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| レポート/2025年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パン職人は語る - パン・デ・フィロゾフの榎本 哲シェフ | |
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バゲットなどのハード系の湯種製法、米麹で起こしたパン酵母、また小麦の単品種を「シングルオリジン」と見立てそれらを自分で混ぜて、目指す食感、味、香りを作る方法等は、昨今、こだわりのパン屋での潮流となっている。これらの製法のパイオニア的存在とされるパン・デ・フィロゾフの榎本哲シェフは、弱冠27歳で、フランスから上陸したブーランジェリーのシェフとなり、9年後には「生地数がほぼアイテム数」という凝りに凝ったパンだけを並べた自店を開業した。手間暇かけた特別感のあるパンのアイデアの源、榎本シェフをそこまでのこだわりに突き動かす力について語ってもらった。
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| サブロン時代、フランスでパンは料理の一部と知る | |
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子どもの頃から食べることが好きで、とりわけパンが好きでした。デスクワークには向いていないと思っていたので、高校卒業に当たって進路を決める際にパン職人を目指しました。子どもの頃、好きなパンは食パンや菓子パンでしたが、修業した「カフェマディ」や「パティスリーペルティエ」で本格的なハード系の美味しさに気付き、ハード系の生地を追究していくことがおもしろくて夢中になりました。ペルティエでの上司は志賀勝栄シェフでした。志賀シェフのル・セットを誰よりも上手く表現できると自信を持ちながら、日々仕事をこなしました。その後マキシムグループがフランスの「ドミニク・サブロン」を東京・新宿に出店するにあたり適任者を探しているとのことで、志賀さんの推薦で統括シェフに就任し、7年間務めました。
サブロンでの経験で良かったことは、フランスに行って、本場のさまざまなパンや料理を味わったことです。「パンは料理の一部である」と認識したことで、食事パンの奥深さに一層はまりました。また経営にも携わり、部下もたくさんいたので、人のコントロールの仕方や育て方を学びました。コントロールとは、「その人の欲求をいかに満たしてあげるか」ですね。相手の側に立ち、気持ちを理解することが重要です。 その他、学んだことについては技術や知識においては日本の方が優れているように感じました。フランス人はスピードはあるけど日本人の方が丁寧です。ただ食材の美味しさには目を見開きました。小麦粉、バター、チーズ、塩、そして水。サブロンではそれらを輸入して使用していましたが、船便だとやはり劣化して味は落ちてしまいます。材料に関しては現地の方が上であると感じました。 自分が作りたいパンだけを作る サブロンを辞め、数店の店の立ち上げに協力した後、いよいよ自分の店を2017年、東京・神楽坂に開業しました。職人を目指した当初からの夢でした。 立ち上げにあたり、「自分が作りたいパンを作る」というポリシーを掲げました。生地の追究を極めた、自分が美味しいと思うパンで、ハード系の食事パンやヴィエノワズリーが中心です。 出店場所の神楽坂はフランスの教育機関があることからフランス料理店も多く、街並みも情緒的でフランスの食文化が溶け込んでいる風情があり、自分の作りたいパンと、この街が合っていると感じています。店のインテリアは木と鉄と石を使って、グレーを基調として無機質なイメージを強調しました。ドアはアンティークを使用したり、店で使用している鉄の部品なども一部は古く見えるように加工したりして、あくまでも主役であるパンが引き立つための工夫をしています。実は凝っているのですが、シンプルな内装としました。パンの種類は少ないので売場は狭めです。 現在のアイテム数は約20種に広がりましたが、開店当初は14〜16種、生地数は12種でした。配合も工程も妥協はしたくないからアイテム数は少なめです。ヴィエノワズリーは同じ生地で3〜4点の展開です。またこの生地を使えば一層美味しい製品ができると考えるものには少しだけ派生展開してますが、基本的には「1アイテム1生地」です。またその生地専用のパン種を作っているものも多くあります。小麦粉は単品種のもの数十種を使用しています。同じ品種で挽き方が違うものもあります。小麦の品種により付与する香り、味、食感等が異なるので、数種を混ぜて、目指す生地を設計しています。 開業して8年経った今でも、お客様に「あんぱんはないの? クリームパンを作って」などと要望を出されることがありますが、自分のエゴを通したいので、そういったニーズに応えることはありません。また前述のように生地数は多く、アイテム数は「生地数+アルファ」です。生地数を少なくしてバラエティーを展開するのは、作業効率化の一方法ですが、これをやらない理由を端的に言えば、「商売の方を向いていない」からです。 立ち上げ当初から、パンの品質が良ければ、地域の人が定期的に買いに来てくれる、地域の人にこそ高評価を得られたら本物で、利益は後から付いてくると確信しています。食事パンがほとんどなので、出店場所選びは重要でしたね。そして立ち上げ当初から、店の経営は絶対に成功する自信がありました。根拠は「パンが美味しいから」です。 |


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