老舗ベーカリー特集 - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
特集/2018年9月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


老舗ベーカリー特集




伝統を守りながら時代と共に変化していく - 銀座木村家
12種類の酒種使用のパンが販売されている売り場。パンは番重に入っており、乾燥を防ぐため蓋がされている
銀座4丁目にある創業149年の老舗「銀座木村家」。店はビルの1階で、2階から4階は直営の喫茶やレストラン、7階と8階にベーカリーの厨房がある
営業企画室の上野仁さん。商品開発のほか、ポスターやプライスカードの製作などを担当している
酒種のパン生地で粒あんを包み、へそに吉野山の八重桜の塩漬けを押し込んだ「桜あんぱん」(税込162円)
「桜あんぱん」の断面
主要商品の小麦粉を国産小麦に変更

 東京・銀座四丁目の顔と言える老舗ベーカリー「銀座木村家」は、今年創業149年。創業から6年経った頃の明治8年、明治天皇へ献上された、へそに桜の塩漬けが埋め込まれた「桜あんぱん」(税込162円)は、銀座名物にとどまらず、今や日本を代表する菓子パンだ。
 昨年、その「桜あんぱん」などに使用している酒種が、世界のパン業界で注目を浴びた。製菓製パン材料メーカー、ピュラトスのグループ会社が運営する、ベルギーの「サワー種ライブラリー」に収蔵されたのだ。日本の種としては初めてのことだという。
 「創業者の一人、木村英三郎が、明治7年に発明してから、代々の種師によって、その製法と味が受け継がれているという長い歴史があること、そして、米と麹と水が原料という、世界中を見てもそうそうない、レアかつユニークな点が評価されたのだと思います。これを機会に、酒種酵母の魅力が、国内のみならず、世界の人々に知ってもらうきっかけになってくれたら嬉しいと思います」(営業企画室上野仁さん)
 ここ数年、訪日外国人で賑わい続ける銀座。同店の売り場も、スーツケースを引いて訪れる外国人の姿が後を絶たない。酒種や「桜あんぱん」についての英語版のパンフレットの用意や、中国語の話せる販売員の採用などで対応している。
 「酒種を使ったパンを、実際にお召し上がりいただくことで、日本の文化や伝統を感じ取っていただけたらと期待しています」(上野さん)
 「桜あんぱん」を含め、酒種を使用した12種類のパンは、種類ごとに番重に入った状態で、売り場に並ぶ。一つの番重には、50個が2段重ねで、合計100個入る。パンがぎっしりと入った番重は、売り場と同じビルの7階にある厨房から運ばれてくる。
 「『銀座で売るものは銀座で作る』という創業からのこだわりがあります。この考えには、手間暇かけておいしく作ったパンを、お客様にすぐ届けたいという思いが込められています。ホカホカ温かいパンが入った番重が、上から下へ降りてくるというのが、当店で一日を通して、当たり前のように見る光景なんです」(上野さん)
 厨房には約20人の職人がおり、そのうち、酒種生地を扱う職人は常時7人ほど。この道50年や25年というベテランから、入社1年目の若手までが一丸となって作業を行う。
 「私はここで25年、生地を触っていますが、毎日状態が違います。生地の丸めも包餡も、職人が素手で行うから、微妙な調節ができるんです。酒種生地は、発酵だけでなく、ホイロ後の乾燥が必要だったり、手間も時間もかかります。一日以上かけて、生地の仕込みからじっくり時間をかけて作っていくんです。そうしてできたパンは、風味が全然違います。酒種のいい風味がします」(製造担当の水谷さん)
 酒種使用のパンは、焼成後粗熱が取れたら、まだ温かい状態で、番重に入れる。番重は木製なので、中で程よく蒸れて、しっとりと落ち着くという。その後売り場では、乾燥を防ぐため、蓋をする。焼成後のこうした工程によっても、酒種ならではの魅力である風味の良さを守っているのだ。



