「熱々急冷」「熱々凍結」でパン業界を変える - ツジ・キカイ / 焼成直後のおいしさを保持しロスゼロを実現する新技術 - ブランスリー電子版


ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
レポート/2024年1月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


「熱々急冷」「熱々凍結」でパン業界を変える - ツジ・キカイ

焼成直後のおいしさを保持しロスゼロを実現する新技術
山根証社長
 多くの人が簡単に人工知能(AI)を使えるようになるなど、ここに来てIT化の波はさらに大きく加速した感があるが、製パン機械メーカーのツジ・キカイ(山根証社長)は「熱々急冷」と「熱々凍結」という新しい概念をパン業界に向けて提唱するに当たって、
YouTubeの動画をフル活用している。この企画では、同社が作成した動画の中で、「熱々急冷」と「熱々凍結」について、パン職人らが語っている内容を念頭に置いて、山根証社長と山根琴江PRディレクターに話を聞いた。



焼成後すぐに冷やすだけのひと手間

―――「熱々急冷」と「熱々凍結」という新しいコンセプトを掲げてパン業界に様々な提案を行っていますが、簡単に言うとどのような内容になりますか。
山根証(以下A) 「熱々急冷」も「熱々凍結」も、ポイントは焼き上がったものをすぐに冷やすということです。最初の工程は両方とも同じで、常温または冷蔵温度帯まで冷やして取り出す場合は「熱々急冷」で、凍らせる場合は「熱々凍結」と呼んでいます。パンを熱いまま一気に冷やす最初の数分間が
おいしさを保持するのに欠かせない、最も重要な工程です。
―――「熱々急冷」や「熱々凍結」を導入したオペレーションは、ベーカリーの現場ではどのようになるのでしょうか。
A マイナス35℃に設定した当社の「ブラストチラー&ショックフリーザー」(パティ)に、オーブンから取り出した焼成後のパンを即、袋に入れずにそのまま入れるだけです。
 食パンなら30分で出せばスライスができます。バゲットなら15分入れればカチカチに凍っているので、「熱々凍結」になるし、10分で止めたら凍結前なので、「熱々急冷」になります。
 つまり、焼き上がったパンを急速に冷ました後にどの温度帯にもっていくかは、そのパンをどう扱いたいかによって自由に設定すればいいということです。
山根琴江(以下K) 当社の動画にご登場いただいている「ブーランジェリー クスパン」さんの場合は、焼き上がったパンをパティに15分程度入れて「熱々急冷」してから、店に並べています。そうすることで、時間が経った時のパンの品質劣化が抑えられるとおっしゃっていました。
 時間が経ってもパンがおいしいということですね。そのおいしさがお客さんに伝わって、例えば、バゲットは、売り上げが3倍になったということです。



山根琴江PRディレクター
ブラストチラー&ショックフリーザー「パティ」
おいしさ維持以外にも様々なメリット

―――「熱々凍結」をフル活用しているベーカリーはありますか。
A 東京・町田市に本店があるパンパティさんでは、「熱々凍結」を軸にして様々な試みをされています。「熱々急冷」だけではなく、「熱々凍結」も導入することで、可能性はさらに広がります。例えば、食パンを「熱々凍結」して、次の日以降に解凍して販売したり、サンドイッチ用のパンに使ったりするのは、まさにその好例だと言えるでしょう。
 これは、パンの生産を1日のスパンではなく、1週間とか10日とかのスパンで計画的に行えるということですので、パンのロスをなくすことや、働き方改革を実現することに繋がっていきます。
―――現在のパン業界が抱えている様々な課題の解決策になり得るということですね。
A そうですね。そのためにも、「熱々急冷」だけではなく、「熱々凍結」も導入することを提案しています。ロスゼロの実現は、「熱々急冷」してさらに「熱々凍結」することで可能になる話で、「熱々急冷」したものを常温で並べた場合は、時間が経ったときの品質劣化は遅くなることは分かっていますが、劣化自体は進みますし、それはやがてロスになる可能性もあるわけです。働き方改革も、「熱々凍結」による計画生産が出来て初めて実現するということですね。
―――ツジ・キカイさんは、「熱々凍結」した状態のパンをそのまま販売することを提案されていますよね。
A はい。理由は、それが「熱々凍結」のメリットを最大限に発揮できる方法だからです。つまり、「熱々凍結」して焼きたての最もおいしい状態を保持しているパンを、消費者が食べる寸前まで維持できる唯一の方法が、それを凍ったまま販売することなのです。
 パンパティさんでは、実際に「熱々凍結」したカヌレを凍ったまま販売されていて、好評を得ています。
K 私はバゲットも熱々凍結の状態で売ってほしいと思っています。我が家では、バゲットを買ってきて、すぐにスライスして冷凍庫に入れます。そして、朝起きてきたら冷凍庫から食べたい分だけを出して常温に置きます。朝の身支度をしたりしている間の30分でちょうどいい具合に自然解凍された状態になるので、それを軽く魚焼きグリルでリベイクして食べています。これが我が家のパン事情です。
 「熱々凍結パン」が冷凍のまま買えれば、最高品質のまま自宅の冷凍庫で保存できて、リベイクも不要です。最もおいしい状態で食べられるので、とても便利ですね。



3日後のパンのおいしさに驚愕
ブーランジェリー クスパンの楠田法久シェフ(YouTube 動画より)
ブーランジェリークスパン

 焼き上がってからパティに入れた食パンと入れていない食パンを知り合い10人に配って食べ比べをしてもらったのですが、10人中10人がパティに入れた食パンの方がおいしいと言いました。
 私自身は、パティに入れた食パンの方がおいしいとは感じましたが、強烈なインパクトはなかったので、この違いがお客さんに伝わるかどうか、正直なところ自信がありませんでした。しかし、そのパンを家の冷凍庫に3日間入れておいたものを、たまたまトーストして食べた時に、歴然とした差があることに驚き、パティを導入することを決めました。
 朝の3時、4時に焼き上がったパンが午後6時、7時の閉店まで棚にあることは実際にあるのですが、焼き上がったパンを10分ぐらいパティに入れてから棚に並べて夕方までたったとすると、そうしていないパンと比べて、品質の差が歴然としているわけです。時間が経つほどその差が大きくなってきます。あくまで職人としての経験値からの話ですが、絶対に間違いのない経験値です。



「熱々凍結」で食パンが急伸
パンパティの大泉裕一シェフ(YouTube 動画より)
パンパティ

 焼き上がった食パンをすぐにパティに入れて急速冷凍をかけ、3日以上冷凍庫で保管し、それを1日冷蔵庫に入れてゆっくりと解凍したものを、サンドイッチ用に使用しています。これまではサンドイッチ用の食パンは、前日焼き上げたものを使うのが主流でしたが、パティに入れて急速冷凍すれば焼きたての状態をいつでも再現できるので、フレッシュな食パンを使ったサンドイッチが提供できます。
 また、食パン自体の販売についても、パティに入れて急速冷凍したものを自然解凍すれば、焼きたての品質とほぼ同じものがいつでも出せます。「熱々凍結」を導入したことで、実際に食パンの売上はかなり伸びました。
 ライ麦パンなどあまり量が出ないものは、1回粉1キロとか2キロとかで仕込むより、粉4キロとか5キロで仕込んだ方が、パン生地の発酵の状態がよく、味もよくなります。そうして焼き上げたものを「熱々凍結」で凍らせておけば3日に分けて新鮮な状態で店に出すことができます。夕方売り切れれば解凍して追加することもできます。



原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら