自分と正直に向き合いながらパンを作り続けた - Lee’s Bread - ブランスリー電子版

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お店拝見/2021年7月号

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自分と正直に向き合いながらパンを作り続けた - Lee’s Bread
店主の内海リーさん
「Lee‘s Bread(リーズブレッド)」の外観
売り場は対面方式で、パンはガラスのショーケースに入っている
「カンパーニュ」(ハーフカット税込861円)やグリーンとブラックの2種類のオリーブの塩漬けを練り込んだ「オリーブ」
(ハーフカット税込911円)などのハード系が並ぶ
「カルダモンロール」(税込290円)や「バブカ」(税込560円)などの菓子パンが並ぶ
自分が食べたいパンを作っていた

 神奈川県の中南部、相模湾まで約500メートルの場所に位置するJR大磯駅近くにあるベーカリー「Lee‘s Bread(リーズブレッド)」。店主はニューヨーク生まれのパン職人、内海リーさんだ。
 同店の開業は2017年。リーさんはそれまで、店舗を構えずにパンの製造販売を行ってきた。製造販売を開始したのは23年前にさかのぼる。結婚後日本で暮らし始めて数年経った頃のことだ。
 「自分が食べたいと思うパンを売っているところがなくて、それで自分で作り始めたんです。近所の人にもあげたらおいしいって言ってくれて。そのうち食料品店の方から『うちで販売しませんか』と声をかけてもらうようになりました。それが販売を始めたきっかけで、自分の店を持とうとは思っていなかったし、目標にもしていませんんでした」(リーさん)
 それから店舗を持つまで、食料品店やカフェなどへの卸販売やネット通販を行ったり、地元のイベントに出店したりしてきた。週に一度開催される青空市への出店は、リーさんにとって挑戦だったという。
 「ちょうど新しい販売先を探していました。約20年前の当時、外でパンを売るというのは日本では見たことがなかったのですが、アメリカではファーマーズマーケットなどでよく見かけていました。日本でもやってみようと、青空市の主催者に参加させて欲しいと伝えました。参加させてもらうようになって最初の頃、当時はふわふわのパンが一般的だったので、見た目がちょっとかたそうで黒っぽい、私のパンは珍しかったと思います。でも興味を持ってくれる人もいました。そういう人に、説明して味見してもらうと、『おいしいし、栄養もある』と言ってくれました。当時からずっと20年以上買いに来てくれているお客様もいるんですよ」(リーさん)
 地元の常連客が増えていく中で、最初は消極的だった店を持つことに意欲が出ていった。現在の店舗は2017年に開業した店舗の二つ隣の場所。順調な売上げで手狭になり、今年2月に移転したのだ。
 同店の営業日は木曜から日曜までの週4日。「それ以上だと体力が持たないから」とリーさんは言う。製造は夫の潤さんと2人で行い、さらにもう一人加わることもある。生地の仕込みはすべてリーさんの担当だ。
 パンは一日に20種類ほど揃える。「カンパーニュ」(ハーフカット税込861円)、グリーンとブラックの2種類のオリーブの塩漬けを練り込んだ「オリーブ」(ハーフカット税込911円)、スペルト小麦と自家製粉のライ麦粉を使用した「スペルト小麦」(ハーフカット税込820円)などのハード系が中心。これらは自家製酵母を使用しており、わずかな酸味と豊かなうま味と香りが感じられる。製造販売を始めた当初から作り続けているものばかりだ。
 「自家製酵母はレーズンで起こしたものを継ぎ足してずっと使っています。パンのレシピはほとんど変えていません。ミキシングや焼き方は、経験を重ねて分かってきたことを活かしながら、少しずつ変えてきています」(リーさん)

