アメリカのインストアベーカリーを分析する / - ブランスリー電子版

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海外情報/2002年6月号

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アメリカのインストアベーカリーを分析する


地域特性を考慮したマーケティング
アメリカの平均的な消費者は、食品の69%を近所のスーパーマーケットで購入するという調査結果がある。ちなみに「平均的な消費者」とは年齢が35歳、年収が5万ドル(約650万円)、最終学歴は短大以上、扶養家族は2人、大都市の周辺にある住宅地に住んでいるという設定である。
実際にはこのような調査を行う都市というのは市場調査を行う会社によって選定されるのだが、西海岸のサクラメント、中部のテキサス、中西部のアリゾナ州フェニックスなどが選ばれるようだ。日本の場合も同じようであるが、東京都江戸川区西葛西がそのひとつとして選ばれることがあるそうだ。ここは平均的な人々が多く住んでいるようだ。またパン作り教育の殿堂もあるのは偶然の一致といえよう。
筆者もアメリカ各地を旅行する機会が多いが、住んでいる人種、食嗜好に地域差がある事を見聞している。例えば、南部の黒人の多い都市では甘味のドーナツやケーキがよく売れるが、ベーグルやサワドウブレッドなどはほとんど売れない。ところがニューヨークやロスアンゼルスの北地区などではベーグルは人気商品だが、甘味の強い物は売れないという。このような地域特性を考慮したマーケティングや商品開発が重要視されるようになった。ちなみに日本の国土面積の25倍もあるアメリカは次のように地域を区分している。
▼ウエスト(西部)
▼ノースセントラル(中北部)
▼サウスセントラル(中南部)
▼ノースイースト(北東部)
▼サウスイースト(南東部)
また参考までにウエスト(西部)はアメリカ最大の流通業の激戦地であるから、スーパーマーケット各社も意識的に店頭価格を安めに設定しているという。

誰にも負けないプロ意識
さて、今月号のテーマは「アメリカのリテールベーカリーとスーパーマーケットのインストアベーカリーは永遠のライバルだ」という事にある。ざっくばらんな本音の話としてある親しいリテールベーカリーのオーナーが筆者に次のように話してくれた。「どんなに頑張ってみても私たちはスーパーマーケットのやることには太刀打ちできないことはわかっている。彼らには巨大な本部の組織力があり、人材の育成に費用と時間をかけるだけの余裕がある。また商品開発にしても専門部署があるし、人と金をかけている。ところがリテールベーカリーにはすべてにおいて余裕がない」と吐露したが、彼はさらに言葉を続けた。「しかしながら私たちには彼らにないものがある。それは…」と、ここで一呼吸おいて「古い言葉のようだが俺たちには誰にも負けたくないプロ意識がある。また家族経営が多いのですべてに小回りが利く。商品開発にしたって新しい流行があればすぐに試作して店に出してみる。また多品種少量生産も得意とするところで、スーパーマーケットの連中にはできないこと」と語ってくれた。

