生まれ育った八丈島で独立開業を果たす - Pamon - ブランスリー電子版

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お店拝見/2024年2月号

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生まれ育った八丈島で独立開業を果たす - Pamon
店主の北浦祐さん(中央)、妻の麻美さ(左)、母の恵美子さん(右)
八丈空港道路から一本奥に入ると見える「Pamon」の看板と平屋の店舗
店内の様子。右側から奥に続く陳列台には約70種類のパン、ショーケースには洋菓子が並ぶ
「ホットドッグ」(税込380円)、「ハニーマスタードチキン」(税込450円)などの調理パンが並ぶ
優しい甘さと豊かな風味が特徴の「メロンパン」(税込198円)
「メロンパン」の断面
離島特有の営業方法を確立していく

 羽田空港から飛行機で1時間弱、太平洋に浮かぶ伊豆諸島の八丈島に、パンと洋菓子を製造販売する「Pamon(パモン)」はある。2022年4月にオープンすると、瞬く間に人気店に。午前中に売り切れることが連日のように続き、今では常連客の多くが午前中に訪れるようになった。
 店主の北浦祐さんは八丈島出身。日本菓子専門学校(東京・世田谷区)で洋菓子を学び、群馬県の洋菓子店「ル・クレール」で16年働いた。開業する3年前から「ル・クレール」の新店や他店のオープニングスタッフを務めた。それと並行して開業準備を進めていった。
 「八丈島で開業と言うと、当時の勤務先などの周囲の人たちからは、リスクが高いと心配されました。しかし、ここで生まれ育った自分には、そうした不安はそれほどなかったですね」(北浦さん)
 最も懸念されたことは離島ならではの問題で、天候の影響を受けやすい海上輸送での材料の仕入れだ。
 「一週間分をまとめて仕入れていますが、悪天候で予定通りに届かないことがあります。特に困るのは消費期限の短い生クリームの確保ですね。でも天候に左右されることは島では当然のことですので、材料がなくて作れず、店を閉めざるを得ない状況になったとしても、お客様は理解してくれます。台風のときスーパーの棚が空っぽになり、当店のパンが飛ぶように売れたこともありました。定休日も店を開けて、ある材料で作りましたね」(北浦さん)
 夏休みなど観光客が増える時期は同店も繁忙期となる。同店は空港から続く八丈空港道路を約1・5キロまっすぐに進んだ場所にあり、すぐ近くにバス停もある。
 「空港に着いたその足で来て下さる観光客の方もいます。また、ダイバーや漁師など早朝から動いている人もいるので、営業時間外でも買ってもらえるように、当店の前に設置した自販機を活用していこうと考えているところです」(北浦さん)
 自販機は昨年11月に導入したばかり。一番の目的は購入客のドリンク需要に対応する為だが、販売する商品次第でコンビニのような役割も担っていけるのではと期待している。
 「自販機の3段のうち2段はドリンク、1段は当店で作った菓子やパンを入れています。カップケーキやフルーツサンドなど、3種類ほどです。まだ様子見の段階ですが、店の閉店時に商品を入れておくと翌朝には売り切れていることが多いですね。ロスパンを入れてもいいと思いますし、店の営業時間に縛られず皆さんに便利に使ってもらえたらいいなと思っています」(妻の麻美さん)

毎日来店する客の需要に応える品揃え

 開業当初は北浦さんが製造、妻の麻美さんが販売、母の恵美子さんが調理をそれぞれ担当し3人で切り盛りしていたが、現在は調理と販売を担うスタッフが入り4〜5人体制だ。麻美さんも都内の洋菓子店でスーシェフを務めていた腕の持ち主だが、現在は育児もあるので、製造はほとんど北浦さんが一人で行っている。
 午前中にパンを焼き上げ、午後菓子を作る。ホールケーキも好評で1日平均4〜5件、多いときは10件も予約が入り、こちらも一人でこなす。
 品揃えは、冷蔵ショーケースに並ぶ「シュークリーム」(税込240円)や「かぼちゃプリン」(税込340円)などの生菓子と、「レモンケーキ」(税込250円)などの焼き菓子を合わせておよそ30種類、パンがおよそ70種類となっている。
 「お客様のほとんどがリピーターで、毎日来て下さる方も多いので、多品種少量生産の方が喜んでいただけるかと思っています。1種類あたり5〜6個しか作らない場合もあります。食べたいパンをリクエストしてくれる方もいらっしゃって、できる範囲で、毎日ではなく土日限定で作ったりしています。少しずつ自家製酵母のパンやライ麦パンなどにも挑戦していって、お客様の反応を見ていきたいと思っています」(北浦さん)



