消費増税後の現状 - ブランスリー電子版

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特集/2019年12月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


消費増税後の現状




スムーズなやり取りを維持 - ボー・スィエル
弘美デリニオンさんの息子で、製造責任者の賢治さん
ボー・スィエルの外観
同一価格で分かりやすく

 「思ったよりも、スムーズに進んで、トラブルになることもなかったですね」
 こう話すのは、千葉県四街道市のベーカリー「ボー・スィエル」で経理を担当している弘美デリニオンさん。
 同店のイートイン席は、店内にテーブルが2台、外にテーブルが4台設置してあり、合計約20席分。それらで購入品を食べる場合は軽減税率が適用されず10%の消費税がかかるこにとなる。
 イートインの利用客の数については、増税となった10月以後も、以前と比べて変化はみられないという。利用者の割合は、全体の約1割程度。
 ドリンクメニューは、コーヒーやエスプレッソ、紅茶、ジュースなどを用意。テイクアウトはしておらず、イートイン専用のメニューとして提供している。
 「その場でお召し上がりになる場合はドリンクを伺ったり、商品を皿に移したり、希望があれば温めたりして提供させていただいています。レジの際のイートインの申告は、今までもそうでしたが、自然とお客様の方からされることが多いですね。やり取りはスムーズです」(弘美さん)
 スムーズなやり取りを今後も維持できるように同店が取った策は、同一税込価格だ。
 「色々な方から聞いた話を参考に、では実際当店のお客様とは、どういうやり取りが想定されるか、ということを考えました。レジでは、テイクアウトかイートインかをお客様に確認させてもらうことが必要になります。そのときに例えば、質問の仕方にしつこさが出てしまったりすれば、お客様に不快感を与えてしまうことになります。それはお互いによくないことですよね。そのようなことをいろいろと考え、結論として出たのが、イートインもテイクアウトも同一価格でやっていこうということでした」(弘美さん)
 販売するパンや菓子などのプライスカードには、税込価格を表記。その税込価格は、レジでの申告によって変わることはない。イートインでもテイクアウトでも、客が支払う額は同じということになる。
 「お客様のお支払いされる額は同一価格なのですが、申告によって、消費税は異なります。ですので、レシートの本体価格と消費税の比率が変わるということになります。イートインされる場合は消費税が10%で、テイクアウトの場合より2%多いですから、その2%分を、本体価格から引くということになります。実質的には当店側にその2%の負担がいくということになります」(弘美さん)
 こうした対応になることは、増税が開始された10月1日に、レジの前に貼り紙で掲示した。今回の増税に関することや、貼り紙の内容については、特に客から尋ねられることはないという。

ポイント還元などのサービスを活用

 同店では、10月に価格改定をした。全商品の約8割を5円もしくは10円、値上げした。
 「材料費と人件費以外のすべては増税で10%になっていますから、資金繰りをスムーズにするために、商品価格を値上げさせていただきました。ただ、食パンやバゲットなど、固定客の多い商品は据え置きにしています」(弘美さん)
 弘美さんは客との会話で、「食料品は上がらなくてもそれ以外は上がるのだから、やはり家計が苦しくなる」などという声を聞いた。
 「お客様に少しでも、買い物を楽しんでもらえたらという思いで、10月からキャッシュレス決済を始めました。キャッシュレス決済では、ポイント還元があります。また、当店は以前からスタンプカードもやっているので、ダブルのポイントで、お得感を楽しんでもらえるのではと思っています」(弘美さん)
 キャッシュレス決済は、スマートフォンアプリの「PeyPey(ペイペイ)」を導入した。
 「導入直後から、かなりの方が利用されています。やはり、若い方が多いですね。30代くらいの方が中心で、男女は問わないですね」(弘美さん)



