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| 特集/2023年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 生地管理を軸にしたパン屋のオペレーション
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ミキシングに関しても、同店では手捏ねの場合と高速長時間でミキシングする場合とに極端に分かれる。これもそれぞれの商品で考えた結果で、例えばバゲットやカンパーニュなどはミキサーを使わず手捏ねで生地を作るという。 「力が弱い手捏ねの方が、グルテンが適度に抑えられるからです。一回の仕込み量は減りますが、その分、1日6〜7回仕込んでこまめに出せるようにします。塩を後から入れる後塩法を採用していますが、塩の混ざり具合にムラができるのが、いい方向に現れ、飽きずに食べられるパンになります」(杉窪さん) 現在の同店の商品の大半は2013年にオープンした時に開発したもの。以降10年間、国産小麦や様々な食材を活かした商品の展開を進めながら、配合や製法などで改良を繰り返しつつ、完全な新商品はほぼ出さず今まできている。 杉窪さんの各商品の生地作りに対する思い入れは強く、製パン作業の中でミキシングを最重要視し、製パンの工程を論理的に深く理解したスタッフのみにミキシングを担当させている。 さらにミキシングで注目すべき点は、あえてタイマーを使わない作業を行っている点だ。 「ミキサーを使って生地を捏ねるときでも、自分の五感で粉の状態をしっかり確認しながら進めていく事を重要視しています」(杉窪さん) 取材当日は、小麦粉に牛乳と卵白を入れ、最後に液体油脂であるオリーブオイルを入れる生地のミキシングを見せてもらった。人気商品の「パンモッツァレッラ」(税込368円)の生地だ。 卵白は発酵を阻害するので通常はあまり使用されることはないが、生地に入れて焼くとタンパク質を凝固させて生地中に気泡を作るため、液体油脂のオリーブオイルが生み出す火通りの悪さをなくし、しっかり焼けるようになるという。 担当した勤続4年のスタッフは、90リットルの縦型ミキサーを用い、目でしっかりと生地が変化していく様子を追いながら作業を進めていた。ミキシングの時間は30分以上にもおよんだ。 | |||||||||||||

同店で仕込んでいる基本の生地は、小麦の配合をそれぞれ変えた食パン3種類の生地と、バゲット生地、ソンプルサンの生地、クロワッサンの生地、ブリオッシュの生地などがある。これらの生地から2種類から多い場合は5種類位の商品が作られる。さらに、1種類だけの商品を作るための生地も多く、生地数は全部で16種類になるという。 同店では、捏ね上げた生地をすぐに急速冷凍庫に入れて零度まで冷やすオーバーナイト法を積極的に採用している。この方法で作った生地の場合、通常の冷蔵オーバーナイト法と違って、生地が2日くらいもつので、実際に1日に仕込む生地の数は10種類ほどで済んでいるという。急速冷凍した生地は、水がよく浸透し、その結果、焼成時は熱伝導がよくなり、生地がおかゆのように糊化して甘みが出る。また必要な時に解凍して必要量を店に出せるのでロスが出にくいという利点もある。 厨房には、「ブラストチラー」という急速冷凍を行う機械が設置されている。生地はビニール袋に入れられて「ブラストチラー」に投入され、急速冷凍される。 10周年を迎え、「今後はさらに現場でのスタッフの教育に力を入れていきたい」と話す杉窪さんだが、自分でマネジメントができて、人に教える事ができる人材を育てていくことが理想だという。 厨房の撮影をさせてもらった際に、部屋に貼られていた工程表を見せてもらった。各自がその日のシフトに合わせて、どういう流れで作業を進めていくかを可視化したものだ。 「これで誰がいつ何をしているのかが見えてきます。全体の様子を一人一人が把握するためには、全体の工程表が絶対に必要です」(杉窪さん) パンの品質と顧客の満足を最優先し、時には非効率な工程も敢えて取り入れる同店だからこそ、チームの結束力が必要になってくる。 「自分は人に教える事が好きなのでオーナーシェフという今の仕事と立ち位置にはすごく満足していますが、皆がそうとは限らないし、全体の様子を把握するのが苦手なスタッフもいます。だからシフトごとにチームを作り、お互いに面倒を見合ってもらう事を大切にしていますね」(杉窪さん) SHOP DATA 店名:365日 住所:〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1‐2‐8 電話:03‐6804‐7357 営業時間:午前7時〜午後7時 定休日:うるう年の2月29日 品揃え:パン約70種類、菓子約15種類 店舗面積:厨房15坪、売場15坪 スタッフ:販売常時2〜3人、製造常時8人 日商:平日40万円、土日祝65万円 | ||||||||||||||||

