色々な人の感性でできている一流のパン - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話 - ブランスリー電子版

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連載/2018年9月号

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色々な人の感性でできている一流のパン - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話
 仕事柄、これまで数多くの製パン講習会を取材してきましたが、講師に招かれるパン職人の方々は、皆一様にしゃべりがうまく、プレゼンの能力もかなり優れています。要するに人を惹き付ける力が備わっているのです。
 こういう人たちは、店の経営においても、多くのスタッフを束ねて、スタッフ一人ひとりのモチベーションを維持させつつ、店の「繁盛交響曲」を奏でさせる有能な指揮者として活躍していることは、容易に想像できます。
 しかし、その一方で、売り場が4〜5坪の小さな店で、自分ひとり、もしくは阿吽の呼吸で分かり合える1人か2人の製造スタッフと共に、黙々とパンを作り、明るく健康的に小規模の繁盛店を切り盛りしているブーランジェの方々も何人か知っています。その人たちは、製パン講習会の講師には呼ばれないし、並外れたプレゼンの能力も、多分持ち合わせてはいないでしょう。
 こうした、人知れず小規模店を繁盛させている人たちに共通することは何かと考えた時に、「パンが美味しい」ということがあるように思います。
 「パンが美味しい」といっても、抽象的で、つかみどころがなく、分かりづらいことこの上ないと思われる人がほとんどだと思います。そもそも、今どき、まずいパンを売っている店があるのか、という話にもなると思います。
 そこで、小規模で繁盛していると思われる店の「パンの美味しさ」について具体的に考えてみたいと思います。
 まず、パン作りに一方ならぬこだわりを持っていて、製パンを感性の側面からも理論の側面からも深く理解している人が作っていて、プロ中のプロをも納得させてしまうような美味しさが必ずどこかに潜んでいます。
 「プロ中のプロをも納得させてしまうような美味しさがどこかに潜んでいる」と言ったのは、小規模で繁盛している店のパンの美味しさは、プロが自分の思考の中で考える美味しさを、骨格の中にしっかりと持っているのですが、肉付きの部分には、それ以外の要素がかなり沢山含まれているのではないかと思うからです。
 それ以外の要素は何で出来ているかと言うと、その成分の多くは、パンの作り手本人以外の人の感性です。つまり、小規模繁盛店のオーナーシェフは、自分以外が感じるパンの美味しさに強い興味を示し、自分の周りの人たちにやたらと自分のパンを試食させます。そして、しつこいぐらいに意見を聞き出そうとします。  ですから、彼の作るパンは、自分以外の人の感性を含んだ美味しさを持っているのです。
 しかしながら、ここがポイントなのですが、彼は、彼以外の人の感性が美味しいと感じる要素を、そのまま彼のパンに流し込むことは決してしません。彼は色々な人の立場に立って、パンを味わえる高度な想像力の持ち主で、色々な人が感じるパンの美味しさを知っているのですが、それを彼のプロとしてのパン作りの感性とロジックで、さらに深いものへと昇華させていくようなのです。
 ですから、彼の顧客は、自分が美味しいと感じる味を、同じ方向にさらに美味しくしたパンを購入して食べることになります。
 彼の顧客にしてみれば、自分好みの味のパンを、一流のパン職人が腕によりをかけて作ってくれている、という感覚になるのだと思います。(RO)







原価計算女王
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