フードバンクですべての人に食べ物を - 一粒の麦から49(文・本行恵子) - ブランスリー電子版

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連載/2019年5月号

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フードバンクですべての人に食べ物を - 一粒の麦から49(文・本行恵子)
今井陽介さんとあいこさん
たくさんのパンが並ぶ「ブーランジェリーパティスリーいまいパン」
仕事帰りの人で遅くまで賑わう「ボヌール東京ミッドタウン日比谷店」
 「フードバンク」は寄付で集められた食品を、食べ物に困っている人たちに無償で提供する活動をしています。食べられるのにも関わらず様々な理由で廃棄される食品を、有効に生かす橋渡し役でもあります。
 日々の食べ物に困っているのは、路上生活を余儀なくされている人ばかりではありません。普通の暮らしをしているように見えても、生活保護申請中の人や、食べ盛りの子供を抱えぎりぎりの生活をするひとり親家庭、わずかな年金で暮らす高齢者など、様々な事情を抱え食費を削って生活している人たちがいます。 

食品ロスの軽減と生活困窮者支援

 現在「フードバンク」の活動をしている団体は、全国に約77カ所あります(農林水産省・平成29年1月末調査資料)。日本で初めてフードバンクの組織を作ったセカンドハーベスト・ジャパン(東京・台東区)は、2000年1月に理事長のチャールズ・マクジルトンさんが、炊き出しのために食材を集めることからスタートしました。今では多くの企業や団体、そして個人から寄付を受け、扱う食品は30トンからスタートし2012年には3152トンと100倍以上になっています。 
 最近フードバンクの活動が食品業界でも認識され、食品ロスの軽減や食べ物に困っている人たちに役立てたいと願う企業が増えています。寄付する側のメリットは、廃棄費用の削減ができることや、寄付した食品の時価に相当する額が、一定の限度額を超えない範囲で損金に算入できることなどがあります。また、働く人のモチベーション向上にもなり、地域社会への貢献にも繋がるでしょう。

フードバンクに寄り添うベーカリー

 沖縄県那覇市にある「ブーランジェリーパティスリーいまいパン」は、東京、フランス、マレーシアで働いてきた今井陽介さんが、2012年に妻のあいこさんの故郷で開業した店です。
 パンと洋菓子合わせて100種類の中から、自由に選べる楽しさをコンセプトにしています。オープンから4年頃まではお客様が定着せず、ロスパンを廃棄する毎日が続いたそうです。その現実に心を痛めていた時、お客様から勧められたのがフードバンク沖縄に寄付することでした。今井さん夫妻が作るパンは、スクラッチベーカリーならではの魅力があり、楽しみに待つ人たちも増えています。「週2回、冷凍したものを取りに来てもらっています。他にも福祉施設や、公民館で開催されている子供のための食事会『いどばたごはん』にも、提供しています。沖縄は離婚率が高く賃金が安いので、無償の食べ物を必要としている人は大勢います。しかし現在2店舗の経営をするようになり、家族だけでなくスタッフや守るべきものが増えました。少しでも売り上げを伸ばしたいので、寄付とネット販売を半々にしようと思っています」と今井さんは語ります。
 また東京都世田谷区にある株式会社リトルハピネス(箕輪喜彦社長)は、東京、神奈川に9店舗を展開する繁盛店です。創業は1950年に先代が箕輪商店として開業しました。昨年オープンした「ボヌール東京ミッドタウン日比谷店」をはじめ、他店舗の売り上げも順調で業績を伸ばしています。
 しかし各店舗の閉店時間が午後9時や9時半で、遅くまで商品があるようにしているので、ロスパンを避けることはできません。破棄する費用も掛かるため、読売ランド店に近い「フードバンクかわさき」に一部のパンを寄付するようになりました。代表者の高橋実生さんは、ご自身がシングルマザーとして苦労されてきた体験から、貧困と直面する人に手を差し伸べたいと2013年に、同フードバンクを設立しました。事務所に入るSOSは増え続け、対応に追われる日々だそうです。
 最近観た映画「こども食堂」(監督・日向寺太郎)は、身近にある貧困社会を子供目線から取り上げ話題になりました。
 ある日突然人生が変わり、今日の食べ物にも困る可能性は私たちにもあるのです。すべての人に食べ物がいきわたる役割を、フードバンクは担っています。

本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。









原価計算女王
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