イノベーションに由来する合理化 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(24) - ブランスリー電子版

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連載/2019年5月号

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イノベーションに由来する合理化 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(24)
 今月号のインタビュー企画で、日本パン技術研究所の井上好文所長に、今後のリテールベーカリ―の進むべき道についてお話を伺いました。取材を担当した本誌記者の記事を読んで、心に強く響くものがありました。
 キーワードのひとつは、イノベーションに由来する合理化です。合理化というと、何か大切なものを置き去りにして、単に効率化だけを追い求めるようなイメージがありますが、イノベーションによる合理化は、それとはまったく違います。つまり、大切なものの価値をさらに高めて進化させた結果として、合理化というご褒美がついてくるということです。
 冷蔵発酵法は、今ではかなり普及が進んでいますが、まさに技術革新による新たな価値の創造でした。理想的な製パン法としてその価値が認められ、広く普及していたそれまでのストレート法とは違った角度から、理想のパンを追い求め、追及を重ねた結果である冷蔵発酵法の誕生は、ある意味、それまでのストレート法の呪縛からの解放だったのかも知れません。それは、ストレート法を否定するというよりは、ストレート法と並行して、共に製パンの可能性を大きく広げる、まさにイノベーションだったのだと思います。製パン法を大きく進化させただけではなく、ベーカリーの労働環境の改善にも計り知れない貢献をしました。
 イノベーションの芽は、ほかにもあちこちに見られます。その一つは、コンベクションオーブンの台頭だと思います。コンベクションオーブンというと、ベーカリーではこれまで、クロワッサンやデニッシュなどを焼き、平窯の補助的な役割を担うようなイメージがありましたが、実はいろいろと研究を重ねていくと、食パンやフランスパンについても、その焼成能力は、平窯に勝るとも劣らないことがわかってきたといいます。それどころか、平窯で焼くのとは違った、パンの品質面でのメリットも多く出せるといいます。平窯で焼くより、焼成時間が短くなったり、クラストが薄くなったりするという報告もあります。
 これもまた、ある意味、その価値が広く認められ普及していた平窯の呪縛からの解放ということになっていくのかも知れません。そして、同じように、それは平窯を否定するものではなくて、平窯と並行して、パンの焼成の可能性を、大きく広げるイノベーションに発展していくのかも知れません。
 画期的なテクノロジーが誕生し、それが生み出す価値を、多くの人たちが享受し、大きな満足感が得られる状態が長く続くと、人々の心の中に、それが成功体験として刻印され、その次に来るべき進化が起こりにくくなるものです。世の中はそういうものだと言ってしまえばそれまでですが、それでは、いつしか思考停止になってしまいます。
 そうした停滞感を打破するきっかけのひとつとなるのは、環境の変化です。人口減少が進行し、人手不足が深刻化するこの激変期にこそ、新たなアイデアと技術革新によって、イノベーションを起こし、環境の変化に対応できるように進化していかなくてはなりません。
 そのためには、先輩からの教えのエッセンスを十分に理解し、消化する一方で、それを合理的に疑ってみる感性も、同時に養っていくことが大切だと思います。(RO)









原価計算女王
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