好きな人と嫌いな人がいるロングセラー商品 - つるやパン 木之本本店 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2021年9月号

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好きな人と嫌いな人がいるロングセラー商品 - つるやパン 木之本本店
創業者西村秀敏さんの妻の智恵子さんは90歳を超えた現在も調理パンの製造を担当
「つるやパン 木之本本店」の外観
パンは円形の台に陳列している。店内ではパン以外も販売
レトロ感がある包装袋が特徴の「サラダパン」(税込145円)
「サラダパン」の中身
「黒糖メロンパン」(税込135円)や「いちごつぶつぶ苺」(税込135円)など手ごろな値段で学生にも買いやすい商品が多く並ぶ円形の陳列台
包装デザインはパンの主張を拡声する

 たくあん漬けを具にしたコッペパンサンド「サラダパン」(税込145円)は、発売から60年以上が経つロングセラー商品だ。同商品を製造販売するのは、滋賀県北東部に位置する長浜市の「つるやパン 木之本本店」。1951年に創業した今年で70周年の老舗だ。同店のロングセラー商品はほかにも、ハムをサンドした「サンドウィッチ」(税込145円)やソーセージ入り揚げパン「ランチパン」(税込150円)などがあり、「どこか懐かしい味だ」と評判だ。
 「祖父が創業した当初は、学校給食向けのコッペパンを中心に、ジャムパン、バタークリームのパンなどを作っていました。甘いパンばかりだったのと、『おにぎりのような、もっと腹の足しになるようなパンも作って欲しい』という要望があったのとで、総菜パンを作るようになったんです。それで誕生したのが『サラダパン』です」
 こう話すのは、営業を担当する専務の西村豊弘さん。元々は家業を継ぐ予定はなく、都内の大学を卒業後は出版社で書籍編集の仕事に就いた。しかし28歳の頃、当時「つるやパン」を切り盛りしていた豊弘さんの父が体調を崩し、一時的な手伝いをするために帰省。それが改めて家業と向き合い、生き方や仕事を考える機会となり、「つるやパン」への転職を決意することとなった。
 「自分はパンは作れないけれど、パンについて色々なことを伝えることで、『つるやパン』に貢献できるのではないかと考えました。まず、知人のデザイナーに協力を仰ぎながら、パンの包装袋などのデザインを整理することから始めました」(豊弘さん)
 創業者で豊弘さんの祖父である故・秀敏さんはロゴを作ったりデザインしたりするのが好きで、創業まもなくコーポレートカラーを「子ども受けするように」と、ピンクに決めた。それぞれ発売に合わせ、「サラダパン」「サンドウィッチ」「ランチパン」の包装袋のデザインも行ったという。どれもレトロな雰囲気で独自性があるデザインだ。これらのデザインを受け継ぎながら、豊弘さんは、ほかの商品の包装袋や看板、店舗などのデザインを進めていった。
 「前職で、本のカバーデザインの大切さを経験しました。それと同様に、パンも手に取ってもらうために、パッケージの存在感がしっかりあることが重要だと考えています。当店のパンは土産需要も多いので、人から人へ渡すときにもこのことが重宝するのかなと思います」(豊弘さん)
 「サラダパン」は現在、同店以外に滋賀県内の約80カ所のスーパーやサービスエリアなどで販売している。
 「独自性の高いデザインの包装袋が、当店の商品が発する主張を強調し、販売員が立って説明しなくても、どんなパンかを伝えてくれます」(豊弘さん)



「サラダパン」と同時期に発売した「サンドウィッチ」(税込145円)
「サンドウィッチ」の断面
ソーセージ入り揚げパンの「ランチパン」(税込150円)
「ランチパン」の断面
「まるい食パン専門店」で販売しているサンドイッチ。見た目も楽しめると人気だ
「サラダパン」は情報通の祖母が開発

