おとぎの国で柔軟な発想のパン作り - 森のパン屋店長の高田千春さん - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
インタビュー/2021年2月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


おとぎの国で柔軟な発想のパン作り - 森のパン屋店長の高田千春さん
森のパン屋店長の高田千春さん
たくさんのパンが並ぶ店内
角煮カレーパン。カレーフィリングもパン粉も自家製。パン粉はハード系のパンでザクザクな仕上がり
日光御養卵の濃厚クリームパン。贅沢なカスタードをたっぷり使用している
特注の「野球ボールパン」。ふかふかのパンにチョコレートクリームが入っている
「森のパン屋」の建物は、イギリスのアンティーク感溢れる洋館のよう
 栃木県小山市にある「森のパン屋」は、栃木県内に3店舗をもつ「天使の森」という写真館が親会社で、店の敷地内は、まるでお伽の国のような別世界だ。店長の高田千春さんは、元料理人で、その経験を活かして、様々な食材の特性を最大限に引き出すパン作りを実践している。そんな高田さんに、パン作りの極意について聞いた。

アンティークの洋館

――「森のパン屋」の名前や素敵な建物についてお聞かせください
高田 実は、「森のパン屋」といっても、周りは住宅街で、豊かな森の中にあるというわけではないんです。住宅街の中の一本道を進んで、つきあたりを曲がると、イギリスの屋敷が現れるという感じなんです。当店の建物は、イギリスのコッツウォルズ地方のアンティーク家具などを、そのまま使用して作られています。あと、当店は、栃木県内に3店舗をもつ、「天使の森」という写真館が親会社となっていまして、当店の向かい側には「天使の森小山店」があります。なので、「森のパン屋」の「森」は、「天使の森」の「森」なんですよ。
――ホームページで拝見したとき、おとぎの国のイラストのように美しくて驚きました。
高田 「天使の森」の敷地も広く、色々なシーンに対応できる写真館ということで、ひとつのテーマパークをイメージしています。当店は、その写真館と道をまたいだ向かい側にあるのですが、パンを買いにきてくださるお客様にも、非日常的なわくわく感を楽しんでいただけたらと思っています。
――素敵な雰囲気のお店ですし、イートインのお客様も喜ばれるでしょうね。
高田 そうですね。コロナでカフェはお休みしていましたが、ようやく再開できたところなんです。カフェは今、モーニングのみの営業で、パンのほかにスープやドリンクもお出ししています。元料理人としましては、少しずつカフェのほうも充実させていきたいと思っています。
――もと料理人なのですね。高田さんのパンやお料理との歴史をお聞かせください。
高田 料理をやっていたのは20代前半なのですが、けっこう私、飲食業をやったのが早いんです。そもそも高校に調理科というのがありまして、卒業すれば調理士の資格がとれるというところでした。高校生のときから地元の著名なシェフのところで学ばせていただき、23歳のときにはパンの世界に入りました。それからハワイのパン屋さんにパン作りを教えに行き、多くの経験ができたと思っています。私の強みというか、私にしかできないことという意味でも、料理を生かしたパンを作り続けていきたいと思っています。
――お料理を生かしたパンというと、いわゆる惣菜パンなどを充実させるということでしょうか。
高田 そうですね。ハムなんかも100パーセント手作りなのです。さらに、いわゆるパン屋で必ず使うあんこ、カレー、カスタードなども手作りしています。自家製の良さは、何よりも味を調整できるという点にあります。うち、甘いパンでも砂糖をそこまで使わないんですよ。砂糖の甘さを美味しいと思っている方々も多いと思うのですが、たとえば、あんことか、食べてもらえばわかりますけど、本当に甘さ控えめで、小豆の味をしっかり堪能できるように作っています。カスタードクリームも、栃木県ということで日光御養卵を使い、卵感といいますか、素材本来の味を生かせるように調整しています。

日々生まれる新作メニュー

――あと、ホームページやフェイスブック、インスタグラムを拝見すると、新作のパンやお客様の注文に応じたパンも多いようにお見受けしますが。
高田 そうなんです。ほぼ毎日、新作のパンを出していますね。
――毎日ですか。
高田 はい。毎日です。ですので、従業員は毎日、ブライスを付けたり、新しいパンの説明ができなければいけないので大変だと思います。新作メニューを考えて作るのが私の仕事でもあるので、休みの日に市場に仕入れにいき、そのとき手に入れた食材をみて、週末に合わせてみるという感じです。隣の県の市場でタコが手に入ったらサンドウィッチにしてみようとかですね。
――とても柔軟な着想で、新たなメニューが生まれるということですね。
高田 そうです。柔軟性は、うちの大きな特徴といえますね。で、市場の話の続きですが、たとえば、よいチーズがあれば、とりあえず買ってくるんですね。そうした良い食材を見ているとイメージがわいてきます。なので料理人が、その日に仕入れた食材でメニューを考えて作り、お客様に提供するのと一緒です。そんなわけで新作メニューは、「降りてくる系」のパンが多いですね。そのように私が自由に柔軟に考え、色々とやってみるわけですが、それ以外のことはスタッフがマネージメントとして調整してくれるので助かっています。私は、現状維持は後退と考えています。なので、ちょっと良くないなと思うと、迷わず分量を変えるなど、どんどん改良していきます。トライアンドエラーですね。あと、お客様の要望や特別注文にもできる限り対応しています。私の性格なのかもしれませんが、頼まれたことは断らないというか、断れないのです。



コロナ禍だからできることが沢山ある
イギリスのアンティーク家具などが配されたティールーム
オンラインでのやり取り

――コロナ禍において、対応していることや、これまでと変わったことなどをお聞かせください。
高田 まず人数制限ですよね。どのパン屋さんも一緒だと思うのですが、売り場がそんなに広くないので、入店されるお客様を5名様までに制限しています。そのため天候や気温に関係なく、外でお待ちいただくことになってしまうのが心苦しいですね。あとは、換気をこまめに行ったり、レジ前にカーテンを設置したり、時間帯によって個包装にしたりと、感染予防対策はとっています。ただ飲食店の中で、パン屋は割りと恵まれているほうだと思います。お客様の滞在時間が短いですし、個包装にすることもできますしね。あと、コロナ禍になって、真っ先にやったのはホームページの充実とSNSの活用です。焼き上がりのパンをその都度インスタグラムとフェイスブックに掲載し、お客様が電話で予約しやすいようにしています。おかげさまで土日は電話が鳴りっぱなしのような状況で、電話番専門のスタッフを配置したいくらいなんです。オンラインショップも充実させて、県外のお客様も増えました。冷凍の技術も上がってきているので、お取り寄せの冷凍のパンは、思ったほど劣化していないと思いますね。お店で買ったパンを翌日食べるという感じで、十分、美味しく食べられます。私も、このコロナ禍になってから、日本中のパン屋さんとつながって、各地の美味しいパンをたくさん取り寄せて食べています。勉強にもなりますし、実際には会えなくても情報交換などもできています。コロナ禍は大変なことですが、逆に、今だからこそできることもあるんじゃないかと思って実行しています。
――2020年7月からのレジ袋有料化では、どのような変化がありましたか。
高田 うちはビニール袋と紙袋があります。パン屋の場合、紙袋のコストが割りと高いのですが、その分をお客様にご負担いただく分、食材購入費などに充てられるようになりました。エコの観点からもスムーズに有料化できてよかったと思っています。特に都会と違って地方だと、パンの価格を高く設定できない事情がありますし。
――最後に、これだけは伝えておきたいということがあればお願いします。
高田 ぜひ、言っておきたいことがあります。栃木県の人たちは、一生、栃木でいいや、というところがあって、とにかく栃木県から外に出ていかないのです。確かに栃木には美味しい食材や美しい風土や豊かな自然もあるのですが、やっぱりもっと外に目を向けて、色々なところに美味しいものがたくさんあるということを知ってほしいのです。私は若い時から、世界中の美味しいものと出合い、学び、まだまだ知らないことがあるのだと思い知らされました。今はコロナ禍でもあり、皆さん大変な思いで過ごしていると思います。ですから、今、本当に今、生きているうちに美味しいものをたくさん食べてもらいたいし、食べる喜び、生きる喜びを味わってほしいと切に願っています。栃木県の人が外に出ていかないのなら、栃木県出身の私が、この小山でとびきり美味しいパンを食べさせてあげたいと心の底から思っています。



取材メモ

「森のパン屋」のオンラインショップで12月限定シュトレンセット購入しました。商品が届いて、段ボール箱を開けたら、ふたの裏側に「Thank you from mori no panya」と黒マジックで書かれていました。かわいらしい文字とともに、クマさんの絵も描かれていて、自宅にいながら、おとぎの国のような「森のパン屋」に行ったような気分になりました。





原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら