冷蔵発酵法の威力 - 時之栖パン工房 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2002年6月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


冷蔵発酵法の威力 - 時之栖パン工房

時之栖の外観(右手がパン工房、まっすぐ行くと温泉がある)
冷蔵発酵法を最大限に活用して、パンの品質と労働条件の両方を向上させる努力をするベーカリーが、伊豆・修善寺にあった。ベーカリー専門コンサルティング業の橋本泰之さんが、教え子の澤野亮店長と共にプロデュースする時之栖パン工房(ときのすみか)だ。同ベーカリーは、地ビールの御殿場高原ビールやホテル時之栖などを経営する時之栖(庄司清和社長)が昨年7月にオープンした温泉レジャー施設、万福百笑の湯の中にある。

住所 静岡県田方郡修善寺町瓜生野410‐1
電話 0558-74-1700
営業時間 午前10時〜午後8時



冷蔵中種法を重要視。モルトの働きに着目

入店すると、ランスパンを陳列するケースが目を引く。


ブルーベリージャムをたっぷりと練り込んだ「ブルーベリークリームチーズ」の生地


製造スペースは広く、ゆったりとしている


右から橋本さん、店長の澤野さん、フロアチーフの中根和文さん
「おいしいパンを作るために冷蔵発酵法は最適の製法だと思います」と橋本さんは話す。「それとパン屋さんは、もう少し余裕を持って仕事をしないと。遊ばないといいパンはできませんよ」
時之栖パン工房では、仕込む生地約20種類の多くを冷蔵の温度帯で長時間発酵させる。例えば菓子パン生地。橋本さんが「70%冷蔵中種法」と呼ぶ製法で、小麦粉を70%配合した中種を約30分常温で発酵させてから、冷蔵(3度C)で長時間(オーバーナイトで)熟成させ、翌日本捏ね後、30分で分割。通常の方法で2時間半程度中種を発酵させて本捏ねに移る場合よりも、生地の香りが増し、いい結果が得られるという。
橋本さんは中種が1晩冷蔵の状態にある間に、モルトが果たす役割に着目している。橋本さんによると、小麦粉にはパンの香りを出す上で、重要な働きをするαアミラーゼが少ないので、それを補う意味があるのだという。
「冷蔵中種法の場合は、中種にモルトを配合することがパンのおいしさを引き出すために重要だと考えています」と話す。



冷蔵中種法は「おいしい製法」。パンの品質を高めてしかも効率化

スペイン製の石窯を導入


さまざまな食材を販売する「手作り工房」(入り口を入って左手=写真奥=がパン工房になっている)
橋本さんは「冷蔵中種法は、スタッフが余裕を持って働くことができるという利点もあります」と話す。仕込みが集中することなどもなくなり、きちっと指導すればパートでも仕込みや窯などが十分にこなせるのだという。
「冷蔵中種法は、製法自体がおいしい」ともいう。一流のパン職人ではないパートのスタッフに製パン工程のポイントを任せたとしても、「製法自体がおいしい」ので、それなりのパンになる、という考え方だ。実際、時之栖パン工房の製造スタッフ常時4人のうち社員は澤野さんだけだ。澤野さんの管理のもとで、パートスタッフが窯や仕込みなどをいきいきとこなし、「80点のパンを安定的に出している」(橋本さん)。
一方で橋本さんは「おいしいパンを作りたい、おいしいパンを食べてもらいたい、と心から思っていなければ、冷蔵発酵法は何の意味もありません」とくぎをさす。「単に製パン作業を楽にしたいだけで冷蔵発酵法を導入すると必ず失敗します」
このことを肝に銘じた上で、時之栖パン工房では、さまざまな面から製パン作業の効率化を図っている。 
野菜をカットする作業に4時間かかっていたが、フードカッターを導入して効率化した。にんにくの下準備に手間がかかっていたが、刻んだにんにくを仕入れるようにして時間短縮を図った。「おいしいパンを作りたいという思いがあれば、どこを効率化すべきかが見えてくると思います」と橋本さんはいう。



