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| 連載/2019年3月号 |
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| ソフトな食感のパンが固定客を掴む - 一粒の麦から48(文・本行恵子) | |
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ベーカリーコンサルタントの笹本正男さんが、昨年6月に開業した「ベーカリーねもと」に行ってきました。
多品種のパンを提供し、焼きたて作りたてを売りにしてきたリテールベーカリーが、人材不足や原材料高騰から存続が難しくなっている今、笹本さんは持続可能な消費者から支持されるベーカリーの経営を模索し、店を立ち上げました。 今までの経験からスリム化した店舗 経営相談の現場で笹本さんは、商品の原価や工程の見直し、販売データの分析、品質維持に伴う人件費の再考など、あらゆる角度からの改善を行ってきました。その経験から、可能な限り無駄を省き消費者の求める商品に絞って販売すれば、大幅な利益を生み出すことはなくても、安定した経営が得られると考えるようになったといいます。 店舗数を拡大し投資金額が大きければ大きいほど、売り上げの数字に追いかけられ、無理な製造工程と過密な労働時間に頼らざるを得なくなります。 そこで笹本さんは、人件費、原材料、運営コストを削減し、限られた条件の中での店づくりを考えました。店舗はJR松戸駅から徒歩10分のマンション1階にある角部屋6・5坪の小さなスペースです。オーブンやミキサー、ドウコン、冷凍冷蔵庫は中古機械で揃え、店舗と什器合わせて約1000万円に抑えることができました。 製造と販売をひとりでこなす近 裕樹さんの労働時間は、朝5時から夕方5時、営業時間は午前10時〜午後1時、午後4時〜5時の2回で、3時間の休憩時間があります。パンが売り切れたら閉店するため実働労働時間は、8〜10時間に抑えられています。 メーカーの協力で他にない原材料 そして、商品はシンプルな食事パンに絞って、およそ10アイテムを揃えています。 旨味とほんのり甘さのある食パン「ハード・トースト」(税込800円)、パネトーネの「Matsudo Pain de Fruits」(同800円)のほか、ナチュラルチーズを生地に練り込んだ「フロマージュ」、レーズンパンの「とみー」、健康志向の人から人気の高い全粒粉のパン「パン・コンプレ」、和菓子の鹿の子に使われる甘納豆を入れた菓子パン「かなた」などがあり、「フロマージュ」以下はすべて消費税込みで400円。 原材料の小麦粉も、選び抜かれた品種をミックスして使い、副材料もごく限られたものだけに絞っています。そうすることによって、在庫管理のロスも避けることができ、原価率も平均15〜16%前後という驚きの数字になりました。 トッピングやフィリングを加え、バラエティー商品を出せば売り上げには繋がりますが、毎日の食卓で食べてほしい定番商品を基本にしています。材料メーカーの協力を得て完成したオリジナル配合は、高加水ですべての生地にパネトーネ種を5%使って、風味、食感、日持ちのいずれも良いパンに仕上げています。日本人が好むソフトな食感のパンは、高齢者にも食べやすく、数日経過してもパサつきません。厚めに切ってトーストすれば、さらにおいしく食べられます。 開店から8カ月経った現在の平均日商は3万〜5万円を維持し、月商100〜120万円。この数字で経営を維持できれば、貯蓄もできます。 笹本さんは「人生100歳時代を迎え、今働き盛りのパン職人も今のように働き詰めの毎日では限界があり、いつかは倒れてしまいます。ずっと働き続けられる労働環境にすれば、人材不足も少しは解消するのではと考えたのがこの店です。従来のモデルケースとは違うベーカリーがあっても、良いのでは」と話します。 笹本さん自身も、古希を迎えた時引退を考えましたが、今では写真家で叔母の笹本恒子さん(104歳)のように生涯現役で好きなことに挑戦し続けたいと考えています。 ▼ベーカリーねもと=松戸市根本13‐1 毎週木、第1、第3水曜休み 本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。 |



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