移動販売で培った感性を店舗での営業に活かす - panya junya - ブランスリー電子版

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お店拝見/2021年5月号

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移動販売で培った感性を店舗での営業に活かす - panya junya
店主の吉岡純彌さんと妻の美希さん
「panya junya」の外観
毎日40〜50種類のパンが並ぶ店内。青色のモザイクタイルの装飾がワンポイントになっている
移動販売時から人気のある「クリームパン」(税込173円)
「クリームパン」の断面
名前が分かる間柄の顧客が増えていった

 奈良県北西部に位置し、大阪府に接する香芝市の「panya junya(パンヤ ジュンヤ)」。最寄り駅の近鉄大阪線二上駅からすぐの場所にあり、周辺の住宅街は大阪のベッドタウンとして栄えてきた。 
 店主の吉岡純彌さんの出身地は、同じ県内でも、同店から30キロ以上離れた県中央部の吉野町だ。そこで、同店を開業する前、パンの移動販売をしていた。
 「田舎ですから、人が集まる場所というのがあまりないので、直接お客様の家に伺うことが主でした。移動販売と言うより、訪問販売に近い形です。始めた当初は初対面のお客様ばかりで、うまくいかないことが多かったですね。でも徐々に常連さんができてきて、名前も分かる間柄になって、パンの感想を直接聞けたりもしました。お知り合いの方をお客様として紹介してくれることもありました」(吉岡さん)
 しかし始めて2年が経った頃、事故に遭ってしまう。凍結した道路で、パンを載せて走っていた吉岡さんの車は、ハンドル操作が効かなくなり、田んぼに突っ込んでしまった。
 「人的被害がなかったことが幸いでしたが、かなりショックでした。でも、ちょうどその数日前に子どもが生まれ、親としての責任感が芽生えていた時期だったので、目標にしていた店を持つことに、その事故が後押しとなり、挑戦する踏ん切りがつきました」(吉岡さん)
 こうして吉岡さんは、「店を持つ自信がなかったので、実家のガレージを改装して工場を設けて行っていた」(吉岡さん)移動販売に終止符を打ち、2014年に同店を開業した。妻の美希さんと二人で店をやるというかねてからの望みが叶った。美希さんは製パン経験者で、現在は主に販売を担当しながら、包餡などの成形を行うこともある。
 物件探しでは、最初は地元ということで吉野町で考えていたが、平日でも人通りがあり、若い世代もある程度いるなどの条件で、県内に範囲を広げ、現在の場所を選んだ。駅からは近いが、車移動の人が多いため、駐車場を2台確保した。
 店舗の売り場は約3・5坪、厨房は約8・5坪の広さだ。オーブンは、コンベクションオーブン一台で移動販売の時はすべて焼いていたが、新たに平窯を一台追加した。
 「移動販売のときは、あり合わせの機械を駆使して、それでできる範囲でやっているようなところがありました。平窯を使えるようになってからは、フランスパンや食パンが作りやすくなりました。一方、コンベクションオーブンは、手放せない便利さがあり、今は菓子パンや調理パンを焼くときに使っています」(吉岡さん)



ロデブ生地に、ゴルゴンゾーラ、グラナパダーノ、レッドチェダー、モッツァレラの4種類のチーズを練り込んだ製品
全粒粉入りの生地を使用した「ミルククリーム」(税込173円)
大型のハード系のパンが並ぶ陳列棚
ネガティブなコメントで話題の同店のSNSは、吉岡さんが正直な気持ちで綴っている
全粒粉を入れた味がコクがあってくせになる

 現在売り場に並べるパンは、約40〜50種類。移動販売のときの約30種類から増え、ハード系が充実した。土日限定で「パン ド ロデブ」(ホール税込864円)もある。
 「『パン ド ロデブ』はリピーターの方が多いですね。一度買ってくれると気に入ってくれる率が高い商品ですが、初めてだと手が出しにくい商品だと思っています。ですので、気になっていそうなお客様に対しては、『かたそうに見えるけど、かたくないですよ』と、一言でも声掛けするようにしています」(吉岡さん)
 「パン ド ロデブ」は、プレーンのほか、ナッツやフルーツを生地に練り込んだものや、抹茶味、チーズ味など、毎回3〜4種類用意している。また、ホールだけでなく、ハーフカットや4分の1カットの価格もプライスカードに明記し、気軽に購入してもらえるようにしている。
 「色々と種類を展開することで、『パン ド ロデブ』の魅力を、多くのお客様に知ってもらう機会作りに繋がればと思っています」(吉岡さん) 
 移動販売のときから現在も根強い人気の商品は、「クリームパン」(税込173円)だ。ふんわりとしたパンと中のとろっとしたカスタードクリームは、一口かじると、口の中で一体化するようなやわらかさだ。カスタードクリームは自家製で、控えめな甘さが卵の風味を引き立てる。同店は、クリームや粒あん、カレーなどのフィリングはほとんど自家製だ。
 「『クリームパン』はずっと人気ですが、ちょこちょこ改良を続けています。ブリオッシュ生地を使っているのですが、今は全粒粉を10%入れているんですよ」(吉岡さん)
 全粒粉は、「山型食ぱん」(税込313円)や「角食ぱん」(税込292円)以外のほとんどの商品に入れている。幅広い世代に人気の「ミルククリーム」(税込173円)は、フランスパンに自家製練乳クリームをサンドした商品で、このフランスパンには20%全粒粉を入れている。クリームの甘い味に、全粒粉のコクが加わって、複雑味のある味わいになる。
 「全粒粉を入れると食感が変わり、コクが出ます。最初は入れていなかったのですが、試作をしているうちに、ほとんどのパンに入れるようになりました。全粒粉入りでなければちょっと物足りなさを感じるようになってきたんです。また、全粒粉の食物繊維が身体にいい点も気に入っています」(吉岡さん)

景色のいい場所でパンが食べられるベーカリーカフェ

 吉岡さんは修業時代に、健康の大切さが身に染みる経験をしている。職業病とも言える立ち仕事によって起こる身体の不調で、手術もしている。今でも完全に治っている訳ではなく、体の不調とはずっと付き合っていかなければならないが、それでもパン作りを続けていくのは「パン作りが楽しくて、パンを食べるのが好きだから」(吉岡さん)だ。
 「今の店舗はスペースが足りなくて難しいのですが、将来的にはできたてのサンドイッチを食べてもらえるようなカフェを併設したいなと思っています。景色のいいところで、おいしいパンを食べてもらえるベーカリーカフェを開くのを目標に頑張ります」(吉岡さん)

店名:panya junya
住所:〒814‐0002 奈良県香芝市逢坂6‐736‐1
電話:0745‐78‐6868
営業時間:午前7時30分(土日祝は午前7時)〜売切れ次第終了
定休日:月曜、火曜
品揃え:40〜50品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時1人
店舗面積:売り場約3・5坪、厨房約8・5坪
日商:平日5〜6万円、土日約10万円



この記事の読みどころ

●開業する前、パンの移動販売をしていた。
●固定窯をメインに使用し、コンベクションオーブンの機動力もフル活用する。
●「パン ド ロデブ」は、リピート率が高い商品だが、初めてだと手が出しにくい商品。店の品格を示せる商品でもある。





原価計算女王
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