常に楽しいと思える精神状態を維持 - INZAIパン工房 Stories - ブランスリー電子版

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お店拝見/2018年8月号

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常に楽しいと思える精神状態を維持 - INZAIパン工房 Stories
製造と販売をすべて一人で行う店主の佐々木亨さん
JR小林駅からすぐのショッピングセンターの中にある「INZAIパン工房 Stories(エストリエ)」
厨房を囲むようにL字型となっている陳列台。右に入り口、左に出口がある。出入口が別になっているので、客同士がぶつかるのを防げる
レジでの会計時、佐々木さんはほとんどの客と会話を交わす
デニッシュはオリジナルの形状にこだわりがある
「パン職人のクリームパン」(税抜190円)は、口の中で噛まなくても溶けていくような食感
製造は段取りを最重要視して行う

 「製造中は戦場です。全神経を集中していないとこなせません」
 こう話すのは、千葉県印西市のベーカリー「INZAIパン工房 Stories(エストリエ)」の店主、佐々木亨さん。
 佐々木さんは、一人で製造や販売、そして同店の営業に関わるすべての作業をしている。そのため、製造において段取りを最も重視し、決めた段取り通りにこなせるよう、一つひとつの作業に集中して励む。
 「お客様がいらっしゃる開店中は、接客に心の余裕を持ちたいので、すぐに止められたり、終えられる作業を持ってくるように段取りを考えています。過去には、生地の分割中に、お客様がレジに並ばれ、接客の体勢を取っていても、心はお客様を向いていないというようなこともありました。そのようなことがないよう、段取りは日々改善しています」(佐々木さん)
 段取りを重視して仕事をこなすことによって、「楽しい」と、常に思っていられるような精神状態に持っていけるという。
 「いいパンを作ることは、当然のことだと思うので、製造より接客を重視すべきだと意識しています。そしていい接客をするためには、自分自身が、常に楽しいと思える精神状態でいなければならないと思っています。気持ちが顔に出ますので、楽しいと思っていれば、いい笑顔でいい接客ができるからです」(佐々木さん)
 同店は開業して6年目を迎えた。土日祝日は3割近くが新規で、遠方から車で来店する人も多い。一方平日は、9割が顔馴染みの常連だ。
 「お客様の好みの商品はまだあるか、もしなければ代替え商品は何かあるか、今の焼きたて商品は何か、それはお客様の好みのタイプかなどが、お客様の顔を見ただけで、瞬時に判断できるようにしています。新規の方なら、どのようなパンに注目しているかを見て、それによって好みを推測したり、ネットや口コミの情報で何か特定の商品を探していらっしゃるのかなどを考えます。そして声掛けする際には、タイミングを十分に計ることを大事にしています」(佐々木さん)

SHOP DATA
店名:INZAIパン工房 Stories(エストリエ)
住所:〒270−1313 千葉県印西市小林北2‐9 小林牧の里ショッピングセンター内
電話:0476‐97‐6939
営業時間:平日は午前11時〜午後6時30分、土日祝は午前7時〜午後4時(売り切れ次第閉店)
定休日:月曜、火曜
品揃え:40〜50品目
スタッフ:製造・販売1人
店舗面積:厨房8坪、売り場4坪
客単価:平日850円、土曜、日曜、祝日1100円



「若返りのビタミン」が豊富に入っていることから名付けた「バゲット・若」(税抜240円)
「バゲット・若」の断面
「バイエルン」(税抜168円)。調理パンは年配者に人気だという
「バイエルン」の断面
デニッシュの「デルタ」(税抜200円)は、ザクザクとした食感が特徴。触って確かめることができるようにサンプルを用意している
「デルタ」の断面
会話を交せば互いに思いやる気持ちが育つ

 常連客は必ずと言っていいほど、会計時に佐々木さんに話しかける。
 「朝の通勤時は忙しいので、それ以外ならお客様の方から話しかけてきてくれます。天気など日常的なことや、パンの食べ方、当店のパンに限らずほかのベーカリーのパンについての感想まで、いろいろ話します。元々近所にいた方が、やはり当店のパンがおいしいと、転居先からわざわざ買いに来てくれたのは、嬉しかったですね」(佐々木さん)
 同店は、佐々木さんの家庭の事情で営業時間を7月から変更せざるを得なくなった。開店時間を朝の7時から、11時に4時間遅らせた。
 「朝食用に買いに来るのを日課にしてくれていた方や、通勤途中に寄ってくれていた方にはご迷惑な話なのですが、事情を説明すると、皆さん、温かい言葉をかけてくれます」(佐々木さん)
 佐々木さんには3歳の子どもがいる。朝早く出て、夜遅い帰宅の佐々木さんは、妻と子どもとすれ違いの生活になってしまう。営業時間変更は、これを改善することが目的だ。取材時も、「そうだよね。子どもは小さい時が大事だからね。頑張ってくださいね」などと励ましの声をかける客がいた。
 同店のバゲットは、「バゲット・若」という商品名だ。これには、客を気遣う佐々木さんの思いが込められている。
 「若返りのビタミンと言われているビタミンEを多く含む小麦胚芽を練りこんでいます。『若』には、お客様にいつまでも健康でお若くいていただきたいという気持ちを込めています」(佐々木さん)
 「バゲット・若」(税抜240円)の生地は、「バイエルン」(税抜168円)などの調理パンにも使用している。

好きなものづくりで地元に密着する

 佐々木さんは電気メーカーに就職後、パン職人に転向したという経歴がある。転向した理由をこう語る。
 「ものづくりが好きで、それができる仕事という点では、パン屋も電機メーカーも同じです。パン職人を選んだのは、一つの場所に定住したいという気持ちが強かったというのが、一番の理由です。子どもの頃から親の転勤で各地を転々としていたのが影響していると思うのですが。定住するというのはすなわち、地元に密着した仕事をするということです。実際開業してみて、ベーカリーはまさに地元に密着する仕事だと実感しています」(佐々木さん)
 パン職人を目指すと決め、当時働いていた電機メーカーを退職し、パンの専門学校に進んだ。その後関西を中心にベーカリー6店舗、パティスリー1店舗で経験を積んだ。
 「転向した分、周りより遅くこの業界に入りました。そのため、少しでも早く先輩たちに追いつきたいという思いが強く、一時期は2店のベーカリーを掛け持ちしたり、ベーカリーで正社員で働きながら別のレストランで接客のアルバイトをするなどの生活をしたこともあります。そのせいもあってか、長時間一人で働くことも苦でなくなりました。従業員を雇ったら、そうはさせられませんが」(佐々木さん)
 それから、一般社団法人日本パン技術研究所で助講師を務めた後、大手油脂メーカーに勤務し、同店を開業した。油脂メーカー勤務中は、ユーザーであるベーカリーなどに向けて、商品の開発や提案を行うなどした。また、開発した商品の中の一つは、カリフォルニアレーズンコンテストで賞をもらった。
 こうした経験もあって、現在も佐々木さんは日常的に商品開発に取り組んでいる。
 「毎日40〜50種類作っています。店舗の規模や一人で製造していることなどを考えると、適切な品数の倍近いかと思いますが、お客様に楽しんで選んでいただきたいですし、私自身も、もっと多くの種類を作りたいという思いがあるんです」(佐々木さん)



この記事の読みどころ

●段取りを重視して製造を完璧にこなし、心に余裕を持って常に楽しい精神状態を維持して接客する。
●固定客の好みを記憶して、顔を見ただけで瞬時に求めている商品がわかるようにする。
●地元に密着してベーカリーを営むということは、その地域に定住するということ。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



原価計算女王
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