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| レポート／2025年12月号 |
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| ナポリの新潮流｢ピッツァ クロッカンテ｣。菓子とピッツァが交差する新しい食文化 - ピッツァクロッカンテ×スイーツセミナー ＢＹ ツジ・キカイ | |||||||||||||||||||
高加水・長時間発酵が生む、新食感ピッツァ 「ピッツァクロッカンテ」は、ナポリで今最も注目されている新しいスタイルのピッツァだ。高加水生地を基盤とし、長時間発酵によって旨みを引き出し、外側はカリッと軽く、内側はしっとりとした食感に仕上がる。丸成形が基本のナポリピッツァとは異なり、長方形など多様な形で展開される点も大きな特長だ。 トッピングの幅は広く、デリ系からスイーツ系まで自由度が高い。講習会では、モッツアレラ、生ハム、セルバチコなどをサンドした「ピッツァクロッカンテ」などが紹介され、パン職人の惣菜技術と相性の良さが示された。 さらに菓子職人向けとしてマロンクリームを絞り、渋皮栗やラズベリーなどをトッピングした「ピッツァクロッカンテ」などが提案された。パン、菓子、ピッツァの領域を越えた応用性の高さこそ、クロッカンテが日本でも広まる理由であり、その製法は多くの業態に新しい可能性をもたらすと思われる。 クロッカンテの味は小麦粉で決まる 「ピッツァクロッカンテ」の味わいを左右する最大の要素は、原料へのこだわりにあるという。特に小麦粉は、生地の持つ風味や発酵耐性を決定する主役だ。 ヨーロッパでは粉を「灰分量」「たんぱく質の質」で見極めるのが一般的で、講習会では伊カプート社の小麦粉が推奨された。 粉が安定していれば、レシピの再現性が高まり、仕上がりのブレも減少する。逆に、粉の質が不安定だと、技術がどれほど優れていても理想の食感には到達できない。パン屋、菓子屋にとっても材料の選択は製造の半分を決めると言われるほど重要だ。 適材を選ぶことは商品開発の第一歩であり、その積み重ねが店の信頼と品質を支える。原料の理解を深める姿勢が、「ピッツァクロッカンテ」の完成度を高め、店の味を一段引き上げる鍵となる。 高加水生地を制するのは温度と湿度 「ピッツァクロッカンテ」の核となる工程は、発酵と熟成。高加水生地は環境変化に敏感で、温度が高すぎれば発酵が暴走し、低すぎれば酵母の働きが鈍る。さらに湿度が不足すると生地表面が乾き、焼成後の食感が損なわれる。これらを精密に管理するために、講習会ではツジ・キカイのドウコンディショナー「レポス」の有用性が紹介された。職人が常に張り付く必要がなく、安定した生地状態を維持できる点は、パン店、菓子店、ピザ店の現場でも大きな価値を持つ。発酵は技術だけでなく環境づくりが重要だ。 長時間発酵によってタンパク質が分解され、自然な甘みと香りが引き出される。この工程を安定化できれば、焼成後の軽さ、クリスピー感、しっとりとした内相がすべて実現する。発酵と熟成の管理精度を上げることは、クロッカンテの成功を決定づける要素であり、店の品質を安定させる最も確実な方法だ。 冷凍対応で広がる新たな可能性 牧島昭成講師の話 私は、ナポリのピッツァ文化が今まさに転換期を迎えていると強く感じています。伝統のマルゲリータやマリナーラだけでは、お客様の来店頻度が伸びにくくなっている現状があり、現地の職人たちも新しいスタイルを模索しています。そんな中で私が注目しているのが、パンの長時間発酵とナポリピッツァの高温焼成を融合させた「ピッツァクロッカンテ」です。高加水生地をじっくり熟成させ、長方形で成形することで、軽さと食べやすさ、そして香ばしさが同居した新しい食感が生まれます。日本のパン屋さんや菓子屋さんでも応用しやすく、デリ系からスイーツ系まで自由度が高いのが大きな魅力です。冷凍耐性も高く、焼成後に急速冷凍して各店舗で再焼成するサプライチェーンも構築できます。私は、「ピッツァクロッカンテ」が必ず日本でも次の大きな潮流になると確信しています。 菓子素材と驚くほど調和する新しい生地 西園誠一郎講師の話 私は、スイーツの視点から「ピッツァ クロッカンテ」に大きな可能性を感じています。まず、生地そのものが軽く香ばしいため、菓子素材との相性が非常に良いのです。ピスタチオクリーム、ベリー、カスタード、チョコレートなど、私が普段扱う素材が驚くほど自然に馴染み、タルトや焼菓子とは異なる新しい質感が生まれます。 また、ピザの技術と菓子の技術が交わることで、他にはないジャンルの商品が作れるのも魅力です。事前に生地を焼いて冷凍し、必要な時に組み立てれば、繁忙期でも安定したオペレーションが可能になります。クロッカンテは菓子の世界にも強い武器になると確信しました。スイーツの可能性を広げ、店の新しい看板商品を作るための大きなヒントになるはずですし、私自身も今後さらに研究を深めていきたいと思っています。 ナポリの衝撃から始まった本物の探求 ツジ・キカイ山根証社長の話 私はミラノ駐在時代、初めて本場ナポリのピッツァを食べた瞬間に、その圧倒的な美味しさに衝撃を受けました。日本で慣れ親しんだピザとのレベルの違いに、恥ずかしさすら感じたほどです。２００３年に社長となって以来、「石窯の会社として本物を届けたい」と決意し、パン窯とナポリピッツァ窯の開発に力を注いできました。そんな中で牧島さん、西園さんと出会いました。新しいナポリの潮流を、皆さんと一緒に広めていきたいと心から思っています。 | |||||||||||||||||||
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