イートインの人気は不変 - パンドナノッシュ
製造担当の椎葉昇さん
パンドナノッシュの外観
SNSを使って増税後の対応を告知

 神奈川県藤沢市の「Pain de Nanosh(パンドナノッシュ) 藤沢弥勒寺店」は、隣の市にある本店「Pain de Nanosh 茅ケ崎店」の2号店として、6年前にオープンした。本店と同様にイートインを併設している。
 過去に本店の店長を務め、現在は同店で製造を担当する椎葉昇さんは、増税が実施された10月以降、特別な変化はあまり感じていないという。
 「適用前は、イートインの利用が多少減るかもしれないと思っていました。ですが、実際に始まってみると、お客様の動きにさほど変化はないように感じています。数字ではっきりと見てはいないので、感覚的な判断ではありますが。消費税率については、前回の5%から8%に上がったときの方が、影響はありましたね」(椎葉さん)
 同店のフェイスブックで、「イートインのお客様には新消費税率10%で計上された金額にてご請求させていただきます」などと告知したのは、9月下旬。インスタグラムでも同じタイミングで告知した。店頭では特に行わなかったという。
 「10月から変わったことを知らなかったというお客様は、私が把握しているだけでお一人だけいましたが、説明させていただくと、すぐにご理解していただけました」(椎葉さん)
 同店には、利用する際の会計が消費税10%となるイートインスペースは、約40席分ある。店舗の中と外とそれぞれ約20席ずつあり、どちらもテーブルと椅子がセットされている。
 利用頻度の高い店舗内にある方は、特にランチの時間帯、土日平日問わず満席の状態が多いという。
 「すべての時間帯で見ると8%の会計が多いですが、ランチ時は10%での会計の方が多いと思います。その場ですぐに食べたいという需要の高さを感じますね。こうしたことは、以前と変わっていないと思います」(椎葉さん)

席の確保に注意する必要がある

 ただ、昼時は混むからこそ、席の確保は気を付ける必要があるという。
 「会計を済ませた後に、座る席がなくなってしまうという事態は避けなければなりません。いただく額が変わりますから。ですので、イートイン利用の際は、会計の前にあらかじめ空いている席を確保していただくようにしています。これは、お客様だけに任せず、店側も注意して行っていく必要があると思っています」(椎葉さん)
 イートインを利用する際、ドリンクは多くの客が注文する。コーヒーや紅茶のほか、子ども連れの客も多いため、オレンジジュースやホットミルクもある。メニュー表には、これらの価格は税抜価格で表記。テイクアウトも行っているので、レジでどちらかを確認し、8%か10%かの税率を決定する。
 「パンの温めは、テイクアウトの場合でも希望されることは少なくないですが、大体がイートインで食べる場合です。このように、消費税が10%となるかどうかは、わざわざ申告していただくというよりも、温めるかどうかの確認の際や、ドリンクの注文の際の流れに乗って決定することが多いですね」(椎葉さん)
 今後問題視される状況があるとすれば、会計時から気が変わる客の存在だという。
 「テイクアウトの税率で会計をされたお客様が、外に出られて、外のイートイン席を利用されることがたまにあります。それをほかのお客様が目にしたときに、不快な思いをされりのではないかと心配しています。また、そのことが、実際に苦情として出てきたら何らかの対策をしなければいけないのではと思っています」(椎葉さん)
 同店は一昨年の春に値上げをして以来、商品価格は据え置きにしているが、近いうちに値上げを検討する可能性があるという。
 「人件費増加や今回の増税で、影響はかなり受けているので、値上げを検討する話は出てきていますね」(椎葉さん)



地域の人の楽しみがある場所 - ベッカライトーンガルテン
店主の中川貴之さん
ベッカライトーンガルテンの外観
幅広い世代の利用は変わらない

 神奈川県横浜市の住宅街にある「ベッカライトーンガルテン」の店内にあるイートイン席は、テーブル3台と椅子が6脚。店内スペースにおける比重こそ小さいが、担う役割は大きい。
 「小学生の子どもたちだけでも、クロックムッシュを食べたり、飲み物を飲みに来たりしてくれるんですよ」
 こう話す店主の中川貴之さんは、地域密着の店であることを自分なりに考えながら営業を続けてきた。その結果、開業から7年が経過し、老若男女から愛される店へと成長した。
 地域と交わることをテーマにした小学生の学習の一環で、同店がその学習の場となり、小学生を受け入れたり、夏休みに子ども向けのイベントを行ったりしている。
 「覗きに来てもらうだけでもいいと思っています。地域の店として、子どもを見守っていけたらいいなと。基本的には、昔の商店街にあった、店と客の関係が実現できたらいいという考えです」(中川さん)
 仕事帰りの客が寄って、イートインを利用することも多い。今回の増税で、会計時にイートインの場合は「10%の会計になります」と言ってレジを打つようにしているが、すでに周知されているようで、何の問題も起きていないという。
 「消費税が8%から10%に上がったからと言って、利用を控えようとか、そういう動きは今のところないですね。元々、10%の税率での会計は、物販も含めて全体の1割に満たない程度ですが、10月に入っても、子どもから大人まで、変わらず利用してくれています。告知は、10月1日にフェイスブックでしました。改まった形ではなく、たった一言だけですね」(中川さん)

イートイン席の利用価値が高い

 ドリンクメニューは、コーヒーや紅茶だけではない。暑い時期は赤紫蘇(あかじそ)ジュースや、果物を主としたスムージー3種類なども揃える。これらは独自性の高い自家製だ。
 「自家製のスムージーやジュースは、お客様に好評です。イートインでは、飲み物だけを注文される方も少なくありません」(中川さん)
 ベーカリーで飲み物だけとは珍しいが、実はイートインの客には、売り物ではないパンや菓子をサービスしている。
 「例えば、パンの一切れだったり、ちょっと試しに作ってみたものなど、量は少しですが、『ちょっと食べてみてください』という感覚で、ドリンクと一緒にお召し上がりいただけるようにお出ししています」(中川さん)
 小学生が80円のジュースを飲みに来た場合でも、おやつとして食べられるパンや菓子を少し渡すこともある。こうして、客が支払った額以上のサービスを続けてきたからこそ、増税後も変わらずイートインが利用されているのだろう。イートイン席の利用価値の高さが、常連客に浸透しているのだ。
 イートイン用とテイクアウト用と同時に購入する場合は、客の方から「これだけ食べていきます」などと、申告があるという。それは、10月以前と変わらないやり取りだ。
 「お召し上がりになるのは、量としてはドリンクひとつとパンが1〜2個くらいの方が多いですね。その場合イートインのお会計は1000円いかないくらいですから、10%の消費税もさほど気にならないという感覚がお客様にもあるようです。やり取りをしていて、そう感じますね」(中川さん)
 商品価格は、2年ほど前に一斉に値上げした。今回の増税による値上げは今のところ考えていないが、値上げする際は商品自体のリニューアルも合わせて検討するという。
 「ただ値上げするというだけではなく、商品一つひとつの魅力を分析して、その魅力がお客様に伝わるようにしたいと思っています。そのためには、商品名を変えたり、形や大きさを変える必要が出てくることもあります」(中川さん)

引き続き米粉パンの魅力を訴求 - コイガクボ入間本店
オーナーの内山健さん
コイガクボ入間本店の外観
イートイン利用の客を主眼に価格表示

 埼玉県入間市、アメリカ郊外の街並をイメージして整備された住宅地「ジョンソンタウン」の端に位置する米粉パン専門店「コイガクボ入間本店」は2007年にオープン。2011年に、もともと経営コンサルティングの仕事をしていた内山健さんが同店のオーナーになってからは8年が経つ。
 米粉パン専門店が全国的に急激に増える一方、短期間で閉店となっていく店も多い中、同店は近隣の状況をつぶさに分析しながらマーケティングするなどし、常連を巧みに取り込んで生き残ってきた。
 そんな同店は、10月からの増税を機に、店内の商品を全て内税表示へ変更。ただし、同店の場合、イートインが30席もあり利用者が多い事などを考慮し、8%ではなく10%分の税額を足した価格を表示した。イートイン利用者への税額を主眼においた対応だ。
 そして、イートインを利用するか、テイクアウトで購入するかは、レジで個別に聞く方法を選択。その際にテイクアウトだと答えた客のみ8%の軽減税率の恩恵を受けられるという仕組みを取り入れた。
 結果的に値上げした事が印象づけられる表示となったが、それでもこれにより、客数全体の大きな減少や、イートイン利用客の数がテイクアウトの客より大きく減ったような事は、これまでのところないという。

価格を超える価値を訴求する

 そのほか、レジでの対応に関しては、2011年に内山さんがオーナーになった時に300万円近い機能性に優れたものを購入したので、中のプログラムを少し変えるだけで軽減税率へ対応したレジ作業ができるようになった。その際の設定変更は、補助金を利用して来てもらった業者に、増税直前に作業してもらい、問題なく進めることができたという。またキャッシュレス決済に関しては、今のところ客からの直接的な要望もないので導入の予定はない。
 増税による影響は今のところは感じていないが、増税の影響がはっきりと見えてくるのはまだ先かもしれないと感じ、慎重に様子を見ている。
 本体価格については、今回は据え置きにしたが、内山さんがオーナーになった2011年時点での商品の平均価格との対比で見ると、今は平均で20〜30%増まで価格を上げている。これまでに何度も価格を変えてきたからだ。ただし同店の場合、そもそも「値上げ」という発想で価格を変えているわけではないのだという。
 「価格は常に、いいものを進化させていこうという考えのもとに商品を改良した結果、その都度決めています。原価を計算し、その都度ふさわしい価格を決定しているという感覚です。だから、今まで何十回と値段を決定し、結果的に以前より高い値段になってきてはいますが、それは、お客様に満足していただく事を最重要視した結果なんです」(内山さん)
 もともと同店の場合、原料となる米の価格が小麦の約3倍であるため、小麦を使用したベーカリーよりは全体的に高額な商品構成となっている。そのためなるべくは米粉パンの魅力という価値を訴求することで客離れを防いでいる。佐渡ヶ島産という信頼できる米を使用した米粉パンという点も店の強みとなっている。
 そのため、原材料高騰を理由とした値上げというのも同店ではありえないという。「そもそもまず高騰するような原材料は基本的に使いません」と内山さん。
 同店の場合、価格が安定しやすい佐渡ヶ島産の米粉を選んで使っており、それを用いて品質を上げる努力をした上で原価を計算し、その都度ふさわしいと考えられる価格に決めているという。
 「今回のイートイン利用の税額が増える事に関しても、結果的にイートインのサービスや商品の価値向上につながれば、肯定的に捉えられるようになるのではないでしょうか」(内山さん)

