一つのテーマに対して起こされた様々なアクションは多様化する価値観のリアルな縮図を見せてくれる - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(53) - ブランスリー電子版

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連載/2021年11月号

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一つのテーマに対して起こされた様々なアクションは多様化する価値観のリアルな縮図を見せてくれる - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(53)
 今回の特集は、「パンの自動販売機」のテーマで3軒の店を取材しました。ベーカリーの運営に自動販売機はあまり関係がないように思っていましたが、それぞれの店が、全く違う角度から、パンの自動販売機と向き合い、深く関わりながら、仕事を通して自分を表現し、世の中の役に立っている姿を拝見して、心が大きく動かされました。
 1軒目は、自分の店で売るパンは自分がすべて最初から最後まで作ることにこだわる「ソロ・ベーカリー」です。私は、若い頃美大に通う画学生だったこともあり、リテールベーカリーのパンは、芸術作品だと思っています。ですから、その制作者であるブーランジェの方が、自分の作品は最初から最後まで自分の手で作りたいという気持ちはとてもよく理解できます。
 「ソロ・ベーカリー」のオーナーは、一人で店を回すために、パンを販売する手段の一つとして、自動販売機を選択したそうです。店のオペレーションの中に気負いなく自然な形で自動販売機が組み込まれていて、とてもいい感じだなと思いました。
 「ソロ・ベーカリー」のオーナーは、自分に対する自然な感じの肯定感があるのにも感銘を受けました。ブーランジェとして成功できるのは、有名ベーカリーの厳しい職場の環境で、ボスを頂点とする人間関係のプレッシャーに打ち勝ち、花を咲かせることができた人だけ、というのでは、あまりにも画一的で、多様性に欠け、寂しい気がしてなりません。
 2軒目は自販機でパンを販売する店「ハコパン」を運営する会社、敬明です。同社は「ハコパン」以外にも、サンドイッチの宅配専門店「リコスサンドイッチ」などを運営していますが、それらの事業で使用する食パンを全て本部工場で作っています。「ハコパン」の業態を始める前は、ベーカリーの「フェテ・ド・パン」も運営していました。「ハコパン」は、「フェテ・ド・パン」を閉めた後、その食パン類を引き継いで販売するためにスタートしたものでした。
 同社は、一般的なパン製造販売のビジネスの形態とは少し違っていますが、だからこそ、その成り立ちや仕組み、社会に対するその存在の意味などを深く検証していくと、私たちに馴染みが深いリテールベーカリーの仕組みや意味合いを、普段とは違う角度から考えるきっかけにもなり、視野を大きく広げることができるように思います。
 3軒目は、大阪を中心にベーカリーを4店舗展開する「エーワンベーカリー」です。セントラル工場の敷地内に、自動販売機を設置し、工場で製造した社内規格から外れた「訳ありパン」を販売しています。
 会社全体の売上と比較したら、わずかな売上ではありますが、それでも、販売するパンの重量を計算してみると、毎月、1・35トンになるそうです。ということは、それらのパンは、自販機の販路がなければ廃棄処分になってしまうわけですから、毎月、1・35トンの食品ロス削減につながっていることになります。
 様々な社会問題を解決する方向に世の中が回っていくとは、まさにこういうことを言うのであって、世の中をいい方向に回すアクションに関わる全ての人たちに、経済的にであれ、精神的にであれ、何らかのご褒美が与えられるような仕組みが、もっともっとたくさん生まれてくればいいなと思います。
 このように考えてくると、一つのテーマに対して、多くの人が様々なアクションを起こし、様々な展開を見せることによって、世の中の価値観が多様化し、世の中が豊かになっていくような気がします。
 しかも、一つのテーマのもとに起こされた数多くのアクションは、その多くが、多くの人の目に入ってきやすくなりますので、現在社会の多様化した価値観の縮図のような形になって、それらに対するより正しい判断が下せるようになる気がします。
 コロナ禍も、「コロナとの戦い」という一つのテーマに対して、全世界の人々が、それぞれの価値観に基づいて様々なアクションを起こした結果、人々の世界についての理解が、コロナ禍前に比べて格段に深まったと思います。(RO)







原価計算女王
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