都心から郊外へと広がっていったバゲット - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話 - ブランスリー電子版


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連載/2018年12月号

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都心から郊外へと広がっていったバゲット - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話
 今回の特集のテーマは、前回に引き続き、「ベーカリーのブランディング」で、メゾンカイザーとポールを取材しました。前回のヴィロンと共に、2000年初頭にオープンし、日本でのフランスパンの普及に大きな貢献をしてきたベーカリーです。
 当時はまだ、バゲットやバタールなどのハード系のパンは、憧れみたいなものはありましたが、実際に食生活の中で、食べる人たちはそれほど多くなかったと思います。
 本誌が創刊したのが2000年ですが、当時は、フランスの街にあるベーカリーがそのまま日本の街角に現れたようなフレンチテイストのベーカリーが、ぽつりぽつりと出来始めた頃だったと思います。私は、そういうベーカリーを見つけては、取材に行っていましたが、話を聞いてみると、気合いを入れて始めてはみたものの、ハード系のフランスパンは、店の売り上げの柱にはまだ到底なり得ない、という趣旨の答えが返ってくるのが常でした。
 当時は、一部のリテールベーカリ―チェーンなどで、バゲットなどのフランスのハード系のパンを売りにしていましたが、その売上構成比はまだまだ高くなかったと記憶しています。
 そんな中で、今回本誌が取り上げたヴィロン、メゾンカイザー、ポールの3店が相次いでオープンしたのでした。程度の差こそあれ、いずれも都心の一等地への出店であり、その製品も、それまで日本で売られていたハード系のフランスパンの価格よりは、少し高い高級感を演出したものでした。
 最初は苦難の連続だったといいます。メゾンカイザーの高輪本店では、1日14本しか売れないこともあったそうです。多くの人が、食べたことがない、食べ方がわからないということで、試食を積極的に提供しました。カゴにひと口大に切ったバゲットを入れて、スタッフが客に手渡しました。その際必ず行っていたことは、客と会話をすることだったといいます。「スープと一緒に食べたり、お肉料理のソースを付けて食べるとおいしいですよ」などと、食べ方を伝えて、興味を持ってもらえるように努めたそうです。さらに、パンを持って店先の交差点まで出ていき、試食を勧めたりすることもあったといいます。
 ヴィロンでも最初の頃は、「小さいのに高いんだね」などと客から率直な疑問をぶつけられる事も少なくありませんでした。しかし、2階のベーカリーレストランで食べ方の提案ができたことと、フランス人を中心とした外国人グループが来店するようになり、「フランスでも珍しいフランスらしいバゲットのある店だ」などと話題にしてくれたことなどから、その知名度は徐々に上がっていったといいます。
 一方で、郊外立地のベーカリーでも、バゲットなどのハード系のフランスパンは、徐々に市民権を確立していきました。若い世代のパン職人たちが、競ってハード系のフランスパン作りの技を磨き、「本格的で高品質なバゲットが、都心に行かなくても、しかも比較的安い価格で買える」と有り難がられました。
 ある意味、ヴィロン、メゾンカイザー、ポールなどが、都心で作り上げたブランドによって開拓されたハード系の食事パンの需要を、郊外のフレンチテイストの小規模ベーカリーが、幅広い年齢層や所得層の人達へと地道に広げていったということなのかも知れません。日本のパン食文化の幅は、こうしてさらに広がっていったのでした。(RO)









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