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| 特集/2022年2月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

| ブランディングを基軸に果敢に挑戦する - 生ソフトフランスパン「虹」の前村佳槻プロデューサー | |||||||||||||||||||
製法はフランスパン ──まず「生ソフトフランスパン」について、従来の「フランスパン」とはどのような点で異なるのか、お聞かせください。 前村 簡単に言うと、味や材料、基本的な製法などは「フランスパン」なのですが、食べた時の食感はいわゆる「生食パン」に近い、柔らかく食べ心地の良いものになっているということです。 ──食パンではなくフランスパンのレシピで「生」を体現したかったのですね。 前村 そうです。そのために店名に「生」を入れることにこだわりました。ただし、いわゆる「生食パン」の多くが、水分量を増やす「加水のレシピ」で生地のふわふわ感を出しているのに対し、「生ソフトフランスパン」では、水分量を極限まで減らすなどする「引き算のレシピ」で、歯切れがよく柔らかいふわふわ感を出しました。 焼かなくてもそのまま「生」で食べられ、食パンのように毎日食べても飽きないものを作りたかったのです。 ──形をフランスパンにしたのには味やレシピはフランスパンの類であるといったことの表現でしょうか。 前村 それもありますが、食パンに比べると表面がパリッとする生地なので、箱型に焼いてしまうと、表面の硬さに中が押され、潰れてしまうからです。「外サク中ふわ」の生地の特徴を出すために最適な形を考え、その結果、細長い今のような形になりました。 コンセプトは「ハイカジュアル」 ──それにしても「生ソフトフランスパン」の全長60センチという巨大さは異色で話題を呼んでいますよね。 前村 オープン前に200本を無料配布する企画も行ったのですが、癖になる味だという声はよく聞きましたし、飽きにくい味なので2、3日位で一人でぺろっと食べてしまう人もいるようです。また家族で分け合って食べたという方は「子供の食いつきがすごく良い」という声も頂きました。ただ実はブランドのコンセプトとしては「ハイカジュアル」を謳っているので、商品は巨大でも、ターゲットは家族向け一人世帯向けと限定しているわけではなく、広くファッションや食のトレンドに敏感な人たちへ訴求しているんですね。 ──「ハイカジュアル」ですか。最近ファッションの世界で注目を集めている概念ですね。 前村 はい。例えばグッチとミッキーマウスがコラボした商品など、高級ブランドをカジュアルな方向に崩す「高級だけど入りやすい」といった企画が徐々に増えてきています。綺麗さ、お洒落さ、手軽さが同居して絶妙な感じです。 ──店のイメージキャラクターである「サーフパンダ」も「ぬぼーっ」とした微妙な表情が可愛く印象的です。このサーフパンダが手にしているサーフボードのようなものが実は巨大な「生ソフトフランスパン」という設定もよくできていると思います。 前村 「サーフパンダ」は店のイメージに合わせて生み出されたキャラクターというより、はじめに「サーフパンダ」というキャラクターを考えた後で、海辺のサーフィンショップのような店のイメージが作られていったのです。商品と合わせて店のイメージを作り上げていく上で、切り離せない大事なものでした。 専門店のブランディング ──「生ソフトフランスパン」だけを販売する専門店にしたのも、販売戦略上のお考えがあったからでしょうか。 前村 単品販売をすることで、他の商品に埋もれることがなくなり、その価値がより効果的に伝わり、認知度が向上し、浸透しやすくなるものと思っています。 実は将来的には「生ソフトフランスパン」を起点に事業の幅を広げていきたいと考えています。日本のソフトな惣菜パンが海外で注目を集めていますので、日本独自のうま味成分と合わせればシナジー効果を出せる可能性も秘めていると思うのです。具体的には海外で「生ソフトフランスパン」を使ったサンドイッチ店を展開するなど、メイドインジャパンのものを使用したファストカジュアル業態の展開などを考えています。 ただそのための基本的なこととして「生ソフトフランスパン」自体のブームを作り、世間に浸透させていく必要がありますから、代官山のこの店自体はずっと単品販売の専門店として続けていきたいと考えています。 ──前村さんのプロフィールについて、簡単にお聞かせ下さい。 前村 もともと出身は愛知県なのですが、大阪で14年ほど料理人を経験した後、縁あって食のマーケティングを行うIT企業で働くこととなりました。そのまま名古屋、東京でITマーケティングの仕事を12年ほど経験し、5年前に東京に拠点を移しましたが、現在は、飲食店のプロデュースを委託されて行う愛知県の会社、ノアでの飲食店の新しいキャッシュポイントを作る仕事なども行っています。ただ今回は委託ではなく自社事業となりますので、今後は長期的な見通しで、この店を基軸に「生ソフトフランスパン」の価値を広めたいと思っています。 ──広めるため具体的にはどのような事をされていますか。 前村 今は従来のマスメディアを超えるような勢いで、個人メディアの力が強くなってきていると感じます。そのため「なんかSNSにあげたくなる」という要素を随所で作っておくことが重要だと考えています。例えば当店の場合ですと、窓に描かれた「サーフパンダ」の前が撮影スポットになっているのですが、そこで撮られた写真のSNSへの投稿が、「サーフパンダ」が話題になるきっかけになっています。そうした情報発信が当店への来店につながればと思いますね。 | |||||||||||||||||||

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SNSでの反響が将来性のバロメーター
LINEが心電図に ──12月13日のグランドオープンから10日以上経ちましたが、今のところ反響や初動の手応えはどうですか。(取材日は2021年12月24日) 前村 実は今の段階ではまだ、日商や月商よりLINEの友達登録やTwitterでのバズられ方などを心電図にして見ています。特にLINEで商品を取り置き予約できるシステムを積極的に取り入れているので、LINEの友達登録は重要視していますが、オープンから3日で友達登録が1000人を超えたので、反響としては上々と見ています。全体的に初動の反響に対する手応えは予測していたものの5倍位になったという感じです。 LINE予約のシステムは、受け取り当日の天候に左右されず、前日までに次の日売れる数をある程度確定させる事ができるので、作る側にとっては大きなモチベーションになっているので良いですね。 今のところ初年度は年商7200万円を目標にしていますが、この調子で進めば初期投資した金額はおよそ2年半位で回収できるのではと見ています。 ──SNS上での反響が良いのは「サーフパンダ」の影響でしょうか。 前村 「サーフパンダ」は、商品のブランディングのための使用と併せて、そのグッズの販売も開始しましたが、SNS上でも「あのパンダのグッズが欲しい」という声が出ています。また意外な事にスタッフ採用の際にも役立ってくれていますね。あのぬぼーとしたサーフパンダの表情に惹かれたという理由で応募してきたという人が割といました。結果、皆それぞれ夢を持って、いろんな事をしている子たちが集まってきましたね。やはりブランドを展開をしていく上では、何らかのフラッグシップが必要なんだと実感しました。 ──おすすめのレシピを教えてください。 前村 食パンのレシピとフランスパンのレシピの両方が使えますが、まずはホットサンドです。薄く切って具材を入れてから焼くと表面がパリッとして「外サク中ふわ」の食パンでは出せない絶妙な食感のものになります。またフレンチトーストもおすすめですが、蒸し焼きすると、スフレのパンケーキのようなプルンプルンとした食感になりますよ。 店名の一部である「虹」は7色の虹のように様々な在り方へ「広がっていく」という思いを込めたものなのですが、「生ソフトフランスパン」も使い手の発想により七変化し、その可能性が大きく広がります。レシピの幅も広がりますし、そこに関わる人達の多様性も広がります。 ──「虹」という言葉に対する深い思いがわかりました。ありがとうございました。 |

