うちの味を共感してもらう仕事 - オランチ ベーカリー - ブランスリー電子版

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お店拝見/2019年12月号

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うちの味を共感してもらう仕事 - オランチ ベーカリー
「オランチ ベーカリー」の店主、浅川浩さんと、販売と焼き菓子製造を担当する妻の喜代恵さん
JR淵野辺駅から徒歩6分ほどの場所にある「オランチ ベーカリー」。周辺にはスーパーや飲食店が立ち並ぶ
「レザンノア」(税込248円)や「リンゴとカシューナッツ」(税込248円)、「レザンレザンレザン」(税込270円)などのハード系のパン
一番人気の「食パン」(税込270円)や「バゲット」(税込238円)、「フィセル」(税込113円)などハード系のパンはレジ横に並ぶ
陳列台は一カ所で、入り口から陳列台までのスペースが広く、客が動きやすい造りとなっている
食パンのおいしさが口コミで広がる

 「濃いや薄いなどの違いはあっても、茶系でまとまりがちなパンを、店内の花にしたいんです」
 陳列台に並べたパンに、こう思いを寄せるのは、神奈川県相模原市の「オランチ ベーカリー」の店主、浅川浩さん。並んだパンの彩りや見栄えをよくしようと、フレッシュな青果を使うことを意識してきたという。
 取材した10月、旬の紅玉と栗をデニッシュに使用していた。紅玉は甘酸っぱく煮詰め、「りんごのデニッシュ」(税込259円)に、栗は渋皮煮とマロンペーストに加工し、「渋皮マロンのデニッシュ」(税込259円)に使用。これらデニッシュの人気はすっかり定着しており、午前中に売切れてしまうことがよくある。
 「最初から人気だった訳ではなく、人気商品にしようという意識もありませんでした。ただ、季節のものが持つきれいな色を活かしたいと、自分で生の状態から加工することにこだわって作ってきました」(浅川さん)
 一方、浅川さんが当初から人気商品にするべく注力していた商品は「食パン」(税込270円)だ。じっくり発酵させ、高温短時間で焼成することで、粉の風味と甘さを引き出している。ハチミツを使用し、ほんのり甘さを付けているのも特徴だ。
 「開業前から食パン推しでいこうと決めていたのですが、予想していたより早くリピーターさんがついてくれ、全体の売上げもいいペースで伸びていきました。食パンがおいしいと『生地がおいしい店』として口コミで広がり、それから『ほかのどのパンもおいしいのではないか』と思ってくれる効果があるようです」(浅川さん)
 「生地がおいしい」という評価を大事にしている浅川さんは、ハード系をメインにしたいという考えも持っている。
 「ハード系を食べ慣れていない人が多いのではと思い、試食に力を入れました。スライスして試食してもらうと、『おいしい』と言ってもらえたり、購入に繋がるということがかなりありました。それから徐々にハード系の店として、お客様に浸透していったと思います」(浅川さん)
 ハード系の割合は、当初2割ほどだったのが、現在約4割を占めるまでになった。商品ラインナップは、「バゲット」(税込238円)や「フィセル」(税込113円)などリーンなもののほか、「レザンノア」(税込248円)や「リンゴとカシューナッツ」(税込248円)、「レザンレザンレザン」(税込270円)など、ドライフルーツやナッツがぎっしり入ったものが10種類ほど。ドライフルーツやナッツが入ったものは、ライ麦入りのカンパーニュ生地を使用しており、風味は濃厚だが、食感が軽く食べやすい。
 同店のパンは、ハード系だけでなく、すべてのパンにルヴァンを使用している。
 「ルヴァンは、修業先のベーカリーからいただいたものに、当店で起こしたレーズン種を加えています。ルヴァンを配合することで、もちもち、しっとりして、食べやすくなると思います」(浅川さん)



甘酸っぱく煮詰めた紅玉がたっぷりのった「りんごのデニッシュ」(税込259円)
自家製の栗の渋皮煮を使用した「渋皮マロンのデニッシュ」(税込259円)
オレンジの色が鮮やかな「オレンジショコラ」(税込232円)
「食パン」(写真左)と「全粒粉食パン」(税込282円)
「レザンノア」(税込248円)や「リンゴとカシューナッツ」(税込248円)
「バゲット」の断面
自分のやり方を決めるきかっけ

 開業したのは2015年。軌道に乗るのも早く、慣れてきた頃の3年目のある時、浅川さんは病気で療養しなければならない事態となった。
 「突然でしたし、当時は正直どうしようか、店は諦めなければいけないかなんて頭をよぎりました。でも、常連のご近所の方々から『無理しない程度に、少しでも作って欲しい』などという言葉をもらって、それを励みに、療養して半年後、営業を再開することができました」(浅川さん)
 現在は身体のことを考え、午後追加で焼成するものは、一番人気の「食パン」と、土日は混むので総菜系のパンをいくつかという程度に留め、仕事量をセーブするようにしているという。
 「以前は、夕方来ても選べる量がないと申し訳ないという思いから、追加焼きをよくしていました。当店は、夫婦2人のやれる範囲で営業していこうというのが基本の考えです。自分のできる範囲で今後も続けていくとすれば、今までのやり方を変えていかなければいけません。追加で焼くものは最小限に絞り、売切れごめんのスタイルでやらせていただくようにしました」(浅川さん)
 また、定休日も1日増やし、2連休取れるようにした。1日は仕込みや買い出しがあるが、もう1日は完全に仕事場から離れられるようにした。
 「休みの1日は、自分のお気に入りのベーカリーに行ったりしています。パンは食べるのも作るのも好きなので」(浅川さん)
 浅川さんは子どもの頃、クッキーなどの菓子を作ったり料理をしたりするのが好きだった。大人になり精密機械メーカーに就職したが、「菓子作りをしたい」と、脱サラして製菓製パンの専門学校に入学。卒業後ホテルに就職し、製菓部門を希望するも、製パン部門に配属となった。しかし次第に製パンの面白さに惹かれ、ベーカリー開業を目標に腕を磨く。開業前には個人店でも修業した。
 「『パン・ド・ナノッシュ』(神奈川県茅ケ崎市)で修業させていただいたときに、どういう店にしていきたいか、具体的なイメージが固まっていきました」(浅川さん)
 店名の「オランチ」は、「おらの家」の造語で、「うちパン屋だから来てよ」という思いを込めた。
 「『うちの味を食べてみて』って言えるような個性のあるパンを作っていきたいと思っています。『うちの味』は、いわゆる個性ですから」(浅川さん)

SHOP DATA
店名:オランチ ベーカリー
住所:〒252‐0206 神奈川県相模原市中央区淵野辺3‐12‐5 メイクファイブ102
電話:042‐814‐8300
営業時間:午前9時30分〜午後6時(売切れ次第閉店)
定休日:月曜、火曜
品揃え:約80品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時1人
店舗面積:売り場7坪、厨房9坪
日商:平日約8万円、土日約10万円



この記事の読みどころ

●生の青果を加工して、パンにあしらうことで、華やかさを演出する。
●食パンが美味しいと、他のパンも美味しいと思ってもらえる。
●ハード系のパンの試食提供に力を入れた結果、ハード系の売り上げ構成比が2割から4割に増えた。
●病気療養を経験し、無理なく続けられる店舗運営を模索した。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



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