幾度もの変化を遂げながら長い間人気を維持する - トツゼン ベーカーズ キッチン - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2023年11月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


幾度もの変化を遂げながら長い間人気を維持する - トツゼン ベーカーズ キッチン
シェフを務める内山芳雄さん
黄色いのぼりが目立つ「トツゼンベーカーズキッチン」の外観
床と壁は黒と白が基調ですっきりとした印象の店内。トレーの木目がぬくもりを与える
「幸せのバナナぱん」(税込780円)
「幸せのバナナぱん」は、猿のイラストが描かれた黄色い袋に入れて販売(左上)
開業から4年後店内をガラッと変えた

 神奈川県横浜市、東急東横線の大倉山駅からすぐ、入り口わきの「幸せのバナナぱん」と書かれた黄色いのぼりが目立つ「トツゼンベーカーズ」。今年5月、開業18年目を迎えた。「幸せのバナナぱん」(税込780円)は同店の看板商品だ。
 開業からシェフを務める内山芳雄さんは「突然誕生したパン屋が、いずれはこの地域にとって必然的な存在になっていけたらという開業当初の目標が達成されつつあるかなと、思えるようになってきました」と語る。
 厳しい暑さが連日続いた今夏、取材した平日の昼も30度を超える暑さだった。しかし外で入店を待つ客の列は絶えず、同店の人気ぶりを表していた。
 開業時の同店は、高級ホテルや高級ブランドのブティックのような空間に、使用するミネラルウォーターを使い分けるなどこだわり尽くしたパンを並べ、スーツや黒シャツに身を包んだ販売員が出迎えるという形式で、町のベーカリーとしては異彩を放っていた。
 「ピシッとした空気感の中、お客様も割と身だしなみを気にして買いに来られていて『部屋着で買いに来れない』という声をもらうこともありました。目指していたのはこれではないと、4年後位に、ちゃぶ台をひっくり返す覚悟で店内の雰囲気や商品を変えました」(内山さん)
 開業から4年後、対面販売をやめてセルフサービスにし、店内は遊び心のある雑貨を飾ったりして、気軽さや楽しさを感じてもらえるようにした。商品は、赤ちゃんからお年寄りまで食べてもらえるように幅を広げた。さらに総菜パンや子ども向けの小さなパンなどを新たに開発した。「幸せのバナナぱん」も、それ以降に誕生した商品だ。
 最も大きく変えたのはそのときだが、それ以後も4〜5年の周期で、決めたテーマに沿って店内の雰囲気を変えてきた。
 そして現在は、黒と白が基調の壁や床にトレーなどの小物で木目感を加え、スタイリッシュな中にぬくもり感を持たせた空間になっている。さらに、子ども向けの「パンダメロン」(税込110円)や「チョコアラ」(税込125円)、猿のイラストが描かれた黄色い袋に入った「幸せのバナナぱん」などの商品が入口すぐの場所に並び、楽しげな雰囲気で客を出迎える。



食べやすさにまでこだわった一番人気の「明太フランス」(税込400円)
売り場に陳列された「明太フランス」
開業時からの定番商品「バゲットトラディション」(税込390円)は水、粉、塩など材料のすべてがフランス産。一本ずつシリアルナンバーを付けて販売しており、現在11万本を超えている
売り場に陳列された「バゲットトラディション」
常連客を離さないきめ細やかな商品作り