サンフランシスコで食べたパンが忘れられない

 リーさんは8歳から13歳まで日本で過ごした後、アメリカに戻ったが、19歳の時、日本語や日本の文化を大学で学ぶため再び来日した。卒業後結婚してアメリカに帰国したが、30歳でまた日本に戻った。そして再び渡米し、35歳のときに一年間、アメリカのパンの学校に通う。日本に戻り、パンの製造販売を始め、58歳の現在に至る。
 「お菓子作りが子どもの頃から好きで作っていたのですが、大人になってから、とてもおいしいパンに出合って、パンを作りたいと思うようになったんです。サンフランシスコで出合ったそのパンは、中がもちもちしていて皮が薄くて、ちゃんと焼けていて風味がいい、サワードウを使ったパンでした。大きいけど、すぐに全部食べちゃうくらいおいしかったんです。今自分が作っているパンも、そういう印象に残るようなパンにしたいと思っています。ほかのパン屋さんのパンを食べても、またこのパンが食べたいと思ってもらえるような。毎日食べても飽きないということも大事にしています。ご飯と同じですね」(リーさん)
 リーさんは、パンを大きく成形して焼き上げることも重視している。「カンパーニュ」は重さ1200グラムの生地を焼き上げており、直径は約25センチとかなり大きい。「オリーブ」や「スペルト小麦」なども一つ800グラム以上の生地を焼き上げる。
 「大きく焼いた方がおいしいですね。小さくしたら中のおいしいところが少なくなって皮の割合が多くなってしまいます。パンの味が変わってしまうと思っています」(リーさん)
 一つひとつが大きいのでカット売りやスライスのサービスは積極的に行っている。
 「私の作るパンは水分量が多いので、スライスはべたべたしてしまって難しいのですが、お客様にとってはスライスした方が食べやすいので、好みを伺ってスライスのサービスをしています」(リーさん)




「カンパーニュ」の断面。一個あたり1200グラムの生地を使用して大きく焼き上げる
「オリーブ」の断面。グリーンとブラックの二色のオリーブを練り込んでいる。「オリーブオイルと塩を少し付けて食べるとおいしい」とリーさん
「スペルト小麦」の断面。自家製粉の無農薬ライ麦を使用している
想像で作った味が、実際の味と同じだった

 ハード系以外の定番は、北欧で人気の「カルダモンロール」(税込290円)や「バブカ」(税込560円)などの菓子パンがある。「バブカ」は甘いリッチな生地に、さつまいも餡やチョコレート、レモンクリームなど巻き込む材料を変えることでバラエティー化を図っている。
 「『カルダモンロール』は、おいしそうだと思ってインターネットなどで現地のレシピを調べて作っていました。実際に北欧に行って味を確かめたら作っていた味とほとんど同じでした。本物を作りたいという意識があるので、嬉しかったですね。『バブカ』は子どもの頃、ニューヨークに住む親戚と夏休みやクリスマスに集まっていたときに食べていた思い出の味です」(リーさん)
 オートミールを練り込んだ生地にアーモンドなどのナッツが入った「ゴジラ」(4分の1カット税込390円)というユニークな商品名のハード系も、北欧に行ったときに食べたパンをヒントに開発したという。
 「北欧では小麦以外のライ麦やオートミールを使ったパンを色々食べました。『ゴジラ』は表面にもオートミールをまぶしていて、それがゴジラの背中のとげとげに似ているからと、スタッフが名付けてくれたんです」(リーさん)

SHOP DATA
店名:Lee’s Bread
住所:〒253‐0003 神奈川県中郡大磯町大磯1156-4
電話:0463‐74‐6499
営業時間:午前9時〜午後4時
定休日:月曜、火曜、水曜
品揃え:約20品目
スタッフ:製造常時2〜3人、販売常時1〜2人
店舗面積:売り場10坪、厨房7坪
日商:平日約15万円、土日約23万円



この記事の読みどころ

●自分が食べたいパンを作り、それが共感を呼び、販売したいという人が現れて卸すようになり、最終的には自分の店を開くに至った。
●パンは大きく焼いた方がおいしい。小さく焼くと味が変わる。
●食べたことがないパンを想像で作ったら、実際のそのパンの味とほとんど同じだった。嬉しかった。





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