リテールとインストアはうまくすみ分け
実際にベーカリーという同じ商売をしてはいるものの、商品の品揃え、顧客サービスなどでアメリカのリテールベーカリーとスーパーマーケットのインストアベーカリーは上手にすみ分けをして共存共栄の道を歩んでいるようだ。その実例をいくつかあげてみる。
(1)パン類と惣菜類を組み合わせて売る「デリ・ベーカリー」はリテールには無理で、これはスーパーマーケットの独壇場だ。
(2)いわゆるアーティザンブレッドは本来はリテールベーカリーの得意とするもので、今までも手掛けてきた。ところが5年ほど前からスーパーマーケット業界が音頭を取ってアーティザンブレッドを大々的に宣伝したために、もともと手作りのアーティザン・ブレッドを売っていたリテールベーカリーはスーパーマーケットの大量生産・廉価販売商品との価格競争に巻き込まれてしまった。それは「パーベイク生産方式」のアーティザン・ブレッドが専業メーカーから供給され始めたことの結果であったが、ほとんどのリテールベーカリーはアーティザン・ブレッドは、今後はスーパーマーケットに任せようという結論に達したようだ。
(3)最も利幅の大きなリテールベーカリー商品は手作りの特注ケーキである。この商品はまさに腕の見せ所で、しっかりと儲けている。
(4)ドーナツもよく売れるが最近は「クリスピー クリーム」のような専門チェーンが出てきたので改めて商品開発に力を入れている。今後は新しい商品開発に力を入れることが必要だ。
(5)ベーグルはリテールベーカリーでは最近ほとんど作っていない。スーパーマーケットや専門のチェーンに任せているようだ。
(6)店の中に飲食スペースを置く「スターバックス」のようなチェーンが出店しているが、リテールベーカリーが作る本物商品にはかなわない。またリテールベーカリーの多くは土地値の安い都市周辺部に出店しているので採算が取れている。
(7)リテールベーカリーの地域密着度の強さにはスーパーマーケットは太刀打ちできない。また青少年のキャンプ、スポーツクラブ、各種フェスティバル、シニアと呼ばれる高年者へのボランティアなどのイベントにも積極的に参加している。

第3の勢力に戦々恐々
さてこのようなリテールベーカリーとインストアベーカリーのバランスのとれた競合関係に影響する「第3勢力」が出現したので、今日のアメリカの業界は大騒ぎをしている。それは低価格商品販売巨大店舗「スーパーセンター」であるが、特にWAL・MART(ウオルマート)社を名指ししている。ご存知のようにこの会社は日本の西友を買収したので近い将来に何らかの形で日本市場に進出する事は間違いない。今からその対策をアメリカの事例を研究して考えておいた方が良いだろう。筆者もWM社の店舗、特にベーカリー部門を中心に実際に視察し、担当者とは現在も情報交換をしている。同社の強みは圧倒的な品揃え、文句なしの低価格に加えて、アメリカの消費者から最高位の顧客満足度という評価をもらったサービスの高さにある。アメリカにおけるスーパーマーケット経営者の68%がWM社に強い恐怖心を持っているという最近の調査結果からもわかるように、今後の市場シェア争奪戦が注目される。
なお筆者が撮影したアメリカのインストアベーカリーの写真レポートを掲載してあるので見ていただきたい。
今回ご紹介するのはアメリカ西海岸の南カリフォルニアを商圏とするRALPH(ラルフ)社が高質化を図った店舗内部とベーカリー部門である。



写真レポート 米ラルフ社のインストアベーカリー

Scene1

出店したのは小型のショッピングモール。十分な台数を確保できる駐車スペースは重要な来店理由になる。

店舗の外装は明るい南カリフォルニアにふさわしいモダンなデザイン。


Scene2
入り口を入るとすぐの場所にベーカリーが位置する。包装された商品を置く平台には低価格商品を置き、廉価を訴求する。

「ラルフクラブ」入会を誘うと同時に、ディスカウントの魅力を宣伝している。

商品構成はインストア製造、他社からの仕入れ商品に分けられるが、パイなどの付加価値商品は良質廉価の両面を顧客に訴求する必要がある。



バゲットなどは袋詰めにしたものを傾斜を持つ陳列台に置いてある。その隣には試食のためのチーズとバゲットに浸すオリーブオイルを置き、関連商品の販促を試みる。
Scene3

お客の視線(アイレベル)で捕えられる高さを保ち、商品をうまく陳列している。このあたりの感覚はアメリカに学ぶところが多い。

ベーグルなどはセルフサービスでお客が袋に詰めるシステムになっている。


Scene4

サンドイッチは持ち帰り商品として人気が高いが、特にスーパーマーケットでは高質なプレステージ商品として店舗全体のイメージを高めている。

お客が必ず通らなければならないキャッシャーは顧客満足度(CS)を大きく左右する。素早く正確に、親しみを込めてという能力が求められている。







原価計算女王
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