ラウンド食パンに特化した店を一人で営む - パン工房 Le Ble - ブランスリー電子版

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お店拝見/2022年9月号

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ラウンド食パンに特化した店を一人で営む - パン工房 Le Ble
一人で店を営む石川洋子さん
ラウンド食パン「プレーン」(税込580円)とその断面
ラウンド食パン「くるみ」(税込690円)とその断面
ラウンド食パン「チョコレート」(税込690円)とその断面
ラウンド食パン「黒豆」(税込730円)とその断面
ネット通販の詰め合わせセット。箱は梱包材を最小限にできるようにサイズを指定してオーダーしたオリジナル
誰かにあげたくなるパンが作りたかった

 「小学生の頃から、独立心が強いというか、一人で何でもやりたがる性格だったんです。手伝ってもらうのを嫌がっていましたね。一人だからこそ集中して、自分の思いを込められるのかなと思いながら作っています」
 こう話すのは、四国の瀬戸内海に面した愛媛県四国中央市でラウンド食パン専門店「パン工房 Le Ble(ルブレ)」を、一人で切り盛りする石川洋子さん。厨房の横に売り場は設けておらず、近所にある2カ所の産直市場での委託販売やネット通販を主な販売方法としている。
 専門店にした理由は「一人で、一つのものに集中して作っていきたいから」(石川さん)。開業にあたり、食パンに特化するところまで考えが煮詰まった頃、製パンの本でラウンド食パンを見た。「『誰かにあげたくなるパン』をコンセプトに決めていたので、丸太のような形を見て、『これだ』と思いました」(石川さん)
 ラウンド食パンのサイズは、直径約10センチ、長さ約26センチ。直売所で販売する際はカットしたハーフサイズ、ネット通販では丸ごと一本そのままの形で販売している。
 種類数は常時4つあり、「プレーン」(税込580円、ハーフ税込300円)と「くるみ」(税込690円、ハーフ税込360円)の2つが通年の定番商品で、残りの2つは、「チョコレート」「黒豆」「キャラメル」「抹茶大納言」「さつまいも」などから2種類がその時々で期間限定商品となる。「チョコレート」は税込690円、ハーフ360円。「黒豆」は税込730円、ハーフ税込380円。
 「『プレーン』以外の味については、老若男女の方に食べてもらえるように、『和』『健康』『甘味』をキーワードにそれぞれ一品ずつ考えて用意しています」(石川さん)
 使用材料は、北海道十勝産小麦、北海道産の生クリームとバター、ハチミツ、生イーストなど。
 「開業前に働いていたお店で教えてもらったレシピを元に、試行錯誤しました。毎日飽きずに食べてもらえる味にしようと思うと、使う材料がどんどん削ぎ落とされて、最終的にとてもシンプルになりました。十勝産小麦粉は3種類のブレンドなんですが、粉そのものを一種類ずつ舐めてみると、それぞれの味の違いに気付いて。中でも『キタノカオリ』に甘味があるなと思ったので、その甘味を活かせるようにレシピを組み立てました」(石川さん)
 ラウンド食パンの断面の見た目は、きめが細やかで均一だ。食感は、特にトーストすると綿菓子を連想させるほどふわふわ。甘さは、噛んでいくと後から感じられる程度で、チョコレートや黒豆などの甘い具入りの場合は、パン生地に入れる砂糖の量を減らし、全体の甘さを調整しているという。
 「自分の立ち位置は、生産者と消費者の間にあり、両者をつなぐ重要な役割があると思っています。ですので例えば、小麦粉の味を活かせるように努めることで、生産者の方の想いを、消費者の方へ伝えることができると思っています」(石川さん)

