ベーカリー夏の陣 - ブランスリー電子版

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特集/2018年10月号

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ベーカリー夏の陣




顧客をねぎらう気持ちで接客し、秋への準備も怠らない - プチ・アンジョ国立
オーナーシェフの津金一城さん(左)と、妻の津金美恵子さん
プチ・アンジュ国立の外観
「味わいカレーパン」は現在までの焼き上げ回数が表示されるなど、ライブ感満点
入り口の扉には出迎えるようにイベントを知らせるポスターが並び、入店する客の期待を高める
猛暑の中来客した客をねぎらうため、レジ横に設置された麦茶サーバー
ベーカリー夏の陣(1)

プチ・アンジュ国立:
〒186‐0003東京都国立市富士見台2‐45‐9‐1F
電話 042‐505‐4104

夏のイベントを積極的に開催

 閑静な住宅街に佇む「プチ・アンジュ国立」(東京・国立市)では、店の扉に貼られた「本日限定!メロンパンアイス」の賑やかなポスターが客を出迎える。北海道素材100%のバニラアイスを、卵黄のたっぷり入ったブリオッシュ生地のメロンパンに挟んだ特性の菓子パンだ。レジで注文し、その場でアイスをトッピングしたメロンパンアイスが提供される。同店大人気のメロンパンに、アイスに加えてチョコチップもはさんだ贅沢な商品だ。まだ暑さの続く夏の夕方に、親子連れで来店した子供達が親に購入をせがみ、笑顔で頬張りながら店を後にしていった。
 「8月27日のジェラートの日のイベントを日曜日の26日に一日前倒ししたんです。丁度気温の高い週末になりましたし、閉店前に限定数が完売しました」と、同店オーナーシェフの津金一城さんは話す。
 いつも楽しいイベント感で一杯の同店は、夏の企画も数多い。メロンパンアイスに合わせて、同日はメロンパンも20円値引きして売り出していた。ファンには嬉しい日曜日のサービスとなった。また、人気商品の「味わいカレーパン」も、この夏の全国カレーパングランプリ金賞2年連続受賞の感謝セールとして、8月25日の土曜日から31日の金曜日まで「サンキュー価格」と題して39円引きの税込147円で販売。取材の1時間の間にも次々と売れ、次の揚げたてが追加される好評ぶりだった。また、8月18日の日曜も「夏祭り」として、710円購入毎のくじ引きイベントが実施された。メーカーの協賛を得たケーキミックスやジャムなどの食材が景品のはずれなしのくじだ。主婦の家計意識に訴求する内容で、人気がうかがえた。
 7月、8月の毎週土曜日は人気商品のイベントを実施している。毎月初旬に販売と製造のチーフとサブチーフを中心に会議を行い、アルバイトからも好きな商品の意見を集め、企画を考える。メール会員を重視し、各イベントの告知を行い、リクエストによる復刻パンの「デミたまバーガー」や「スペシャルバーガー」を実現。土日共合計70個を完売するなど好評を得ている。

暑い中も来店するファンを大事に

 「売上が伸びる日もあります。でも、夏場が苦しくないとは言えないですね」と津金さんは言う。今年の8月は最も売上が高い時期と比べて1割から最大2割の売上減を想定しているという。「毎日の数字の増減に囚われると、減った事にばかり気をとられますが、8割以上のお客様が猛暑でも来店して下さっているのです。これはすごいことだと気付き、そこに注目するようになりました。天候にかかわらず私どものパンを買いに来て下さるお客様を大事にするのがこの季節だと考えています」と津金さん。
 同店では今年から麦茶のサービスを始めた。導入について津金さんは以前同業者から、「口がさっぱりするから試食が進んで売上増に繋がりますよ」という勧めを聞いた事があったそうだ。しかし「試食のため」という動機はしばらくの間、津金さんにはあまりよい事に思えなかった。そして今年の暑さを受け、初夏の内に販売スタッフから訴えがあった。「来店したお客様や、特にお年寄りの方が暑さで息を切らしていてとても辛そうなんです。なんとか一息入れてほしい。麦茶サービスをしましょう」。津金さんはその言葉に麦茶サービス開始を即決した。「暑い中ご来店して下さったお客様のために必要なサービスなんだ」と考えた。
 同店は、最高気温が38度Cを記録する日も、力一杯のサービスで客を待っている。扉の前に立った時から、「今日も楽しそう。来てよかった」と思ってもらえるサービスやイベントで迎える。夏の企画も、日頃から客へのホスピタリティーを最も大事に考える同店だからこそ、次々に生まれ、店を賑わせているのだろう。閉店間際まで客足は途絶えなかった。

