イタリアのパンの素朴さを焼き色のグラデーションで表現 - フォカッチェリア アルタムーラ - ブランスリー電子版

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レポート/2019年3月号

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イタリアのパンの素朴さを焼き色のグラデーションで表現 - フォカッチェリア アルタムーラ
「フォカッチェリア アルタムーラ」の外観。店主の山本さんの修業した街の名前からつけた店名
店主のフォカッチャ職人、山本誠さん
フォカッチャ各種(税込270円)
素朴なのに目に豊かなイタリアのパン

 東京・新宿区、東京メトロ東西線の神楽坂駅から徒歩5分のフォカッチャ専門店「フォカッチェリア アルタムーラ」は、店主の山本誠さんが一人で経営するイタリア惣菜とフォッカチャの店だ。開業してすでに6年が経過しており、その人気と定着の様子がうかがえる。ローマ時代に起源を持ち、長い歴史の中、イタリア各地でそれぞれ独自の個性を持つに至った様々なフォカッチャの中で、同店が提供しているのは、山本さんの修業地でもあるイタリア南東部のプーリア地方の街、アルタムーラで出合ったパンを中心としたメニューだ。
 アルタムーラは、「パンの街」とも呼ばれており、人口約7万人に対して200軒以上のパン店が並んでいる。中には薪で焼成を行なっている15世紀から続くパン店も存在し、イタリアの持つ長いパンの歴史を思わせる側面をいくつも持つ。
 山本さんは元々イタリア料理の料理人だった。イタリアへ渡ったのも当初はイタリア料理の修業が目的だったという。しかし、現地の食文化に触れる内に、アルタムーラのパンに出合い、その美味しさに衝撃を受け、同地のパン店「レ・バゲッテ」のパン職人、アンジェロさんに師事し、一年以上に渡るパン作りの修業を始めた。
 山本さんは小麦粉の美味しさに驚き、現地のパンの魅力を語る。山本さんはアルタムーラのパンに夢中になった。特に山本さんが修業した「レ・バケッテ」は、パンだけではなく、ビスコッティーやドルチェに至るまで現地独特の味を提供している。伝統を重んじつつ、常に新しいことへの試みを続ける姿勢でもある。山本さんは、アンジェロさんから教わった伝統的パン作りを忠実に守る事に努めている。最も重要な原材料である小麦粉は、様々な事情から、現地と同じものを日本へ輸入することは来ないが、山本さんは諦めずに理想とする店作りに取り組んだ。
 「アンジェロさんは家族のように私と接してくれ、私の店づくりにも惜しみなく協力してくれました。小麦粉の事も一緒に考え、その結果、日本でもアルタムーラの伝統的なパンが作れるようになりました」と山本さん。
 同店は、イタリアで最も美味しいと思ったパンを日本の多くの人々にも届けたいという山本さんの熱い思いで営まれている。山本さんが大切にするアルタムーラのパンの魅力は、「素朴ながらも香り豊かなイタリアパン」だ。



「カルツォーネ」(左)と、「ほうれん草とリコッタチーズのパイ」(税込378円)
野菜、ハム、チーズのシンプルなサンドイッチ。具は日替わり
「本日のピザ(4分の1サイズ)」(税込324円)
フォカッチャをもっと身近な存在に

 同店の入り口を入ってすぐ脇のショーケースには、大皿にのせられたフォカッチャやピザなどが並ぶ。目に入った瞬間、製品の造形が日本の一般的な商品とは異なる事に気付く。
 まず、サイズが大きめ。看板商品の「フォカッチャ」は1ピースが縦約16センチ、横約7センチで厚みもある。「カルツォーネ」(税込432円)は縦約18センチ、横約8センチ。サイズ感でインパクトの強いものは、ブリオッシュ生地で作られた高さ約4センチの三角形のサンドイッチ(税込400円)だ。
 「大きいですけれど、生地が軽いので割とすんなり食べられますよ」と山本さん。
 ケースに並ぶ商品は、それぞれの見映えの魅力を生かすような焼き色の加減がされている。ピザ生地やパイ生地のそれぞれに合ったグラデーションを持つ淡い焼き色、トマトソースのピザと調和する生地の濃い焼き色、フォカッチャのトマトの赤みやハーブの緑、キノコのグレーがかったブラウンと馴染む生地の黄色みと表面の濃い焼き色などは絶妙。
 「素朴さ」を際立たせる焼きの技術が発揮され、目に豊かなパンが表現されていた。
 人気メニューは野菜とオリーブをたっぷり使った「フォカッチャ」(税込270円)、チャバタにフレッシュな具材を挟んだ「パニーニ」(税込594円)、プレーンなフォカッチャで具材を挟んだホットサンドの「ドッピア」(税込572円)など。「フォカッチャ」は、トマト、玉ねぎ、オリーブなどの定番の具材も人気。アーティチョークやローズマリーなどをあしらったバリエーションもある。
 「フォカッチャは2ピースサイズで置いています。そのままでも提供できますし、ご要望に合わせてその場で1ピースにカットして販売する事も出来ます。イタリアでは量り売りも多いのですが、日本では馴染みがないので当店では取り入れていないですね」(山本さん)
 フォカッチャはフルサイズ(12ピース分)での販売も受け付けている。同店でフォカッチャに馴染んだ常連客は、パーティー用にテイクアウトのフルサイズを注文する事も珍しくないそうだ。「配達した事もありますよ」と、山本さん。
 客の要望に合わせたフレキシブルな対応は、美味しいイタリアのパンを皆で楽しむ場を作りたいという山本さんの気持ちの表れだ。
 そうした姿勢は、「フォカッチャをもっと日常に馴染むものに」という山本さんの願いから来ている。



入り口左手のショーケースには、様々な皿に並べられた製品が並び、まるでイタリアの店のよう
冷蔵ケースも、アンティークのものを根気よく探して、気に入ったものを購入。瓶にはバラ売りの焼き菓子が入っている
インテリアも厳選されている。壁にあるアルタムーラのパンの写真が印刷されたポスターはイタリア製
新作の「穀類のフォカッチャ」(税込648円)
イタリアの食文化に触れる楽しみ

 同店は、アルタムーラの「レ・バケッテ」のように、テイクアウトとイートインのある店だ。コーヒーやエスプレッソといったソフトドリンクだけでなく、ワインやビールも提供している。イートインでは惣菜メニューの提供もあり、フォカッチャを中心にイタリアの食文化が楽しめる。
 「アルタムーラの街はローマやミラノのような観光地ではなく、のどかな南イタリアの街です。そんな街で食べられているのは、旅行者向けのイタリア料理ではなく、イタリアで暮らす人々が長い年月育んで今も日常の食事としているパンと料理です」と山本さん。
 そんな同店では、「アルタムーラのパン」と題して、同地独特のパンを毎週土曜日のみ製造販売している。現地では1つ1キロから2キロもあり、朝地元の人々がパン店に一日分のパンとして買い求めるものだ。同店では同じものを1つ500グラムで作っている。こちらも同店のファンにはお馴染みのメニューだ。
 アルタムーラの街の人々は、昼食前に市場で野菜を選び、肉やチーズとともにパンを購入してランチを作るという。仕事に出ていた家族もランチのために帰宅して家族でテーブルを囲む。自家製ワインだけでなく、ホールトマトやオリーブオイルを家族で作る文化があり、それらに彩られた食卓が生活にもたらす豊かさを、山本さんは強く実感したそうだ。
 また、昨年は山本さんが6年ぶりにアルタムーラへ赴き、現地の現在のパン店に触れた年でもあった。帰国後、早速新メニューを発表。ひまわりの種、ゴマ、ライ麦、大麦、亜麻仁を混ぜ込んだ「穀類のフォカッチャ」が登場した。ダークブラウンの焼き色にハーブが飾られた、直径約19センチの大きな円形の製品だ。食べ方もシンプルに「何も付けずにそのまま」がおすすめだという。粒々の雑穀の歯応えが心地よく、各種穀類の味わいの豊かで、そのままの味を楽しみたくなるパンだ。「ワインにも合うと好評を頂いています」と山本さん。
 同店は、他のイタリア料理を得意とするレストランなどとのコラボイベントにも熱心に取り組んでいる。まだ日本の人々に知られていないイタリアの食文化の温かさや美味しさ、それらの食事によってもたらされる幸福感を、山本さんはパンを通して伝えている。

店名:フォカッチェリア アルタムーラ
住所:〒162-0801 東京都新宿区山吹町5番地 スリアン神楽坂1階
電話:03-6265-3842
営業時間:午前10時〜午後5時(月曜、火曜)、午前10時〜午後9時(水曜〜土曜)
定休日:日曜
スタッフ:製造販売1人





原価計算女王
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