個性派ベーカリーの凄さ - ブランスリー電子版

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特集/2024年1月号

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個性派ベーカリーの凄さ




「なんかいい感じ」の場所で「なんかいい感じ」のモノを提供 - なんとかプレッソ&パンとエスプレッソと自由形
取材で話を聞かせてくれた社員の小山琴未さん(左)。右は社員で製造スタッフの井上奈々さん
「なんとかプレッソ」店内売り場の様子。パンがのせられたトレーが宙に浮いているように見える
「なんとかプレッソ」では、レジカウンターも雲のような曲線を描いたレイアウトになっている
「パンとエスプレッソと自由形」店内の様子。客席の椅子とテーブルから厨房と隔てる壁まで全体が雲のような曲線を描いている
日が沈む西側にあるカンター席。ランプシェードの内側に印刷されたデザインは夕方から夜を表現したものになっている
名前がうろ覚えでも気軽に入れる店

 東京・自由が丘の商業施設「Luz自由が丘」の1階にあるベーカリー「なんとかプレッソ」は、3階のカフェ「パンとエスプレッソと自由形」の姉妹店。購入したパンは3階のカフェで食べられるようになっており、2店がほぼ一体化した店舗運営が行われている。
 「店名である『なんとかプレッソ』は『エスプレッソ』というドリンクの名前をはっきり思い出せなくて『なんとかプレッソ』と言ってしまうような人でも、入りやすいような敷居の低い店にしたいという思いが込められています」と説明してくれたのは、社員の小山琴未さん。
 また「『パンとエスプレッソと自由形』の『自由形』は、地名である『自由が丘』をもじった表現で、『形に捉われない自由な表現をする店』という同店のコンセプトと重ねている」(小山琴未さん)そうだ。
 2店に共通するのは「雲」をモチーフにした内観。例えば1階の「なんとかプレッソ」では、宙に浮いているように見える雲型の木製トレーの上にパンをのせ、売り場全体で浮遊感を演出している。
 実際はトレーは天井から床まで続くワイヤーに支えられているが、一見すると、空に浮いている複数の雲ひとつひとつに、種類の異なるパンが置いてあるように見える。レジカウンターも雲のような曲線を描いて売り場との境を作っており、遊び心に満ちている。
 「当店では、『なんかいいってすごくいい』をテーマに空間や商品を作っています。内装は雲をモチーフとして、曲線を多用したデザインになっています。パンはあえて小さく、見た目がかわいいものを意識していますね」と店長の小山菜摘さんは話す。
 同店は、「なんかいい」という全体の大きなテーマを、各スタッフが商品や接客に落とし込むためのアイデアを日々出し合いながら運営されていて、「口コミも広がって常連客が増えてきた」(店長の小山さん)そうだ。

言葉から生まれた魅力的な商品

 1階の「なんとかプレッソ」で注目の商品は、オープン当初からある「サンド不イッチ」。異なる2種類のパンを使って具材をサンドした商品だが、意外にも全体の統一感が出て、異なる2種類のパンのイメージが最終的には一致してしまうという不思議な商品だ。季節ごとに種類も変わるので、一年を通じ様々な「不一致の一致」を楽しむ事ができる。
 実は「なんとかプレッソ」と「パンとエスプレッソと自由形」は、コピーライターの石井ツヨシ氏がブランディングし、運営する店だ。石井氏が友人の会計士である服部峻介氏と共同で代表者となり設立した会社「じそく1じかん」が運営する店として2017年にオープンした。
 「石井がコピーライターということもあって、まずは言葉が浮かんできて、それに合わせて商品や店のコンセプトを作るという作業が行われてきました。『サンド不イッチ』は特にその象徴的な商品ですね」(社員の小山琴未さん)
 石井氏の不思議な言葉遊びによって生まれたものは数多く、現在は終売している「時間出しコーヒー」もその一つ。お湯ではなく水で専用の器具で時間をかけて抽出し、客にその様子を目の前で見て楽しんでもらえるよう、店内の目立つ場所に抽出中の器具を置いていた。
 石井氏は、東京・表参道に本店を持つ人気ベーカリー「パンとエスプレッソと」のブランディングにも携わっていた関係で、「パンとエスプレッソと」からの「のれんわけ」という形で、「なんとかプレッソ」と「パンとエスプレッソと自由形」の2店を自分の店として出店した。
 現在では、2020年に渋谷・宮下パークにオープンした「たまご」をテーマにした店「パンとエスプレッソとまちあわせ」も運営している。

フワフワしていて親しみやすい

 3階のカフェ「パンとエスプレッソと自由形」では、客席の椅子やテーブル、厨房との境にある窓や壁が雲のような曲線を描いたデザインになっている。
 また随所に吊るされたランプシェードは内側に印刷されたデザインが一つひとつ異なり、東側の席のものには朝のデザインが施され、徐々に西側の席に進むにつれて、夕方や夜のデザインのものに変わっていき、1日の時間の経過が感じられるようになっている。
 またレジの後ろのランプには可愛らしいパンの模様が描かれ、同店の運営会社の「じそく1じかん」が掲げる「パンも飛べるはず」というテーマを体現したものになっている。これは明日のパンを提供したいという思いを表現した言葉だそうだ。
 「雲が象徴するものは『浮遊感』です。フワフワ軽い感じで親しみやすい雲のように、形にこだわらず溶け込みやすい空間をお客様へ提供していきたいという当店スタッフの想いを凝縮しています」(社員の小山琴未さん)
 店長の小山菜摘さんとたまたま名字が同じだったという社員の小山琴未さんは、入社して3年。カフェやスイーツが好きで高校卒業後に同店に就職、表参道の「パンとエスプレッソと」も好きだった。現在は、主に「パンとエスプレッソと自由形」での接客業務にあたり、カフェメニューの開発責任者としても奮闘する日々だ。常連客のボリュームゾーンである20代、30代主婦の需要に合わせたものを日々思案している。
 その小山さんにオーナーの石井ツヨシさんについて聞くと「なんというか、いい意味で『個性的』で、普通では考えられないような視点や発想の持ち主という感じで、すごく感銘を受けていますね」。



最も売り上げが多い看板商品の食パン「ムー自由形」(税込440円)
薩摩芋の餡と生クリームを入れた「ムー」に大学芋をのせた季節限定商品の「スイートポテトむークリーム」(税込500円)
「スイートポテトむークリーム」の断面
5周年を記念して販売した、雲をモチーフにしたスイーツ。バニラムースとフランボワーズジュレを霧状のホワイトチョコレートで包んだもの
新しい可能性を生み出していく

 現在、「なんとかプレッソ」で最も売り上げが多い看板商品は食パンの「ムー自由形」(税込440円)。本店である表参道の「パンとエスプレッソと」で人気だった食パン「ムー」を国産小麦100%にしたものだ。
 当初は、「ムー」と「ムー自由形」の両方を販売していたが、現在は「ムー」の販売はやめ、「ムー自由形」1本に絞った。「ムー」の生地は、チョコレートを入れた「ムーチョコ」(税込320円)やレーズンを練り込んだ「カレンズ」(税込300円)などの定番商品に使用するほか、薩摩芋の餡と生クリームを入れ、さらに大学芋をトッピングした「スイートポテトむークリーム」(税込500円)などの季節限定商品にも使用し、引き続き販売に力を入れている。
 一方、バリエーションが豊富な「チョココロネ」のシリーズも根強い人気があるという。
 「口コミで来る人が多く、パン好きなインスタグラマーさんにも投稿してもらえたりしていますね。」(社員の小山さん)
 また「パンとエスプレッソと自由形」では、以前は「ムー」の生地を使った「鉄板フレンチトースト」というメニューを頼む客が多かったが、今では「ムッフル」という「ムー」の生地から作ったワッフルを使ったスイーツメニューの「バニラアイスとブラウンチーズのムッフル」(税込1080円)が人気だ。
 期間限定の商品では、抹茶フェアのメニューの人気が目立ち、「抹茶ムッフル」(税込1700円)がかなり好評だった。抹茶メニューは特に女性を中心に根強い人気があることから、今では新茶が出る時期と秋から冬にかけての時期の年2回、抹茶のフェアを開催している。
 こうしたスイーツメニューの充実もあってか、最近はランチタイムより、午後2時〜3時のカフェタイムの方が混む事が多くなってきたという。
 2022年11月18日の5周年記念日には、雲をモチーフにした1日限定スイーツを販売した。中にバニラムースとフランボワーズジュレを入れた菓子を霧状のホワイトチョコレートで包んだ不思議なスイーツで、空をイメージした水色の皿にのせて提供。常連の人たちにも喜んでもらえた実感があったという。
 「1日限定スイーツは、予想以上の反響で、スタッフ皆で振り返って、やって良かったなという感想でした。また何か節目の時に同じような事ができたらと考えています」(社員の小山さん)
 店長の小山菜摘さんは、カフェのポジションが、「日常」から、「日常の中の小さな観光地」へシフトしてきていると感じている。
 「珍しいメニューを頼んだり、素敵な写真を撮ったりする事が『観光』と一緒だと思うので、みんなの『小さな観光地』になれる店であればと考えていますね。本店の『パンとエスプレッソと』が築いてきたものを大事にしながら、パンとコーヒーの新しい可能性に挑戦していきたいですね。まだまだできることは色々あると思っています」(店長の小山さん)



1階の「なんとかプレッソ」では独特でスタイリッシュな容器に入ったボトルドリンクも販売
「サンド不イッチ」の「生ハムカマンベール」(税込370円)。異なる2種類のパンを使ってサンドしている
クリスマスフェアで販売した「いちごコロネ」(税込400円)も人気だった
食パン生地を焼いたワッフルを使ったスイーツメニューの「バニラアイスとブラウンチーズのムッフル」(税込1080円)
「抹茶ムッフル」(税込1700円)。生地に抹茶を練り込み、自家製の抹茶エスプーマクリームをのせ、自家製抹茶モンブランを贅沢に絞った
レジの後ろのランプシェードの中にはパンの模様が描かれており、「パンも飛べるはず」というコンセプトを表現している



明るい晴れた空に浮かぶ昼の雲を描いたランプシェードは店内中央のテーブルの上に吊るされている
夜の空を表現したランプシェードは西側のカウンター席の上にある
SHOP DATA
店名:なんとかプレッソ
住所:〒152−0035 東京都目黒区自由が丘2‐9‐6 Luz自由が丘1階
電話:03‐5701‐0508
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:なし
品揃え:パン約50品目、ドリンク約8品目
スタッフ:販売常時1人、製造は「パンとエスプレッソと自由形」で行う

SHOP DATA
店名:パンとエスプレッソと自由形
住所:〒152−0035 東京都目黒区自由が丘2‐9‐6 Luz自由が丘3階
電話:03‐3724‐8118
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:なし
品揃え:フードメニュー13品目、ドリンク32品目
スタッフ:製造常時3人、販売常時2人

原価計算女王
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