高橋秀尚(株式会社パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰)
朝食を夕方に食べる、古い概念と資料に頼るのは危険
 早朝(午前6時ごろ)から営業するアメリカのフードコート。この店はギリシャ生まれの「ジャイロ」と呼ばれる、具を巻き込んだサンドイッチをメインにしている。 |  ドーナツはやはりアメリカ人の主な朝食メニュー。 |
 デニッシュ・ペーストリーも人気がある。最近は甘味をおさえたものが多い |  一人用のサイズにしたミニピザも特に若い世代に人気がある。 |
 具の多いスープを丸形ののパンの中身として入れたのが「スープブレッド」。朝食というより昼・夕食に人気がある。 |  東欧生まれの「ルグラッシュ」。これは日本でもギフト用に人気が出そうだ。 |
所変われば朝食も変わる世界各国の朝食事情を調べてみると、それぞれの国柄がしのばれて、大変面白い。中国ではオカユを食べるというし、ドイツではご存知ブロイチェン(ちなみにこの発音が難しい。とくに日本式にカタ仮名に直すのが大変だ。なかにはブロートヒェンと書く人もいるが、ここではブロイチェンとしておく)にこだわる。このドイツ生まれのロールは焼きたてが信条、また味の良し悪しで店そのものの評判が決まるのに、売価を高くできないので商売としては大変と、ドイツのベーカーは嘆いている。またフランスではバゲットとクロワッサンが定番と決まっている。
「三無い現象」がエナジー・バーを生むさて、このようなほぼ決まった朝食アイテムがないのが、おそらく日本とアメリカではないだろうか。どこの国の人も朝は忙しくて朝食に十分な時間をさけない。そのために特に若い世代には朝食を食べない人が増えている。
特に若い世代の独身勤労者の欠食率の増加はアメリカでも問題になっている。
彼らの言う「出来ない、気がない、時間がない」の「三無い現象」を解決するために開発されたのが「エナジー・バー」または「パワー・バー」と呼ばれる、片手で持って食べられる携帯食品である。その名のように各種ビタミンや体力の出る栄養素を含んでいるもので、自家用車で職場まで通うことが多いアメリカ人は、車中でこのスナックと何らかの飲み物で朝食を済ませることもあるという。
若い世代は朝の欠食率高い一方で、自宅で朝食を済ませるのが普通であるが、それではいったい何を食べるのかというと、まことに種種雑多のようだ。
まず最近の調査(2001年10月)では、アメリカ人の朝食欠食率は次のようだ。
15〜19歳層…………28%
20〜34歳層…………22%
35〜45歳層…………13%
46〜55歳層……………8%
55歳以上………………3%
ただし、ここでいう欠食とはコーヒーだけは飲むという人も含まれている。
また調査結果は全国平均値なので、地域特性を含んでいないとしている。
興味のあるコメントとしてアメリカにおける夜間就業率が増えており、「朝食を夕方に食べる」という現象が起こっている。そのためにアメリカに多いカジュアルな食事がとれるファミリー・レストランでのメニューに変化が起きているそうだ。
たとえば朝食用のミニ・ステーキやミニ・ピザなどがそれだ。また具の多い「食べるスープ」はニューヨークなどで流行している。
家庭内ではフルーツ、外食ではサンドイッチアメリカの朝食市場はおよそ592億ドル(約8兆円)とされるが、その主なものは次のとおりだ。
▼家庭での朝食内容
(1)フルーツ………………24%
(2)スナック バー………12%
(3)クッキー・ブラウニー10%
(4)ヨーグルト……………6%
(5)べーグル………………5%
(6)シリアル………………4%
(7)サンドイッチ…………4%
(8)トースト ブレッド……3%
(9)ドーナツ………………2%
(10)ペーストリー…………2%
(11)マフィン………………1%
(12)その他(コーヒー、飲み物など)………………………27%
▼外食での朝食内容
(1)サンドイッチ…………18%
(2)ドーナツ……………14%
(3)ポテト………………13%
(4)べーグル………………10%
(5)エッグ…………………9%
(6)パンケーキ……………8%
(7)ソーセージ……………6%
(8)ビスケット……………4%
(9)シリアル………………3%
(10)その他………………15%
メンズブレッド、ラスチカなどに注目さてアメリカ市場で話題を呼んでいる朝食用商品のいくつかをご紹介しよう。
●プロテインを入れた「メンズ ブレッド」=男性に体力をつけてもらおうとテキサス州のベーカリーが売り出したところ話題となった。
●健康志向の「ラスチカ」=イタリアのチャバッタに似た生地を使って焼いた小さなスナック。
●「ポンチキ」=東欧ポーランド生まれのドーナツでPaczkiと綴る。新しいスタイルのドーナツとして、特に冬の時期に売れているそうだ。
●「ルグラ」=同じく東欧生まれの高級志向のロール菓子。アメリカではギフト商品としても注目されている。
新鮮で確かな食品が求められているアメリカの朝食市場の概略は以上であるが、これらの資料が示唆するものをまとめてみよう。
(1)朝食用商品にかかわらず今後の商品開発は消費者の生活スタイルを重視する必要がある。
かって消費者層の主流であった「べービーブーマー」は今や50代となり、代わって「ニュー・シングル」と呼ばれる若い世代の消費者が現れた。彼らの食嗜好は今までのものとは大きく異なる。
(2)古い概念と資料に頼るのは危険だ。
例えば最新の調査では「健康意識が強く、食品購入の際に商品ラベル見る消費者」は以前と比較して減少傾向にあり、28%と低下した。
(3)価格にこだわる消費者は今後も存在するが、なんといっても「新鮮で確かな食品」を消費者は求めている。
またアメリカにおける食品販売製造業に対する消費者満足度は72%に達するという。この消費者の期待を裏切ってはいけないと、識者は述べている。昨今の日本市場における一連の出来事を見るならば、その通りであると思う。