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| 特集/2002年6月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| どうしていますか?ロスパン対策! ベーカリーにとって、ロスパンは悩みの種だ。「ロスパン対策」について、ベーカリー6軒を取材したところ、
売れ残ったパンを有効利用する方策を、何段階にもわたって講じている様子が浮き彫りになった。 |

| ロスを恐れるより、売上目標を達成したい - ブランジェ・アプレ | |
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「新商品を考える場合に、『2次利用しやすい』という条件も重要だと思います」
埼玉県北葛飾郡のベーカリー、ブランジェ・アプレの三石佳男オーナーはこう話す。 同ベーカリーは、販売量が極端に減ることが確実な日以外は、目標の売上分のパンを毎日作る。「売れ残ることを恐れるより、作ったパンを売り切る努力をすることの方が大事」との考えからだ。 とはいっても、作ったパンをその日のうちに完売させることはむずかしい。営業時間内に売れなかったパンを有効利用する方法をいくつも用意している。 残ったらその日のうちに出張販売 三石オーナーは、閉店後に、閉店時点で棚に並んでいるパンを番重に入れて車に積み込み、車で5分程度の場所にある建築会社に売りに行くことがある。1回の出張販売で、番重の数にして、3つから4つ。ちょうど1万円分ぐらいのパンだ。「知り合いの建築会社なんですけれど、定価で販売します。消費税はとりませんが…。多くの場合ほとんど完売してしまいます」と三石オーナーはいう。 店を出るのは午後7時半ぐらい。建築会社の中に4〜5カ所の販売ポイントがある。購入するのは男性が多く、「夕食と夜食の間に何か食べたいという人が多い」(三石オーナー)という。「普段は調理パンがよく売れ、月末になると甘いパンがよく売れる」(同)。 売りに出るのは、残ったパンが8千円分以上の時と決めているため、毎日は出かけない。 残ったパンだけではなく、顧客の好みを考えて、出張販売用に用意したパンも持っていく。「毎日来てほしいとよく言われるんですが、売るパンがない場合はしょうがないですから。それと、毎日行かないから、飽きられないということもあると思うんです」と三石オーナー。現在、閉店後の出張販売先が2カ所ある。 「閉店してから売りに行くのは、結構きついのですが、翌朝、店に前日のパンがあるより、なるべく当日に売ってしまった方が気分がいいし、張り合いがでますから」 翌日サービス品として販売 閉店後の出張販売でも売れ残ったパンは、翌日、サービス品として半額で販売する。また、閉店時に残ったパンが8千円分以下の場合は出張販売には行かずに、翌日のサービス品にまわす。 しかしこの場合は、パンの特性を十分に考慮する。「例えば卵を使ったクリーム入りのパンなどは、衛生上問題があるし、揚げものなんかは味の面で問題があるので、翌日のサービス品にはしません。次の日食べても味に面で許せる商品だけを対象にします」と三石オーナーはいう。 「翌日のサービス品にはできない」と判断したパンが残った場合は、従業員に配る。 「従業員に配る場合も、十分な配慮が必要なんです」 一人に多く配らないことや、毎日配らないことなどが大事だという。 「あの店はいつもパンが売れ残るという噂がたったら大変ですから」 現在のところ、ブランジェ・アプレでは、従業員にパンを配ることはほとんどないという。 残ったドックパンでソフトラスク ブランジェ・アプレでは、残ったフランスパンを使って、フレンチトーストを作ったり、残ったドッグパンを使ってソフトラスクを作ったりと、パンを再生することについても心得ている。ドッグパンはソフトラスクにすることを考えて、ごまなどの練り込み材料は一切使わない。 「商品開発の時点で、売れ残った場合のことも考えておくことが必要だと思います。もちろん、残った場合のことは一切考えずに、好きなように作る商品も必要ではありますが…。その辺のバランスが大事だと思いますね」と三石オーナーはいう。 ブランジェ・アプレでは、製造段階で失敗した場合以外は、これまでパンを捨てたことがないという。 |

| カビが生えない限り捨てない。卸中心で翌日の状態にも配慮
神奈川県横浜市のベーカリー、デニッシュハウスは、「体にやさしい」パン作りが信条のベーカリーだ。
自然食系のスーパーなどへの卸販売が8割を占める。 「ロスパン対策は?」との質問に、オーナーの野村忠男さんは、「翌日店舗の外に陳列して、6割程度の価格で販売します。これが売れ残ることはほとんどありません」と答える。 注文販売が大半を占めるため、ロスは出にくいのだが、「当然注文数よりは大めに作りますので、パンを、作ったその日にすべて売り切ることは不可能です。小売も2割はありますしね」と野村さんはいう。 翌日になっても味が落ちないパン 野村さんが、作った日に売れなかったパンを廃棄処分にせずに、翌日値引き販売するには訳がある。 「ウチは翌日になっても、それほど味が落ちないパンが多いんですよ。卸販売がメインなので、翌日食べることをある程度想定して作っているパンも多いですから」と野村さんはいう。 ライ麦粉や全粒粉を多く配合した「田舎パン」(380円)、5つの黒い穀物などの粉末を混ぜ合わせた「黒五」が入った「黒五ブレッド」(ブレッド形で1斤半380円)、小麦粉、酵母、塩だけで作る「無脂無糖パン」(ブレッド形で1斤半370円)などのパンは、翌日食べても十分おいしいのだそうだ。 菓子パンや調理パンを翌日値引きして販売することはないという。 「ウチのパンは翌日トーストして食べれば十分おいしいことをわかっていただいているお客さんも多いんですよ」と野村さんは話す。 廃棄することには抵抗を感じる 野村さんが、翌日の値引き販売をするのは「食べ物を捨てることが感覚的に耐えられない」からでもある。 「ものがない時代に育ったせいか、どうしても食べ物を捨てることができないんです。カビが生えない限りは捨てませんね」 |

| 売れる量が製造キャパを超す。顧客の来店時間が早まる - パン・ド・ラサ | |
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東京・世田谷区のベーカリー、パン・ド・ラサは、ここ半年の間、閉店時点で残っているパンは作った量の1%程度だという。作ったパンすべてを売り切る日も少なくない。
遅い時間帯には品薄になるが… オーナーの田中朗さんに聞くと「以前は、売り切れると思われる量より少しだけ多めに作って、売上を少しずつでも伸ばそうと努力していましたが、ここ半年はお客様の買う量が製造のキャパを超えているように思います」。 こうした状況は、顧客の来店時間を全体的に早める。 「閉店時間近くに来店して、目当てのパンがなかったお客様は、次はもう少し早い時間に来るようになります」と田中さんは説明する。 遅い時間帯には品薄になることを意味するが、田中さんは「結局目当ての商品を買いたい人は早く来てください、ということになってしまうので、こちらの都合を優先させているといわれても仕方がないのですが、そこは考え方だと思います」。 無理に作るより売り切った方がいい パン・ド・ラサでは、7時30分の開店と同時に1日の製造量の約60%のパンが並ぶ。 一番遅い焼き上がりが午後3時ぐらいだ。 おおむね午後4時30分には、およそ80%のパンが売れてしまう。 「遅い時間帯に来るお客様のために、ある程度ロスを覚悟で商品を揃えておくより、なるべく早く売り切ってしまった方がいい、という判断なんです。どうしても遅い時間にしか来られないお客様には大変申し訳ないと思うのですが、これ以上作る量は物理的に増やせないし、過度の無理をするとそれがパンに現れて、かえってお客様のためにならないと思うんです」 |
| 残ったパンで人気商品を作る。閉店1時間前のセールに固定客 - シェルブール
大阪府境市のシェルブールは、地下の食品街フロアにある。大手スーパーと専門店街が同じフロアに同居し、同スーパーのインストアベーカリーが、シェルブールの真向かいにあるという激戦地だ。
路面店とは少し違うさまざまな方法で、ロスパンを出さない工夫をしている。 閉店前のセールに固定客 同食品街では、閉店1時間前になると、各売り場で、値引き販売が始まる。シェルブールも同様だ。通路にワゴンを出して、そこにパンを陳列する。値引率は商品によっても違うが約20%。 同ベーカリーのオーナー、橋川さんは「閉店1時間前の固定客がいるんですよ。ですから、残りそうなパンだけを並べるだけでは物足りないので、値引き販売用にパンを作らなくてはならない場合もありす」と話す。 菓子パン、デニッシュ、調理パンなどが割り引き販売の対象になる。シェルブールにとって、売上の1部として重要な要素になっているという。 食パンは翌日の午前中まで定価販売 食パンは、焼いた当日売れ残ることはほとんどない。まれに残った場合でも、翌日の午前中に販売する。品質の面で商品価値が落ちないと判断しているからだ。 したがって、食パンは閉店1時間前の割引販売にはまわさない。 菓子パン、デニッシュ、調理パンなどは、閉店1時間前の割引販売でほぼ完売するが、それでも残った場合は、調理パンなどを除いて、翌日袋につめて、サービス品として4割引程度で販売することもある。 