生産性向上と働き方改革 - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
特集/2025年10月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


生産性向上と働き方改革




限られた時間の中で利益と顧客満足度の両方を上げていく試み - ピーターパン石窯パン工房店
「ピーターパン」の大橋珠生社長
千葉県内で10店舗を展開するベーカリー「ピーターパン」の本店である「ピーターパン石窯パン工房店」
「炙り焼きとうもろこし」(税別250円)をバーナーで炙っている様子
ソフトフランスの生地に北海道産コーンをのせてバーナーで炙った「炙り焼きとうもろこし」(税別250円)
「じゃがチーズフランス」(税別250円)も「サポートファクトリー」で白焼きにした生地を使用
「明太フランス」(税別250円)も「サポートファクトリー」で白焼きにした生地を使用
 千葉県船橋市を拠点に10店舗を展開するベーカリー「ピーターパン」は、生産性向上と働き方改革に力を入れている。全店共通の製造拠点で効率的に生地を製造し、品質を維持しながら多彩な商品展開を実現。さらに、スタッフの残業希望を個別に把握し柔軟なシフト調整を行うなど、人手不足時代に対応した働きやすい環境づくりを推進し、従業員のモチベーションと顧客満足度の双方を高めている。

「炙りたて」で夏の客足を増やす

 千葉県船橋市の本店を中心に同県各地で10店舗を展開するベーカリーの「ピーターパン」は、この夏、新たに「炙りたて」に力を入れた商品を開発。同店は創業以来、「焼きたて」「作りたて」「揚げたて」の「3たて」のパンを店で出す事に力を入れてきたが、そこに「炙りたて」を売りにした「炙り焼きとうもろこし」(税別250円)が加わっだ。ソフトフランスの生地に北海道産コーンをのせてバーナーで炙った商品だ。
 「売り場に出す前に、コーンをのせた部分をスタッフがバーナーで炙る様子をお客様に見ていただき、そういった演出的な事も含めて楽しんでもらいたいという思いで開発した商品です。暑いなかでも来店してくださったお客様に楽しんでもらいたいという気持ちです」と同社の大橋珠生社長は話す。
 ベーカリーにとって閑散期と言われる夏だが、同社ではこの夏、昨年より全体の来客数と売上額を伸ばすことができた。売り上げは値上げにより増えるのは自然だが、客数を増やす事ができた点は、経験のない猛暑という悪条件があった中では、画期的な事だった。
 「ずっと課題だった夏の来客数アップですが、今年は色々と品揃えを工夫した点も良かったのかもしれません」(大橋社長)
 実は「炙り焼きとうもろこし」で使用するソフトフランス生地は、2015年から稼働を開始した全店共通の製造支援拠点「サポートファクトリー」で白焼きし冷凍したものを使用している。例年では「明太フランス」(税別250円)や「じゃがチーズフランス」(税別250円)などで使用する生地だが、今年はそれを「炙り焼きとうもろこし」にも使った。
 同じ生地でも、その時の店舗の状況に応じてフィリング・トッピングを変える事で臨機応変に必要な商品を出せるので、客足が鈍りやすい夏でもロスを気にせず商品のバリエーションを広げやすく、新しいコンセプトの商品も出しやすかったという。

