安心して食べられるパン作りを通して自然と共生できる暮らしを夢見る。 - リトル・トリー / - ブランスリー電子版

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お店拝見/2005年10月号

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安心して食べられるパン作りを通して自然と共生できる暮らしを夢見る。 - リトル・トリー

数字の9の形をした「パン9ナブダーニャ」。アーモンド、あんずなど9種類のトッピングが施してある。
アメリカ先住民のホピの人たちの生き方に感銘を受けた。

住所 東京町田市玉川学園2-8-28
電話 042-728-5561
営業時間 午前10時〜午後7時
定休日 日曜、月曜



憲法9条と9つの種子を表現したパン。

ジュゴンへの思いを表現した「ジュゴン@OKINAWA」。


レジで接客する高木みのりさん


有機栽培の緑茶を練り込んだ「あんずあんぱん」
 「子供たちが安心して食べられるパン作りを通して自然と共生できる暮らしを夢見ています」
 東京・町田市のベーカリー、リトル・トリーオーナー夫人の高木みのりさんは、こう話した。
 小田急線・玉川学園駅を降りて徒歩約3分、線路と並行して走る大通り沿いにリトル・トリーはあった。イメージカラーの緑を要所に配した外装の小さな店。3坪ほどの店内には、様々なパンが並んでいた。
 みのりさんが真っ先に紹介してくれたのは、「パン9ナブダーニャ」(158円)というパンだった。内麦粉の生地を数字の「9」の形に成形して焼き上げたパンで、上面には、アーモンド、あんず、イチジクなど9種類のトッピングが施してあった。
 みのりさんは、憲法9条改正に反対する市民団体「9LOVE」(クラブ)のメンバーと親交があって、同団体のメンバーらの協力を得て開発したパンだという。また、インドで起こった「ナブダーニャ運動」に賛同して作ったパンでもある。「ナブダーニャ」とは9つの種を意味する。インドの環境運動家、ヴァンダナ・シヴァ女史が提唱する運動で、世界の穀物メジャーが穀物の種子を独占し、農民が自由に作物を作れない状態に異を唱えるものだ。
 「ジュゴン@OKINAWA」(178円)も、リトル・トリーを代表するパンのひとつだ。沖縄・辺野古の海に生息するジュゴンへの思いを表現したパンで、「クラブ」のメンバーであるみのりさんの後輩から「ジュゴンのパンを作ってほしい」と頼まれて開発した。玄米からおこした酵母、内麦粉などの生地を使用し、中には、沖縄産の紫芋のあんが入っている。しっぽの部分がかりっとして香ばしく、上品な味の商品に仕上がっている。



大自然からの恵に感謝しながらパンを作る。

緑のイメージカラーが印象的なリトル・トリーの店構え。


米粉100%の「まさとパン」


店内には、「天然酵母を使います」「外国産小麦は使いません」など、7つの約束が掲げられていた。
 みのりさんは、大学生のとき、国連の世界先住民族年に因んで、世界各国から先住民族の人たちを招いてのシンポジウムに関わった。そのときに出会ったアメリカ先住民族のひとつ、ホピの人の話に感銘を受けた。「電気も水道も使わず、大自然と共生し、その恵を受けながら生き生きと生活していることに感動しました」とみのりさんは振り返る。そして、みのりさんはアメリカに渡り、ホピの人たちと生活を共にした。
 リトル・トリーのパンには、すべてみのりさんのこうした思いがこもっている。「パン作りにおいて、最も基本的な部分である酵母は自分たちで1から作りたい」との思いから、自家製の玄米酵母とレーズン酵母を使用。「ポストハーベストの心配がない方がよく、日本の食糧自給率向上に少しでも役立ちたい」との思いから、国産小麦粉を使用。また、パン生地に添加物を一切使用せず、油脂など材料自体に添加物が入っていることが危惧される材料についても、添加物が入っていないか、できるだけ少ないものを厳選する。
 リトル・トリーは、パンの製造販売を通して、自然と共生できる暮らしを提案しているのだ。
 みのりさんの思いを表現したパンはまだたくさんある。「あんずあんぱん」(189円)は、宮崎県産の有機栽培緑茶を練り込んだ生地で白あんとあんずを包んで焼き上げた商品。「お茶受けに最適です」とみのりさんはすすめる。
 「まさとパン」(500円、ハーフ250円)は、米粉100%のパンだ。小麦粉アレルギーで、パンが食べられない長男にパンを食べさせてやりたいと開発した。米からおこした酵母を混ぜ込み、熟成させることで、生地内に気泡ができるのだという。「もちとパンの中間の食感」が特徴だ。
 「チョコレート・バナナマフィン」(178円)は、バンホーテンココアを練り込んだ生地を使用。中には、ベルギー産チョコレートと有機栽培のバナナが入っている。
 「オリーブとハーブの食パン」(315円)は、玄米酵母を使った生地に、黒オリーブとローズマリーを入れたパン。エクストラバージンオリーブオイル、有機栽培パーム油などを使用。「シチューやスープによく合います。食卓に楽しさを演出していただけたらと開発しました」とみのりさん。
 「カフェ・ダマンド」(189円)は、アーモンドとココナッツが入ったメロンパン。上生地には、ブラジル産有機栽培で、フェアトレードのコーヒーが入っている。