イートインのサービスを一本化 - トーチドットベーカリー
オーナーの川端慎之介さん
トーチドットベーカリー蒲田本店の外観
10円ベンチコーヒーは販売終了

 東京・大田区の「トーチドットベーカリー蒲田本店」は、JR蒲田駅から線路沿いに川崎方面に徒歩10分ほどの場所にある。電車の窓から店の名前がはっきり見える店舗のため、地元住民のほか、評判を聞きつけた遠方からの客もしばしば訪れる。
 店内は主に、丸みを帯びた木材を使用した陳列台に80種類近い商品が並ぶ売場、ベビーカーでも入りやすいゆったりした広さの「カフェゾーン」、購入したパンをベンチに座って気軽に喫食できる「ベンチゾーン」で構成されており、広さは厨房を除けば18坪ほど。キャンプファイヤーの松明(たいまつ)に人が集まる空間をイメージしているという店内は、全体的に仄暗い感じの照明を使用し独特の雰囲気が演出されている。人気の食パンやハード系のパンのほか、パンと組み合わせて食べられるカフェメニューのドリンクやモーニング、ランチのセット、そしてそれらをゆっくり食べられる「カフェゾーン」や「ベンチゾーン」を備えていることで、友人とのちょっとした集いに使える店として人気を高めつつある。
 そんな同店だが、10月からの消費税増税に伴い、これまで「カフェゾーン」と「ベンチゾーン」に分けて運用してきたイートインサービスの見直しを実施。
 結局、それまで「ベンチゾーン」とテラス席のみで行ってきた「ベンチコーヒー」のサービスを9月30日で終了させた。「ベンチコーヒー」とは、店内でパンを購入した客に対して紙カップでのコーヒーを1杯10円で提供するというサービス。またこれまでは外部からのドリンクの持ち込みも「ベンチゾーン」とテラス席では可能だったが、10月からは持ち込みはできないように変えた。
 増税に伴い、「ベンチゾーン」のようにテイクアウトとイートインの微妙な境目にあるサービスは運用が難しくなってきた事が背景にあるが、購入したパンを試食がてら気軽に食べて欲しいという当初の目的自体が薄れてきてしまった事もある。
 「実際はカフェメニューを頼んでもベンチゾーンの雰囲気が好きであえて座られる方もいらっしゃいます。また混雑時でカフェ席が足りない時に『ベンチゾーン』に座って頂くようになる事も多いので、それなら『カフェゾーン』も『ベンチゾーン』もカフェメニューを提供するイートインサービスへ統一する形で『ベンチコーヒー』を廃止することにしました」(オーナーの川端慎之介さん)
 レジでは、「カフェゾーン」「ベンチゾーン」とテラス席のすべてを含んだ意味で「イートイン」を利用するかどうか、カフェメニューを頼むかどうかを個別に質問して会計を実施。レジ操作が多少複雑化したとはいえ、大きな混乱はなく、導入後のイートイン客の比率は全体の2割ほどのまま大きくは変わらないという。