酒種生地は、江東区有明にある工場で作られ、同店厨房に運ばれてくる
酒種あんぱんは、7階の厨房で分割から焼成まで行われる。包餡作業は常時4人ほどの職人が行う
「桜あんぱん」の桜の塩漬けを埋め込む作業の様子
焼成後粗熱が取れたら、一つひとつ出来を確認しながら、番重にならべる
 売り場で、番重に並ぶ酒種使用の12種類のパンは、そのうちの9種類が定番商品で、「桜あんぱん」(税込162円)、「白あんぱん」(同)、「うぐいすあんぱん」(同)、「けしあんぱん」(同)、「小倉あんぱん」(同)、「栗あんぱん」(税込195円)、「クリームパン」(同)、「ジャムパン」(同)などだ。
 「『桜あんぱん』だけでなく、『ジャムパン』も、当店が発祥とされており、100年以上の歴史があります。最近は甘さを抑える傾向ですが、当店は、あんもジャムも、昔とほとんど変わっていません。仮に甘さを抑えたりしてしまうと、酒種生地で作るパン自体の味がしっかりしているので、バランスが悪くなってしまうからです」(上野さん)
 季節商品は3種類ある。夏の季節商品は、小夏みかんジャムを包んだ「小夏みかんあんぱん」(税込195円)、瀬戸内産レモンと藻塩を白あんに合わせた「塩レモンあんぱん」(税込195円)、珈琲で風味付けしたこしあんと、ホワイトチョコを包んだ「珈琲あんぱん」(税込195円)だ。
 「『桜あんぱん』が、春を表現しようと考え、生み出されたように、当店は昔から変わらず、季節感を大切にしたいという姿勢で、商品作りをしています」(上野さん)
あんやジャムは昔と変わらぬ甘さを維持

 同店には、酒種使用のパンも含めて120種類のパンがある。バゲットやライ麦パンなどのハード系、食パンやテーブルロールなどの食事パン、総菜系や菓子系のペストリーなど、バラエティー豊富。これらも季節感を意識した商品開発を行っており、毎月新商品を発売している。



目立つ場所にびっしりと並べられた一番人気の「あんバター」(税込249円)
左は3〜4年前に発売した「大人のあんバター」(税込270円)の断面、右は「あんバター」の断面
新しさを追求した商品と販売方法

酒種使用のパンの売れ行きが順調な一方で、和のイメージの酒種生地とは対照的な、フランスパン生地で粒あんとホイップバターを包んだ「あんバター」(税込249円)を、20年以上前に開発。現在同店の一番人気アイテムとして、入り口からすぐの場所に並ぶ。
 3〜4年前、同製品の好評を受け種類を増やした。ジャマイカラム酒入りのあんを包んだ「大人のあんバター」(税込270円)と、年に6回入れ替わる季節商品の販売を始めた。季節商品は、7〜8月はほろ苦い珈琲あんの「珈琲あんバター」(税込249円)、9〜10月はかぼちゃあん、11〜12月はさつまいもあん、1〜2月はいちごあん、3〜4月は桜あん、5〜6月は抹茶あんだ。
 「酒種あんぱんの伝統を守り、それと同時に、時代に合わせた商品開発を行ってきました。当店には長い歴史がありますが、変わらないものと変わるものの両方を、常に持ち合わせることで、乗り切ってきたのだと思います」(上野さん)
 商品だけでなく販売方法も、新旧混在している。対面販売や、酒種あんぱんを番重に入れて並べるやり方は昔から変わっていない。プライスカードの一新や、デジタルサイネージ(電子看板)の導入などは、ここ2年で行ったことだ。
 プライスカードは、商品のカテゴリーや種類の違いなどに合わせ、形や大きさ、写真の有無などについて、それぞれ異なるデザインにした。例えば、「塩レモンあんぱん」は黄色、「桜あんぱん」はピンク色といったように、中身のイメージに合わせた色にしたり、土産に人気の「切りあん」(税込389円)など、袋入りの商品は、写真を付けて、中身がどのようなものか、一目でわかるようにしている。
 「ただ同じように並べただけでは、個々の商品が目立たたず、埋もれてしまうので、それぞれの商品のイメージに合わせたプライスカードを立てるようにしました。お客様にとって、欲しい商品の見過ごしを防ぐ効果もあるのではと期待しています」(上野さん)
 デジタルサイネージは、入り口すぐの店内壁面に設置。光を発しているので、店外からも、その存在に気付く。主な上映内容は、商品紹介や工房の様子などだ。
 「工房が売り場と違う階で見えないので、代わりに動画で見ていただけたらと思っています。職人が一つひとつ、手作りしているからこそのおいしさだということを、知っていただき、よりおいしく召し上がっていただけたらと願っています」(上野さん)