秋へ繋げる種まきを着々と進める

 昨年の夏は、9月初めから季節を先取りして、秋の食材のスイートポテトを使った製品やかぼちゃ練り込み生地の製品を出し、好評だったという。「残暑の時期だからこそ、涼しい気分を早く届けてあげたいですね」と、今年も津金さんは秋から冬への準備には余念がない。
 「夏場にスタッフの研修旅行があります。一人で行く子もいますが、他店のスタッフと合同で行くスタッフもいて、それぞれ遠くのベーカリーで色んなものを見たり、学んだり、それを仲間で分かち合っているようですね」と津金さん。「全員でのミーティングも増やしました。この時期にフランスパンの作り方の見直しをして、品質向上をはかるチャンスにするつもりです。歯切れ、口溶け、香り、どうすれば向上するか。焼き色も丁度いい焼き加減まで細かく見て行けるように」と津金さんは考える。
 夏場は生産量を減らせる分、店のオペレーションの見直しや強化などを行っているのだ。実りの季節は迫っている。



外部イベントへ参加するなどして、時間を有効利用する - サリュー!!
オーナーシェフの末次佑介さん
洗練された雰囲気の「salut!!」の外観
「レモンヨーグルトとミントの蒸しパン」(税込210円)。レモンにミントの爽やかさを加え、シェフのセンスが光る夏の人気商品
人気商品「乾物カレーパン」(中央、税込250円)。乾物入りで同店ならではのオリジナルカレーパン。暑い日も食欲をそそり、ビールにも合う
「青ぎりみかん&山椒ソーダ」(税込410円)。シェフのセレクト商品。毎日のように売れていく定番商品
ベーカリー夏の陣(2)

サリュー!!:
〒158−0098 東京都世田谷区上用賀4−34−1馬事公苑前住宅106
電話:03−6804−4065

外部イベントで新規顧客を開拓

 ベーカリー「サリュー!!」(東京・世田谷区)は、8月25日、26日の二日間に渡って開催されたビールイベント「チトビヤ」に出店した。小田急線千歳船橋駅徒歩約15分の住宅街に店を構える同店にとって、千歳船橋駅前で開催されたこのイベントは、多数の初めての客と出会う画期的なものになった。
 「駅前で買い物をされる方は住んでいるエリアが少し違うので、今まで当店のパンを食べた事のないお客様に食べてもらう事が出来ました。むしろ常連の方はお見掛けしませんでしたね」と同店オーナーシェフの末次佑介さんは話す。地元のフリーペーパーへの掲載をきっかけに出来た人脈からチトビヤの主催者に繋がり、出店に至ったという。
 元々お酒の中ではビールが好きな末次さんは、ビールと合わせて楽しめるパンのメニューを多く開発している。
 25日の出店日は夕方4時頃からイベントがスタート。当日はイベント前に店を閉め、末次さんとスタッフ全員で出掛け、メインの惣菜パン以外にも、その日店にあるパン全てを持ってイベントに向かった。同店の看板商品「乾物カレーパン」(税込250円)やチキンカツを挟んだドッグ類など人気の惣菜パンは完売。そしてほかのパンもよく売れた。「食パンを買って行かれるおばあちゃんがいらっしゃいました。駅前だから通りすがりに覗くお客様も多くて、普段のパン屋さんに寄ったみたいに買い物されるんです」と末次さん。その日に用意したパン数百個は全て売り切れた。当日は、「地元のパン屋さんなんだね。初めて知ったよ」と声を掛ける客との出会いがあり、後日には「チトビヤのパンが美味しかったから来たよ」という新たな客の来店もあったそうだ。
 「自分自身が外に出て初めてのお客様と触れ合えたのもいい刺激になりました。もともとイベントへの参加や外に出て行くのは好きです。最近は厨房を担う事が多くて外に出る機会が減っていたので、良かったですね。賑やかなイベントで、ステージで音楽の演奏もありましたし、抽選もありました。景品募集が掛かると手を挙げて出品して、お客様の喜ぶ顔を見られたりして、とても楽しかったです。次の世田谷パン祭りも楽しみにしています」(末次さん)

休暇を充実させ、研修に力を入れる

 間もなく開業丸4年を迎える同店では、今年から新規スタッフの採用を行った。それまでのスタッフの配置換えと共に、店内3人体制から新しく販売と製造を担うスタッフを増員し、8人体制の規模に拡大となった。
 「当店では製造も販売も出来るスタッフを育てていきたいので、この夏場はその時間を多く取る事が出来ました」と末次さん。
 また、これまで2交替でとっていたスタッフの夏季休暇も、思い切って全員で長い休暇をとり、リフレッシュ効果を狙った。 「私はオフでは仕事から頭を切り替える方なので、休みは思い切り満喫します。その効果がどう出るのかはこれから次第だと思いますが、そういった実験もしています」と末次さんは話す。同店は冬のシュトーレンが人気を集めており、関東圏以外への卸販売も行っている。自店での販売では贈答用に一人で20個購入する大ファンも獲得している。そのトップシーズンから比べると、夏場は3分の2程度に売上が落ちる事もあるという。ただ、今年の猛暑でも、夏の売上の数値としては、大きな変化はなく、。例年の夏通りの売上を記録している。
 「9月になると、気温が高くても気分は秋になるものです。秋の食材は豊富ですから、新作のアイデアも募りますね。冬も季節ものに力を入れていきますから、ゆっくり考える時間があるのはむしろ今の内かも知れません」と末次さんは語る。
 今後の目標として、「大人向けの夜のパン教室」や夏休みの昼間の子供向け「子供パン教室」の開催を考えている。

食のセレクトショップとして

 夏場に同店で活躍したのは、ジュースやアイスコーヒーなどの冷たい飲み物。ジュースは末次さんが見つけたお気に入りの良品だ。特に砂糖、塩、防腐剤、香料、着色料不使用の100%人参ジュースはこの夏も好調。人参嫌いの子供にも飲みやすいと好まれ、よく売れる。
 同店には「食のセレクトショップ」というカラーがある。パンを軸にしつつ、パンと組み合せて良いもの、おいしいもの、素敵なものが末次さんのセンスで厳選され、置かれている。菓子も「ボカナッツ」という黒糖の蜜を絡め火を通してカリッとさせたものが好評。高知県産の、コーヒーに合う菓子だ。また、「きめ細やかな泡立ち」というフレーズで、この夏人気の強炭酸とは違った味わいを持つクラフトソーダ「青ぎりみかん&山椒ソーダ」「小夏&シナモンジンジャーエール」(各税込410円)も毎日のように売れている。「パンより単価が高くても買って行かれる方はいらっしゃいます」と末次さん。
 自由を大切に、既存のベーカリーのイメージでは扱っていなかったものも取り入れていく末次さんの視点が生きた結果と考えられる。
 「客足悪いからといってのんびりしてしまうと、秋にお客様が戻った時に出遅れて、増えた生産量に対応しきれなくなるのが怖いんです。気持ちは普段と変わりません。お客様がいらしたらいつでも出来たてのパンを提供できるよう、準備万全に進んでいきます」と末次さんは力強く語った。



