原材料についての深い知識を持つことと値上げの本当の意味を知ることが不可欠 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(58) - ブランスリー電子版

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連載/2022年4月号

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原材料についての深い知識を持つことと値上げの本当の意味を知ることが不可欠 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(58)
 製品の値上げを実施したある大手製パンメーカーは、その理由について「輸入小麦の政府売渡価格が大幅に引き上げられたことを受け、パン製品の主要原料である小麦粉の値上げが実施されます。また油脂類、糖類、包装資材などの原材料価格が高騰しており、電気やガス、軽油などのエネルギーコストも上昇しております。さらに、物流費や人件費も上昇しており、企業努力によるコスト吸収の限界を超えた大変厳しい状況となっております」と説明しています。
 また、ロシアのウクライナ侵攻により、世界の食糧、エネルギーの需給事情がさらに大きく変化するのではないかと懸念されています。(一国の主権と領土保全という根源的な権利をことごとく侵害してまで、押し通すべき正義など絶対にあり得ないと確信し、無慈悲な独裁者に改心を迫る政治の知恵が一刻の猶予なく求められています。)
 食糧とエネルギーは人間の生活の根幹に関わるものであり、その先行きが見通せない今、リテールベーカリーが使用する様々な原材料や関連資材の価格の上昇局面が続くことをある程度想定しておく必要があるのではないでしょうか。
 原材料価格が上がるということは、パンの原価が上がるということであり、売価が同じであれば、当然粗利は小さくなります。そして粗利から人件費、高熱費、その他の諸経費を払い切れなくなると、店は赤字になります。
 ですから、原材料費が上がったのであれば、値上げをするか、原価を上げないように、原材料を選び直すかのいずれかしかありません。このように、本質的な事柄は非常に単純であることが多いのですが、具体的にどうするかを決める段階になると、複雑な事情が絡んできます。
 具体策を決めるために最初にしなくてはならないのは、現状を正確に数字で把握することです。原材料が値上げされる前の原価と、値上げされた後の原価が分からなければ、真っ暗闇の中で自分がどこにいるのかも、どこに向かったらいいのかもわからずに、ただ立ちすくむしかないでしょう。
 とはいっても、使用する原材料もそれらを使って作る製品もかなりの数になると思いますので、何らかの指標を決めておかなくては、原材料の値上げ前後の製品原価を数字で適格に把握するのは、中々難しいのではないかと思います。
 この指標の一例としては、店の売上トップ10の商品の原価を常に把握しておいて、その平均値を、株価でいう日経平均のような形で、「売上トップ10原価平均」などとして使用することがあげられると思います。
 こうのように分かりやすい指標を決めておいて、その変動の程度によって、アクションを起こすタイミングを判断するのが、合理的ではないかと思います。
 多くの原材料が一斉に値上がりするというのは、リテールベーカリーにとって大きなストレスだと思いますが、この機会に現在使用している原材料について改めて勉強し、店の売上トップ10の製品の配合を見直してみるのもいいかも知れません。もしかしたら、製品の品質がさらに向上して、原価は安くなるという原材料の組み合わせがあるかも知れません。「バターよりショートニングの方が美味しくなるパンはたくさんある」というのは多くの有名シェフが言っていることです。
 また、値上げを考える場合でも、その意義について改めて考えてみるいい機会なのではないでしょうか。例えば、値上げしたことによって、製品の販売個数が減ったとしても、売り上げが同じであればその方が粗利が多くなるし、仮に販売個数と売上額の両方が減ったとしても、粗利の合計額が同じであれば、同じ粗利を稼ぐための手間が減ると考えれば、値上げの別の顔が見えてくるのではないでしょうか。
 このように、原材料の値上げによる原価の上昇を抑える方法と、値上げをうまく機能させる方法の両方について深く考えることは、ベーカリー経営とは何かという本質的な問いへの答えを見出すことにもつながるのではないかと思います。 (RO)







原価計算女王
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