「クロワッサン」(税込253円) は、島で唯一の本格的クロワッサンとして喜ばれている
「クロワッサン」の断面
かりっとして存在感のある皮の中に、甘さ控えめのカスタードがたっぷり入っている「シュークリーム」(税込240円)の人気も高い
店の前に設置した自販機では、ドリンクだけでなく菓子やパンなどを販売している
明日葉パウダーを練り込んだ「明日葉バゲット」(税込307円)
肉厚さとジューシーさが特徴の「うみかぜ椎茸」を使用した「山盛り!うみかぜ椎茸」(税込370円)
八丈島の特産品を使ったパンを積極的に開発

少数多品種展開を一人で実現するため、仕込むパン生地は6種類ほどに抑えている。特に少数多品種を重視しているのは総菜系で、「ベーコンエッグ」(税込320円)や「山盛り!うみかぜ椎茸」(税込370円)など、塩パン生地に具をのせて焼き上げた商品は8種類ほど揃える。
 「総菜パンは食パンの半端生地も活用しています。調理担当スタッフを採用してからは、バンズやドッグパンを使ったものも販売できるようになりました」(北浦さん)
 同店の人気商品は「メロンパン」(税込198円)、「クロワッサン」(税込253円)、「シュークリーム」(税込240円)、「バゲット」(税込270円)など。「メロンパン」は外がさくっとして中はふんわりと軽く、甘さや風味が優しい味わい。「シュークリーム」は、かりっとして存在感のあるおいしい皮の中に、甘さ控えめのカスタードがたっぷり入っている。「クロワッサン」と「バゲット」は今まで同島で手に入らなかった本格派の味が喜ばれている。
 「来店客の多くが高齢の方ですが、『バゲット』がおいしいと言って買ってくれます。明日葉パウダーを練り込んだ『明日葉バゲット』(税込307円)も風味の良さが好評です。あんバターサンドにしてもおいしいのですが、焼きたてを並べると加工する間もなく売り切れてしまいますね」(麻美さん)
 セリ科の明日葉は八丈島の特産品。「山盛り!うみかぜ椎茸」に使用している椎茸も、肉厚なこととジューシーさが特徴の「うみかぜ椎茸」で特産品だ。このほか「レモンケーキ」(税込250円)にも、特産品の「八丈フルーツレモン」を使用している。「八丈フルーツレモン」は一般のレモンより大きく、果皮の苦味が少ないのが特徴。
 「『レモンケーキ』に使う『八丈フルーツレモン』は、農家さんから収穫後直接いただき、すぐに果汁を絞って冷凍貯蔵しています。『レモンケーキ』以外にも、夏にグラニータに使用して提供しました」(北浦さん)
 北浦さんは菓子を学ぶために同島を離れたときも、いずれ戻ると心に決めていた。同島への思いは強い。
 「特産品を使用して作った商品が、いつか八丈島土産として、多くの人に喜んで買ってもらえる日が来るといいなと思っています」(北浦さん)



特産品のレモンを使用した「レモンケーキ」(税込250円)
ショーケースには洋生菓子が並ぶ。クリスマス前の取材時はサンタのカップに入った「サンタプリン」(税込520円)も
SHOP DATA
店名:Pamon
住所:〒100−1511 東京都八丈島八丈町三根4631−8
電話:04996‐9‐5390
営業時間:午前9時〜午後5時
定休日:水曜日
品揃え:約100品目
スタッフ:製造(調理含む)常時1〜3人、販売常時1〜3人
店舗面積:売り場約10坪、厨房約20坪
日商:約20万円



この記事の読みどころ

●天候の影響を受けやすい海上輸送での材料の仕入れに不安があった。
●夏休みなど観光客が増える時期は同店も繁忙期となる。
●自販機を導入し、ドリンク需要に対応し、さらに営業時間外のパンの販売にも力を入れる。
●客のほとんどが高齢者だが、「バゲットがおいしい」と言って買ってくれる。

原価計算女王
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