思い出の場所を受け継ぎ独立開業する - ゴルジュ(GORGE) / - ブランスリー電子版

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お店拝見/2023年8月号

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思い出の場所を受け継ぎ独立開業する - ゴルジュ(GORGE)
店主の小林公平さん
「ゴルジュ」の目印となる祖父の代からの看板
入口側は一面ガラス張りになっている
店内は白と木目が基調のシンプルなインテリア。ショーケースの横にレジがある。ショーケースは祖父の代に使っていたものをリフォーム
パンは茶系で統一されたかごや皿、箱など様々な素材のケースに並ぶ
食パンの「全粒粉」の生地で粒あんを包んだ「全粒粉のあんぱん」(税込175円)は、小麦の香ばしい香りと粒あんの素朴な甘みが特徴
原点となった祖父の店の面影を残す

神奈川県横浜市神奈川区の「ゴルジュ(GORGE)」は、東急東横線横浜駅の一つ隣の反町駅近くの大きな交差点の角地にある。目印は、道路を挟んだ向かいからも見える店名の書かれた大きな看板。しかし「オグラベーカリー」と書かれており、店名が異なる。
 実は「オグラベーカリー」は、小林さんの祖父がこの地でかつて営んでいたベーカリーなのだ。「ゴルジュ」の店主、小林公平さんは「オグラベーカリー」の存在こそが自身にとってのパン職人を志す原点となったという。
 「子どもの頃よく遊びに来ては、祖父にパン作りを教えてもらいました。それがとても楽しくて、いい思い出です。大学生のとき、当時2代目だった伯父の調子が悪くなり店を閉めることになりました。そのとき初めて、この店を絶やしたくないと思うと同時に、自分がパン職人になって店を継ぐ覚悟が決まりました。自分の修業が終わるまで10年間待っていて欲しいと周囲にお願いして、2017年に開業しました」(小林さん)
 原点となった店の看板はそのままにして、店舗は全面改装した。店内飲食を想定し、店内からは外の、外からは店内の景色が見えるよう、入口側は一面ガラス張りにした。店内は白い壁にして、床や陳列台は木目調で統一。また、「オグラベーカリー」の時代から使っていた年季の入った木製の番重や、当時使っていた棚をリフォームして作ったガラスのショーケースなどを陳列台として設置。シンプルなインテリアながらも、温かみや重厚感の感じられる空間となっている。
 「自分のパン作りの原点を感じながら日々営業できるように、『オグラベーカリー』の面影を見える形で残しておきたいと思いました」(小林さん)
 パンは平日約50種類、売上げが倍近くなる土曜日は約60種類ほど並ぶ。ドリンクは、珈琲店の勤務経験がある妻の真紀子さんが担当し、東京・世田谷区の「オブスキュラコーヒーロースターズ(OBSCURA COFFEE ROASTERS)」から仕入れたコーヒー豆を使用して一杯ずつ丁寧に入れたコーヒーをテイクアウト販売している。コロナ禍前までは、現在売り場となっている一部にカフェスペースを設け、朝からコーヒーと焼きたてパンを楽しむ客で賑わっていた。
 「カフェの再開に関しては、以前のような形にこだわらず、新しい形でできないか模索しています。コロナ禍が落ちついてきて、ナチュラルワインのイベントに出店したり、他店とコラボしたイベントができるようになってきました。こうして日々の営業の中に変化をもたらすと、気付きのきっかけがもらえたりするんです。そういう意味でもイベント開催は今後も積極的に行えたらと思っています」(小林さん)

食材の特徴を最大限に引き出したパン作り

 小林さんの修業先は、神奈川県伊勢原市の「ブノワトン」(現在は閉店)やフランス料理店「ジョエル・ロブション」(東京・目黒区)のパン部門など。ほかに食品店「ディーンアンドデルーカ(DEAN&DELUCA)」で総菜を学んだり、ブノワトン時代の先輩が独立する際の「バゲットラビット(baguette rabbit)」(愛知県名古屋市)開業にも携わるなどし、小林さん自身の開業後のイメージを膨らませたり、パンの楽しみ方や提供の仕方などを探ったという。
 「最初の修行先である『ブノワトン』は、パンだけでなく料理や菓子も作っていました。食材は地元産のものにこだわり、小麦は地元の契約農家さんのものを製粉から手掛けるなどし、使う食材そのものの特徴を最大に引き出すことを大事にしていました。そうしたパンへの向き合い方は、今の自分の基本姿勢となっています。また、料理の要素をパンに取り入れたいという考えから、食料品店やレストランに勤務し、学ばせてもらいました」(小林さん)



