パリで親しんだ人と人との温かな繋がりを日本の人達と再構築する - ブーランジュリー ボネダンヌ - ブランスリー電子版

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レポート/2019年1月号

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パリで親しんだ人と人との温かな繋がりを日本の人達と再構築する - ブーランジュリー ボネダンヌ
店主の荻原浩さん
「ブーランジュリー ボネダンヌ」の外観
対面式販売で客とのコミュニケーションも活発。パンの説明や提案もさりげなく行われる
冷蔵ケースではバゲットやハード系のパンに合う食材や、要冷蔵の菓子、飲み物などが並ぶ
「パングリエ」(右、税込190円)、「プチパングリエ」(左、税込100円)。バゲットに慣れていない人に向けて開発
焼きたてを販売して人気の「パン屋のマドレーヌ」(税込160円)
パリで味わった美味しさを伝えたい

 田園都市線・三軒茶屋駅から徒歩約12分、世田谷区の三宿で営まれる焼き菓子とパンの店「ブーランジュリー ボネダンヌ」。店名の表示された白いドーム型オーニング(日よけ)と、濃い色の木彫のファサード(正面)、そのドアの上部を彩る幾何学模様の飾りの組合せというさりげない個性が印象的だ。この純朴さの感じられるスタイリッシュな雰囲気は、同店のイメージ的確に表している。
 店に入ると、15種類程度の焼き菓子の並ぶテーブルがあり、正面の対面式販売スペースに辿り着くまで、両壁のパン棚のパンドゥミや量り売りのカンパーニュ、パンオノアなどが迎えてくれる。
 パリを知らない者にも、日本のベーカリーとは異なるパリのパティスリーブーランジュリーのイメージを想起させる様子だ。
 そして正面の平台の上部には、店の横幅に近いサイズの大きな黒板にバゲットサンドのメニューが手書きされている。色合いといい、デザインの感覚といい、懐かしさを刺激されるイメージに溢れている。
 2013年7月に開業した同店の店主、荻原浩さんは、パン職人であり、パティシエとしてもパリでの1年半の修業を含め10年に近い経験を持っている。
 パリでパンの美味しさを知り、2度目の渡仏中にブーランジュリーでの修業も約4年積み、パン職人となった。その転機について荻原さんはこう語る。
 「日本ではパンをほとんど食べなかったんです。味がよくわからなくて。パリで暮らし始めて、食事のために何気なく1本100円程度のバゲットを買いました。そしてスーパーでハムとチーズを買ってサンドイッチを作って食べてみたんです。とても美味しかった。パンの味をフランスで初めて知りました。そこからパンが好きになったんです」
 荻原さんの感性に訴えるパンとの出合いをきっかけに、荻原さんはやがてパン職人の道へ向かった。
 「パリでたくさんの美味しいパンに巡り合いました。この店では、その時の記憶、香り、気持ち、パンを食べた時の自分のいい思い出を再現したいと思っています」と荻原さん。

