原材料大高騰時代を生き抜く! - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
特集/2022年8月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


原材料大高騰時代を生き抜く!




適正な値上げが今は必要。夏以降順次値上げを実施する - トーホーベーカリー
オーナーで店長の松井成和さん
トーホーベーカリーの外観
一番人気の「GOLD塩バターロール」
小麦粉と油脂の値上げが最大の打撃に

――いま店で使用している原材料で値上がりしているものは何ですか?
 松井 小麦粉、油脂、砂糖、包装材料などです。
――その中で値上がり幅が大きいもののトップ3は何ですか?
 松井 小麦粉、油脂。油脂はカレーパンを揚げる時に使う油なども結構影響が出ていますね。
――これまでパンの値上げは何回しましたか?
 松井 もちろん創業時からでしたら、これまで何度も値上げをしていますが、今年は1月に行った値上げのほか、7月1日から2回目の値上げも予定しており、1年で2回の値上げを行うという異例の事態になっています。
 1回目の値上げの際には、商品全体のうち主力品を含めた7、8割を3%〜10%値上げしました。例えば一番人気の「GOLD塩バターロール」は5円、食パンは15円値上げしました。7月1日からからの値上げは順次、原材料の値上げ幅に対応した形で行っていく予定ですが、「GOLD塩バターロール」はさらに9円値上げし、食パンはさらに15円値上げする予定です。

商品ごとにレベルアップを図り、順次値上げする

――今後パンの値上げの予定はありますか?
 松井 7月1日からの値上げは全商品一斉ではなく、商品によっては時期をずらしながら順次値上げしていく予定です。実は、売り上げが落ちる夏に順次値上げしていくという形は今回が初めてです。そのため今回の値上げはこれまで行ってきた値上げとは全く異色のものと感じています。
 値上げの順番としては、まず食パンやブレッド系など金額的に値上げ幅の大きいものを先に上げて、菓子パンや焼き込み調理パンなどを後回しにしていく流れです。しかし、単純な値上げではなく商品としての価値を高め、バージョンアップした上での値上げを考えています。強力粉も、原価がほぼ変わらない範囲でグレードを上げて付加価値をつけるつもりです。
 商品の価値を下げたり、容量を減らした上での価格据え置きは避けたいですね。店の売り上げや利益にどれくらい影響するかという問題はありますが、適正な範囲内で値上げする事が今は必要だと感じています。

日常食のパンが高級品になるのは少し怖い

――原材料高騰への対応策で、パンの値上げ以外で、必要だと考えて実行する予定の事柄があればお聞かせください。
 松井 各種報道から消費者の理解も高まっている今このタイミングを逃さずに、適正な値上げを行う事はもちろん大切だと思います。
 ただもともと日常食として販売していたパンが徐々に高級品のようになっていくことには少し怖さを感じます。
 それでも、値上げと合わせて商品のブランド力を高めたり、その価値をPRしていく事はさらに必要となるでしょう。優秀味覚賞やカレーパングランプリなどを受賞した商品がある事などは伝えていきたいですね。
 さらに頻繁に行っているのは、記念日にひっかけた形での感謝セールです。トライアル購入していただく事で、セール対象商品のリピート率も上がるし、店の活気を継続していくことにもつながります。
 また、そのほか店の利益を考えた上での対応策としては、商品数を絞る事も必要だと考えています。現在、季節商品など細かい商品も含めると常時100品目位出していますが、そのうち一番売れ筋の定番商品群とその次の二番手商品群が8割強を占めます。これら8割から約10アイテム、残りの2割から約10アイテム減らせれば、店のオペレーションがゆったりすることで生まれる利益が大きくなるのではないかと思います。
――原材料価格の今後の動向はどうなると考えていますか?
 松井 まだまだ落ち着く段階ではありませんね。原材料価格の上昇がさらに続くようでしたら、またその都度検討していくしかありません。

トーホーベーカリー

住所:〒181-0013 東京都三鷹市下連雀1-9-19/電話:0422‐43‐6311/営業時間:午前7時〜午後6時/定休日:日曜、第3月曜、祝日/品揃え:約100品目/スタッフ:製造常時13人、販売常時7人/店舗面積:厨房25坪、売り場14坪/日商:平日80万円、土曜120万円



夏の長期休みでじっくり考え、今年中にもう一度値上げしたい - panya junya
店主の吉岡純彌さん(右)
panya junyaの外観
ランチタイムに向けて焼き上げられた惣菜パン
「panya junya」の店内の様子
今年1月の値上げでは、販売数量、客数とも変化なし

――いま店で使用している原材料で値上がりしているものは何ですか?
 吉岡 小麦、チーズ、油脂、包材などです。
――その中で値上がり幅が大きいもののトップ3は何ですか?
 吉岡 油脂、小麦、チーズです。
――これまでパンの値上げは何回しましたか?
 吉岡 3年前、消費税が10%に上がったタイミングで1回上げて以来はしていなかったのですが、今年1月に久しぶりに値上げをしました。
 ほぼ全商品が対象で、大体5〜10%上げたのですが、原価率の高いものは上げ幅を大きく、特に菓子パン類は利益率が減って苦しかったので、今回はさすがに多めに値上げしました。一方、具材のないシンプルなパンは低めの値上げ率に抑えました。
 値上げ前には店内の他、SNS上などでも告知をし、幸い冬場の需要期だったため値上げした分売り上げが上がり、客数や販売数量には影響がありませんでした。

売上が落ちる夏は避けて秋に再度の値上げを検討中

――今後パンの値上げの予定はありますか?
 吉岡 年末にさらに小麦の価格が上がる事を見越した上で、今年中にはもう一度上げたいと考えています。
 ただし、やはりパン屋の停滞期である夏は避けたいですね。当店でも毎年7、8月は売り上げが落ちるので、今年は長期の夏休みをとろうと考えています。
 今は報道の影響もあって値上げについての消費者の理解も進んでいるので、値上げ自体はしやすい環境にあるのではないかと思います。パンの原材料のほか、電気代などの光熱費も上がって店舗運営は厳しいので、長期の夏休み中に対策を考え直した上で、戻ってきてから秋頃にタイミングを見て値上げするかもしれません。

商品の値上げと同時に商品の高付加価値化も行う

――原材料高騰への対応策で、パンの値上げ以外で、必要だと考えて実行する予定の事項があればお聞かせください。
 吉岡 とりあえずこの夏はいつもより長い休みをとるので、その間に妻とじっくり話し合って、戦略を練り直そうと考えています。やはり田舎なのでもともと商品単価は低めに設定しているのですが、その中で、100円台の商品が減り、200円台の商品が増えてきていることには危機感を感じています。
 今はどちらかというと少量多品種生産で運営しているのですが、今後は季節や期間限定商品を増やすことで一度に出す商品数を減らしても良いのではないかとは考えています。
 また今年から一部、地元農家産の小麦を使った商品も作るようになったのですが、今後はこうした地産地消の商品をはじめ環境に優しく健康的な志向の商品を増やしていきたいとも考えています。値上げはやむを得ないことですが、お客様の負担が増えるのですから、こちらもその分、商品の付加価値を増やす努力が必要だと考えています。

今の段階では、はっきりとしたことはわからない

――原材料価格の今後の動向はどうなると考えていますか?
 吉岡 国際情勢は冷静に見守っていますが、落ち着いてほしいという思いはあっても、今の段階では、はっきりした事は何もわからないと思います。

panya junya

住所:〒639‐0251奈良県香芝市逢坂6‐736‐1/電話:0745‐78‐6868/営業時間:午前7時30分(土日祝は午前7時)〜売切れ次第終了/定休日:月曜、火曜/品揃え:40〜50品目/スタッフ:製造常時1人、販売常時1人/店舗面積:売り場約3・5坪、厨房約8・5坪



店の個性を強める事が一番の対策。目的買いの客を増やしたい - ベーカリーカルテット
店長の高崎俊介さん
ベーカリーカルテットの外観
人気商品の「雑穀ビアリー」
値上げで売り上げが減り、一旦その後の値上げは中止

――いま店で使用している原材料で値上がりしているものは何ですか?
 高崎 全般的に全て上がりました。
――その中で値上がり幅が大きいもののトップ3は何ですか?
 高崎 小麦、食用油、欧州産材料です。食用油はフライ用の米油が高くなりました。欧州産材料は物流費が上がった影響が大きいのではないかと感じています。
 欧州産の小麦粉やサワー種などを導入して、欧州の色が強い商品を強化していこうと思っていたのですが、やめて国産のものに切り替えようと思っています。
――これまでパンの値上げは何回しましたか?
 高崎 原価に対する適正価格を目指して、これまで何度も値上げを行ってきていますが、今年に入ってからですと、春に一度値上げをしています。
 ただすべての商品ではなく、食パン類のみ5、6品ほどを5%位値上げしました。
 その後、クロワッサンやデニッシュ、菓子パンなどの小物商品、ハード系、主力商品である雑穀生地のパンという順番で値上げしようかと考えていたのですが、春の値上げで販売個数も売り上げも減ったので、一旦値上げは中止することにしました。

秋、冬に物価と賃金上昇率を見てから値上げを検討

――今後パンの値上げの予定はありますか?
 高崎 売上が落ちる夏は避けますが、秋、冬に物価の状態と実質賃金の伸びを見てから値上げする予定です。春に食パンを値上げしたので、残りの商品を対象に順次値上げしていきます。
 その際には、順番として原材料の値上げ幅が大きいものから先に値上げしていきます。
 その方がお客様からは値上げの理由を理解してもらいやすいからです。同じ理由で春に食パン類を先に上げましたが、次にバターや油脂を使用したクロワッサンやデニッシュ、その次に菓子パンや惣菜パンなどの小物、ハード系の商品、最後に当店の主力である雑穀生地の商品群を上げるつもりです。
 雑穀生地の商品を最後にしたのは、雑穀は比較的値上げ幅が小さい原材料だというのが理由のひとつです。

主力の雑穀使用のパンをさらに強化していきたい

――原材料高騰への対応策で、パンの値上げ以外で、必要だと考えて実行する予定の事項があればお聞かせください。
 高崎 雑穀を使用したパンを多く展開している事が当店の強みなので、そこをさらに強化していくことで、目的買いのお客様をさらに増やせればいいなと考えています。各商品の値上げ幅は原価の上昇の程度に対応した形で、そのまま上げるつもりです。
 もともと原価の高い商品は目的買いのお客様がついている感じなので値上げの影響をあまり受けないと見ています。
 値上げはしても、それを補って余りある程度に、店の個性と強みを強化する事が一番の対策と考えています。
 さらに長期的には、人材育成のあり方や、Eコマース、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの強化も考えていきいたですね。

原材料高騰が、日本人の値上げへの寛容さを高める

――原材料価格の今後の動向はどうなると考えていますか?
 高崎 まだ上昇していくかもしれませんが、正直、原材料が高騰してきていること自体には、それほどの危機感を感じていません。
 海外の現状と比べると、日本人はまだインフレに慣れていないので、インフレを許容する余地はあるように思えるからです。
 大変と言えば大変なのですが、デフレがこのままずっと続くよりかは良いかと思います。日本人全体がもっと商品の価格を上げていくことに寛容になっていった方が、経済の循環上は良いので、あとは実質賃金が連動して上げられるように、賃金交渉がしやすい流れが作られればいいなと思います。

ベーカリーカルテット

住所:〒144-0047 東京都大田区萩中2-7-12 ST萩中101/電話:03‐6715‐1370/営業時間:午前8時〜午後7時/定休日:火曜/品揃え:約60品目/スタッフ:製造常時1〜2人、販売常時1〜2人/店舗面積:売場6坪、厨房20坪/日商:平日12万円 土曜、日曜16万円



原材料高騰は止められないが、知恵を絞って対応策を見つける - 川越ベーカリー楽楽
店主の上野岳也さん
川越ベーカリー楽楽の外観
1番人気の「お味噌のパン」
あらゆるものが値上がりしていて、もう一杯一杯