食パンブームに乗って味を覚えてもらう

 石川さんが開業したのはコロナ禍前の2019年12月。その後まもなくコロナ禍に入った。
 「産直市場での予約数が増えていきました。確実に購入したいと思われるお客様の数が、コロナ禍の影響で増えたのかと思います」(石川さん)
 また当時、食パン専門店の出店ラッシュが続いている頃でもあった。
 「近所にも全国チェーンの専門店がすでにあり、ブームの波を実感していました。『当店もこの波に乗りたい、食べてもらえるチャンスは今だ』と、ブームをポジティブに捉えていましたね。この機会に食べてもらって『この味なら飽きない』とか『クセになる』と思ってもらえたらいいなと。ブームには陰りがつきものなので、今のうちに当店の味をなんとか皆さんに植え付けることができたらと思っていました」(石川さん)
 売れ行きは開業当初から順調で、4種類合わせて一日40〜50本分を売り上げる。また、産直市場では、同店以外に4店ほど他のベーカリーの商品も並ぶが、ラウンド食パンの形状がほかのパンと大きく異なるため、同店専用の陳列場所ができた。
 「最初の頃は、初めてラウンド食パンを見たという方もいらっしゃって、『これ何ですか』とよく訊かれました。また、従来のパンコーナーに収まらない様子を見て、ラウンド食パン専用の陳列台を作って頂きました。しばらくすると、工房に直接買いに来られる方がちらほら出てきました。『焼きたてが食べてみたいと思って』と言って来てくれるんです」(石川さん)



ラウンド食パンの「プレーン」の生地の最終発酵をとっている様子
パンを製造している建物。売り場はないが直接購入に来る客がいる。手前の黒板は通常は建物の中に立ててある
産直市場の「じゃじゃうま市」での販売風景
十分な睡眠時間が取れるベーカリー運営

 現在の販売先別の売り上げは、産直市場場などの直売所が4割、工房が4割、ネット通販が2割となっている。
 「工房で販売するつもりは全くなかったので、看板すら出していないんです。ですから、商品ラベルの住所を手掛かりにわざわざいらっしゃった方がいたときはびっくりしました。口コミでどんどん広がって、工房に買いに来てくれる方がかなり増えました。製造は午後始めて、夜に袋詰めまで終えて、翌朝産直市場に自分で出荷しに行きます。工房に来られる方は、夕方焼き上がった直後に購入されるので、その時点で売り切れて、翌朝の出荷分がなくなってしまうということも、たまにあるんですよ」(石川さん)
 開業して2年半が経過したが、石川さんはこの先もずっとパン作りを続けていきたいという。そう思えるのは、無理せずこなせるスケジュールを作れたからだ。
 「睡眠時間をしっかり取れるように、一日のスケジュール立てました。睡眠時間が足りない状態が続くと、いくら楽しくても絶対に店を続けられないと思ったからです。開業したのは、子どもが社会人となり、家を出たタイミングです。だからこそ、自分の仕事を最優先にしたスケジュールを立てられたんですよね」(石川さん)
 また、一人で毎日厨房に立ってはいるが、心では一人だけとは思っていないという。
 「パン生地が変化を遂げていく様子はまるで生き物のようで、愛着がわくんです。分割時には生地に手を当てて『おいしくなあれ』と唱えます。このとき自分の心がとても清められるんですよ。そして、ミキサー、ホイロ、オーブンに『ありがとう』と、声をかけています。一緒にパンを作ってくれている仲間だと思えるからです」(石川さん)

SHOP DATA
店名:パン工房 Le Ble(ルブレ)
住所:〒799‐0431 愛媛県四国中央市寒川町63
電話:0896‐29‐5445
定休日:日曜、月曜
品揃え:4品目
スタッフ:製造常時1人
店舗面積:厨房約7坪
月商:約40万円



この記事の読みどころ

●一人だからこそ作業に集中して、自分の思いを込められる。
●丸太のような形を見て、「誰かにあげたくなるパンだ」と思った。
●「キタノカオリ」の甘味を活かせるようにレシピを組み立てた。
●食パンブームを「食べてもらえるチャンスは今だ」とポジティブに捉えていた。



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