 開業時は、緊張感すら漂う店内演出によって「外から店の中を気にして見ながらも、通り過ぎてしまうお客様もいた」(内山さん)というほど、敷居の高い店だった。しかし、このことが話題となり、遠方からの客も多くなり、瞬く間に人気店となった。そして幾度となく変化を遂げ、地域の常連客も着実に増やしていった。
 変化を続けながらも常連客を離さない秘訣のひとつに、ぶれることのない内山さんのきめ細やかな商品作りの姿勢がある。それが顕著に表れている商品として、例えば土日など多い日には200〜300本出る「明太フランス」(税込400円)がある。パンのカリッとした食感やたっぷりの明太ソースなどの味の面からの訴求だけでなく、食べやすさの面からもこだわり抜いている。パンは太めでボリューム感があるため、そのままではかじりにくい。そこで焼成時にひと手間かける。
 「『明太フランス』は、フランスパンを完全に焼き上げてしまう前に、一旦窯から取り出して、約5センチ間隔で切込みを入れます。そこに明太ソースを塗って窯に戻して焼き上げるんです。そうすることで、食べるときに切込み箇所で手で簡単にちぎれるので、パンを前にして『さてどうやって食べようか』と困ることがないんです」(内山さん)
 また、食材の使い方に工夫を施すことで、一段階違うおいしさや独自性を出すことも意識しているという。
 「夏季以外の季節商品になりますが、あんバターサンドにサンドするあんことバターは、そのままそれぞれを重ねるのではなく、あらかじめまだら状に混ぜ合わせておいてからサンドします。そうすると、口の中で双方がちょうど良いバランスで広がります。コーヒーなど香り付けに使う食材は、生地に混ぜ込むのではなく、粉末を生地の表面に振りかけることで、香りの立ち方や、ほかの食材との融合の仕方などの違いを出してみたりします。使い方を変えると、見た目には大きく違わないとは思いますが、味わいはかなり変わってくるんですよね」(内山さん)



夏季限定の「チリコンカンドッグ」(税込388円)
売り場に陳列された「チリコンカンドッグ」
店内奥にある厨房は足元まで見えるガラス張りで、厨房の活気が売り場にまで伝わってくる
入口横にはテラス席があり、サービスのコーヒーと一緒にパンを食べることができる
「ベーコンラタトゥイユ」(税込260円)、「ハムエッグ」(税込み240円)などの総菜系のパン
スタッフファーストという考えを取り入れる

 コロナ禍が始まると同店の売り上げは過去最高を更新するなどし、多忙を極めた。近頃ようやく、平常時の落ち着きを取り戻してきたという。
 「コロナ禍では、週末のような忙しさが毎日続き、スタッフたちの負担がかなり増していたと思います。ちょうどその頃、社会的な時短営業の動きがあり、当店も朝の開店時間を1時間遅くし、閉店時間は30分遅くすることで時短営業を実施しました」(内山さん)
 定休日も以前は週休1日だったり、休みなしだったりしたが、コロナ禍を機に週休2日にした。
 「スタッフの育成を考えて、働き方改革を進めています。時代の流れもあり、私自身も忙しいから頑張ろうというのはやめようという考えに変わりました。スタッフには気持ちよく働いてもらいたいですね。そのために十分な休息を取ってもらいたいと思っています」(内山さん)
 毎週2日ある休みのうち、月曜は定休だが、もう一日はフレキシブルにしている。決定した休みの告知は、SNSで約2週間ごとに行っている。
 「週2日の休みのうち、1日を固定の曜日に定めていないのは、スタッフファーストという思いを大事にしたいと思っているからです。お客様本位であることは変わりないのですが、週1日でも、スタッフの都合に合わせて決められる休みがあればいいなと考えました。そうすることで、人手不足解消にもなりますからね」(内山さん)
 店内奥にある厨房の様子は、売り場からよく見える。足元まで見える全面ガラス張りなので、製造スタッフの表情だけでなく、全身の動きが見える。製造スタッフがきびきびと動く様子が売り場に伝わり、パンを一層魅力的に輝かせていた。

SHOP DATA
店名:トツゼン ベーカーズ キッチン
住所:〒222−0037 神奈川県横浜市港北区大倉山2-2-11
電話:045‐548‐0568
営業時間:午前8時30分〜午後6時30分
定休日:月曜(月曜以外にSNSで告知する週1回の休みあり)
品揃え:40〜50品目
スタッフ:製造常時3〜5人、販売常時2〜3人
店舗面積:売り場8坪、厨房16坪、倉庫・事務所6坪
日商:約40万円



この記事の読みどころ

●フォーマルな感じとカジュアルな感じを併せ持った雰囲気を実現。
●「明太フランス」は、焼き上がる前に5センチ間隔で切り込みを入て、食べやすくしている。
●食材の使い方を少し変えると、味と食感が大きく変わる。
●週2日の店の休日の1日は、スタッフの都合に合わせて、週ごとに曜日を決める。

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら