地元客の食事シーンに欠かせないパンを作り続ける - ブーランジュリーパリゴ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2025年10月号

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地元客の食事シーンに欠かせないパンを作り続ける - ブーランジュリーパリゴ
オーナーブーランジェの安倍竜三さん
ブーランジュリーパリゴの外観、店は大通りに面したところにあり、ガラス張りで明るい
人気の「バゲット・ド・トラディション」(左、税込378円)と「バタール」(右、同)
「バゲット・ゾリーブ」(左、税込399円)と「クルミのフルート」(右、税込334円)
表面はバリッと香ばしく、内層にはバターの香りがたっぷりの「クロワッサン」(税込334円)
「天白食パン」(税込432円)。国産小麦と酒種、米油を使った日本らしい食パン
1日180本以上売れるバゲットの秘密

 JR天王寺駅から徒歩約15分、大阪・堺筋本町に店を構える「ブーランジュリーパリゴ」は、まるでフランス・パリの街角にあるブーランジュリーを彷彿させる、洗練された空間と本格的な味わいが魅力のベーカリーだ。2005年のオープン以来、その味と品質の高さで、界隈の住人だけでなく、全国のファンに支持されている。
 オーナーシェフの安倍竜三さんは、15歳でパン職人の道へ進み、「ムッシュf製パン技術訓練塾」「ビゴの店」などで研鑽を重ね、21歳で渡仏。ルーアンの国立製菓製パン学校INBPで、フランスの国家資格であるCAP(職業能力証明書)とBEP(職業学術修了証)を取得。フランス製パン製菓連盟が主催する「クロワッサンコンクール」での入賞も果たした。
 帰国後も、世界28の国・地域の代表が技術力を競い合う世界レベルの国際製パンコンクール「モンディアル・デュ・パン」の日本代表やコーチとして活躍し、2019年には日本チームを初めて総合優勝に導いた実力派だ。現在は、同コンクール主催団体の日本支部である「レ・アンバサドゥール・デュ・パン・デュ・ジャポン」の会長として若手を応援するとともに、自身のブラッシュアップも怠らない日々を過ごしながら店を切り盛りしている。
 フランスの伝統的な技法をしっかりと踏襲しながらも、日本人の味覚に合った独自のアレンジを加えることで、本場のフランスパンを知る人にも、フランスパンに馴染みのない人にも愛される「フランスパン」を作り続ける安倍シェフ。
 「日本人がお米を食べるように、フランス人はフランスパンを食べているんですよね。ですので、日本で毎日食べていただけるパンを考えて作っています」と語る安倍シェフの作るパンは、創業当時から80〜100種のラインナップ。選ぶ楽しみもうれしい品揃えだが、聞くと売り上げの大半がベーシックな食事パンだというから驚きだ。
 「バゲット・ド・トラディション、バタール、リュスティックといったハード系は、平日で180本、土・日曜で300本は売れますね」と安倍シェフ。個人店とは思えない、バゲット類の製造数だ。
 「創業当初はそこまで売れていなかったんですよ。1日25本くらいでした。『毎日食べても飽きないパンを』『何に合わせてもおいしいと思っていただける味を』と考え、熟成のさせ方、酵母の分量などについて試行錯誤を繰り返しました。また、ご近所に『ワッシーズ』という豊富な品揃えで人気のワインショップがあって、エリア的にワインを嗜む方がうちのバゲットも買ってくださっているようです」(安倍シェフ)
 そんな「パリゴ」のパンの特徴は、何といっても素材のこだわりと焼きの技術にある。使用する小麦粉はフランス産、国産など数種類で、商品ごとに最も適した配合を考案。パン酵母、自家培養酵母種などの3種の酵母を使い分け、小麦の風味や味わいを引き出している。そのほかバターや塩も、フランス産発酵バターといった厳選素材を使用。届いた小麦粉のロットや季節によってもレシピを微調整するというこだわりも。
 そして、安倍シェフのもっともこだわるのが、焼成だ。例えばバゲットは顧客が購入したその日の内に食べ切らないかもしれないと考え、翌日リベイクすることも考慮に入れた焼き方をするという。いつ食べてもらってもおいしくなるようにという工夫が顧客の心を掴んでいるのだ。

日常に寄り添う極上の食事パン

 「クルミのフルート」「バゲット・ゾリーブ」など、バリエーションも豊富なバゲットだが、圧倒的な人気は店の看板商品の一つである「バゲット・ド・トラディション」だ。伝統的なフランスパンの味と香りを追求したフランスパン用粉リスドオルをベースにフランスの国立原産地品質研究所(INAO)が認定するラベル・ルージュ規格の高級小麦粉と、表皮の一部および胚乳、胚芽を含んだビオの小麦粉「ファリーヌ・ド・ムールT‐110」を配合した生地を、長時間熟成・発酵させて作る。
 「酵母の量と熟成のさせ方で、小麦粉の糖分(澱粉)をなるべく残した生地を焼成すると、赤褐色の焼き色に仕上がります」と安倍シェフはいう。頬張ると、口溶けが良く、小麦の甘みが際立つ味わいだ。
 もう一つの看板商品「天白食パン(登録商標)」は、国産小麦と酒種、米油を使った日本らしい食パン。タマゴ、バター不使用で、小麦本来の甘味を楽しめる。レーズン入りのバリエーションもあり、こちらも人気だ。
 また、かつて「クロワッサンコンクール」で受賞した「クロワッサン」も根強い人気。フランス・イズニー社のA.O.P認定発酵バターを使用し、3つ折り1回、4つ折り1回と折り数を少なめにしている。層が12層と少ないため、表面はバリッと香ばしく、内層にはバターの香りがたっぷりと詰まっている。こちらも、平日120個、土日は180個製造する主力商品だ。



店内の様子。通路を広く取り、ゆったりとした空間になっている
「ブーランジュリーパリゴ」の文字が掲げられたガラス窓越しにパンが並ぶ様子が見えるようになっている
冷蔵ショーケースに並ぶ「ニダベイユ」(右、税込356円)と「ブリオッシュ・ア・ラ・クレーム」(左、税込390円)
「カスクルートの詰め合わせ」(税込1166円)。ランチにおすすめの4種セット
惣菜パンや菓子パンも充実

 売り上げの半数を占めるバゲット、食パンといった食事パンと合わせて購入されているのが、サンドイッチや惣菜パン、パン・オ・ショコラやクリームパンなどの菓子パン、カヌレのようなフランス菓子などだ。
 「最近の売れ筋は」と尋ねたところ、意外にも「冷蔵商品が売れています」とのこと。かつてのマリトッツォブーム以降も変わらず人気の「ブリオッシュ・ア・ラ・クレーム」やクリーム・ムースリーヌをサンドしたブリオッシュの「ニダベイユ」など、デザート感覚で食べたい「ひんやりスイーツ系のパン」が売れているという。

閉店間際までパンを焼くお客様ファースト

 「ブーランジュリーパリゴ」では午後8時の閉店間際でも焼きたてのパンを並べる。取材時も、商品が売り切れると追加で焼き、棚に並べるパンが多く見受けられた。お客様ファーストの営業スタイルを貫きつつ、食品ロスの削減に努めるなど、SDGsへの取り組みも積極的だ。
 パン好きなら一度は訪れておきたい名店と評判の「ブーランジュリーパリゴ」は、今年9月2日に20周年を迎えた。21年目に突入し、変わらずパンと真摯に向き合いつつ、さらなる高みを目指す安倍シェフ。
 「これからも変わらず毎日が挑戦です。パンは生きものですから、昨日と同じことをしても、同じものはできません。それがまた面白いところでもあります」と語る安倍シェフの目には、20年経った今もなお、探求者としての情熱が宿っている。

SHOP DATA
店名:ブーランジュリーパリゴ
住所:〒543-0001 大阪府大阪市天王寺区上本町9丁目3−4
電話:06-6744-5087
営業時間:午前7時30分〜午後8時
定休日:月曜、火曜
品揃え:パン約100品目、菓子約35品目
スタッフ:製造常時6〜8人、販売常時2〜4人
店舗面積:売り場約12坪、厨房約21坪
月商:平均2100万円



この記事の読みどころ

●毎日食べても飽きない味を目指し、基本の食事パンを磨き上げる。
●小麦粉や酵母を商品ごとに最適化し、焼成方法にも細心の工夫を凝らして、最善のパンを作る。
●閉店間際にも焼きたてを提供し、顧客本位の姿勢を貫く。
●昨日と同じことをしても、同じものはできない。



原価計算女王
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