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| 特集/2025年9月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パンの品揃え戦略
創業70年以上の東京・三鷹市「トーホーベーカリー」は、看板商品を軸に時代や客層の変化に合わせて品揃えを調整してきた。近年は働き方改革の必要性や原料高騰を背景に、品揃えの数を絞りつつ、季節商品や新商品を頻繁に投入することで、売り場の活気を維持。自家製フィリングを使用し、スタッフ全員が参加して商品の改良を行うことなどで繁盛を維持している。
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同店は1951年創業、松井さんの祖父の代から3世代にわたって続いてきたベーカリーで、今から約30年前に現在のオーナーで店長の松井さんが店を継いで以降は、商品数を大きく増やしていったという。 「先代から引き継いだ商品は、自分なりの想いを加えて改良してきました。また、継ぐ前の修行先で習得したレシピを活かし、ハード系のパンなど新しい商品も増やしていきました。さらに、お客様に喜んでいただける商品を追求する中で、独自に開発した商品も次々と加わり、結果として品揃えはどんどん充実していきました。業界の勉強会にも積極的に参加し、売り場での実践を通じて豊富な品揃えを魅力として発信する力も身につけていきました」(松井さん) 店を継いだ頃は65品目位の品揃えだったが、数年かけて30点近く増やし、全体の3分の1位を新しい商品にしていったという。 また2004年には店の隣にあった建物へ移転することで敷地面積を広げてリニューアル。 それを機に、カレーパンやクリームパンのフィリングを自家製に切り替えた。カレーパンは大きめの牛肉と牛筋を入れて炒めて作ったものを使うようになり、クリームパンは卵の卵黄部分と脂肪分の高い牛乳をあわせて銅鍋で炊いて作り上げたフィリングを、口溶けの良いしっとりした生地で包んだ。 「看板商品のクリームパンやカレーパンに自家製フィリングを取り入れたことをきっかけに、大きな変化があったと感じています。さらに、売り場を通じて自家製であることを積極的にアピールした結果、売り上げを伸ばすことができました」(松井さん) 店の売上は2004年のリニューアルから10年で4倍にまで拡大したという。 一方、看板商品を強化しながらも、トレンドを捉えた新商品を出していく事も忘れなかった。 愛媛のベーカリーが産んだ商品に感銘を受けて開発した「GOLD塩バターロール」は2013年の11月に新商品として発売。外側のカリカリ感と塩バターとの絶妙なバランスが特徴のこの商品はたちまち人気商品となり、「ふんわりとろけるクリームパン」を抜く売り上げ1位の商品となった。 一方、原料価格の高騰により値上げを迫られる状況の中で、同店が進めたのは、1品ごとの見直しによって価格を上げつつも商品力を高める取り組みだった。具体的には、店全体で毎月「今月の強化商品」を1つ選び、製法や販促方法を従業員全員で見直すことで、商品の魅力向上に努めた。 常時販売する商品の数を減らした背景には、働き方改革を実現するためのスタッフの労働時間短縮や、原料価格の高騰による製造コスト上昇など、時代の流れによる要因が大きく影響している。特に、コロナ禍で従業員の稼働時間が減少したことを機に、売上や利益率を考慮しながら、類似商品や定番商品の派生商品などは効率化の観点から削減していった。 「それぞれの商品に需要があるので苦渋の選択でしたが、代わりに季節商品の導入に力を入れて、毎回のフェアで3〜6製品は新商品と入れ替えるようにして、売り場の活気を維持するように努めました。売り場のレイアウトやポップにも工夫を凝らし、商品を選ぶ楽しさをなくさないように努めました」(松井さん) リニューアル後は品揃えを増やしたい 同店は8月9日の営業日を最後に大規模なリニューアル工事に入った。最近新たに同店の所有地となった隣の土地も活用して以前より大きく、厨房や売り場も広めにとった店舗に作り直す。 