 「サラダパン」を開発したのは秀敏さんの妻、智恵子さん。90歳を超えた現在も、サンドイッチの調理を担当し、1日2〜3時間厨房に立つ。
 「祖母は一家で一番の情報通と言っていいくらい、新聞や本を読むのが大好きです。『サラダパン』の開発も、当時一般にまだ出回っていなかったマヨネーズを雑誌で見たところから始まっています」(豊弘さん)
 「サラダパン」の具は、千切りにしたたくあん漬けをマヨネーズであえたもの。始めは、たくあん漬けではなくキャベツの千切りだったが、水分が出て品質保持が難しかったことから、常備菜として身近にあったたくあん漬けを試し、採用となったという。
 「マヨネーズの主な材料が油なので、胃の負担を軽減するためにキャベツを使いたいと思ったそうです。当時キャベツの成分を使った胃薬が発売になると、近所の薬局から聞いたそうで。祖母は、固定概念がなく、自分で何でも考えて試してみるという性分なんですね」(豊弘さん)
 「サラダパン」は、発売当初からまずまずの売れ行きだった。同店だけでなく、荷車にのせて数十件の個人商店に配達し、毎日何百個と売れた。
 「たくあん漬けが入っていますから、たくあん嫌いな人はどうしても『おいしくない』っていうことになります。でも、好き嫌いがあって、嫌いな人がいるというのが、商品にとって大事だと思っています。それで話題にしてもらえるからです」(豊弘さん)
 豊弘さんが大学生だったとき、SNSで「サラダパン」が話題になっていた。豊弘さんはそのことを友人から知らされたという。「改めて変わったものを作っていたんだと実感しました。ほかにはない、貴重なパンなんだと」(豊弘さん)

昔から変わらない店づくり

 「つるやパン 木之本本店」の店内に並ぶのは、パンだけではない。菓子やカップラーメンなどの食品、そして地域指定のゴミ袋など日用品まである。パンは、売り場中央付近に設置された円形の陳列台に並ぶ。
 「昔からこの形式は変わっていませんね。中学や高校が近くにあるので、学生がよく来てくれるのですが、駄菓子屋みたいな感覚で利用してくれています。あとは、男性客がかなり多いので、かわいさよりも、面白さを重視した店づくりをしています。パンの陳列台を円形にしたのもその一環です。直線だとある一面しか見てくれませんが、円形だと、大体の人が2週半周ってすべての商品を見てくれるんです。ぐるぐる周ったあとに、『おもろいやないか』と言ってくれる人も多いですね」(豊弘さん)
 5年前、市内に2号店として「まるい食パン専門店」をオープン。木之本本店と異なり、日用品などは置かず、円形の型で焼き上げた食パンや、それを使ったサンドイッチなど、パンだけを並べる。
 「木之本本店は、工場が200メートルほど離れた場所にあるので、お客様から『パンはどこから仕入れているの』と聞かれてしまうことがあるんです。ですので、『まるい食パン専門店』は、購入されるお客様の目の前で作って、焼きたての匂いを感じてもらえる店を作りたいという思いでオープンしました」(豊弘さん)
 サンドイッチは、「いちご フレンチトースト」(税込180円)や「オレンジフレッシュ」(税込200円)、「焼サバ」(税込270円)など、30種類ほど。トッピングが凝っていたりして見た目がSNSで映えると、学生らに人気だ。
 「学生のときに食べたものは思い出深く、時を経てまた食べたくなると思います。『サラダパン』がそうであるように、昔を懐かしんで遠い未来にまた食べに来てもらえる店になるといいなと思っています」(豊弘さん)

SHOP DATA
店名:つるやパン 木之本本店
住所:〒529-0425 滋賀県長浜市木之本町木之本1105
電話:049‐293‐9498
営業時間:午前8時〜午後6時(日曜、祝日は午前9時〜午後5時)
定休日:なし(臨時休業あり)
品揃え:約30品目
スタッフ:販売常時2〜3人
店舗面積:売り場36坪(厨房は200メートル離れた工場で、別店舗の分も合わせて製造)
日商:平日約10万円、土日約20万円



この記事の読みどころ

●編集者としての経験を活かし、包装袋のデザインでパンの特徴を伝えた。
●ロングセラーに大切なことは、それを好きな人と同時に嫌いな人もいること。
●かわいさよりも面白さを重視し、駄菓子屋みたいな雰囲気を出したくて、パンの陳列棚を円形にした。





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