日々の「なぜ」の積み重ねが成否を分ける - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話 - ブランスリー電子版

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連載/2018年8月号

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日々の「なぜ」の積み重ねが成否を分ける - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話
 仕事柄、これまで多くの繁盛店のオーナーと接してきたが、多くの人に共通していることの一つに、製パンを論理的に捉えているということがある。もちろん、パン生地の状態を視覚、触覚、嗅覚で深く理解しているのだが、その上で、それらの感覚での理解をさらに一歩進めて、論理的にも理解しているのだ。
 何回も生地を捏ねていくうちに、同じ分量の材料を使っているのに、日によって生地の状態が少しずつ違ってくることを経験し、季節による温度や湿度の変化が、生地のミキシングにどんな影響を与えるかに気付く。また、ちょっとした都合やミスで、ミキシング時間が少し短くなったり長くなったりしても、材料の計量を少しだけ間違ったりしても、生地の状態が変わってくることを目の当たりにしていくうちに、ミキシングの方法の違いが、生地の組成にどんな影響を与えるかに興味を持ち、小麦粉やイースト、油脂、砂糖、塩などの製パン材料がそれぞれ生地組成に対してどんな働きをするかも知っていく。あるパンは、最初に低速で長時間回し、あるパンは最初から高速で回すのはなぜかについて考え、あるパンは強力粉100%の配合で、あるパンは、フランスパン用粉を30%入れるのはなぜかについて疑問を持つ。
 そして、そうした思考に基づいて得られた結果を、合理的に説明できるように地道に理論付けしていくのだ。
 私がこれまで取材してきた繁盛店のオーナーシェフらは、ほぼ例外なく、こうした思考と行動パターンの持ち主だ。だから、彼らは、パンのレシピを見ると、そのレシピを考えた人が、どのような意図を持って、どのようなパンを作りたかったかが、手に取るようにわかる。材料の配合の裏にある、開発者の思いを正確に読み取ることができるのだ。
 あるお菓子の講習会で、講師の1人は次のように言っていた。
 「お菓子を作っていく中で、常に『なぜそうするのか』と自分に問い、考えながら作業をする人と、そうでない人との間には、3年経てば、もう取り返しのつかないほどの決定的な実力の差ができている」
 こうした思考や行動は、少なからぬ快感をもたらすので、一度覚えてしまうと、病み付きになる。そうなればしめたものだ。また、こうした思考や行動パターンは、学者のそれと同じだ。特に、物理学者や化学者、または、考古学者や地質学者など、実験やフィールワークを伴う学問をする学者だ。
 職人の世界も学者の世界も、日々こなさなくてはならいない日常の作業は沢山ある。その量があまりにも多すぎると、その中に埋もれてしまい、自分でも気付かないうちに、探究心が鈍ってしまうこともあるだろう。特に、会社に雇用されている場合はそうなりやすいものだ。
 パン作りの仕事に就いたものの、「ひょっとしたら自分はこの仕事に向いていないのではないか」と悩んでいる人もいると思うが、そういう人は、前述のような思考や行動パターンが身に付いているか、または、今後身に付けられるかどうかを自問自答してみるといい。
 「継続は力なり」という格言があるが、パン作りの仕事に就いて、すぐに探究心が芽生え、製パン技術の深遠なる世界への入り口が見えてくる人も少ないであろうから、やはり一定期間の継続は必要だ。「石の上にも三年」ではないが、自分の仕事に中に「なぜ」の部分を探し出すように心掛けながら、三年は頑張ってみるべきだと思う。(RO)









原価計算女王
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