湯治療養とベーカリー、みのりさんとの出会い

バンホーテンココアを生地に練り込んだ「チョコレート・バナナマフィン」


黒オリーブとローズマリーを入れた「オリーブとハーブの食パン」


アーモンドとココナッツが入ったメロンパンの「カフェ・ダマンド」


リトル・トリーでは、ワンローフの食パンを多く製造販売している。
 リトル・トリーの高木康弘オーナーは、学生の頃アレルギー体質で体をこわしたことがあった。温泉で湯治療養を続けた。その経験のおかげで「食べ物は命の源」であることに気づいた。
 ふとしたきっかけで、ベーカリーで仕事をするようになった。最初は、湯治療養を続けるお金が必要だったからだった。そのベーカリーのオーナーが現在、康弘さんが師匠と仰ぐ西山浩氏だ。「ちゃんとした大人は、子供たちに何を残してやれるかを考えなくてはならない」と西山氏はいつも言っていた。
 康弘さんとみのりさんは、この頃、出会った。康弘さんが働いていたベーカリーのパートスタッフの一人が、みのりさんの友人だったのだ。
 康弘さんとみのりさんは、「パン作りを通して、自然と共生できる暮らしを実践し、提案したい」という思いを募らせていった。
 あるとき、2人は、西山氏に、夫婦で店を持ちたい、と相談した。西山氏は「いいじゃない。うちの店を引き継げばいい」といった。「うちの店」とは、同ベーカリーの2号店のことだった。
 こうして2人は2001年、独立を果たした。その2年後に、すぐ近くに店を移転、現在に至っている。
 高木夫妻は店を紹介するリーフレットの冒頭で、「沖縄の『命どぅ宝』(命こそ宝)という文化やアメリカ先住民の人々の『人間は自然の世話をする役』という知恵に出会い、『植物も動物も地球も人間も命は一緒。足元のささやかな日常からできることは何だろう』と考えました」と記している。



ベーカリーは、様々な思いを発信しやすい業種。

高木康弘さんとみのりさん


紅茶やレーズン、くるみなどの食材も販売している。


様々なパンが並ぶ陳列棚。最下段には、「ナブダーニャ運動」などについての資料が置かれていた。


様々なパンが並ぶ、通りに面した陳列棚。通りからの光の採り入れ方が独特。
 リトル・トリーは、小田急線・玉川学園駅を降りて徒歩約3分の場所にある。
 線路沿いの道を下っていくと右手に、緑のバックに白い丸文字で「Litlle Tree」と書かれた看板が目に飛び込んでくる。通りの向かいからも分かるように、店の正面上方にも、グレーのバックに緑の文字で「Litlle Tree」と書かれた看板が掲げられている。
 入り口のドアに手を伸ばしながらふと左を見ると、そこにも、木の切り株に「Litlle Tree」のクリーム色の文字が書いてある。
 売場は3坪ほどの小さなスペース。三方には、木製の陳列棚などが置かれ、数多くのパンが並び、入店して右手にあるレジでは、みのりさんが、顧客と親しげに言葉を交わしながら、パンを包装していた。
 「身の丈にあった商売」とみのりさんはいった。夫婦2人と販売のパートスタッフで、様々な思いを込めて、パンを作り、丁寧に販売する。顧客からの質問には、笑顔でとことん答える。
 品揃えはおよそ60品目。小麦粉は、内麦粉だけを使い、外麦粉は一切使用しない。酵母は、玄米とレーズンからそれぞれ起こした2種類のほか、米からおこした酵母も使っている。出来合いのイーストなどは使わない。顧客には、女性が多いという。「食に興味があると思われる年配の男性」も目立つという。
 みのりさんは「ベーカリーは、自分たちの思いを発信しやすい業種だと思います。そして、この近辺には食に興味がある方が多いように思います」と話した。高木夫妻は、リトル・トリーという空間で、パンを通して顧客に語りかけ、顧客の声を聞き、それを消化して、また語りかける。それが高木夫妻の生きる糧のひとつなのだ。

原価計算女王
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