| パンのギフトの潜在ニーズをITで具現化 - パンフォーユーの矢野健太社長 | ||||||||||||||||
パンのギフト券の効果 ──このたび新たに始められた「全国パン共通券」について簡単にお聞かせください。 矢野 「パン屋さんに寄り道しよう。どのパンにするか迷う時間を楽しもう」というキャッチフレーズを掲げているのですが、ただ単にパンがもらえるギフト券ではなく、パン屋さんにいくという「体験」を贈れるギフト券です。日本全国のあらゆる規模のパン屋さんが加盟可能で昨年12月9日にスタートしました。 具体的に説明すると「全国パン共通券」サイトにて、200円券、500円券、1000円券の3種類が購入可能です。スマートフォンやパソコンを通じて電子決済して購入すれば、指定した相手にメッセージとあわせた電子ギフトとして贈ることができます。 一方、券を贈られた相手は、加盟ベーカリーでスマートフォンから電子チケットを開き店頭の2次元QRコードを読み取るだけで金額分のパンと交換することができます。 ──確かにパンが嫌いという人はあまりいないし、最近の食パンブームの中で、パンをギフトとして贈る文化も定着してきましたから、とても素敵な贈り物になりますね。 矢野 実は企業やブランドを超えて全国共通で使用できる「パンギフト券」はこれまでありそうでないものでした。パン屋さんそれぞれが割引券などと併行してパンギフト券を出す事はあっても、パン屋さん同士が繋がって共通で使えるものを出すことはありませんでした。 ──今のところどれくらいのパン屋さんが加盟しているのでしょうか。また目標としてゆくゆくはどれくらいのパン屋さんに加盟してもらう事を目指しているのかお聞かせください。(取材日は1月5日) 矢野 今の段階では347店が参加していますが、実は日本には約1万店のパン屋さんがあると言われています。そのため3年以内に、そのうちの約3割に該当する3000店のパン屋さんに加盟してもらえるようになればと考え、動いています。また利用者はできれば3年で1000万人くらいまで増やしたいですね。 店頭での集客にも貢献 ──「全国パン共通券」を始める事になった背景について教えてください。 矢野 当社はこれまで、個人向け宅配サービスの「パンスク」や、法人向けの「パンフォーユーオフィス」、事業者向けにパンの開発から仕入れ、販売まで支援する「パンフォーユーBiz」など、主にパン屋さんの外販活動を独自の冷凍技術とデジタルプラットフォームを活用して支援する事業を行ってきました。ただその一方で、「店頭での売り上げを伸ばしたい」というパン屋さんからの声を聞くことも多く、当社として何かできることはないかと考えたのです。 その結果、考えたのが今回の「全国パン共通券」の事業なのですが、店頭での集客に貢献する一方で、消費者に対しては、ギフト券を通じ新たなパン屋さんとの出合いを提供する事で、パンに対する興味を高めてもらいたいと思いました。 ──今のところ加盟ベーカリーはまだチェーン展開している大手が多いという印象ですが、小規模の個人ベーカリーへの案内はまだこれからといったところでしょうか。 矢野 そうですね。今まではとりあえず消費者側の使い勝手を考えて加盟店舗数を増やすためにチェーン展開しているところへ先に働きかけたという感じでした。しかしこれからは小規模の個人店も含め当社と一度でも関わった事のある店にはなるべく全て案内していこうと思います。まずはメールで案内し、徐々に直接足を運ぶような営業も増やしていこうと考えています。 ──既に加盟したベーカリーからの反響はどうですか。 矢野 よく聞くのは、「ベーカリー単体では実現できない思い切った企画を実現してくれて感謝している」という趣旨の声です、ベーカリー側も忙しく、普段の業務で手一杯なため、自分で何かしようと思ってもできないのが現状です。 贈るシーンを考えて訴求 ──具体的な使われ方としてはどういうシーンを想定していますか。 矢野 「ありがとパン」「おつかれパン」「おきもちパン」の各キーワードで表現される3つのシーンを設定しています。