リニューアル後の看板商品はカンパーニュ - 石窯パンハル上田店 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2023年7月号

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リニューアル後の看板商品はカンパーニュ - 石窯パンハル上田店
製造を一人で担う店主の春野里美さん
「石窯パンハル上田店」は商店街の一角にある
「カンパーニュ(大)」(税込1520円)など8種類のパンがショーケース内に並び、、「発酵スコーン(プレーン)」(税込220円)など2種類のスコーンがショーケースの上に並ぶ
「カンパーニュ(小)」(税込980円)
「2種レーズンのカンパーニュ」(税込1540円)
「全粒食パン」(税込390円)
消化吸収に優れていることも大事だと気付く

 長野県上田市の北陸新幹線上田駅から800メートルほどの商店街の一角にある「石窯パンハル上田店」。2019年10月、約7年間営業したベーグル専門店からリニューアルオープンした。
 「自家培養発酵種と薪窯でパンを焼く広島県の『ブーランジェリー・ドリアン』さんを訪ねたことが転機になりました」
 こう話すのは、同店と、隣の松本市にある店のパンの製造を一人で担う春野里美さん。
 リニューアル後は、新たに遠赤外線を発生する溶岩石を使用した窯(櫛澤電機製作所)を導入。「カンパーニュ(大)」(税込1520円)を看板商品に据え、「全粒食パン」(税込390円)や「北欧シナモンロール」(税込330円)、「あんバターサンド」(税込350円)、「発酵スコーン(プレーン)」(税込220円)など10種類のパンを製造販売している。
 パンに使う酵母も自家培養したものへと変更。乳酸菌を豊富に含む自家培養のサワードウだ。地元にある筑波大学山岳科学センターの調べによると同店のサワードウ1グラムあたりに乳酸菌が6億個あるという。
 「これまで、良質なパンを作るためには良い素材を使えばいいという考えでしたが、素材だけではだめだったんだと、ドリアンさんに気付かされたんですね。いい素材を使っても、食べたときにそれが消化吸収されなくては意味がないなと。それで乳酸菌をたっぷり含んだ自家培養のサワードウを使って、小麦の分解を促進することを意識した製法で作るようにしたんです。私自身も、ほかのパンを食べると胃にもたれるようなことがあるのですが、この製法で作ったパンはそうした負担を感じませんね。消化吸収に優れたパンになっていると思います」(春野さん)
 そしてリニューアルによって働き方改革が実現した。以前製造は夫の仁宣さんと2人で行っていたが、ベーグルは2人がかりでも一つひとつ成形に手間がかかり、今より大変だったという。
 「子どもが2人いるのですが、まだ小さいうちは一緒にいる時間を作りたいので、店舗の休みを増やして、さらに営業時間を短くしたいと思っていたんです。リニューアル後、作るパンを変えただけでなく、私と夫でそれぞれの適性にあった仕事の割り振りをしたことで、店舗運営の効率がかなり上がりました」(春野さん)

地元栽培の安全な小麦粉を使用する

 同店のすべてのパンは、同店から車で30分ほどの青木村の農家が自然栽培した「ゆめかおり」という品種の小麦の全粒粉を使用している。
 最も多く配合している「カンパーニュ」は、香ばしさと味に深みが増し、同じく配合量が多い「発酵スコーン」は、香ばしさに加えカリカリとした歯触りの良いスコーンに仕上がる。
 「自然栽培した小麦を使いたくて、自分たちで栽培したこともありましたが、ベーカリーの営業と並行するのは大変でした。その後協力していただける農家さんのおかげもあり、3年前から農家さんから自然栽培小麦をいただけるようになりました。その小麦を使用するのは当初、当店だけでしたが、今では、当店以外でも使用するベーカリーや菓子店が少しずつ増えてきました」(春野さん)
 春野さんは3年前に「KOMUGI(コムギ)365」と名付けた、生産者、パン・菓子職人、消費者による小麦の食文化を地域に根付かせる目的の団体を、農家の友人と設立した。
 小麦を自然栽培する人と、その小麦を使用してパンや菓子を作る人、それらを食べる人が互いを理解して協力し合い、それぞれの活動を続けていくことで、自然環境や人々の健康を永続的に守っていきたい、と春野さんは考えている。
 「今の目標は、『KOMUGI365』の活動を広く認知してもらうことです。そして自然栽培小麦の使い手を、県内外問わず増やしていけたらと思っています」(春野さん)
 月に1〜2回ほど、マルシェや小麦の収穫体験などのイベントを「KOMUGI365」の主催で開催し、認知度を高める努力をしている。



