自分たちのわくわく感を優先 - ボー・スィエル - ブランスリー電子版

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お店拝見/2018年11月号

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自分たちのわくわく感を優先 - ボー・スィエル
父親の後を継ぐ製造責任者の賢治デリニオンさん
最もよく売れている商品のひとつである「バゲット」(右上、税込259円)など、フランスの定番の食事パンは、レジの後ろの棚に並ぶ
千葉県四街道市にある「ボー・スィエル」の外観
ボルドーを基調にし、重厚感を出した店内。壁は自分達で塗ったという
「ボム・フィーユ」(税込194円)など、自家製のクリームや生のフルーツを使ったパイなどが並ぶ
フランス人としてのアイデンティティーを貫く

 千葉県四街道市の「ボー・スィエル」は、レイモン・カルヴェル氏に師事し、日本などアジアで、本格的なフランスパンの普及に貢献したジャン・デリニオンさんが開業したベーカリー。現在は今年2月に亡くなった同氏の後を、息子の賢治さんが製造責任者として継いでいる。
 「父はフランス人としてのアイデンティティーをずっと大切にしていて、それを商品に表現していました。僕も父と思いは同じで、フランス人がどのようにパンを食べているのかについての知識をもとに、フランス人の日常の食卓を紹介できるような店づくりをしていきたいと思っています」(賢治さん)
 店内をフランス一色に埋め尽くす、パン、生ケーキ、焼き菓子、料理は、すべてフランスの伝統的なレシピで作られたものと、ジャンさんや賢治さんが開発した他店にないオリジナルのものだ。
 「フランスの定番アイテムは、材料も製法もいじりません。例えば、南仏が発祥のブリオッシュ『サントロペ』(税抜324円)のクリームには、オレンジフラワーウォーターを使うのですが、これを入れなかったり、オレンジとか別の物で代用してしまったりしたら、全く別のものになってしまいます。フランス人としてのアイデンティティーが失われてしまうのと同じことですし、フランスの日常を表現するという、当店のポリシーにそぐわないのです。それに違和感も覚えます。日本人が、海外で、アレンジされた和食に出合ったときに感じる思いと同じだと思います」(賢治さん)
 賢治さんは生まれも育ちも日本だが、物心ついた頃から、父親からパンや料理について学んでおり、フランス人の感覚が染みついている。
 「周りにあるフランス風のものについて、本場のものとどこがどう違うのか、父はガイドのように、一つずつ教えてくれました。こうして、本物を知っていくことができました」(賢治さん)
 キュウリを酢漬けにした「コルニション・アンソワ」(税込200円)は、一般的なピクルスと一線を画す。砂糖と塩を使わず、マスタードの実とアンチョビを入れることで、風味豊かでコク深い味に仕上がる。
 同製品のほかにも、自家製のハード系パンのお供が充実している。「豚肉のリエット」(税込540円)、「鶏レバームース」(税込540円)、「自家製ガーリックバター」(税込454円)などがあり、どれも本場のレシピと違うことのないよう、こだわりをもって作っている。
 同店オリジナル製品の一つである、「シェーブル」(ハーフサイズ税込259円)は、カンパーニュ生地に山羊のチーズを折り込んで焼き上げた食事パンだ。
 「当店には、フランスというドアがあります。ドアがあるから、フランスに特化した、当店にしかないものを作ることができるんです。チーズや生のキノコや野菜など、フランスの知人から空輸で送ってもらう食材もあります。これらも当店でしか手に入らないものですから、他店と価格で争うことにもなりません」(賢治さん)
 フランス直輸入の食材はパン作りに使うだけでなく、毎月最終土曜日に開催する「ミニマルシェ」で販売もしている。
 「食材の使い方が分からなければ、下処理や調理法などをお教えしたり、その場で実演してお見せすることもあります。それが当店の信頼に結び付くと思っています。また、毎週土曜日は、パンや菓子の品数が増えるだけでなく、普段はない、サラダやスープ、メイン料理なども販売します。お客様がこれらを見て、歓声を上げてくれると、当店も楽しい気持ちになりますし、とても嬉しいです」(賢治さん)



オレンジフラワーウォーターを使用したクリームをサンドしたブリオッシュ「サントロペ」(税抜324円)
「サントロペ」の断面
富士山麓の水を使用した、加水率80%の食パン「トレビアン」(税込324円)
「トレビアン」の断面
カンパーニュ生地に山羊のチーズを折り込んで焼き上げた「シェーブル」
きゅうりを酢漬けにした「コルニション・アンソワ」(税込200円)など
不遇の時代もポリシーを曲げずにやってきた

 現在同店で最も売れているのは、「バゲット」(税込259円)と富士山麓の水を使用した、加水率80%の食パン「トレビアン」(税込324円)で、ほかのハード系のパンも売上げは着実に伸びている。
 ジャン・デリニオンさんが開業したのは1990年。最初の頃は、賢治さんが「不遇時代だった」と言うように、地域の人にとって、日本人向けにアレンジすることのない同店の商品を受け入れることはなかなか困難だった。
 「キッシュをチーズケーキだと思って買ってしまったとか、マカロンの色が派手だとか、ローストチキンをパン屋がやるなんてとか、よく言われました。それでも作りたいものを作り、ポリシーを曲げずにやってきました。流行に乗った商品など、お客様に媚びるためのものは、作るつもりはありません」(賢治さん)
 実は同店は、商売目的で始まった訳ではなかった。ジャン・デリニオンさんが製粉会社で開発の仕事に就いていたとき、趣味でパンを作り始め、作ったパンを近所に無料で配っていたところ、たちまち評判となり、「お金を払うから作って下さい」と申し出る人が出てきたのだ。
 「自分たちが、わくわくしたり、珍しいとか面白そうとか思えるものを作らないと、続かないですし、媚びようとするとくたびれます。当店はお客様に対して常に、『こんなおいしいもの、いかがですか』と、おすすめの商品をご紹介したいという姿勢でいます」(賢治さん)
 皮のやわらかい、ソフトフランスを求められることも多かったという。しかし絶対に作ることはなかった。
 「売上げが上がるからと言って作ることはしません。そもそも当店は儲けようとして始まった店ではありませんから。そして、僕たちが面白いと思って作るパンを評価してくださっているお客様を、傷付けて裏切ることになってしまいます。残る傷跡は、こちらが想像するより深いと思います」(賢治さん)
 開業から今年で28年。ハード系の人気も定着し、土曜は遠方からのリピート客が押し寄せ、平日の2〜3倍の忙しさとなる。昨年は、厨房や売り場が手狭になったのと、駐車場を完備するため、約3キロ離れた場所に移転オープンした。
 「『ボー・スィエル』に来ると、『楽しいフランス』があるって思ってもらえるように、ポリシーを曲げず、そして謙虚さを忘れず頑張っていきたいです」(賢治さん)

SHOP DATA
店名:ボー・スィエル
住所:〒284‐0016 千葉県四街道市もねの里6‐16‐3
電話:043‐310‐6020
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:日曜・祝日
品揃え:パン150〜200品目、菓子約
30品目
スタッフ:製造常時5人、販売常時3人
店舗面積:厨房20坪、売り場15坪
日商:平日22万円、土曜55万円



この記事の読みどころ

●フランス人の父の想いを継承し、フランスのパンそのものを提供することにこだわる。
●父親が残してくれたフランスへのドアを活用し、他にはない食材を仕入れ、他にはない製品をつくる。
●客の要望と自分達のこだわりの一致点を地道に探し、ウィンウィンの関係を築いていく。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





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