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| 連載/2019年7月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 時間が経って冷めたときの味が重要だ - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(26) | |
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もう10年以上前のことだが、大阪のあるパン屋に取材に行ったときに、いたく感心したことがあった。そのパン屋は、大阪郊外の住宅地にあって、とても繁盛している店として、大阪に住む知人から紹介された。周りに店はほとんどなく、新興の大きな住宅街の中に、ポツンとある感じの店だった。
いろいろと興味深い話を聞かせてもらい、帰り際にパンをたくさん頂き、大満足で東京への帰路についた。新大阪駅から新幹線に乗って15分ぐらいたったところで、車内販売のワゴンが回ってきたので、温かいコーヒーを購入し、頂いたパンと共にその日の夕食として味わうことにした。 朝から小雨がずっと降り続いた寒い冬の日で、パンを袋から出してみると、すでに冷たくなっていて、取材時に見た印象とは違っていた。少しがっかりしたが、一口食べたときに、いたく感心してしまった。 何種類かの野菜がのった焼き込み調理パンだったと思うが、とても美味しかった。パンは冷たかったが、「冷たいから美味しい」と思えた。そのパンの焼きたての味を想像してみたが、「冷めたときの美味しさの方が上なのではないか」と思った。パンは水分を充分に保持していて、しっとりしていたし、トッピングされていたごぼうが、思わず抱きしめたくなるぐらい美味しかった。極上の駅弁のような美味しさだと思った。 多くのリテールベーカリーが焼きたてを売り物にしていることからも分かるように、焼きたてのパンは間違いなく美味しい。食べ物が温かいということは、それだけですごいことなのだ。 一方で、パンが冷めたときのことを考えてみると、同じ焼き込み調理パンでも、美味しいものもあれば、美味しくないものもある。焼きたてのパンを比較した場合とは違って、美味しいものと美味しくないもののバラツキが著しく大きいのだ。 つまり、焼きたての時のパンの味よりも、時間が経過して冷めたときのパンの味の方が差が出やすいのだ。商売の成功の鍵のひとつは、他との差別化だと考えれば、焼きたての味で勝負するよりも、時間が経ったときの味で勝負した方が勝算が高いとは言えないだろうか。 小規模のベーカリーであれば、常に焼きたての状態のパンを客に購入してもらうのは難しいだろうし、たとえ焼きたての状態で販売できたとしても、そのパンがすぐに食べられるかどうかは分からない。むしろ、ある程度時間が経ってから食べられることの方が多いかも知れない。 仮に、客がパン屋を100点満点で評価するとして、焼きたてパンの味の配点が50点で、時間が経って冷めたときのパンの味の配点が50点だとしたらどうだろう。焼きたての時の味ではそれほど差は出ないのではないだろうか。ライバル店がすでに50点満点であれば、互角以上にはなり得ないのだから、ライバル店の点数が10点、20点と、低い可能性が高い、時間が経った時のパンの味で勝負した方が、差をつけられる確率が高いことは明白だ。 ただ、時間が経ったときに美味しいということは、日持ちがするということであり、添加物を使ったパンというイメージになる危険性もはらんでいるので注意が必要だ。ルヴァン種をさらに研究するなどして、添加物使用以外の方法で「冷めたときに美味しいパン」を開発しなくてはならい。(RO) |



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