「ありがとパン」は日常でのちょっとしたお礼を伝える場面です。「おつかれパン」は労いの気持ちを伝えるシーンで、リモートワークで顔を合わせる機会の少なくなった同僚などにおすすめです。「おきもちパン」は、遠方に住んでいる人に挨拶をしたい場面や、応援したい人への「ほんの気持ち」を伝えたい場面などに贈ります。いずれも、贈られる人の属性ではなく、贈るシーン別に訴求していきます。 ──昨年夏には群馬県内の一部の店舗でパンの定期券「パンパス」や回数券「パンチケ」などのサービスも実験的に展開されていましたね。 矢野 「全国パン共通券」は店頭支援の入り口ですが、「パンパス」や「パンチケ」はその延長線上にあるものと捉えています。ただし「パンパス」や「パンチケ」については、今はまだ実験結果を踏まえてシステム開発段階です。当社としてはまず「全国パン共通券」のネットワークを広げていく事で店頭支援に力を入れていきたいですね。 | ||||||||||||||||

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ベーカリーの業態は今後二極化の可能性
コロナ後も人の流れは同じ ──ところで2022年のベーカリー業界はどのように変化していくと見ていますか。 矢野 正直、コロナが落ち着いても人の流れは大きくは変わらないと見ています。EC通販に参入して力を入れるベーカリーさんは増えてきていますが、その一方でそれがうまくいかず撤退していくところも出てくるでしょう。 店頭での販売活動を盛り上げていく事で厳しい状況を乗り越えていきたいというベーカリーさんも勿論多いでしょうし、その一方で通販を含め外販に成功したベーカリーさんの中には、店頭販売を完全終了し外販だけの専門店になるところも出てくるかも知れません。店頭も外販もどちらにどれだけのリソースを割くかで、結果は変わってきますが、どちらかのみに力を入れるベーカリーさんが増え、業界は大きく二分されていく可能性もあると見ています。 ──そうなると貴社としては「全国パン共通券」などの店頭支援も進めていく一方で、外販支援の活動も引き続き行っていくところだと思いますが、そういえばこのたび「パンフォーユーBiz」のリブランディングも実施しましたよね。 矢野 「パンフォーユーBiz」は簡単にいえば、パンを売りたい事業者とパン屋さんを様々な形でつなぐプラットフォームですが、約1年で前年同月と比較して売上が約10倍の急成長を達成しました。そのためこのたび、関連サービスの名前を変更し、「パンフォーユーBiz」として集約しました。 企業のパンアイデアを形にする商品開発支援の「OEM」や、飲食店やその他の場所でパン屋さんが展開できる「ゴーストベーカリー」、パン屋さんの手作りパンの仕入れサービス「セレクトショップ」などで、400種類以上の商品を展開しています。合計で100社以上と取引がありますが、より具体性を高めることでサービス利用を促進し、本年中には取引企業数を300社位まで拡大することを目指しています。 ──日本各地のベーカリーから集めたご当地パンを冷凍し、大手スーパーの冷凍食品売り場で企画販売するなどの企画も好評を得ているようですね。こうした事業展開も含めて、貴社にとって今後の大きな課題はなんだと思いますか。 矢野 冷凍パンへの消費者のニーズが高まってきている一方で、パン屋さん側はまだ「冷凍パンは焼きたてでないのでおいしくない」という先入観が残っている印象があります。実際は冷凍パンも温め直して食べれば焼きたてのパンと同じくらいおいしく食べられるという事を今年はさらに伝えていきたいですね。ポイントとしては実際に試してもらう機会を作る事ですが、大手より個人店の方がまだ抵抗ある人が多い印象です。 ──事業拡大に向けてスタッフ増員も必要となってくると思われますが採用のポイントについて教えて下さい。 矢野 地域経済を活性化させたいという当社の企業理念に共感してくれるかどうか、パンが好きかどうか、この2点だけです。 |
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