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| 連載／2021年6月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 三藤喜一会長と二人で過ごした濃密な時間は数多くの生きるヒントを与えてくれた - 私の販売集大成ノート(9) | ||||
ポンパドウルは焼きたて、揚げたて、出来たてのフレッシュで手作りの製品を、活気ある接客で販売することを目指していた。製品が安定して販売は活気があるか、これが社内での店舗運営の良否の判断基準であった。 一定の形に定められた機械からは安定した製品が作られるが、手作りは形にばらつきや無駄が発生する事が多々ある。責任者の店舗巡回時に、販売部門には、製品チェックを行い不良製品は返品する事を指示し、製造部門には手作り製品は毎日毎回安定した形になり難い事を前提として取り組み、作業マニュアルは最低限厳守する事を求めた。安定した高品質の製品の提供は、同業他社との差別化を実現し、お客様からの支持をもたらす。 各店舗の製造、販売には「巡回ノート」と称する大学ノートが置いてある。社長はじめ巡回者は、製品やサービスに関しての指摘内容と、売上げや管理数値の指導内容をそのノートに記す。店舗ではその後、その指摘内容の改善に取り組む。それは、後日巡回する他の巡回者のチェックポイントにもなる。こうして指摘内容が改善されていく。 三藤会長と二人で、地方の店舗を巡回した １９９４年、三藤喜一社長が会長に就任してから、私は関西や中国地方、九州の遠隔地の店舗巡回に会長と同行する事になった。二人だけの巡回は初めてで緊張したものだ。会長の体調を考慮して、一日三店舗以内の巡回と決めたが、中国地方から九州に渡る際のように移動距離が長い時は一日一店舗にした。歩行にやや苦労された時もあり、移動を最小限にするルートを探し出して、スケジュールを組み立てた。乗換えの為の駅構内の移動も予想する倍の時間に設定したが、それでも間に合わなかったことがある。それ以後予定時間を二案用意して無理のない対応を心掛けた。 熊本ではホテルから５００メートルほどの店舗へ行くのにタクシーを使うこともあったが、店舗が近くなると打って変わって元気な歩行になった。「少々の風邪なら巡回すれば治る」と以前会長から聞いたことが目の前で起こっていた。 巡回ノートを書くのに多くの時間を使った 会長は製造販売の従業員に挨拶をしてから製品やクレンリネス、接客を見て回った後、「製品チェックは君がやるように」と言って巡回ノートを書くために店を離れた。一時間過ぎても戻って来ない。近くの喫茶店に行くと、巡回ノートを書いていた。製造販売のノートには二ページにわたり、実績数値を基にした指導や指摘内容がびっしり書かれていた。会長には、出張前に巡回店舗の前週、前月、前年の売上数値と管理数値の資料を作成して提出していた。独特の字体で解読が必要な箇所が幾つかあり、責任者に説明を加えて理解を求めた。店舗での滞在時間よりも多くの時間を、巡回ノートを書くために費やした。ノートを通してのコミュニケーションを大切にした。他の店舗でも同様の巡回スタイルであった。 興味があったことを聞く絶好の機会だった 巡回後はホテルのレストランで食事をとった。二人だけの食事は緊張する時間であったが、今まで興味があったことを聞ける絶好の機会でもあった。「危機感を持つことの意味」と「情熱を感じる事が多くあるがその力は何処から来るのか」。二点を食事をしながら不躾に質問した。「現状に満足しないでチャレンジする事」「いつも自分の思うようにはいかないのが当たり前。前向きに考える事が大切」。一言毎に深い意味が込められていたのを思い出す。ポンパドウル創業当初には、金銭面で部下に裏切られたこともあったとしみじみと話された。成功に至るまでの長い時間の中で、いつも前向きでいようともがきあがいたのだろうと推察した。 ｢人間三藤喜一｣に触れられた店舗巡回 一代で売上高百億円規模の企業を築き上げた経営者の言葉は重い。成功した人の体験や経験の中には、必ず幾つかの大きな生きるヒントが含まれている。 「人間三藤喜一」の一面を見た巡回であり、貴重な時間を独り占めしていることに満足感があったのを覚えている。 望月 康男 販売アドバイザー。1946年神奈川県川崎市生まれ。東京都町田市在住。趣味は、ドライブ、登山、ビデオ撮影、映画鑑賞。1978年9月、株式会社ポンパドウル入社後、町田店、六本木店、伊勢佐木町店の販売マネージャー。1985年1月販売課長。1989年6月販売部長。1996年12月取締役販売促進部長。2001年10月取締役広報宣伝部長。2007年2月〜2010年1月、株式会社ポンパドウル顧問。全店の接客、品質、クレンリネス、品揃えの改善点をアドバイス。株式会社ポンパドウルの成長期、成熟期に販売関連業務に携わる。 | ||||
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