猛暑の時期の客の消費行動に合わせた商品展開を行う - パラオア
店主の池口康雄さん
魅力に溢れるパラオアのパン
ベーカリー夏の陣(3)

パラオア:
〒273-0107千葉県鎌ヶ谷市新鎌ケ谷4-6-28
電話:047−468−8046

総菜パンの充実を図ったことが奏功

 「ここまで厳しいのは数年ぶりですね」
 今夏の営業についてこう振り返るのは、千葉県鎌ケ谷市のベーカリー「パラオア」の店主、池口康雄さん。
 「昨年も暑かったですが、意外とすぐ涼しくなって、それに合わせて客足も復活していきました。ですが今年は梅雨明けが早い分、暑い時期が長くなった上に、一日中、夕方になっても気温が下がらなかったですよね。当店は7時閉店なのですが、昨年とかだと、日中を避けて来られる方が、夕方に結構多かったのですが、今年はそれも、あまりありませんでした」(池口さん)
 しかし、売上げは昨夏より若干伸びたという。
 「昨年の盆休み明けに値上げをしました。値上げはずいぶんしていなかったので、客足が減るなど、悪影響を心配しましたが、それほどありませんでした。そんな調子で夏を迎えたので、売上げとしては、昨年の夏より若干増えましたが、売上個数としては、昨年の方がありました」(池口さん)
 昼間の暑い時間帯は、徒歩で来店する人は少なかったが、車移動が多い地域性上、車で出たついでに寄ってくれる人が多かったという。
 「ランチの時間帯に、総菜系のパンを強化しました。わざわざ暑い中来てくださったお客様のために、こまめに焼いて、焼きたてを並べるようにしました。すると、焼いたそばから、2〜3個手に取ってくださる方が、結構いました」(池口さん)
 総菜パンは、スパイシーな味付けのものや、タコスミートなどの夏を感じさせるもの、ラタトゥイユのような夏野菜をふんだんに使ったものなどを中心に揃え、食欲をそそらせた。
 「期待通りに、総菜系のパンは好調でした。ですが一方で、食パンなどの食事系のパンは不調でしたね。家で料理をするのではなく、総菜系のパンを買って、食事を済ませようと思われる方が多かったのでしょうか」(池口さん)
 同店は、購入したパンや、エスプレッソマシンで抽出するコーヒーなどが楽しめるイートインスペースがある。焼きたての総菜パンを、涼しい店内のイートインで食べていく人が多かったという。
 「今年は、総菜系のパンに特に力を入れました。それと合わせて、冷蔵の菓子パンやプリンなどの冷菓といった、夏向けの商品も、例年通り用意しました。これらは、総菜パンと一緒にデザートとして、購入してくださる方が多かったですね。特にマンゴープリンは人気がありました」(池口さん)

空いた時間で商品開発をする

 木曜から日曜まで、一週間で4日間の営業で、週休3日という同店は、今夏、盆休みを4日間とり、定休日と合わせて10日間連続で休んだ。
 「販売スタッフの中には、ご家族の夏休みと合わせて休みたいという人もいるので、一般的なお盆期間中に休みを取りました。これだけ長期間で休むことは年間通してないことです。一日の就業時間も減らしたりしているので、空いた時間に、他のベーカリーのスタッフと食事に行ったり、他のベーカリーを見に行ったりしているスタッフもいます。また、繁忙期に比べ、今夏は約15〜16パーセント売上げが減りました。そのように、暇な時期を利用して、スタッフの育成や、秋冬の新商品開発も行いました。普段忙しくてできないことができる時期だと思います」(池田さん)
 今夏は、新たに粉を2種類導入して、新商品や、新しい生地の開発などを行った。昨夏は、そこまでのゆとりはなかったという。
 「最強力粉を使ったイギリスパンを手ごねで作ってみようかと思っています。手ごねをしたことのないスタッフにとっても、いい経験になると期待しています」(池口さん)