「全粒粉」(税込410円)は、より香ばしさが感じられるように、焙煎した小麦ふすまを加え、高めの温度で焼成
卵やバターの風味豊かな「クリームパン」(税込260円)。上面にまぶした砂糖が食感にアクセントを与える
「オイルサーディンとドライトマトのフォカッチャ」(税込310円)。トッピングのタイムが爽やかな後味
自家製キャラメルソース、アーモンド、カカオニブをのせて焼き上げた「バナナのデニッシュ」(税込284円)
香りの良さをテーマにしたパン作り

 人気の食パンは、「角食」(税込320円)や「全粒粉」(税込410円)など8種類を揃える。「角食」と「全粒粉」の2種類の生地から、「雑穀食パン」(税込465円)、「全粒粉ローフ」(税込410円)、「ぶどうパン」(税込465円)などを展開している。
 使用小麦は、県内の秦野市産や北海道の契約農家からのものが中心。焼いた翌日ももっちりした食感が持続するのと、香りの良さが評判だ。
 「小麦の生産者の方々は、顔が見える関係なので安心感があります。使う小麦をすべて国産にするということは、開業前から決めていました。それは自然なことだと思いましたし、国産小麦は風味がとてもいいんです。自分のパン作りにおけるテーマは香りで、お客様には香り豊かなパンを提供したいと思っています。全粒粉を25%配合している『全粒粉』は、より香ばしさを感じられるように、焙煎した小麦ふすまを加え、高めの温度で焼成しています」(小林さん)
 「全粒粉」はサンドイッチに向くと好評で、都内のサンドイッチ専門店へ卸している。香ばしさともっちりとした食感が、サンドする具のおいしさを引き立て、風味豊かなサンドイッチに仕上がる。
 小林さんの香りへのこだわりは、菓子パンや総菜系など具を使った商品にも随所に現れている。菓子パンで一番人気の、ブリオッシュ生地を器状に成形し、その中にカスタードをのせて焼き上げた「クリームパン」(税込260円)は、食べてまず最初に感じられるのは菓子パンならではの甘さというよりも、卵やバター、小麦などの豊かな風味だ。
 総菜系で人気の「オイルサーディンとドライトマトのフォカッチャ」(税込310円)も、魚の旨味がしっかりありながら、セミドライトマトのハーブオイル漬けやトッピングのタイムが後味を爽やかにしてくれる。
 バナナがのったバリっとした食感のデニッシュ「バナナのデニッシュ」(税込284円)は、見た目からも香りの豊かさが伝わってくるようだ。トッピングのバナナはバーナーで所々に焼き色が付けられている。フルーツのフレッシュなイメージとはまた一味違う複雑な色合いだ。
 「果物も野菜も、そのままかじって食べても十分おいしいという考えのもと、できるだけ余計なことをしないようにして、商品作りをしています。食材の特徴を知って、そこにパンを合わせることで、よりおいしいものが作れたらいいなと思っています」(小林さん)

SHOP DATA
店名:ゴルジュ(GORGE)
住所:〒221−0825 神奈川県横浜市神奈川区反町3−23−1
電話:045‐321‐3550
営業時間:午前8時〜午後7時
定休日:日曜、月曜
品揃え:約50〜60品目
スタッフ:製造常時3人、販売常時2人
店舗面積:売り場約10坪、厨房約9坪
日商:約15万円



この記事の読みどころ

●子どもの頃よく遊びに来ては、祖父にパン作りを教えてもらった。
●原点となった祖父の店を全面改装したが、看板はそのまま残した。
●料理の要素をパンに取り入れ、食材の特徴を最大限に引き出す。
●パン作りのテーマは「香り」で、顧客には香り豊かなパンを提供したいと考えている。



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