面白さを見出す力が個性あるパンを生み出す - 個性パン創造アルル - ブランスリー電子版

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お店拝見/2025年8月号

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面白さを見出す力が個性あるパンを生み出す - 個性パン創造アルル
二代目として店を切り盛りする林太郎さん
JR巣鴨駅から徒歩6分ほどの場所にある「個性パン創造アルル」。看板の中央に目立つように「余情残心」と書いた
店内入って右側の棚にはハード系のパンと焼き菓子が並ぶ
ロングセラーの「玄米パン」(左、税込520円)(サークルカットは、「玄米パン」の断面)
自家培養酵母使用の生地にカレンツとクルミをたっぷり入れた「メランジェ」(税込840円) (サークルカットは、「メランジェ」の断面)
ややグレーの色味がある小麦粉を使用した「銀色食パン」(左、税込380円)
看板でパン作りへの思いをアピール

 東京・豊島区のベーカリー「個性パン創造アルル」は創業57年。現在二代目として店を切り盛りする林太郎さんは、父で創業者の春二さんから店を受け継いで約16年が経つ。8年前に店内を改装、その後看板を一新。看板の中心に大きく「余情残心」と書いた。パン作りへの思いをアピールするため店名よりも目立たせた。
 「茶道で茶事後も相手のことを考えるという意味があります。また『残心』は、心に残るとか、最後まで油断せず手を抜かないといった意味があり、修業時代記憶に刻まれて以来、大切にしてきた言葉です。これからもお客様のことを考え、手を抜かずパン作りをしていくことを、看板で改めて表明したいと思いました」(太郎さん)
 「余情残心」は以前からも、店名の「個性」「創造」と同様に、春二さんの代から商品に体現されている。おいしさだけでなく客の健康にも配慮して作られているのだ。
 例えば「玄米パン」(税込520円)や「かぼちゃパン」(税込280円)、「おまめぱん」(税込240円)など、長年の定番人気商品。「玄米パン」は栄養豊富な玄米の粉末を使用。「かぼちゃパン」はビタミンたっぷりのかぼちゃのペーストを練り込んでいる。「おまめパン」はメロンパンのような構造のパンで、牛乳の代わりに豆乳を使っている。
 「味より何より健康が一番という考えの父には、同意できないこともありました。でも通常使わないような食材を使うところなどは共通していますね。そして結果的にお客様の健康に配慮した、かつ個性的な商品に帰結していくんです」(太郎さん)
 パン生地の主な材料も、小麦や塩などは国産、油脂はトランス脂肪酸フリーのもの、砂糖は国産で含蜜糖などと、身体にいいとされるものを厳選しているのは昔から変わっていない。
 「材料選びの基準は父のときから変わっていませんが、粉の銘柄などは必要に応じて変えています。数年前の小麦粉価格高騰の際、その対応策として新たに導入した小麦粉があります。その粉の特徴は安価であることと、やや灰色がかっていること。これは外皮に近い部分を製粉しているためなんですが、当店にとってはメリットしかないんです。安いし、外皮に近いからこそミネラル豊富で栄養価が高いし、色味だって見た目の特徴になります」(太郎さん)
 この粉の特徴を活かして開発したのが、現在食パンの定番となっている「銀色食パン」(税込380円)だ。真っ白ではない色味は銀色と表現した。
 「一般的にいいものとされている精製された白い小麦粉や砂糖より、未精製のものの方が特徴があり、個性のある商品を作ることができると思っています。扱いにくさは多少ありますが、だからこそ面白いと思えるし、当店ならではのパンができるんですよね」(太郎さん)

グルテンフリーと高加水のパンを限定販売

 同店は毎月、パンの販売予定表をSNSで発信したり、店内に掲示するなどしている。販売予定のパンは、大まかに曜日ごとに異なり、毎月一度しか登場しないものもある。
 「曜日によって客数に差があり、多い土曜は他の曜日より2〜3種類限定パンを増やします。製造量よりも種類を増やす方が、お客様に喜んでもらえるからです。今日のパンは何だろうと、楽しみやわくわく感を感じてもらえたらと思っています。また、毎日作り切ることができないほど、お客様に食べていただきたいパンが本来もっとあります。ですので曜日ごとに振り分けることで、できるだけ多くの種類の商品を販売できるようにする目的もあります」(太郎さん)
 土曜は5種類、それ以外は3〜4種類の限定パンがある。曜日ごとに大まかに決まっており、例えば金曜は「米粉100%ブレッド」、小麦粉と水、塩だけで作る「古代パン」(税込460円)、自家培養酵母使用の生地にカレンツとクルミをたっぷり入れた「メランジェ」(税込840円)。
 「米粉100%ブレッド」は毎週土曜に豆乳使用のプレーンを販売、プレーンのほかに抹茶、とうもろこし、ビターココア、トマト、あおさ醤油と5種類展開しており、金曜はこれらの中から1種類を週替わりで販売する。
 「『米粉100%ブレッド』は昨年秋から始めたのですが、早くに予約を受けるようになりました。土曜だけだったのを金曜も販売するようにして、今も徐々にリピーターが増えています。グルテンフリーの需要の高さを感じますね」(太郎さん)



グルテンフリーの食パン「米粉100%トマト」(税込490円)
菓子系や総菜系のパンがガラスの引き戸のついた棚に並び、その上に食パンが並ぶ。
米粉100%の食パンの紹介ポスターが店内に掲示されている
水分たっぷり、アイデアぎっしり

 週に4日ペースで、10種類以上のバリエーションの中から日替わりで1〜2種類を提供しているのは、リュスティックなどの高加水の生地で作るパン。
 リュスティックは「なすのトマトとろとろ煮」(税込380円)や「醤油とあおさ」(税込380円)など約5種類。
 直径21センチほどの丸型に焼いた高加水パンは、フランボワーズピューレを練り込んだ生地に、みかんやマンゴーなどの5種類のドライフルーツ、チョコチップ、くるみを入れた「フランボワーズ5種のフルーツ」(6分の1サイズ税込380円)やココナッツやプルーン、カシューナッツ、マンゴーなどを入れた「ココナツとプルーン カシューナッツとマンゴー」(6分の1サイズ税込380円)など約5種類。
 「高加水の生地作りは、3年ほど前から始めました。最初のきっかけは、ベーカリーや消費者のSNSの投稿を見るようになったことですね。今こんな風になってるんだって驚きもあって、ベーカリー巡りをしばらくぶりに再開しました。そんな中で高加水のパンにはまって、作ってみたらグルテンを形成していく従来のパンとは全く違うので面白いと思ったし、『玄米パン』の生地と扱い方に似ていることにも気付きました。手数が少ないので、全体の作業工程にほぼ影響なく、商品化できましたね」(太郎さん)
 高加水のパンは、みずみずしい食感と独自性の強い食材を組み合わせた商品展開が特に好評だ。
 同店のパンは、珍しい食材を使ったものが多いのも人気の理由で、最近ナタデココをチーズレモンクリームに入れた「ナタデココとチーズレモン」(税込280円)を販売。
 約8年前に発売したのは、当時まだ認知度の低かったデーツを練り込んだ砂糖不使用の「デーツブレッド」(税込480円)で、現在も固定客がおり週に2日販売している。
 「お客様の一歩、二歩先で、大道ではなく少しななめ横にそれるような感覚の商品開発を意識しています。そして自分の中で、面白いと思えるかどうかという基準も大事にしています」(太郎さん)

SHOP DATA
店名:個性パン創造アルル
住所:〒124-0013東京都豊島区巣鴨1-21-11
電話:03‐3694−3337
営業時間:午前9時〜午後8時
定休日:第4月曜、第2水曜、木曜
品揃え:約70品目
スタッフ:製造常時1〜3人、販売常時1〜2人
店舗面積:売り場約6坪、厨房約8坪
日商:平日約9万円、土日祝約12万円



この記事の読みどころ

●「余情残心」の精神で食べる人のことを思い手を抜かずパンを作る。
●玄米パンやかぼちゃパンなど、健康と個性を両立させた商品を開発。
●銀色食パンは素朴な素材の特徴を活かして商品を差別化。
●王道を外した独自路線で商品開発を楽しむ。



原価計算女王
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