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| 連載/2024年10月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パン職人の価値観の多様化が「小さいパン屋志向」を生み出した - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(88) | |
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今月号の特集は、「小さいパン屋」のテーマで取材しました。「むぎのぱん」と「panya no.. takesan!」の二軒のベーカリーを取材しましたが、いずれも夫婦二人で切り盛りする店で、規模が小さいことのメリットを十分に活かして様々な施策を実施していました。
「小さいパン屋」であることのメリットとして、まずは、顧客との個別対応がしやすいことが挙げられるのではないかと思います。 「panya no.. takesan!」は、オーナーシェフの竹内翼さんと、妻の亜紀さんの二人で店を運営していますが、接客の中心は販売を担当する亜紀さんです。売り場の後ろから奥に続く厨房では、早朝から製造作業を行う竹内さんも常に来店客の様子を見ることができます。竹内さんは、「小さな規模の店にしたのは、作ったものがどんな風に売れていくのかを見届けて、その際のお客様の反応を見たかったからです。修業時代は大手勤務だったので、厨房に篭りがちで、お客様の顔が見えないのが寂しかったんです」と話していました。 こうして顧客一人一人と丁寧に向き合うことで、個々の顧客にきめ細かな対応ができるようになるのでしょう。 店の独自性を打ち出しやすいことも、小規模店舗であることのメリットだと思います。 「むぎのぱん」のオーナーシェフ、津田薫さんにとって、店舗運営の作業の中で一番楽しいのは、アイデアを出して新しい商品を作ることだそうです。自分が考えて作った商品が、売れるかどうか予測ができないところが逆に面白いといいます。 「売れると思っても売れないこともあるし、売れないと思ったものが売れることもあります。それが面白いんです」と津田さんはいい、「『綺麗な宝石みたいなフルーツをのせたデニッシュだね』などとは言ってもらえるのですが、地域柄、高齢の方が多いので、デニッシュはあまり売れないんです」と妻の有加さんは話します。 小規模の店では、毎日の作業の中からアイデアが生まれ、毎日の作業をしながら、新商品開発の会議がいつのまにか進行していることも多いことでしょう。こうしたことが、店の独自性を打ち出すことを後押しするに違いありません。 若いパン職人が独立開業する際に、小さなパン屋を選ぶケースが多いことの最も大きな理由は、投資額が少なくて済むことではないでしょうか。パン屋の場合、他の業種の飲食店に比べると、投資額がかなり多くなるのが一般的で、これが、若いパン職人が独立するにあたっての最も高いハードルになっています。 最初から大きなリスクはとらずに、無理のない範囲の投資に抑えたいという思いが強いようです。小さな規模で始めて、うまくいったら、徐々に規模を大きくしていくという道筋を描いている人も少なくありませんが、もともと店を大きくしようという考えはなく、好きなパン作りが出来て、お客さんと適度に交わりながら、夫婦二人で楽しく仕事ができて、それなりの収入があれば十分満足だという人たちもかなり多いように思われます。 「むぎのぱん」の津田さんと有加さんは「小規模とはいえ二人だけでパン屋をするのは思ったより大変で労働時間も長かったですが、それでも人を雇うつもりはありません。もともと自分達二人だけで協力してできることをやりたいという気持ちで始めましたから。多分、二人でいることが好きだから、仕事は大変でも苦じゃないのかなと思います」と口を揃えます。 パン職人が独立する際の「小さいパン屋志向」は、すでに10年以上は続く大きなトレンドです。この間の日本経済は、リーマンショックやコロナ禍などの外的要因で停滞が続きました。アベノミクスにより一時的な回復は見られましたが、デフレや少子高齢化といった構造的問題が経済成長を妨げています。そうした中で、パン職人たちの価値観が多様化し、画一的な成功モデルには固執せず、様々な選択肢を受け入れるようになったと言えるのかも知れません。(RO) |




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