――いま店で使用している原材料で値上がりしているものは何ですか?
 上野(上野岳也さんの妻で会計担当の祐子さんが回答) 主原料の小麦、ショートニングや揚げ油で使う油脂、サンドイッチに挟むソースで例えばタルタルなど。それからピーナッツバター、イースト、味噌、チョコレート、クリーム類、クリームチーズ、ドライフルーツ、オレンジピール、餡子、胡麻餡、サラダの材料、澱粉、チョコチップ、レーズン、手袋、包装資材に至るまで、あらゆるものが値上がりしていて、もう一杯一杯という感じです。
――その中で値上がり幅が大きいもののトップ3は何ですか?
 上野 上がり幅が大きく使う量も多いという意味では、特に小麦、油脂、くるみなどのナッツ類が顕著に上がっているという感じです。
――これまでパンの値上げは何回しましたか?
 上野 今年16周年なので、創業時からですと値上げは何度もしています。ただ昨年夏位からかつてないくらい原材料価格が上昇し、その結果、今年の1月に一度値上げをすることになりました。全商品を、全体で大体10%位の値上げをした形です。

品揃え全体の平均で10%の値上げをしたい

――今後パンの値上げの予定はありますか?
 上野 ここまで何もかもが高騰すると、今年中にもう一度値上げせざるを得ません。きちんと原材料が高騰した分を価格に組み込んだ適正価格までシビアに値上げしていかないと、売れるほど赤字が増えることになってしまいます。
 今であれば、社会情勢についての報道もあるし、消費者の値上げについての理解を得やすいのではないでしょうか。
 値上げすれば、売り上げに影響が出るとは思いますが、その時はその時でまた別途対策を立てていくしかないですね。
 当店の場合、価格を決める際に、230円、300円、340円というように、段階的にいくつかの価格を設定し、その中で各商品の原価や特性を見てふさわしい価格を当てはめていくという方法で値付けを行っています。全体で10%の値上げをする場合は、各商品の原価を書き出して、値上げ後の価格でも原価率が高くなってしまう商品があれば、原価率が低い商品がカバーする形で全体の原価率が適正になるように調整していくという作業を行います。
 商品の特性によって値上げ率を大きく変えるという選択もありますが、今はもう何もかも原材料が高騰している状況なので、値付けの方法は今まで通り段階的な設定価格を組み合わせていく形で、全体の平均で10%の値上げができるように持っていきたいと考えています。

値上げの際にデータをとることが、その後の参考になる

――原材料高騰への対応策で、パンの値上げ以外で、必要だと考えて実行する予定の事項があればお聞かせください。
 上野 値上げ以外は何もできないと考えていましたが、よく考えてみれば、価格を決める際にその都度しっかり原価計算をしてデータを残していくことや、売り上げや利益率などの見積もりなども、その都度しっかりデータを出し、情報を共有していくことなどで、ノウハウが蓄積され、大きな財産になると思うようになりました。
 値上げの際には、プライスカードを作り直したり、売り場を作り直し、データも更新するなど、それに伴う様々な作業があり、手間もかかります。しかし信頼できる良いスタッフに恵まれているため、なんとか助けられてやってこられているのが不幸中の幸いです。

できる限り赤字を防ぐ対応を続ける

――原材料価格の今後の動向はどうなると考えていますか?
 上野 できれば来年以降は原料高騰も落ち着くと思いたいですが、どうなるかはわかりません。
 ただ、原料高騰などの諸事情はいかんともしがたいの現実です。皆に支えられていることを肝に銘じ、地道に原価計算するなどして、できる限り赤字を防ぐ対応ができるようにしていくつもりです。

川越ベーカリー楽楽

住所:〒350‐0062埼玉県川越市元町2‐10‐13(菓子屋横丁内)/電話:049‐257‐7200/営業時間:午前8時〜午後5時(平日)、午前7時30分〜午後5時(土曜、日曜、祝日)/定休日:基本的に無休(不定休あり)/品揃え:約60品目/スタッフ:製造常時3人、販売常時平日1人、週末2人/店舗面積:売り場4坪、厨房9坪

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら