に取り付けたもので、まさに「パン屋さんの時計」そのもの。
そのほかにも、杉山さんの母親のコレクションで、杉山さんが子供の頃から聞いていたレコード盤や、フォルクスワーゲンバスのミニチュアなどがインテリアとしてさりげなく飾られ、まるで画家のアトリエのよう。(実は杉山さんは、画家を目指していたことがあるそう)。「店作りで一番苦労したのは、保健所とのやり取りでした。地域によって基準がかなり違うということがわかりました。けっこう頭にきたりもしました」(杉山さん)。
最初保健所は、厨房と売り場を完全に仕切ることを要求してきたという。交渉を重ねた結果、床から1メートルの高さまで完全に仕切ればいいということになった。厨房と売り場を行き来する場所には1メートルの高さのドアを取り付けた。
「東京のど真ん中ではございません。茨城の片田舎です。決して交通の便が良いとは言えません」(杉山さん)という立地で、賃貸料は月約7万円(坪単価約5000円)、初期投資額はおよそ350万円だったそうだ。何から何まで手作りのベーカリー――それがニコラなのだ。



自分が作っていて楽しくて、顧客が食べておいしいパン

焼き上がったフリュイを窯から出す杉山さん


顧客の注文を聞く潤子夫人


古道具屋で購入して改造した陳列棚にたくさんのパンが並ぶ。
杉山さんは、パンの世界に入って7年目。一昨年まで製造責任者として働いていた都心のあるベーカリーが、独立前の最後の職場だった。「独立前に働いていた店での経験から、『これはあり』『これはないだろう』という自分なりの判断基準ができたような気がします」という杉山さんが、絶対に曲げたくないことがある。それは「自分が作っていて楽しく、自分が食べておいしく、顧客が買って楽しく、顧客が食べておいしいパン」だけを作ることだ。
「とりあえず売上を得るためとか、作業効率を上げるためとかで、納得のいかないパンを作ってしまうことはどうしても避けたかったんです。初期投資額を抑えたのも、無理をせずに自分のパンだけを作っていきたかったからなんです」と杉山さんはいう。
ニコラは1日、およそ30品目程度を作る。全体の品揃えの総数は、100品目程度あるが、日替わりで作る商品が多いのだ。1日に作る製品の半分は毎日作る商品で、半分は日替わりの商品だという。
「日替わり商品の製造日は決まっていないんです。『今日はこれをやろう』と思った製品を作ります。これをやらなきゃいけない、あれをやらなきゃいけない、という義務感が嫌なんです。『今日はあの商品はないのですか』といっていたお客様も、だんだん、『今日は何があるか楽しみ』といっていただけるようになってきたように思います」



何がよくて何が悪いなんてない。自分らしいパンを作りたい。

人気商品のフリュイ


さまざまなトッピングを施し彩り豊かなデニッシュ各種。
ニコラの一番人気は「フリュイ」(230円)だ。リュスティック生地にドライクランベリーとクルミを練り込んだ細長いパン。杉山さんは「どなたにでもおいしく召し上がっていただけると思っています」。ハード系のパンはこのほか、自家製のサワー種と発酵種を使った「カンパーニュニコラ」(大800円、小400円)や吸水を極端に多くして24時間程度じっくりと1次発酵をとる「リュスティック」(200円)など品揃えが充実。
「ハード系が苦手な人は、デニッシュや菓子パンを買っていかれます」(杉山さん)。デニッシュは生地を入れる型が直接いくつもプレスされた特殊な天板で効率よく焼き上げ、ダークチェリーやオレンジスライス、洋ナシなどをトッピング。店内に彩りを添える。
菓子パン類はブリオッシュに近い生地を使用。枝豆の房の形に成形した「ずんだあんのパン」(120円)や、キリクリームチーズを包んで放射状にカットを入れて焼き上げる「クリームチーズ」(120円)など、個性豊かな商品ばかりだ。

房に入った枝豆の形をしたずんだあんぱん

ずんだあんのパン
ずんだあんのパン
房に入った枝豆の形を表現したずんだあんぱん。「遊び心を表現したパンもあっていいと思い、作りました」と杉山さん。120円。
【配合%】
超強力粉(スーパーカメリア)………………60
強力粉(カメリア)…………………………40
上白糖……………………………………20
塩…………………………………………1・8
脱脂粉乳……………………………………6
生イースト……………………………………3
卵黄………………………………………10
全卵………………………………………10
水…………………………………………45
無塩バター…………………………………20
【工程】ミキシングL4分M8分(無塩バター投入) M6分、捏ね上げ温度24度C、分割30グラム(捏ね上げ後すぐに分割、5度Cの冷蔵庫で6時間以上ねかせる)、成形→(1)ずんだあん(和菓子用のもの)30グラムをあんぱんの要領で包み、細長く成形(2)両端を細く尖らせ、3等分する位置2カ所にくぼみをつける(3)ナイフで、3つの膨らみに切り込みを入れ、豆の房の割れ目を表現する。ホイロ35度C75%50分、焼成上火240度C下火180度C8〜9分 
※ホイロ後、膨らみの部分だけに卵を塗る。

キリクリームチーズを包み、放射状にカットを入れて焼成

クリームチーズ
クリームチーズ
キリクリームチーズを包み、放射状にカットを入れて焼成。カットを入れるのは、焼成時にクリームチーズが沸騰して、パンが破裂するのを防ぐためだが、同時にデザイン性を高める役割も果たしている。1つ120円。
【配合%】
ずんだあんのパンと同じ。
【工程】分割まではずんだあんのパンと同じ。成形→キリクリームチーズ30グラムをあんぱんの要領で包み、はさみでまわりから中心に向けて2センチ程度の切込みを放射状に6つ入れる。ホイロ35度C75%50分、焼成上火240度C下火180度C8〜9分

原価計算女王
原価計算女王
シロップに通し、表面をカラメル化。トルコのパンを自分流にアレンジ

スミット
スミット
「去年は日本におけるトルコ年で、色々なトルコ物がいたる所で見受けられました。スミットは、トルコで屋台で販売されているパンで、リング状が縁起の良い形とされています。やや日本風にアレンジしました。シロップに通すことで、表面にカラメル化が見られ、非常に香ばしくなります」(杉山さん)。
【配合%】
強力粉(カメリア)…………………………60
フランスパン用粉(リスドォル)……………40
塩………………………………………1・8
グラニュー糖………………………………4
生イースト………………………………1・8
水………………………………………65
無塩バター………………………………2
白胡麻……………………………………5
【工程】ミキシングL3分M3分(オールイン)、捏ね上げ温度25度C、一次発酵1時間、分割150グラム、ベンチタイム20分、成形→(1)細長く紐状に成形(2)真ん中を支点としツイストさせる(3)リング状にしてつなぎ目を合わせ、▼シロップに通す。ホイロ室温で30分(乾かす)、焼成上火220度C下火200度C13分(窯入れ後、スチーム注入)
▼シロップ
【配合%】
水………………………………………100
グラニュー糖……………………………80
【工程】全材料を鍋に入れて火にかけ、沸騰後火を止め、自然に冷ます。

フォルクスワーゲンバスが店の前にとまっていた。

2階は、休憩室。杉山さん夫妻には、3歳と1歳半の子供がいて、1歳半の子供を寝かせるためのスペースでもある。「今は人手がないのでできませんが、ゆくゆくはカフェをやりたいですね」と杉山さん。


「フォルクスワーゲンバス」のミニチュアが3台、ショーケースの上に飾ってあった。

左からベルリーナラントブロート(350円)、マンデルブロート(450円)、フォルコンブロート(450円)


「フォルクスワーゲンバス」が店の前にとまっていた。杉山さんは「最初は移動販売もやろうと思っていました」といった。


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