「厨房が広くなることで、ブラストチラーなどの大型機械を導入でき、各種設備も充実させることができます。これにより、生地の冷凍保存が可能になり、従来より多くの量を仕込みつつ、オーバーナイト法などによって旨味を引き出したパンを作れるようになります。人材を育成し、労働環境を改善するという目標はある程度達成できたので、今後は新しい環境で商品数を増やし、品揃えも大きく変えていくかもしれません。看板商品は質、量ともさらに強化していきます。また今後は定番化を狙った新商品もトレンドを鑑みながら増やしていきたいですね。店のレイアウトや動線が変わるとお客様の滞在時間も変わり客単価も変わるので、品揃えを増やす必要は出てくるでしょうね」(松井さん) 「焼きたて」を全面に出した商品戦略もコロナ禍以降は控え気味だったが、リニューアル後は天板に焼き上がったばかりの商品が並んでいる様子を見えるようにしておくなどしてシズル感を出すことで、売り場の活気をさらに出していきたいという。 また今後はオーバーナイト発酵により、朝から「明太フランス」などのハード系のパンを出しやすくなる点にも期待している。 SHOP DATA 店名:トーホーベーカリー 住所:〒181-0013東京都三鷹市下連雀1-9-19 電話:0422-43-6311 営業時間:午前8時〜午後6時(平日)、午前7時〜午後6時(土曜) 定休日:日曜、祝日、第3月曜 品揃え:約85品目 スタッフ:製造常時10人、販売常時6人 店舗面積:厨房25坪、売り場14坪 日商:平日95万円、土曜155万円 | |||||||||||||||||||

| トーホーベーカリーに学ぶ品揃え戦略3つの知恵 | |
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東京・三鷹市で70年以上続くトーホーベーカリーは、地域の支持を得ながら繁盛を続けてきた。その経営の中核にあるのが、時代の変化や店舗環境に応じて柔軟に進化してきた「品揃え戦略」だ。取材から見えてくる教訓は、他のベーカリー経営にも十分応用できる。
❶看板商品を軸にしながら全体の品揃えを充実させる トーホーベーカリーは「GOLD塩バターロール」「自家製サクサクカレーパン」など、売上上位5製品が長年の柱になっている。しかし同時に、食パン、惣菜パン、菓子パン、焼き菓子といった各カテゴリーにも固定ファンを持つ商品を揃え、幅広いニーズに応えてきた。 これは、「売れる商品だけに頼らず、すべてのカテゴリーの商品を充実させることが来店動機を多様化させる」という考え方だ。来店理由が少数の商品に集中しすぎると、その商品のブームが過ぎた際に客数減のリスクが高まる。カテゴリーごとのバランスを意識し、各ジャンルに「行く理由となる商品」を置くことが、安定した経営につながるのだ。 ❷商品数は「削る勇気」と「増やす戦略」を使い分けて決める コロナ禍前は常時100品目前後を揃えていたが、近年は85品目程度に絞った。背景には、働き方改革による労働時間短縮の必要性、原料高によるコスト上昇の負担などがあります。類似商品や派生商品を省き、季節商品との入れ替えで売場の活気を保つ方針をとっている。 重要なのは、「減らす=縮小」ではないこと。むしろ、季節商品や新商品で常に変化を与え、固定客に飽きを感じさせない構造を作っている。人員や製造力に合わせた適正な商品数を設定し、効率化と売場の活性化を両立させ、売上を維持して伸ばしていくことが、持続的成長の鍵だ。 ❸商品力向上のための施策作りは「全員参加型」で行う 値上げを迫られる中でも、トーホーベーカリーは単なる価格転嫁で終わらせず、商品の魅力を高める努力を欠かさない。毎月「今月の強化商品」を設定し、製法・販促方法の見直しを全従業員で行う仕組みを導入している。 この方法は、スタッフが商品に対して主体性を持ちやすくし、提案や改善が日常的に出やすい状況を作る。また、チーム全体で販売意識が統一されることで、売場での訴求力も向上する。 値上げの際には、コスト増を伴わない付加価値を高める施策を行うことで、顧客と店の両方に優しい結果をもたらしている。 |

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