百貨店催事への出店など、売上げを減らさない方法を考える - ブーランジェリーオンニ
店主の近賀健太郎さん
「ブーランジェリーオンニ」の外観
ベーカリー夏の陣(4)

ブーランジェリーオンニ:
〒233−0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西3−10−1
電話:045‐367‐8501

客足が減る時期に百貨店催事へ出店

 神奈川県横浜市の「ブーランジェリーオンニ」の店主、近賀健太郎さんは、今夏の暑さは、客足にかなりの影響があったと実感している。
 同店は、最寄りの京急上大岡駅から750メートルほど離れている。しかし、高架下をまっすぐ行けば着くという分かりやすさもあり、徒歩で来店する人が多い。
 「今年は外を歩いている人もいないくらい、暑い日が多かったですね。普段は駅から歩いて帰宅する方が、バス利用に切り替えるというケースが多かったようですので、歩いて帰る途中に寄ってくださっていた方の利用が少なくなったと思います」(近賀さん)
 今夏の客足は、昨夏と比べても減ってしまったという。
 「当店の前にあった大型スーパーの取り壊しの影響も大きかったですね。昨年の夏は営業していましたから、スーパーからのお客様の流れが着実にありました。今夏はそれもないので、昨年比で、90〜95パーセントくらいに落ち込みましたね。繁忙期と比べると、7割くらいの売上でしょうか」(近賀さん)
 暑さに加え、大型スーパーの取り壊しという二つの要因によって、同店の客足は打撃を受けた。
 しかし、来店客数が減少する時期を、一転して好機とすべく、百貨店の催事に出店した。
 「8月中旬に、銀座の百貨店に催事出店しました。百貨店から声がかかったのですが、出店のタイミングはよかったと思います。やはり夏は、夏前から苦戦しそうなことが予測されたので、出店は積極的に行っていこうという気持ちでいました」(近賀さん)
 百貨店では好調な売れ行きで、売上げ目標額を達成した。
 「百貨店へは、これまでいくつかの場所で出店してきましたが、百貨店それぞれの立地によって、お客様の数や年齢層などが全く違います。ですので、出店したからといって、必ずしも利益が出せる訳ではありません。ですが、銀座は観光目的の方も多いですし、人出がそもそも多いので、販売しやすく、ほとんどの日が完売でした。当店が得意とする、ハード系の売れ行きがよかったですね」(近賀さん)

スタッフの余暇を充実させる

 同店は8月の百貨店催事の後の一週間、3人の社員やパートのスタッフに休暇を与え、近賀さん夫妻2人だけでの営業を行った。また、2人で無理なく行うため、一日の営業時間を短縮した。
 「昨年は一週間休みが取れましたが、今年はそれはできないと、7月の時点で思いました。少しでも利益を出すため、経費をできるだけかけない営業をしようと、夫婦2人だけで可能な範囲でやることに決めたんです」(近賀さん)
 近賀夫妻以外のスタッフには、この短縮営業の一週間以外にも、通常営業日の就業時間を短縮するなどし、普段より多く余暇を与えた。
 「できた時間をどう使うかというのはその人次第ですが、他店のスタッフと食事会をしたり、他店を見に行ったりしたという話も聞きます。売上げアップに直結はしなくても、モチベーションアップにはなっています。夏は、こうした自分の時間をつくれる余裕のある時期ですね」(近賀さん)
 厨房では、普段のように忙しさに追われることがないので、試作やスタッフの技術向上が図れるという。
 「スタッフのポジションを変えられるように技術指導ができたり、商品開発ができたりするので、夏は、レベルアップが図れる秋冬に向けての準備期間と言えると思います」(近賀さん)