| 今までのやり方にとらわれず、パンの品質を向上させる - ピーターパン奏の杜店 | |||||||||||||||||||
千葉県習志野市の新興住宅地、奏の杜に2013年にオープンしたベーカリー「ピーターパン奏の杜店」は、多い日で1日1000組以上の来店客がある。同県船橋市の本店を中心に10店舗を展開する「ピーターパン」の中でも規模が大きい店舗の一つだ。約15種類の生地を使い分けて80品目ほどの商品を日々製造している。 「今、業界全体で言われているような人手不足の問題は当店も抱えているので、生地管理も含めてオペレーションは効率的にできるよう常に工夫していますね」と同店店長で「ピーターパン」全体の製造部スーパーバイザーでもある藤居正樹さんは話す。 「ピーターパン」では、各店舗での製造を支援し、同社がモットーとする「焼きたて」「揚げたて」「作りたて」をさらに強化していくため、2015年から同県船橋市内に共通の製造支援拠点として「サポートファクトリー」の稼働を開始。看板商品のメロンパンやカレーパンなど各店共通で大量に出るソフト系生地の一部商品の仕込みなどを行う体制を整えた。主に分割後の生地玉作りまでをまとめて行えるようにし、カレーパンはホイロ前に行う表面のパン粉付けまで行っている。 「サポートファクトリーを稼働させたことにより、以降弊社全体で進めていったエキナカへの新規出店を加速させることができました。また、当店のメロンパンが1日に最も多く売れた焼きたて菓子パンとして2015年にギネス世界記録として認定されたのも、サポートファクトリーのお陰です。サポートファクトリーの稼働により、お客様の期待に応えられるような安定した品質の商品を出す事ができるようになったのは大きいですね」(藤居さん) 分割・成形機で労働負担を軽減 「ピーターパン奏の杜店」では2013年のオープン時に「パネオトラッド」という仏ボンガード社製の分割成形機を導入。主にフランスパン生地の分割・成形からホイロまでを行い、オーバーナイトで生地を管理してくれる機械だ。 現在同店ではフランスパンのバゲット生地をベースにした焼き込み調理パンを何品か出しており、看板商品のソフト系の商品とあわせて売れ行きが良いという。 「『パネオトラッド』を導入した事で、効率面でだいぶ変わりました。スタッフの労働負担の軽減につなげながら、焼き込み調理パンの種類を増やし、頻繁に焼成する事ができるようになりました。ベーカリーの作業では、仕込みから分割を終えるまでの過程でいかに効率化を図れるかが人手不足解消の鍵となるので高価は大きいですね」(藤居さん) 一方で、オーバーナイトなどの製法で、冷蔵または冷凍された生地玉の復温をしっかり行えるかどうかが今後の品質向上の鍵になっているという。 同店の厨房には「パネオトラッド」の隣に共立プラント工業のパン生地急速解凍庫「ショックメルティー」も設置されている。 「フリーザーから取り出した生地を常温まで戻す時間が短縮できるので助かっています。ただ機械化は人手不足を大きく解消してくれますが、その一方で、気を抜いていい加減に操作すると誤作動が起きて商品全体の品質がブレてしまうという側面もあります」(藤居さん) 復温は失敗すると、外側と中の芯の部分との温度差が生じて焼成時に問題が発生してしまうという。 「機械でできる事が増えてきた分、操作する人間は知識をしっかり身につけて、温度管理、時間管理、計量管理といった部分は注意深く行わないと、問題が起きるので気をつけたいですね」(藤居さん) 今後はこうした機械の操作も含めてオペレーションの管理がしっかりできるように工夫していく事が課題だという。 | |||||||||||||||||||
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仕込みの仕事はやりがいがある
同店では、食パンの生地やコッペパンの生地、フランスパンのバタールの生地、ラウンド食パン、塩バターロールなどにも使うソフトフランスの生地、クロワッサンやデニッシュなどの折込系の生地などは店内の厨房で仕込んでいる。 それぞれ同店にとってなくてはならない生地だが、ラウンド食パンのように1回の仕込み量は多くても1日の焼成回数は2〜3回と比較的少ないものや、逆に1回の仕込み量は少なめだが、頻繁に出して焼成するものなど様々な生地があり、それぞれ仕込みのタイミングや手間も大きく異なってくる。そのため、各生地の仕込み量をその時々で見極められるスタッフの数が限られてくるという。 「最近は昔と違って仕込みができる熟練のスタッフの数が減っているので、そこは苦しいですね」(藤居さん) 全体の作業は、人手不足の中でも中途採用やパート採用の人を確保することで、なんとかやりくりしているが、規模が大きい店なので、早朝3時半〜4時位に出勤して作業する仕込みの仕事は、失敗すれば特定の商品を出す事ができなくなってしまったり、最悪の場合は店を開ける事ができなくなってしまったりするので、プレッシャーが大きい仕事だという。さらに1回の仕込みの量を決める際には、無駄が出なくて効率的で最適な量となるように考えなくてはならないので、ハードルが高い難しい仕事なのだという。 同ベーカリーには、製パン理論を学べる通信講座や、パン技能士の国家資格等に挑戦し、知識や技術を高めようと努力する若いスタッフも多いという。 温度、計量、時間の管理という基本事項を徹底させ、愛情込めたパン作りを大事にする同社。仕込みの仕事は責任が大きいからこそ、任される喜びや店頭に並ぶ商品は「自分の仕込んだ生地だ」と胸を張れるやりがいもあるという。 同ベーカリーのスタッフは、取材時も皆きびきびと各自の持ち場を守りながら効率的に作業している姿が印象的だった。 |
「効率化を図り、パンの品質を向上させることは大切ですが、もっと大切なのは、お客様に、店に来ることで得られる楽しみやワクワク感を提供することだと思うんです」と藤居さんは話す。 コロナ禍でエキナカ店舗の売り上げが大きく減少した時は、対策として定番商品の強化とともに新商品の開発に力を入れるようになった。 「毎月5〜10種類の新商品を思い切って出すようにしたことで、コロナ禍による巣篭もりで鬱屈を抱えていた人々に、少しでもワクワク感を提供する事ができたのではないかと思っています。その結果、当店を含む路面店の売り上げが大きく伸びたことで、エキナカ店の売り上げの落ち込みをなんとかカバーする事ができました」(藤居さん) 藤居さんによると、新商品の開発販売は、使用する原材料などに無駄が生じたり、品質が安定しないうちに次の新商品と入れ替わってしまったりと、生産的ではない側面もあるので、それまでは控えめに行っていたが、思い切って増やしていくことも大切だと感じたという。 「今後は新しいことに挑戦できるようにするためにも、今までのやり方にとらわれない、新しい製法や新しい材料を取り入れた取り組みが必要になってくると思います」(藤居さん) 藤居さんは以前、講習会でホイロ後冷凍について学ぶ機会得て、「こんな方法があったのか」と目から鱗が落ちる思いだったという。 現在同店ではパネオトラッドやドウコンディショナーなどを使ったオーバーナイト法や、新しく取り入れたホイロ後冷凍による商品の数を増やすことを含めて商品構成を見直している。商品数は以前より絞ってきているが、各商品をさらに充実させることにより、引き続き地域に愛されるベーカリーとしての魅力発信に努めていきたいという。 「コロナ禍を乗り越えた現在、有り難いことに各店の業績は好調で、お客様からの期待の高さを感じています。商品の値上げを行いながらも、『ピーターパンのパンが食べたい』『また行こう』と思って頂けるように、高品質のパン作り、心地よい接客に、引き続き全力で取り組んでいくつもりです」(藤居さん) SHOP DATA 店名:ピーターパン奏の杜店 住所:千葉県習志野市奏の杜2‐4‐11 電話:047‐403‐2201 営業時間:午前7時〜午後8時(当面は午後6時まで) 定休日:木曜 品揃え:パン70品目、焼き菓子約10品目 店舗面積:厨房45坪、売り場27坪、バックヤード11坪 スタッフ:製造常時10人、販売常時5人 日商:平日80万円、土日祝150万円 | |||||||||||||
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


