全粒食パンの生地を使用した丸パン。このパンの3個セットが税込390円。また、このパンは「あんバターサンド」に使用している
「あんバターサンド」(税込350円)。バターは乳製品不使用のもの、あんは自家製の粒あんを使用
「発酵スコーン(プレーン)」(左、税込220円)と「発酵スコーン(有機チョコ)」(税込250円)
イベントで知り合った人が経営する焼き菓子店の商品も販売している
リニューアル時に導入した遠赤外線を発生する溶岩石を使用した窯(櫛澤電機製作所製)
周囲とのつながりを活かした店づくり

 春野さんは2012年に上田市に移住した。その前は東京・高田馬場で20代のときに夫の仁宣さんと開業したカフェを約9年間営業。その間、東京・代々木公園で定期開催されていた朝市に出店し、有機野菜農家と関わる中で、地方移住を考えるようになっていった。場所は上田市の隣の松本市の農家と知り合ったことが縁となったという。
 「ここは外に出れば知り合いに会わないことはないというくらい、互いに顔見知りの多い町ですね。当店のある商店街は移住後、若い人も増えてきて活気が増してきていますし、イベントをしてもかなり盛り上がるようになってきました」(春野さん)
 同店の定休日は日曜と月曜だが、日曜は別の菓子店の販売スペースとして店舗を賃料なしで貸している。ただし借り手には同店のパンも一緒に並べ、販売してもらう。また、同店は閉店時間が午後4時なのだが、閉店以後は隣のゲストハウスが同店のパンの販売を引き継ぐ。
 「同業の方とは地域のマルシェなどで知り合ったり、情報交換したりします。お互い協力して何かできないかなどと考えたりしている中で、色々とアイデアが生まれますね。商店街の方々ともよく話します。こうした関係性を構築できるのは、地方ならではかもしれませんね」(春野さん)
 パンの販売はほかに、地元の道の駅に卸したり、オンラインショップでも行っている。約1年半前には松本市に販売店もオープンした。
 「定期的に開催していたマルシェでの販売がコロナ禍でできなくなったときに、販売先としての支店の開業を考えました。それまで、松本市でイベント販売していたときに『カンパーニュ』に対するお客様の反応が良かったことから、松本市に出店しようと決めました。フランス料理店も多いですし、ハード系に馴染みがある方が多いようです。昨年の売り上げも、上田店より松本店の方が良かったんですよ」(春野さん)
 松本店の販売は仁宣さんが担当。上田市の同店で焼き上げたパンを仁宣さんが車で運ぶ。
 「松本店はまだ始めて1年半ほどなので、様子見の段階ですが、上田店と同じように常連のお客様が増えてくるといいなと思っています」(春野さん)

SHOP DATA
店名:石窯パンハル上田店
住所:〒386−0012 長野県上田市中央2−11−19 グラスプ海野町?−A
電話:0268‐75‐0777
営業時間:午前11時〜午後4時
定休日:日曜、月曜
品揃え:約8品目
スタッフ:販売兼製造常時1人
店舗面積:売り場約4坪、厨房約5坪
日商:約4.3万円(松本店、道の駅、ゲストハウスでの売上も含む)



この記事の読みどころ

●遠赤外線を発生する溶岩石を使用した窯を導入。
●いい素材を使って消化吸収のいいパンを作ることが重要。
●夫婦でそれぞれの適正に合わせて仕事の割り振りを変えたことで、店舗運営の効率が上がった。
●生産者、加工業者、消費者を結ぶ活動を行う。





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