パリのエッセンスで人と人との温もりを

 パリ修業時代に培った技術のみならず、荻原さんがパリで得た全ての大事な要素を表現する店として営まれる同店。荻原さんが同店で大事にしている最もパリらしいもののひとつに「客とお店のいい関係」を挙げた。
 荻原さんは「パリのベーカリーは毎日商品の出来上がりが違います。美味しい日もあればあまりそうでない日もあります。もし日本の店で『美味しくない』とお客様が感想を抱いた場合、昨今の風潮では、何も言わずに二度と来店しないか、インターネットに悪口を書くか、そういうことになりがちではないでしょうか。でもパリでは違いました。お客様は自分の気持ちを店に伝えてくれるんです。今日は美味しかった、昨日は少し違ったなどと率直に気持ちを伝えてくれます。私達もその気持ちに応えていきます。そういう関係を日本の店でも作りたい思って、ずっと大事にしています」と話す。
 そして、このパリのような店と人との関係を、「昔の日本のようでした」と荻原さんは語った。
 「大事にしているのは信頼です。お客様も店もお互いに信頼し合って成り立つ関係を、作り続けて行きたいですね」
 この荻原さんの思いと考えが、まさに同店が同店である所以なのだ。目に心地よい店のデザインの美しさと、美しいけれど壁の高さのない親しみやすさ。接客は丁寧で手際も良く、つまり技術的に優れていながら、自然な優しさと温かさで対応してくれる。高い技術を偉ぶらず、来店する顧客全員に、さりげない温かさで自分達のいいと思ったものを気さくに提供していく。高度な技術力があるからこそ達成できる理想が、同店では実現されていた。
 「パリには日本のコンビニのようなお店はありません。ベーカリーが近い存在です。地域に必ずあって、気軽に訪れて、気軽に買い物できるお店。日本の私の店もそういう存在でありたいですね。駅から離れた住宅街に店を開いたのも、人の流れの多さよりも地域の人々の日常生活に馴染み、美味しさを提供して提案して、食のお手伝いをするお店になりたかったからです。お年寄りも子供も来てくれます。子供がお小遣いで160円のマドレーヌ一個を買いに来てくれたり、お使いでバゲット一本を買いに来てくれたり。昔の日本でもコンビニ以前にそういう店が街にありましたよね。そういう店をイメージしています」(荻原さん)
 現在は毎日の来店者の8割がリピーターで、その数は平日でも平均約150人、休日で平均約200〜250人の規模だ。



看板商品の「バゲットトラディション」(右、1本税込290円、ハーフサイズ税込145円)と「シャルポンティエ」(左、100グラムまたは3切で税込180円)。大きなサイズで焼き上げるパリらしいパン
1番人気のバゲットサンド「ジャンボン フロマージュ」(税込500円)
パンの楽しさを伝えていく

 ボネダンヌの人気商品にバゲットサンドがある。開業1年目、同店は客足の伸び悩みに苦労したという。その中で熱心に顧客とのコミュニケーションを取り続け、顧客の求めるもの、自分の提供したいものを考え続けながら開発したのが、バゲットサンドだ。
 「パリのベーカリーでもバゲットサンドを売っています。ただあらかじめ作り置きして冷蔵庫で保存しながら販売する方法が主流なんです。私の店では注文を受けてから作ります。これはとても好評を頂きました。ここからお客様も増えてお店全体の商品が売れて行くようになりました」と荻原さん。
 バゲットサンドのメニューは、ハムとバターの「ジャンボン ブール」(税込400円)、ハムとグリュイエールチーズの「ジャンボン フロマージュ」(税込500円)、自家製木いちごジャムとフレッシュバターの「タルティーヌ フランボワーズ」(税込280円)といったパリのポピュラーなメニューが並び、具材はシンプルそのもの。しかしその味わいは豊かで、素材の質の高さを思わせる。「パリで食べたサンドイッチのように作っていますから、食材は良いものを選んでいます。でも、レシピは簡単で自宅でも作れるメニューなんです。だから、ここで食べて美味しいと思ったら、自宅で作るようになってくれたら嬉しいですね」と荻原さんは話す。店のメニューは食べ方の提案であり、最終的には顧客が自ら豊かな食生活を送ってくれるのが夢だという。
 荻原さんは、客の自主性を最大限に尊重する。「別のお店に好きなパンがあったら、そこで買ってもらっても私は構わないんです。当店で気に入ったものだけ買って下さって、食パンはよそで買う、といったお客様の在り方を良いと思います。囲い込みたいという気持ちはないんです」との考えを語った。
 同店のパンを買って帰ると、部屋にかすかにパンの香りが漂う。ボネダンヌで嗅いだ香りの記憶がよみがえり、さりげない親切さでいっぱいの店を思い出す。パンのある部屋が、楽しく、幸せな場所になる。

SHOP DATA
店名:ブーランジュリー ボネダンヌ
住所:〒154−0005 東京都世田谷区三宿1-28-1
電話:03‐6805‐5848
営業時間:午前8時〜午後7時
定休日:月曜、火曜
品揃え:パン約30品目、菓子約20品目
スタッフ:製造4人、販売5人
店舗面積:厨房約9坪、売り場約3坪
日商:平均15万円





原価計算女王
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