「再生パン」に多くの人気商品 こうした方策を経てなお残ったパンも、再利用する方法はたくさんある。 例えば、「プチフール」という商品。まず、焼き上がりから1〜2日たったデニッシュやクロワッサンを、細かく砕いてくるみと混ぜ合わせる。さらにグラニュー糖を多めに混ぜ込んで、天板に敷き詰める。その上にメロンパンに使うビス生地をかぶせて焼き上げるのだ。 多めに入れたグラニュー糖がカラメル状になって固まり、ビス生地との相性がいい。4センチ四方程度に切り分けて販売する。 「お菓子感覚の商品で、人気があるんですよ」と橋川さん。 フランスパンは、5センチ程度の厚さにカット。中央に1センチ程度の深さのくぼみを作って、そこにたまごサンド用のたまごを入れ、マヨネーズを絞る。下側1センチ程度まで、フレンチトースト用のアパレイユに浸して、軽く焼成する。 名づけて「フレンチエッグ」。かなりの人気商品だそうで、残ったフランスパンだけでは足りず、この商品用にフランスパンを焼くこともしばしばだ。 調理をパン除いて廃棄はほぼゼロ パンの種類をあまり選ばない「再生商品」もある。1〜2日たった菓子パン、調理パン(フィリングや具材は取り除いて)やデニッシュを刻んで、油脂と混ぜ合わせ、デニッシュなどの2番生地に巻き込む。それを天板に敷き詰めて焼き上げ、粉糖をふるなどして仕上げる。 「残ったパンで作ったという印象を与えてしまってはダメだと思います」と橋川さんはいう。 シェルブールの「再生パン」は、その多くが人気商品になっている。 橋川さんによると、廃棄処分になるパンは調理パンなどを除いて、ほとんどないという。 |
| 残ったハード系のパンを商品の見本として活用 - 時之栖パン工房 | |
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静岡県伊豆・修善寺の温泉施設、百笑の湯に併設されるベーカリー、時之栖パン工房では、入り口の脇にワゴンを置いて、残ったハード系のパンを見本として陳列している。温泉に入ってくつろいだあと、帰路につく人たちに対して、客引きの効果を狙ったものだ。「商品と間違える人も多いようです。子供さんなんかは食べようとする場合もあるので、袋詰にしてあります」と責任者。
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| 朝の開店後数時間で「その日の勢い」がわかる - Pベーカリー(名古屋市)
愛知県名古屋市のPベーカリーのオーナーは「朝開店してから1〜2時間で、『その日の勢い』が感じ取れるんです。それで大体その日にどれくらい売れるかがわかりますね」と話す。
仕込み回数で製造量を調整 同ベーカリーは、大きな季節変動のほかに、「TVでパンの特集番組が放映されたあと」「株価が上昇してから少し時間がたったとき」などに売れ行きがよくなることなどを念頭に置いて、その日に作る量を大まかに決めるが、朝開店してからの数時間で感じとった勢いによって、さらに具体的に作る量を調整する。予想に反して急に強い雨が降り出したときなどにも、製造量を自在に変更する。 その秘密は、仕込み回数の多さにある。例えば食パンの場合。最も定番の「白い食パン」(オーナー)の場合、多いときで1日10回程度仕込むという。1日の途中で天候が急変した場合なども、仕込み回数を調整することで、簡単に製造量を調整できるというわけだ。食パン類はこのほかにも、ライ麦粉が入ったものなどおよそ10品目あり、それぞれ1回の仕込み量は少ないという。 パン職人についた顧客 同オーナーは、Pベーカリーをオープンする前に、同じ愛知県内の別の場所でベーカリーを任されていた。独立してPベーカリーをオープンしたところ、以前任されていたベーカリーの顧客が足を運んでくれるようになった。「出張販売してくれないか」「こっちにも店を出してくれないか」などの声が上がり、「それならば、注文をもらって、出向いていこう」と、オーナーの妻がパンを積んで車を走らせることになった。 販売のポイントは、企業や学校などおよそ15カ所あり、週に4日程度、順番に廻る。その際に注文を受けている商品以外に、前日作ったパンを持っていくこともある。もちろん前日のパンであることを告知して価格を割り引く。「みなさん、販売ポイントに集まってきていただいて、注文商品以外にも、買っていただけることが多いんですよ。ありがたいことだと思っています」とオーナー。 それでも残った場合の、最終販売ポイントは、オーナーの自宅だ。「電話をすると、買いにきてくれる本当に親しいお客さんもいるんです」(オーナー) |
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