SHOP DATA
店名:銀座木村家
住所:〒104−0061 東京都中央区銀座4丁目5番7号
電話:03‐3561‐0091
営業時間:午前10時〜午後9時
定休日:なし(年末年始を除く)
品揃え:約120品目
店舗面積:厨房7階約39坪、8階約39坪、売り場約38坪
スタッフ:製造常時20人、販売常時10人



三世代にわたって顧客と共に歩んできた - ベーカリーカフェ明治堂
鈴木チーフに「明治堂の底力」と頼りにされる名物スタッフの滝沢初恵さん(左)と、次期社長で五代目の中山公人さん(右)
製造チーフ兼統括マネージャーの鈴木智之さん
バラエティー豊かな食事パン。ハード系も充実しており、ブレッツェルが並ぶ日もある。早朝から開店しているので、朝食として購入していくビジネスマンも多い
一日何回も焼き上げる人気商品の「カレーパン」(税込160円)
人気商品の「クロワッサン」(税込180円)。同店は突出した人気商品はなく、多くのアイテムが満遍なく売れる
「小さなレーズンロール」のヒットに続いて発売された「ミニチーズロール」(1個税込80円)
主要商品の小麦粉を国産小麦に変更

 創業明治22年の東京・北区王子の老舗ベーカリー「ベーカリーカフェ明治堂」。同店は固定客を数多く抱える下町の地域密着店として約130年にわたり人気を維持している。毎日のように同店のパンを食べている馴染みの客も多い。
 そんな老舗である同店は3年程前、パンの味の大きな部分を担う小麦粉を国産小麦粉「十勝」に変更した。変更は、食パン、バターロール、菓子パンといった主力を含め定番商品の約半分に及ぶ。
 大きな決断と思われるが、国産小麦粉の「十勝」のパンが顧客に浸透し定着するまで、特に問題はなかったと製造チーフの鈴木智之さんは当時を振り返って話す。
 「小麦粉を切り替えたきっかけは、販売会社の企画で小麦粉の生産者と直接会って『十勝』を大好きになったからです。畑を見て、話を聞き、生産者の方々がどれだけ丹精込めて作っている小麦なのかよくわかりましたし、味と品質の良さにも確信を持ちました。企画に参加した他の製造スタッフも同じ気持ちでした。すぐにこの小麦粉を使いたいと動き出したんです」
 鈴木チーフは「十勝」を、日本人好みのもちもちの食感とほんのりとした甘みがあって、次の日もしっとり感があるパンができる、と評価している。近年鈴木チーフの内麦への注目は高まっていたが、その中でも「十勝」の味には強い関心を持っていた。また、国産小麦粉の大きな魅力に「安心安全」がある。それは同店の常連客が求めるものとも一致している。「十勝」は、理想を叶える小麦粉だった。「十勝」を使用した製品の試作に着手し、次に同店が行ったのは、販売スタッフによる顧客への丁寧な説明だった。
 「当店の販売スタッフは自慢のプロ集団です。お客様の顔とパンの好みを覚えていますし、しっかりコミュニケーションを取ってくれます。その販売スタッフ達に『十勝』製品のお客様への試食のおすすめと説明をしてもらいました。これから小麦粉が変わります、という案内をし、新製品を味わってもらい、小麦粉の良さを説明してもらいました」と鈴木チーフ。
 客から信頼を得ている販売スタッフは、次々と常連客の率直な感想と意見を集め、「美味しい」「国産小麦は安心でいい」といった反応を確認していった。その結果、「十勝」への切り替えはスムーズに行われ、その後も安定した支持を得ているという。
 昨今では、毎年9月27日に「十勝ヌーボー」と題し、生産者から届いた麦の穂を飾り、今年の採れたての「ヌーボー小麦」を使った商品でコーナーを作り、イベントを行っている。

ベテランスタッフの販売力が最大の強み

 老舗の強みについて尋ねると、鈴木チーフは「販売の滝沢さん」と、具体的なスタッフ名を挙げた。滝沢初恵さんは先代の三代目社長の頃から約五十年に渡り明治堂を支える名物スタッフだ。常連客からは強い信頼を得ており、祖母、母、娘の三代に渡る顧客と付き合い続ける明治堂の大きな柱となっている。
 「お買い物というより、滝沢さんに会いに来ているお客様もいらっしゃいます。高校生の女の子が会いに訪ねて来たりもします。子供の頃から知っていて、大きくなっていくのも見守られていますから、仲も良いのでしょうね」と鈴木チーフは話す。
 滝沢さんを筆頭に、同店の販売スタッフと顧客との関係は密だ。スタッフは顧客の顔を覚え、「いつもの」で通じるように顧客の要望や好みを把握している。
 日頃から口コミでの製品説明にも熱心。そして顧客も慣れ親しんだスタッフに率直な意見を伝えてくれる。同店が客にアンケートを実施したとき、アンケートで初めて知る顧客の声が出て来る事はあまりなかったという。顧客が店に直接何でも言えるような関係ができているのだ。
 美味しいパンを作り出す製造スタッフの技術と、製造スタッフの作ったパンの良さを客に伝える販売スタッフ。販売スタッフが客から得た信頼が好循環を生んでいる。製造部門と販売部門がお互いの業務を尊重し合い、話の通りやすい環境を作っている事が相乗効果に繋がっているのだ。
 「パートさんの意見はとても大事です」と鈴木チーフは力を込めて話した。

ベーカリーカフェ明治堂は現代的な外観を持つ
鈴木チーフ発案の人気商品「ブルーベリーとクリームチーズ」(小税込240円、大税込450円)。季節ごとにクリームチーズとのベストマッチを検討して開発され、人気を得た
十勝産小麦を使用した食パン「とかち(上食)」(税込1斤260円、半斤140円)。十勝産小麦使用は値札に「十勝マーク」が貼られている
昔ながらのメニューの「三色パン」(税込190円)。懐かしいパンだが、形状が広がる花のようで可愛らしく、現代的でもある
新しさを追求した商品と販売方法

 酒種使用のパンの売れ行きが順調な一方で、和のイメージの酒種生地とは対照的な、フランスパン生地で粒あんとホイップバターを包んだ「あんバター」(税込249円)を、20年以上前に開発。現在同店の一番人気アイテムとして、入り口からすぐの場所に並ぶ。
 3〜4年前、同製品の好評を受け種類を増やした。ジャマイカラム酒入りのあんを包んだ「大人のあんバター」(税込270円)と、年に6回入れ替わる季節商品の販売を始めた。季節商品は、7〜8月はほろ苦い珈琲あんの「珈琲あんバター」(税込249円)、9〜10月はかぼちゃあん、11〜12月はさつまいもあん、1〜2月はいちごあん、3〜4月は桜あん、5〜6月は抹茶あんだ。
 「酒種あんぱんの伝統を守り、それと同時に、時代に合わせた商品開発を行ってきました。当店には長い歴史がありますが、変わらないものと変わるものの両方を、常に持ち合わせることで、乗り切ってきたのだと思います」(上野さん)
 商品だけでなく販売方法も、新旧混在している。対面販売や、酒種あんぱんを番重に入れて並べるやり方は昔から変わっていない。プライスカードの一新や、デジタルサイネージ(電子看板)の導入などは、ここ2年で行ったことだ。
 プライスカードは、商品のカテゴリーや種類の違いなどに合わせ、形や大きさ、写真の有無などについて、それぞれ異なるデザインにした。例えば、「塩レモンあんぱん」は黄色、「桜あんぱん」はピンク色といったように、中身のイメージに合わせた色にしたり、土産に人気の「切りあん」(税込389円)など、袋入りの商品は、写真を付けて、中身がどのようなものか、一目でわかるようにしている。
 「ただ同じように並べただけでは、個々の商品が目立たたず、埋もれてしまうので、それぞれの商品のイメージに合わせたプライスカードを立てるようにしました。お客様にとって、欲しい商品の見過ごしを防ぐ効果もあるのではと期待しています」(上野さん)
 デジタルサイネージは、入り口すぐの店内壁面に設置。光を発しているので、店外からも、その存在に気付く。主な上映内容は、商品紹介や工房の様子などだ。
 「工房が売り場と違う階で見えないので、代わりに動画で見ていただけたらと思っています。職人が一つひとつ、手作りしているからこそのおいしさだということを、知っていただき、よりおいしく召し上がっていただけたらと願っています」(上野さん)

SHOP DATA
店名:ベーカリーカフェ明治堂
住所:〒114−0002 東京都北区王子1‐14‐8
電話:03−3919−1917
営業時間:午前6時30分〜午後9時(ベーカリー)、午前9時〜午後7時(カフェ)
定休日:日曜
品揃え:約150品目
店舗面積:厨房約12坪、売り場約12坪
日商:平日約50万、土曜約70万

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら