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| 特集/2021年6月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| まだまだ食パン専門店
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やがて地元住民のほか、県外近隣からも評判を聞きつけた人々が訪れるようになる。 「実は、おいしさの秘密は麹菌だけではありません。国産小麦粉だけでなくアメリカ産の超強力粉をブレンドしてあえて使う事で、もっちりとした食感を出した事、味噌造りにも使用している阿武隈山系の『泉が森湧水域の地下井水』を仕込み水として使っている事、また無着色で乳化剤、卵、保存料、香料を使っていないほか、油脂はバターを使用するといった素材へのこだわりも重なって、この味を出せるようになりました」と内山社長は言葉に力を込める。 仕込み水の「泉が森湧水域の地下井水」は日本名水100選の1つの硬水で、阿武隈山系より染み入るカルシウムやミネラル分を豊富に含む。さらにパンに必要な酵母の働きを活性化し、パン生地を引き締める効果があるため、口当たりが軽く、密度が濃い「ふわもち食感」の食パンの製造を可能にするという。 ただ大盛況だった同社の食パンも、4月になりコロナ禍による緊急事態宣言に入ると、新たな局面を迎えるようになった。 大勢訪れていた客もさすがに「三密」の回避が叫ばれる状況の中で、段々と来店を控えるようになっていったのだ。 「コロナ禍でもお客様の消費意欲自体はなくなったわけではありません。感染対策をしっかりし、お客様を守りながら当店の商品を届けるにはどうしたら良いかを考えた結果導入したのが予約販売でした」(内山社長) 同社が導入した予約販売は、ネットと電話の双方から注文可能なもので、1日7回に分けた焼き上がり時間のどこかを選択して必要な個数分のパンを予約注文することができる。 予約は7日先まで可能だ。注文した客は予約した日時に店舗を訪れれば、その場で注文した分のパンを受け取りすぐ持ち帰ることができる。 「予約販売を導入してからは、行列は一切なくなりましたが、パンの売れ行きは回復していきました」(内山社長) 以降は毎日300本以上のパンが完売する状況が続いているという。 また、県外にいるため来店できなくなった客の要望に応える形で、昨年10月からは通信販売も開始した。瞬間冷凍技術を導入したセット商品で、付属の「生食パンの解凍のしおり」の通りに解凍すれば、店頭での焼きたてに近い味を楽しめるようにした。 発酵食の魅力を伝えることが、会社の使命と考え、発酵の伝統技術を、時代に合った商品に落とし込んでいく。 食パン専門店ブームに沸く昨今だが、同社としては食パン専門店を営む事は手段であり目的ではないとの考えから、むやみやたらに競争に参入する気はないという。 「味噌蔵であることばかりに強く拘っているわけではないのですが、発酵食の魅力を伝えるという事が、会社として最も大切な使命と考えています。そのためには、強みである発酵の伝統技術を基本に、その都度時代にあった商品を出していく必要があると考えてきました。今回は食パンというある程度認知されている分野のもので、それが実現できたのがよかったのではないでしょうか」(内山社長) 昨年5月には、同店の食パンの「うちやま」や「いずみ」を使用した高級フルーツサンドを発売し話題を呼んだ。また昨年12月には2号店を土浦市にオープンし事業の幅を拡大、今や「食パン工房」の事業規模は、従来の事業である高級味噌や味噌スイーツに近づくほどのものになってきている。ただ、それでも今後は食パンのラインアップを広げていくつもりはないという。 「今後は、ラスクなど食パン自体をスイーツにした加工品の開発や、食パンと合わせやすいスイーツの提案などを行っていきたいですね。これまで培ってきた商品開発の技術力を生かし、健康的なおいしさをさらに提供できるような事を、何かしていきたいと思っています」(内山社長) SHOP DATA 店名:醸す生食パン工房 うち山 日立本店 住所:〒316-0024茨城県日立市水木町1-12-16(みずきの庄 敷地内) 電話:0294-32-5211 営業時間:午前10時〜午後5時 定休日:第2水曜、木曜 品揃え:食パン3品目、サンドイッチ6〜7品目、ジャム2品目、その他2品目 スタッフ:製造常時3人、販売常時2人 店舗面積:売場12坪、厨房7坪 月商:600万円 | |||||||||||||

| 顧客の将来の健康を気遣ってパンを作る店 - クリスベーカリー | ||||||||||||||||
東京・府中の本店のほか、吉祥寺の東急百貨店内に2号店を構える「クリスベーカリー」は、オーナーの木内雄介さんが徹底した健康志向で作り上げた食パン専門店だ。大病を患った経験のある木内さんが、食べる人の将来の健康を考えた食パンを届けたいとの思いから、2016年に府中本店をオープン。2018年には東急側から異例のオファーを受ける形で2号店をオープンし、開店から5年経った今でも着実にファンを増やしている。 「食パン専門店のブームがますます加熱してきていますが、当店の場合、他店と競争する前に、『クリスベーカリーさんの食パンが好き』と言ってくれるお客様をとにかく大切にするようにしています」と話す木内さん。「クリスベーカリー」の食パンの特徴は、薬膳アドバイザーの資格も持ち日々健康情報の吸収と研究に勤しむ木内さんによる素材や原料に対する徹底的なこだわりだ。看板商品である「角食パン」(1斤税込432円)など、食パンを中心とした商品を30品目ほど展開するが、いずれも木内さん自身が健康を害すると判断した素材は取り入れず、代わりに良質なバターや精製度の粗いオーガニックシュガー、血糖値を上げないとされる希少糖、ポストハーベスト不使用の北海道産小麦など、人の身体へ及ぼす影響を考えた上で木内さんが選んだ素材を使用している。 これらの原材料を使用して、水とレーズン酵母液を大量に使用する独自の製法で作り上げたパンは独特のもちもち感やほんのり甘味を感じる風味で「食べやすい」と定評がある。 コロナ禍で苦しんだことが、結果的に自分が経営者として成長し、店が底力をつけることにつながった。 府中の隠れ家的食パン専門店としてスタートし、吉祥寺の東急百貨店で話題の店として幅を広げていく中で、地道に知名度を上げてきた「クリスベーカリー」だが、昨年のコロナ禍では、緊急事態宣言中に東急百貨店内にある2号店が休業せざるを得ない事態に陥るなど、数々の試練も経験した。 そのため木内さんは従業員の生活を守るために奔走し、代わりに販売させてもらえる場所を何カ所か確保した。さらに、その頃たまたま開始したばかりだった通販にも力を入れ、何とか当面の給与を捻出し乗り切ったという。 「今回のコロナ禍は苦しかったですが、結果的に店が底力をつけ、私も反省し経営者として成長する事につながりました」(木内さん) 木内さんが反省するのは、「店を立ち上げた当初は、ワンマンな経営者だった」(木内さん)ことについてだ。 「売り上げ目標やスタッフの適正な労働時間など、自分が店を運営する上で、従業員の皆と共有する必要のある指標をしっかり掲げ切れていないところがありました。今は目標を皆で共有する中で一緒に成長していく事を大切にしています」(木内さん) 商品の動きや客の動向など、現場で起こる様々な事については、スタッフの意見を聞く事を大切にしている。スタッフは業界未経験の主婦を中心に採用しているが、社会人経験は豊富な人が多いため、逆に教わる事も多いという。 | ||||||||||||||||

「クリスベーカリー」という店名は、瞳の色素が薄いことなどから何となく呼ばれるようになった木内さんの愛称「クリス」を取り入れたものだ。また店のロゴマークにもなっている、鼻がCの形のイメージキャラクター「C君」も、何となく木内さん本人の顔を彷彿とさせるものとなっている。 親しみやすいイメージの木内さんだが、実はもともとはシステムエンジニアで、パンを含む食に関する仕事に興味を持つようになったのは、今から10年ほど前の事だ。 きっかけは木内さんが大病を患い、食事療法を取り入れると、劇的に回復したことだった。 また木内さんは、店を起業する前に一時期10年以上、自殺予防の電話相談員としてボランティア活動をしていた経験があり、その中で心を病んでいる人達の声を聞くと、食生活にも改善の必要があるケースが多かったという。 食と身体の健康、そして食と心の健康の関係性について興味を持ち、約10年前に社会人を対象とした製パンコースのある専門学校へ入学。 一年の課程を修了し卒業した後は5年ほどシステムエンジニアの仕事を続けながら、パン教室の講師などとして、パンに関わる活動を続けていた。 「自分の中では、安心で安全な原材料を使ったパン食を提供する事で人々に心も体も健やかな人生を送ってもらいたいという思いがまだ強くありました。やはり起業して自分の店を持ちたいという気持ちは、日に日に強くなっていったんです」(木内さん) 結局2016年にたまたま良い居抜き物件が見つかったため、タイミングよく今の府中本店をオープンする事となったが、普通のベーカリーではなく、あえて食パン専門の店として開業する事にした。 「やはり、食パンのように毎日食べるものが人々の健康を形作るのではと考えた事があります。また自分自身が持つ技術を凝縮してできる事を考えたとき、専門店として主に食パンのみを販売する形態にした方が良いのではと考えました」(木内さん) また、その頃ちょうど銀座の食パン専門店「セントル ザ・ベーカリー」の食パンを食べて衝撃を受けた事も大きかったという。 「食パンだけでこんなに魅力的な店を作る事ができると知り、勇気をもらいましたね」(木内さん) 個人事業主への百貨店への出店要請は異例だったが、クラウドファンディングで資金を調達し、出店した。 パン教室での講師の経験はあっても、店舗での現場経験はなかった木内さんは、府中本店を立ち上げた当初は、様々な苦労を経験する事となった。それでも集まってきたスタッフと協力して店を成長させていく中で、開店2年目にして東急百貨店から出店オファーを受けるという出来事を経験。個人事業主のままで百貨店から出店オファーを受けるのは異例で、木内さんも少し戸惑ったという。 東急の関係者が同店のパンを食べて、興味を持ってくれたためだったが、百貨店への出店となると、品揃えやスタッフの人数などについて東急側と話し合った上で、それらの条件を満たす店舗を出す必要があり、そのために必要な資金を捻出する必要がある。 「資金は、クラウドファンディングを通じて集める事となりました」(木内さん) クラウドファンディングの募集で、木内さんは、「安心で安全な食パンが世の中に広まる事で、身近にいる人たちが笑顔で健康に過ごせる時間が長くなるのではないか」という思いを強く伝えた。その結果、しばらくして目標額である150万円の資金集めを達成。集まった資金は設備購入費の一部として充て、2018年4月に2号店を無事東急吉祥寺内にオープンする事ができた。 2号店のオープンを後押ししたのは、常連客からある日言われた「ここの食パンじゃないとどうしてもダメなのよね」という言葉だったという。 三度目の緊急事態宣言では、吉祥寺駅前に仮設の販売所を設置。さらに府中駅前にサンドイッチ専門店も。 実は、木内さんは昨今の食パン専門店ブームや出店ラッシュについては冷静な視点で見ているという。今後ブームだけで終わらせないためには、長く続けられる店舗運営のあり方が問われていくのではとの認識だ。 「当店もこれまでは様々な困難を経験し必ずしも順風漫歩とは言えませんでした。それでも、徐々に地域の人たちに知られ親しまれるようになった事には感謝しています」(木内さん) 今は、店を継続していくためには、自分の押しつけや思い込みではなく、現場で来店客の生の反応を感じ取った上で必要な事をしていく事が大切だと実感しているという。 そして最近は顧客との距離を近くするためにメールマガジンの配信にも力を入れている。メールマガジンには木内さんからの豆知識情報のほか、割引クーポンや特典付きサービスの紹介などを掲載。また高齢者も多く住む地域である事を踏まえ、昔ながらのチラシによる販促も定期的に行なっている。 今年4月には三度目の緊急事態宣言に入る中、東急吉祥寺店は再び休業を余儀なくされる事となった。しかし木内さんの行動は素早く、代わりに吉祥寺駅前に仮設の販売所を設置。 5月には府中駅前にサンドイッチ専門の3号店もオープンした。 「スタッフも育ってきたので、今後また店長希望の人がいれば、その都度支店を増やす事も考えなくもないですね」(木内さん) SHOP DATA 店名:クリスベーカリー 住所:〒183-0053 東京都府中市天神町3−16−2 パレススメールA1 電話:042−319−0147 営業時間:午前11時〜午後5時 定休日:月曜、火曜 品揃え:約30品目 スタッフ:平日は製造常時2人、販売常時2人、土日は製造常時3人、販売常時2人 店舗面積:売場6坪、厨房11坪、テラス2席 | ||||||||||||||||
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