飲食業とパンの販売を繋げて通年一定した売上げを維持 - 三井製パンCafe&Garden
店主の三井宏生さん
ブロッコリー、マッシュルーム、しめじなどをトッピングして焼き上げるフォカッチャ
ベーカリー夏の陣(5)

三井製パンCafe&Garden:
〒299−3241 千葉県大網白里市季美の森3−3−6
電話:0475‐77‐8885

飲食を重視した店づくり

 千葉県のほぼ中央に位置する大綱白里市の「三井製パンCafe&Garden」は、昨年3月に東京・千代田区から移転した。今夏は移転後2回目の夏となった。
 「思った以上にご来店いただきました。売上げも、昨年の夏ともほぼ同じくらいです」(店主の三井宏生さん)
 移転前との大きな違いは、パンの販売よりも、飲食に重点を置いたことだ。そのため、店内には21席のカフェスペースを設け、外にはペットと利用できるテラス席も設けた。テラス席は、ウッドデッキで、居心地よく設えた。
 「テラス席は、屋根の下なので日陰になっているのと、ミストを設置しているのとで、多少ですが、涼が取れます。ですので、ペットをお連れでなくても、テラス席を利用される方が多くいらっしゃいました」(三井さん)
 カフェで楽しめるサンドイッチやフォカッチャにスープやサラダが付くランチメニューのほか、ドリンクなどのメニューの充実を図った。
 「今年から、無添加のソフトクリームを始めました。多いのは、ランチ後にソフトクリームを追加される方です。また、ソフトクリームを食べて少しのんびりした後に、パンを買って帰られる方も、結構いらっしゃいます。ソフトクリームが、パンの購買に少なからず繋がっていると実感しています」(三井さん)
 さらに三井さんの妻、乙笑さんが作る、本場のインドカレーの提供も好評で、カレー目当ての来客もあったという。
 「売上げは、夏も含め、季節による大きな変動はありません。飲食を重視しているので、パンの販売と飲食の割合は年間を通して2対3くらいです」(三井さん)

フォカッチャが来店動機を喚起

 パンの販売で、暑くなる頃から人気なのは、サンドイッチやフォカッチャで、移転前も後も変わらないという。
 「フォカッチャは季節を問わず当店の人気商品なのですが、夏が近づいてくると、さっぱりとした具のサンドイッチや、夏野菜がたっぷりのったフォカッチャの人気が一層高まります。フォカッチャは、日替わりで作っていますので、暑い日でもそれを楽しみにご来店してくださる方もいます」(三井さん)
 日替わりのフォカッチャは、インスタグラムで、その彩りの良さと具沢山な点を、常連客にアピールしている。
 「他店にはない特別なものを提供するよりも、夏野菜をたっぷり使ったパンや、みずみずしいサラダ、スパイシーなカレーパンなど、夏にお客様が抱くイメージに即したものが、しっかりと用意する方が、購買に繋がると思っています」(三井さん)
 同店は今年のお盆休み期間中、週2日の定休日を返上して営業した。
 「海水浴場で有名な九十九里まで15キロくらい離れているので、海水浴帰りの方がいたかどうかはわからないですが、地域的にご実家に戻って来られている方が多かったように感じます。ですので、お盆期間中も営業しました。お盆の間は、いつもより三世代でのご家族連れでいらっしゃる方が多かったようです。今後、遠方からもお客様がいらっしゃるように成長していければ、お盆期間中は休まず営業していくべきだと思っています」(三井さん)

原価計算女王
原価計算女王
8月は前年比増達成デニッシュ食パンが売上増に貢献 - ブーランジェリーベルドール
オーナーシェフの奥裕樹さん
ブーランジェリーベルドールの店構え
ベーカリー夏の陣(6)

ブーランジェリーベルドール:
〒593‐8324大阪府堺市西区鳳東町7-733おおとりウイングス1F
電話:072‐274‐2025

定番商品を消費者の暮らしの定番に

 大阪府堺市のショッピングセンター、おおとりウイングス内の「ブーランジェリーベルドール」は、この記録的猛暑の中、前年8月を上回る売上を達成した。3年程前に開業した同店は、食品、生活雑貨やファッションなどの店が集まった商業施設「おおとりウイングス」に並ぶ専門店のひとつだ。この夏の業績についてオーナーシェフの奥裕樹さんは「夏に向けて特別な事をしたというわけではありません。以前から、固定客を掴むにはどんな商品が良いのかを考えている内に、食パンをブラッシュアップしていくようになったのです。それが毎日の食事としてお客様に定着して来たということだったら良いですね」と話す。
 「1人でも多くの人にベルドールのパンを食べてほしい」という強い思いを持つ奥さんは、梅雨などの客足が鈍る時期に、空いた時間をみては「どんなパンにすれば」と絶えず試行錯誤を続けていた。「暑くても寒くても、わざわざ足を運んで買いに来てもらえるパンはなんだろう」と考え続けた結果、奥さんが辿り付いたのは「食パン」だった。
 「去年からブラッシュアップを始めて、種類を増やしたり、特長のある食パンを作ったりしてきました。プレーンな食パンに加えて、バリエーションを増やしたんです。それが夏の間も安定して売れました」と奥さんは語る。
 同店の食パンの特長は水分の多い多加水パンであることと、消費者にニーズの高い北海道産小麦を使ったこと。また、夏に好評となったのは、デニッシュ食パンだった。「そういえばやっていなかったと気付き、始めました」と奥さん。夏場はデニッシュ生地にクランベリーを加えて酸味を添えたり、チョコレートデニッシュ、ミルクデニッシュなどと種類を広げ、各メーカーの油脂を使ってリッチな食パンも増やした。その結果、通常の食パンの1斤220円〜250円程度に対し、デニッシュ食パンは付加価値を得て350円程度で販売できる商品となった。
 「ホールセールとの特徴の違いを出す事を意識しています。ホールセールでなく、ショッピングモールの専門店としてお客様に提案できる食パンに磨きをかけていくつもりです」(奥さん)
 今年の梅雨も食パンの売上が全体を伸ばしたという。3年前の開業時から比べると、食パンの売上は2倍に増え、当初人気だった菓子パンや惣菜パンを超える看板商品となった。

夏季の空き時間で商品をブラッシュアップ

 同店が店を構える「おおとりウイングス」では、夏季に子供向けのイベントがショッピングモール全体で行われる。縁日のようなイベントや、子供向けの企画が催されている。
 「私達はモールのイベントに乗る形で参加しました。子供向けに小さいサイズのパンを作っています。亀さんなどの動物パンがよく出ます。でも私達の基本はやっぱり定番のパンなんです。年間のピーク時の売上と比べれば、真夏は最大で2割くらい減る事もあります。それでも食パンが落ちる傾向はないですね」と奥さんはいう。
 猛暑を理由に大きくモール全体の来店者数が減る事はなかった。他の専門店の帰りにベーカリーに寄る客もいる。しかしベーカリーを目的地とする客も増加。今年の夏は予約数も増え、毎日食パンだけで1日30〜40斤、多い時は60斤程の注文が入っている。
 奥さんが夏場の空き時間に行っていた事は、商品のブラッシュアップと掃除だという。同店は年中無休の営業で、製造の奥さん自身も休暇を取らない。夏場も無休で働くため、夏の空き時間こそ普段掃除しきれない細かいところにまで目を行き届かせ、メンテナンスを行う時なのだ。「後は情報収集や外出に使います。SNSも活用して人気の食材やパンを調べたり、外からの刺激をもらったり」(奥さん)。
 絶え間ない努力が定番商品を磨き上げ、人気商品を生み出したようだ。


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