ベーカリーとデリ惣菜売り場が隣接国際デリベーカリー協会の展示会に参加6月2日から4日までフロリダ州のオーランドという町で開催された国際デリベーカリー協会主催の展示会・セミナーに筆者は単独で参加した。
この協会の会員は日本では私のみであり、また展示会の入場料が約5万円という高額なこともあって、遠路参加するのは時間と出費のやりくりが大変である。
毎年6月に、開催する場所を移して行われるが、今年はディズニーワールドやユニバーサルスタジオなどで知られるオーランドが選ばれた。
日本から直行便がないのでどこかで乗り換えていくのだが、往復はシカゴ経由を考えた。
仕事柄旅行はお手のものではあるのだが、やはり遠い! シカゴまで約11時間、入国手続きと国内線の接続に3時間、さらにシカゴから最終目的地まで本来は2時間半のところ雷雲のために迂回して4時間をかけて現地到着。それでもアメリカ人の乗客はひたすら冷静であったのは国民性の相違であろう。
パン産業も国際化が進む?相違といえば余談ではあるが、今回お目にかかった多くのアメリカ人はほとんどが「あなたの名前は何と読みますか?」と聞いてくる。
私の名前は「ヒデナオ」と読むのだが、まともに読んでくれる人はまずいない。ローマ字で書かれた名刺を渡すと「ハイデヌー」などと挨拶してくれる。
かって東京は西葛西にある日本パン技術研究所で教鞭を取っておられた池添先生も、アメリカへ研修旅行でご一緒した時に「ミスター アイクズー」と呼ばれて驚いておられた思い出がある。
私たちも外国の名前や単語を日本式に誤って発音している例が多いので同罪といえよう。
それで、なぜ冒頭にこのような話題に触れたかというと、今後ますます進むであろう食品・流通業界の国際化には十分に配慮した対応がお互いに必要と思うからだ。
スーパーマーケット業界などではすでに国際化が進行しているが、パン業界でも将来まったく可能性がないとは言い切れない。
現実に今回の展示会で再会したアメリカの業界人は筆者に日本市場への進出を打診している。重要なのは国民性、食嗜好、市場性などの相違を十分に理解し合うことだと思う。
ウイン・デイクシーの販売促進についてさて今回のテーマは「アメリカにおけるベーカリーの販売促進」であるが、現地滞在中に視察したスーパーマーケット4店舗の中から、大手チェーンであるWINN・DEXIE(ウイン・デイクシー)の実例をご紹介しよう。
ちなみにデイクシーとは南北戦争当時の南軍のことであるが、今でも南部をこう呼んでいる。北軍はヤンキーと呼ぶ。
本社はフロリダ州にあり、昨年度年商は130億ドル(約1兆7000億円)で流通業ランキングは13位、店舗数1150の大手であるが、最近はベーカリー・デリを中心とする商品開発に力を入れている。
フロリダ州にはPUBLIX(パブリックス)という優良スーパーマーケットがあり、両者は熾烈な市場シェア争いを展開している。
この店舗見学の正式許可をとるのに1月を要したが、当日は店長、ベーカリーおよびデリ部門長が付き添って店内およびバックヤードを案内してくれた。
また写真撮影はすべて許可という扱いをしてくれた。したがって撮影した多くの写真から今回のテーマである「販売促進」に関連するものを選んで掲載したので、読者の方々は店舗見学のつもりで写真と解説を見ていただきたい。
また店舗レイアウトを併せて掲載してあるので参考にしてほしい。
なお、販売促進のアイデアはスーパーマーケットのインストアベーカリーもリテールベーカリーも基本的には同一と考えて良いと思う。
読者諸氏に少しでも参考になる部分があればと思う。
ウイン・デイクシーの店舗レイアウトの解説販売スペースの総面積は約4500平米でアメリカのスーパーマーケットとしては平均的なものであるが、昨年11月にオープンした最新店舗である。重要な売り場を図1の番号で見ていただきたい。

[1]は店舗の入り口である。来店客の店舗に対する第一印象はここで決まる。アメリカにおけるスーパーマーケットでの買い物客の65%は左周りに移動すると言われるが、この店の場合も右側に生鮮食品売り場を集中的に配置してある。食品類の目的買い率が高いからだ。
[2]は買い物客が最後に通過するレジスター台。この部分の重要性は最近あらためて注目されている。
[3]ここがインストアベーカリー。実際にはスクラッチ方式で商品を製造しているインストアベーカリーは、ほとんどない。代わりにパー・ベイク、ホイロ後冷凍、焼成後冷凍などの技術導入により、考えられるリスク回避をしている。ただし売り場から商品の最終仕上げをしている作業が見えるので、活気にあふれている。英語でアロマと呼ばれるパンを焼く匂いは、お客の購買意欲を促進する。統計では97%の人がパンを焼く匂いを好むとされている。なお包装済みのパン類仕入れ商品は図1の中の[5]に置かれている。
[4]ベーカリーに隣接してデリ惣菜の売り場がある。ここも商品の大部分をアウトソーシング(外部からの供給)に依存しており、リスク回避をしている。
[5]青果売り場(英語でPRODUCE=プロデュースという)は店舗の壁面を利用した垂直陳列と平台を使った水平陳列による圧倒的なマス・プレゼンテーションでお客の購買意欲を促す。
[6]シーフード売り場はフロリダ州という場所柄重要であり、品揃えに力を入れている。
[7]ミート(精肉)は同じく生鮮食品の要である。サービスミートと呼ばれる対面販売方式で顧客と販売員との会話を通して販売促進を試みる。
[8]やはり最近もっとも重要なのが顧客の要望やクレーム(英語ではコンプレインという)対処を行うのが「カスタマー サービスカウンター」である。この店では「コーテジィ カウンター」と呼んでいるが、担当者がていねいに顧客対応をしているのが印象的であった。このような店の対応は固定客化に結びつく。
なおアメリカのインストアベーカリーに関しては、本誌6月号に一般的な解説をしてあるので再度お読みいただきたい。