欧州パンとベーカリーカフェとITと… - ミュゼ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2002年9月号

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欧州パンとベーカリーカフェとITと… - ミュゼ

ミュゼは通りの路面より少し下がった場所にある
今年4月、東京・千代田区三番町の一角に「本格欧州パン」を作るベーカリーカフェが誕生した。店名は「ミュゼ」。フランス語で博物館を意味する。パンの博物館……? いや、それだけではない。正確には、パンだけではなく、パンについてのさまざまな資料、情報、人間…………インテリジェンスを蓄積し、パンをテーマにした巨大なアーカイブとなることをもくろむ一風変わった存在なのだ。

住所 東京都千代田区三番町7‐1朝日三番町プラザ1F
電話 03-3261-7118
URL http://www.imweb.ne.jp/musee
営業時間 午前8時〜午後9時
定休日 土曜、日曜



欧州のパン食文化を伝えたい。その戦略は、単純明快

大屋氏(左)と杉山氏(右)


ハード系のパンが並ぶ。レトロ・バゲット(右)、バタール(中央)、ドゥミ・レトロ(左)。これらはすべて同じ生地から作る。
ミュゼは、商業施設を得意とする建築家、大屋和彦氏と製パン機械輸入業者幹部のひとりとの共同経営。本格的なヨーロッパのパンを原形に近い状態で作り、それらのパンを取り巻く食文化とともに提案することが使命と自負する。
平日の午後のひとときに約8坪の売り場に並べられたパンは、バゲット・レトロ(220円)、プチ・フランス(100円)、クッペ(100円)、デュミ・レトロ(120円)、バタール(220円)、リュスティック(200円)など。パンの歴史が長く深いヨーロッパのパンが、時空を超えてそこにある、といった感じも受ける。
ヴィエノワズリーも豊富だ。バニラシロップに漬け込んだフレッシュの桃をトッピングして焼いた「ペーシュ」(220円)、フレッシュのブルーベリーをトッピングした「ダノワ・オ・ミルティーユ」(180円)などのダノワーズ(デニッシュ)などが誇らしげに並ぶ。
こうしたパンを普及させるための最初の戦略はいたって単純明快だ。まず、形とサイズのバラエティーを豊富にする。
ミュゼを代表するパンであるバゲット・レトロとリュスティックは、それぞれ同じ生地からさまざまな形と大きさの商品を作る。
バゲット・レトロについては、プチ・フランス、クッペ、デュミ・レトロ、シャンピニオンなどおよそ10品目。リュスティックについては、小型の「プチリュスティック」(120円)を作る。「家族が小人数の方には、小さいサイズの方がいいと考えました」と大屋氏は語る。
そしてこれら2つの生地からは、良質のドライフルーツやナッツ類などを練り込んだ「リュスティック・オ・フリュイ」なども作る。「『欧州の本格派パン』に馴染みがない人にとって食べやすい」との思いがあるようだ。
バゲット・レトロやリュスティックにナチュラルチーズやハムなどを挟んだカスクルート類にも力を入れている。
ペッパーをからめたハムに半硬質のチーズを挟んだ「カスクルート・トラディショナル」(320円)、ハムと半硬質のチーズ、野菜などを挟んだ「カスクルート・ド・リュスティック」(380円)などだ。これらの商品の具材は日によって変わる。
こうした製品にも、欧州のパンに無理なく親しんでほしいという願いがこもっている。



長時間じっくりと発酵をとる

ミュゼのパンの製造を一手に引き受けるのは、茨城県つくば市のあるハーブ園でパンを作っていた杉山洋春さんだ。弱冠23歳。ミュゼのオープンに当たって、大屋氏に請われて製造責任者になった。イーストを少なめにして長時間じっくりと発酵をとるパン作りが信条だ。「作り手の都合ではなく、パン生地の都合に合わせることが大切だと思います。実は長時間発酵は、通常の製法より、パン生地に合わせやすいんですよ」と話す。
今後は、ハーブをたくみに使ったパンを少しずつ品揃えに加えていきたいと考えている。



食事に創意工夫する余裕がほんの少しでもあれば、いける

フレッシュの桃をトッピングした「ペーシュ」


リュスティック生地にくるみやレーズンなどを練り込んだ「リュスティック・オ・フリュイ」


リュスティックにハムやチーズなどを挟んだ「カスクルート・ド・リュスティック」


焼き上がった製品を窯から出す杉山氏
ミュゼは、午後3時になると売り場を模様替えする。売り場は入り口を入って縦長の約6坪で、右側が6席のカウンター、手前と左側がパンの陳列スペースになっているが、午後3時以降は、左側の壁に沿ってテーブルを配置し、カフェの色合いをさらに強めるのだ。「ヨーロッパのおいしいパンの食べ方を多くの人に知ってもらうには、店内でいろんな料理といっしょに食べてもらうことが効果的な方法のひとつです。顧客との会話の中で提案できるのが大きなメリット」と大屋氏は話す。
カフェでは、「ポークのワイントマト煮込み、季節野菜添え」や「スモークサーモンとチーズのジェノバソース」などの料理のほか、大屋氏がセレクトしたワインも出す。
大屋氏は「欧州のパンのおいしさが本来のパンのおいしさ」ととらえ、欧州のパンがある食生活を日本に定着させたいと本気で考えている。その方法論としてのカフェスタイルのベーカリーだった。
「これまでも多くの人が同じ目的で試行錯誤を重ねてきたが、まだ目的達成には程遠いのでは」との質問に対して、大屋氏は「独自の発展を遂げた今の日本のパン食文化の現状に異論があるわけではありません。ヨーロッパスタイルのパン食文化もひとつの選択肢としてあっていいと考えているだけなんです。ここ10年で少しずつではありますが、ヨーロッパスタイルのパン食文化は着実に定着してきていると感じるし、そういう選択肢があるということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思うんです。ワインがある食卓は以前と比べたら増えています。ワインがある食卓だったら、ヨーロッパのパンでいけますよ」。
大屋氏はさらに続ける。「食事を囲んで生まれてくる文化ってあると思うんです。生活者がそれぞれの立場で、食事に対してほんの少しでも創意工夫をする余裕があれば、私たちの提案は、魅力的な選択肢になると確信しています。そして時代の雰囲気はそういう方向に振れていると感じています」。

ITは経費ほぼゼロの販促ツール

インターネットを駆使することもミュゼの特徴のひとつだ。ミュゼのホームページ(http://www.
imweb.ne.jp/musee)を開設、パンについてのさまざまな情報を発信している。
 「地域とともに育ち、地域に根ざしていかなくてはなりません。ITの利点の一つとして、地域の人たちとのコミュニケーションの有効な手段となりうる、ということがあります」と大屋氏はいう。
現在検討しているのは、パソコンと携帯電話を端末とした、固定客への情報提供だ。「本日はとびっきり上等なチーズが入りましたので、それを使ってサンドイッチを作りました」などといった情報をリアルタイムで流していくのだという。現在、顧客の中から「情報を流してほしい」という人を店頭やホームページで募っている。
「ITのいいところは効率的でお金がかからないこと」と大屋氏。将来的には、ITを使って、生活者とパン業界関係者をとり込んだ双方向ネットワークを築きたいと考えている。

ミュゼを代表するパンのひとつ
リュスティック
バゲット・レトロと並んで、ミュゼを代表するパン。スパイラルミキサーで水を多めに入れてミキシングし、独特の内層、食感に仕上げる。200円。
【配合%】
フランスパン専用粉………………………80
強力粉……………………………………20
塩……………………………………………2
インスタントドライイースト…………………0・1
モルト……………………………………0・2
水…………………………………………73
【工程】ミキシングL4分、捏ね上げ温度21度C、発酵5時間40分(1時間、2時間、5時間の各時点でパンチ、パンチは手に水をつけて行う)、分割200グラム、布取り、ホイロ27度C75%30分、焼成上火240度C下火240度C28分(スチーム注入)

原価計算女王
原価計算女王
夏向けに開発したミュゼ流カレーパン
キュリ
複数の香辛料を混ぜ合わせたインドの混合スパイス、ガラムマサラで作ったチキンカレーを使用。焼成時にスチームを多めに注入し、蒸し焼きに近い状態にする。200円。
【配合%】
強力粉……………………………………100
塩…………………………………………2・1
上白糖…………………………………………5
脱脂粉乳………………………………………2
生イースト…………………………………1.8
水……………………………………………69
バター…………………………………………4
【工程】ミキシングL3分M3分(バター投入)L3分M5分、捏ね上げ温度24度C、発酵2時間(1時間20分の時点でパンチ)、分割25グラム、ベンチタイム40分、成形→▼カレーフィリングを25グラム包む、ホイロ 30度C75%1時間10分、焼成上火230度C下火150度C7分(スチーム注入)
※焼成後、イタリアンパセリをトッピングする。
▼カレーフィリング
【材料】
鳥モモ………………………………………1枚
タマネギ大…………………………………1個
ラムレーズン……………………………100g
ワイン……………………………………150g
ブイヨン…………………………………大さじ1
チキンコンソメ……………………………大さじ1
ガラムマサラ………………………………50g
ココナッツミルク…………………………200g
無塩バター…………………………………25g
薄力粉……………………………………25g
マッシュポテト……………………………100g
【作り方】(1)鳥モモ、タマネギを軽く炒める(2)ラムレーズン、ワイン、ブイヨン、チキンコンソメを圧力鍋に入れ、15分加熱(3)無塩バター、薄力粉、ココナッツミルク、ガラムマサラで、ベシャメル(ホワイトソース)を作る(4)[3]を[2]に加えかき混ぜながら10分煮る(5)マッシュポテトで硬さを調節しながらさらに煮る(6)よく冷してできあがり

フレッシュのブルーベリーを盛ったデニッシュ
ダノワ・オ・ミルティーユ
ミルティーユ(ブルーベリー)を贅沢に盛ったダノワーズ(デニッシュ)。季節限定の商品。
【配合%】
フランスパン専用粉…………………………………100
生イースト………………………………………………3
塩………………………………………………………2
上白糖………………………………………………10
脱脂粉乳………………………………………………3
全卵…………………………………………………15
バター…………………………………………………4
水……………………………………………………35
折り込み用バター……………50
【工程】ミキシングL3分M1分、捏ね上げ温度23度C、発酵1時間後冷蔵15時間、3つ折り×3回、成形→(1)2・5ミリ厚に伸ばし、8cm四方にカットする(2)対角線が折り目になるようにして三角形に折りたたむ(3)合わせ目の2辺に沿って1センチ程度のところにカットを入れる(4)[3]をはがし、再び8センチ四方の状態にして、カットを入れた部分を左右に交差させる。ホイロ 28度C75%1時間、焼成上火220度C下火180度C15分
※焼成前に塗卵をし、▼クレーム・ド・フロマージュを絞る(共焼き)。
▼クレーム・ド・フロマージュ
【材料グラム】
クリームチーズ………………………………………100
粉糖…………………………………………………40
レモン汁……………………………………………15cc
塩………………………………………………………1
【作り方】クリームチーズを軟らかくして、残りの材料を混ぜていく。分離しないように気を付ける。
▼仕上げ
(1)ブルーベリーに少量のナパージュをからませ、盛り付ける。ブルーベリーは、水で洗わずにアルコールスプレーで消毒する(2)セルフィーユを飾り完成。

ブリオッシュ系や焼き込み系も充実

フリュイ・セック


メランジェ
フリュイ・セック
ブリオッシュ生地に、アーモンドクリームを絞り、フィグ、くるみ、レーズン、クランベリー、ピスタチオなどをトッピングして、焼成。ひとつ200円。

メランジェ
ハード系のパンをスライスして、肉やチーズ、野菜などをトッピングして焼いた製品。「霧をふいてから、アルミホイルに包んで、オーブントースターで加熱するとおいしく召し上がれます」とポップで説明している。


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