スペイン製の石窯を導入。パンの食べ方を積極的に提案

主にハード系のパンはショーケースに陳列


陳列棚には多くの種類のパンが並ぶ


売り場の一画に、80円のパンだけを集めたコーナーもある。名づけて「80円バイキングコーナー」。
時之栖パン工房は、温泉施設に併設された「手作り工房」の1画にある。「手作り工房」は、時之栖のグループ会社が製造したさまざまな食材などを中心に販売する店舗だ。
パン工房ではスペイン製の大きな石窯を導入、店の外からも、店内からも見える位置に設置され、来店客の目を楽しませている。
陳列棚に所狭しと並べられたパンを、客は買い物かごに入れ、「手作り工房」全体のレジで、パン以外の買い物といっしょに清算する。
主にハード系などはショーケースに陳列。客は販売スタッフと対面でパンを注文して受け取り、買い物かごに入れる。橋本さんは「このときに客と交わす会話の中で、パンの食べ方を積極的に提案していきたいんです」と話す。
温泉を楽しみにきた人たちが帰りがけに立ち寄るケースが多い。店が最も混み合うのはいつも午後3時頃だ。
同ベーカリーをプロデュースしたのは、コンサルティングなどを手掛けるレーヴ社長の橋本泰之さんで、月に数日、厨房に入る。店長の澤野さんとは、教え子と先生の関係だ。



さわやかな紫色が印象的


ブルーベリークリームチーズ
ブルーベリーのジャムを生地に練り込んだパン。鮮やかな色合いが印象的。150円。
【配合%】
▼中種
スーパーカメリヤ 70
イースト 2
ブルーベリージャム 40
水 10

▼本捏ね
スーパーカメリヤ 30
砂糖 6
食塩 2
マーガリン 8
脱脂粉乳 2
イースト 0・5
卵 10
水 22

【工程】
▼中種
ミキシング L3分M2分、
捏上温度 26度C、
発酵 2時間後、つぶしてから冷蔵庫で1晩

▼本捏ね
ミキシング L3分M3分MH5分(マーガリン投入)L3分M5分、
捏上温度 28度C、
発酵 50分、
分割 50グラム、
ベンチタイム 25分、
成形 20グラムの▼クリームチーズフィリングを包む。
ホイロ 36度C85%50分、
焼成 上火170度C下火220度C16分

※中種を仕込んだあと、常温で2時間発酵させ、平らにつぶして3度Cのドウコンでさらに翌朝まで低温発酵させる。
※翌朝生地を出してちぎって小さくしてから本捏をする。
※生地の糖分が多いのでミキシングはしっかりと。
※糖分が多く発酵が遅いので、フロアータイムは少し長めに取る。
※ホイロ前に卵を塗って、ソボロをふりかける。
※窯伸びがいいので、ホイロの高さに気をつける。
※生地の糖分が多く焦げやすいので注意(特に上火には気をつけてパンの色を大切にする)。

▼クリームチーズフィリング=クリームチーズ100、生クリーム20、レモン汁1個半分(クリームチーズ1キロに対して)の割合で混ぜ合わせたもの。焼成すると細かな固まりができて、独特の食感になる。

バターがしみたところと、しみていないところの食感の対比が面白い
ブッタークーヘン
生地のあちこち8カ所にバターを充填して焼成。冷やして食べてもおいしい。180円。
【配合%】
▼中種
スーパーカメリヤ 60
イースト 3
上白糖 5
牛乳 15
水 20

▼本捏ね
スーパーカメリヤ 30
薄力粉 10
砂糖 10
食塩 1・5
バター 30
脱脂粉乳 3
全卵(中身) 30

【工程】
▼中種
ミキシング L3分M2分、
捏上温度 25度C、
発酵 2時間

▼本捏ね
ミキシング L3分M6分(バターの一部投入)L1分(残りのバター投入)L1分M5分、
捏上温度 26度C、
発酵 冷蔵(3度C)1時間以上、
分割 120グラム、
ベンチタイム 15分、
成形 直径約16センチの円盤状にのばす、
ホイロ 32度C80%40分、
焼成 上火210度C下火200度C12分

※60%中種なので発酵時間は2時間。
※中種を翌日まで引っぱりたいときは、常温では発酵をとらずに、そのまま3度Cの冷蔵庫で翌朝まで低温発酵させる。本捏はミキシングをかけ過ぎない。捏上温度を抑えるために小麦粉や副材料は冷やしておく。
※捏上後、分割する前に冷蔵庫で冷やして生地を安定させる。
※成形は麺棒で均一に伸ばす。
※成形で負荷をかけないため、ホイロでの発酵が早くなるので気をつける。
※焼き色をあまりつけないようにする。焼成後、粉糖をかけるので、焼き色に注意。
※ホイロ後、生地のあちこち8箇所に有塩バターを充填し、上面にスライスアーモンドとグラニュー糖をふって焼成。
※焼成後、側面から2枚にスライスして、自家製カスタードをサンドする。

原価計算女王
原価計算女王
ライ麦粉80%配合の酸味の強いパン。表面のひび割れが美しい
ベルリーナ・ラント・ブロート
ドイツの家庭でよく作られるパンで「田舎パン」とも呼ばれる。表面のひび割れが美しい。ライ麦粉80%配合の酸味の強いパン。5ミリ程度の厚さにスライスしてバターやチーズを塗って食べる。350円。
【配合%】
スーパーカメリヤ 20
ライ麦粉 55
サワー種 50
イースト 2
食塩 2
水 48

【工程】
ミキシング L3分M1分、
捏上温度 27度C、
発酵 0〜5分、
分割 500グラム、
ベンチタイム 5分、
成形 ナマコ形、
ホイロ 30度C75%50分、
焼成 250度C→210度C40分(スチーム注入後5〜6分でダンパーを開ける)

※サワー種はライ麦全粒粉と水から5日間程度かけて起こす。水温、時間、温度に気をつける。
※サワー種のライ麦粉と合計するとライ麦粉は80%になり、ベルリーナ・ラント・ブロートなる。
※ライ麦はグルテニンが無くグルテンができないのでミキシングはかけ過ぎない。
※分割、成形は短時間で行う。
※生地が手につきやすいので、ライ麦粉を使用して合わせるように成形する。
※グルテンがないため、発酵で生地があまり起きすぎると、生地落ちしやすいので気をつける。
※焼成の際のスチームは多めで、5分ぐらいしたら蒸気を一度抜いて焼き上げる。
※焼成後、パンの香りを良くするために、軽く霧を吹く。

自家製カレーと鶉の卵とふくじん漬け


焼きカレー
自家製カレーフィリング、鶉の卵、ふくじん漬けを包んだ焼きカレーパン。120円。
【配合%】
スーパーカメリヤ 80
グラハム粉 20
イースト 2
食塩 2
砂糖 4
バター 5
脱脂粉乳 3
BBJ(改良剤) 0・05
モルト薄液 0・9
水 66

【工程】
ミキシング L4分M3分(バター投入)L1分M2分、
捏上温度 25度C、
発酵 2時間(1時間30分の時点でパンチ)、
分割 50グラム、
ベンチタイム 15分、
成形 ▼カレーフィリング30グラム、ゆでた鶉の卵1個、ふくじん漬け5グラムを包む。
ホイロ 36度C80%40分、
焼成 上火210度C下火200度C(スチーム注入)

※ホイロ前に卵の白身を塗ってパン粉をつける。

▼カレーフィリング
【配合グラム】
▼カレールー
ラード 100
薄力粉 100
SBカレー 15 
CBカレー 15

▼カレー本仕込み
サラダ油 100
ニンニク 30
しょうが 40
玉ねぎ 600
にんじん 150
ジャガイモ 150
牛ひき肉 500
SBカレー 5
完熟トマト 150
ブイヨン 500?
クミン 5
カルダモン 1
ターメリック 1
コリアンダー 1
ローリエ 2
塩、コショウ 少々
ウスターソース 50
醤油 10
ケチャップ 100

【作り方】
▼カレールー
(1)鍋にラードを溶かして薄力粉を振るって入れ、 弱火で炒める。(きつね色にする、焦がさない)
(2)きつね色になったら火からおろしてカレー粉を加えてからもう一度軽く火にかける。

▼カレー本仕込み
(1)別の鍋にサラダ油をひきニンニク、ショウガ、玉ねぎ(みじん切り)を加えて透き通るまで炒め、その後にニンジン、ジャガイモを入れて、炒める
(2)ひき肉を[1]に入れ、カレー粉も入れて炒める
(3)[2]に残りの材料を加えて煮込む
(4)[3]の中にカレールーを入れて粘度をつける
(5)最後に味見をして味を調える
(6)冷蔵庫に入れて固めてから包む。

※野菜類はすべてみじん切りにする


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