本体価格の値上げも予定

 また、同店では現在、価格表示を例えば「100円(税込108円)」というように、外税表記と内税表記の両方を出す形をとっているが、今回の増税に伴い、外税表記のみにしていく事を考えている。イートインとテイクアウトで総額が異なるのであれば、消費者側に最終的な支払金額の計算を任せるようにした方が混乱は少ないと考えているからだ。
 また、キャッシュレス決済は、手数料の負担を考えるとあまり魅力を感じないので、今回は導入の予定はないという。ただ一方で本体価格の値上げは、今後のコスト増と消費動向が不透明な点を考えると避けられない状態となってきている。
 実は、9月中旬頃からイートインの消費税改定の案内文を掲示する際に、「商品本体の価格も今後は順次値上げしていく予定です」という一文を入れた。これまで主力商品の値上げは店舗開業以来実施したことがなかったが、今回ばかりは主力の食パン類なども含め値上げしなければ厳しい状況だ。商品やサービスの質の向上を図りつつも、慎重に判断していきたいと考えている。

原価計算女王
原価計算女王
税率処理は客の自己申告で決定 - 石窯パン工房KAMEYA
社長の佐伯信郎さん
石窯パン工房KAMEYAの外観
レジ前に申告を促す紙を掲示

 東京・墨田区の「石窯パン工房KAMEYA」は、京成電鉄や東京メトロなどが乗り入れる押上駅から徒歩5分ほどの住宅街に位置する。駅を挟んで反対側のほうにかの有名な東京スカイツリーがあるが、こちら側は閑静な住宅街で、半径500メートルの商圏の客を中心とした地域密着型ベーカリーとなっている。同じ墨田区内の別の場所には本店である「かめぱん」も構え、「石窯パン工房KAMEYA」の方は2号店だが、昼時を中心に大勢の客が集まる繁盛店だ。
 地域住民のほか、時折東京スカイツリーを訪れた観光客なども現れる。店の入り口横にはさりげなくイートインが可能なテラス席を設置しており、焼きたての商品を笑顔で頬張る人々の姿が見られる。
 このテラス席ももともとは8席設置していたが、10月の増税を機に10席へと拡大し、トースターや携帯等の充電用コンセントも設置した。
 「イートインで食べる場合は増税となる分、不自由なく使ってもらえるよう充実させました」(佐伯信郎社長)
 ただイートインで食べて帰るかどうかレジでいちいち聞いたりはしないという。実は同店のテラス席は、保健所の届け出としては「フリースペース」として登録している。だから「微妙な扱いだが、客に対しては、テラス席の利用に関して特段縛りは設けていない」(佐伯社長)状態だ。
 それでも店内レジ前には「イートインを利用される方は10%の税率で会計しますので申し出てください」と記載した紙は貼っている。事前告知として紙は10月の1週間前から貼った。税別47円で販売しているコーヒーはテイクアウトでも購入可能だが、10月からは当然、税率を双方で変えて販売している。できれば客側の方から自己申告してほしい、という思いだ。
 実際申告がありイートインとして会計時処理している客は全体の2%位はいるが、テイクアウト用として購入した商品をテラス席で食べている客もやはりいる。ただ、フリースペースの扱いなので、それをとがめたりはしない。
 そのため申告してくれる客のみ10%で会計する措置をとっている。
 「申告してくれる方はおそらくここで食べる時間を大切にし、ゆっくり食べたいと考えて下さっている方ではないでしょうか」(佐伯社長)

キャッシュレス決済の要望は多い

 レジに関しては、スキャン式で機能性の高いものを3年前に導入したが、今回の増税にあたって、軽減税率に対応した設定への変更のみ補助金を利用して業者へ一任した。大きな混乱はない。
 一方、ポイントが還元されるキャッシュレス決済に関しては、まだQRコードを利用したPAYPAYのみの導入だ。それでも利用は客全体の10%を占めており、要望が多いので今後はクレジットカードや電子マネーなどでも決済できるよう準備していくつもりだ。
 「周囲を見ると、当店もそうですが、キャッシュレス決済、ポイント還元を開始するには、加盟店登録手続きが必要な事に直前まで気づかず、導入が遅れたところも多いようです」(佐伯社長)
 同店も自動的に登録が適用されると思っていて、9月頭に気づいて慌てて手続きし、適用開始となったのは10月中旬過ぎだった。
 また今後については消費税とは別に本体価格の値上げも考えていかなくてはならないと考えている。ビニール袋を有料にする話も出ているが、キャッシュレス決済での手数料分も含めて必要コストが増えているため値上げをしなくては苦しいのではと考えている。
 当店は約2年前の2017年1月に、平均で6%、食パン類で8%の値上げをし、売上金額や客数、客単価に大きな変動はなかったが、平均購入点数に影響が出た印象が少しある。 「今回の増税でテラス席利用者が大きく減る事はありませんでしたが、世の中の全体的な消費動向は節制気味になってきているような気がするので、値上げもよく考えて決めていきたいですね」(佐伯社長)


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