各店舗の残業の実態を見える化

 「パン屋が一番時間を費やすのが生地の分割丸めです。これをサポートファクトリーで一括して行い、生地玉を冷凍して各店に送っています。また当社は厨房設備の狭いエキナカ店も何店かあるため、販売個数の多いメロンパンやコッペパンの生地玉を特に多く作ってそれらの店舗に運んでいます」(大橋社長)
 年々事業を拡大し続け、2025年3月期には10店舗全体で26億円の年商を記録した「ピーターパン」だが、こうした大規模な生産拠点の存在は、ただ単に作業の効率化や生産性向上、従業員の労働時間の削減に繋がるだけでなく、結果的に商品のバリエーションを広げ、品質や顧客満足度の向上につながる側面もあるという。
 「生産性の向上も必要ですが、店が提供する商品、接客、サービスといったものへの満足度も上げていかなくてはなりません。『働き方改革』についても単なる残業時間の削減で終わらない視点が必要だと思います」(大橋社長)
 年間で245万人ほどの来客があり、100人以上の社員と300人以上のパート・アルバイト従業員が集まって、各店舗で80〜100種類近いパンを製造する「ピーターパン」だが、ベーカリー業界全体が直面する人手不足の問題など将来的な事も見据えた上で、新卒の採用や社員教育にも力を入れてきた。
 労働時間に関しては、一年に一度全スタッフへアンケートをとり、毎月可能な残業時間の希望を、月60時間を上限に一人ひとり聞いた上で、その希望を超えないように10店舗全ての現況を確認した上で、各店で必要なスタッフ数を調整しあっているという。
 「ピーターパン」は郊外の住宅地にある路面店と駅の構内もしくは駅直結のビルの中にあるエキナカ店に分かれるが、繁忙期のピークや客層など店の性質が大きく異なる。路面店は土日を中心に混雑時があり、客層はファミリー層が中心だが、エキナカ店は朝の通勤ラッシュ時や夕方の帰宅ピーク時が繁忙期のピークで、客層は単身で来客する人が多いのが特徴だ。
 そのため双方で繁忙期がかち合わないことを生かして、忙しい店舗に他店からヘルプのスタッフを回すなどしている。
 「各店で働くスタッフの合計残業時間は常に表で『見える化』していて、それをもとにどこの店の人手が足りないのか認識できるようにしています。スタッフ同士でLINEグループを作ってお互いにシフトの調整もし合えるようにもしています」(大橋社長)
 最初の予測段階でのシフトの決定は店長などのマネジメント業務を行う者が行うが、当日の店の混雑や繁忙ぶりは天候に左右される事も多いので難しい。そのため最終的なシフトの調整はスタッフ同士で判断して行う事が多いという。
 「実は繁忙時以上に判断が難しいのは、ピーク時を過ぎた後や閑散期のシフト調整です。無駄に労働時間を増やすと店舗の運営にも関わってきますので、状況に合わせてスタッフ一人ひとりの労働時間をどれくらい減らしていくのか、という事も重要な課題なのです」(大橋社長)



生産性向上と働き方改革で挑む持続的なベーカリー経営の未来
「ピーターパン石窯パン工房店」の店内の様子
厨房でスタッフが作業する様子。常に作業時間の短縮を意識している
DYFプログラムで各自が1枚の紙に自分の成功イメージを描く
看板商品の「コクうまカレーパン」(税別200円)
ロイヤルユーザーや固定ファンからの人気が根強い「海神あんぱん」(税別180円)
新商品の「ジャーマンポテトウインナー」(税別320円)。試食も行っている
限られた時間で品質を向上させる

 働き方改革を推進していく上で労働時間の管理以上に大変な事は、時間あたりの利益の管理という。
 スタッフの労働時間は抑えながら、その中でいかに利益や顧客満足度を高めていくのか、ということはマネジメントしていく上で常に考えなくてはならない問題だ。
 「単位時間当たりの利益も労働時間と同じようになるべく『見える化』しています。最近は原材料の高騰により利益が圧迫されるなか値上げもしていますが、最終的な価格は原価のほか、商品のサイズなども考慮して決めています」(大橋社長)
 値上げや新商品の価格決定の際は、原価や大きさのほか、看板商品で販売個数が多い商品か、個数は多くないが定番でロイヤルユーザーが多い商品かといった点も考え、総合的に判断した上で価格を決めている。
 また商品数も、生産性と品質の維持・向上の両方を考えた上で、80〜100品目くらいに抑えている。季節の変わり目に商品を入れ替える際にも全体を見て品揃えに偏りが出ないようにし、季節商品はなるべく頻繁に入れ替えるようにしている。
 また、顧客満足度も考えた上で働き方改革を進めていく際に大切なのは、従業員のモチベーションを日頃から維持していく事だという。

モチベーションのアップが最上の策

 他のベーカリーに比べると、「ピーターパン」は入社後に様々な研修や勉強会を経験する機会が多いという。
 「研修や勉強会は、世の中の変化に対応しながら、ベーカリーとして求められるものを実現させるために必要です。勉強会や研修会には、技術力を高めるものと人間力を高めるものの双方をバランス良く取り入れています」(大橋社長)
 新入社員の研修には、目標を立て自分の未来を具体的にイメージしていくことで実現に近づけるDYF(ディスカバー・ユア・フューチャー)プログラムなども含まれる。目標を立て日々進捗を振り返りながら成長していくことを大切にしているという。
 「人の役に立つ事で得られる嬉しさや充実感をモチベーションの軸として掘り起こせるようにしています。一人一人のライフプランの中で自分たちの仕事とどのように向き合い、一生懸命働く事でどのような充実感が得られるのかと言ったことをイメージしてほしいと考えています」(大橋社長)
 働き方改革の推進により確かに昔に比べると残業時間は減った。背景には、機械化や社員一人一人の技術力向上がある。しかし、最も必要な事は意識の変化だ。
 実は新入社員は入社後、ストップウォッチが大橋社長からプレゼントされる。
 「一つの作業の過程を撮影したモデル動画を見てもらいながら、出来る限り作業時間を短くする方法を考えていきます。それぞれの作業を終えるまでのモデル時間が決まっており、品質を落とさずその作業を終えることができるよう徹底的に訓練していくのです」(大橋社長)
 キャリアを伸ばしながら、自分や家族との時間も大切にしていくためにもこうした訓練の積み重ねは必要だという。
 「目標をもって仕事に取り組んで、一つ一つ達成していく事で、それが結果的に人の役に立つという過程で、楽しさを感じてもらえるよう応援し続けたいですね」(大橋社長)

SHOP DATA
店名:ピーターパン石窯パン工房店
住所:〒273-0021千葉県船橋市海神3-24-14
電話:047-410-1021
営業時間:午前7時〜午後6時
定休日:木曜(祝日以外の月曜も当面の間は臨時休業)
品揃え:約80〜100品目
スタッフ:平日は製造常時12人、販売常時5人、土日祝は製造常時20人、販売常時8人
店舗面積:厨房46坪、売場20坪、テラス約25席
日商:平日80万円、土日祝160万円



ピーターパンに学ぶ「生産性向上と働き方改革」
焼きそばパン対決で「ソース焼きそばコッペ」(税別180円)と夏限定の「塩焼きそばコッペ」(税別180円)が販売されていた
 千葉県船橋市を拠点に10店舗を展開するベーカリー「ピーターパン」は、人手不足や原材料高騰といった業界全体の課題に直面しながらも、生産性向上と働き方改革の両立に挑んでいる。同社の取り組みの中から、特に注目すべき点をまとめてみた。

❶生産拠点と冷凍設備の活用による効率化

 「サポートファクトリー」と呼ばれる製造支援拠点を整備し、冷凍生地を全店舗に供給する体制を確立している。定番生地を一括生産して冷凍保存することで、各店は仕上げや焼成に集中でき、労働時間削減と品質安定を両立している。
 同じ生地を基にトッピングやフィリングを変える工夫により、在庫リスクを抑えながら新商品の開発や品揃えの拡充も可能になっている。
 この仕組みにより、生産効率の向上に加え、顧客に多様性と新鮮さを提供することができ、満足度向上にも結びついている。

❷柔軟なシフト調整と「見える化」

 路面店とエキナカ店の店舗特性の違いを踏まえ、繁忙期が重ならない利点を活かしてスタッフを融通し合う仕組みを整えている。
 残業希望時間をスタッフ全員から聞き取り、全店舗の勤務状況を「見える化」することで、公平かつ効率的なシフト管理を実現している。さらにスタッフ間でLINEグループを活用し、天候や混雑状況の変化に応じて即時調整できる体制を築いている。
 無駄な残業を防ぎながらも必要な場面で即応できる点は、スタッフの働きやすさと顧客へのサービス水準の向上の両立を可能にし、モチベーション維持や離職防止にもつながっている。

❸利益と満足度を両立させる商品戦略

 原材料費の高騰下でも単純な値上げには頼らず、「時間あたりの利益」の管理を重視している。
 価格は原価やサイズだけでなく、販売個数やロイヤルユーザーの存在など多角的な要素を加味して決定している。商品数は80〜100種類に絞り込み、季節商品を頻繁に入れ替えることで新鮮さを維持。過剰な品揃えによる作業負担を避けつつ、生産性向上と品質向上を両立させる仕組みだ。
 こうした戦略によって従業員の業務効率が高まり、売上確保と顧客満足度向上を同時に実現する経営基盤が形成されている。

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら